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レシピと型のサイズが違う!型に必要な適性生地量は型比容積で計算しよう!

パンを作っていると「レシピと手持ちの型のサイズが違う!」ということは多々あることかと思います。

また、食パン用の型は同じ一斤用でも正方形や長方形などさまざまで、メーカーによって微妙に容積が違います。

そこで、レシピと同じ材料でパンを作るには、手持ちの型に合わせた材料のグラム計算が必要になってくるのです。

レシピと型のサイズが違っても同じように作ることができるよう、手持ちの型に必要なグラムの計算について解説していきたいと思います。

目次

手持ちの型に合わせたグラム数を計算するのに必要なこと

手持ちの型に合わせたグラム数を計算するために、まずはいくつか確認しておくことがあります。

レシピにパン型の容積(サイズ)が記載されていることを確認

はじめに、レシピにパン型の容積(サイズ)が記載されていることを確認します。

容積がわからなければ、手持ちの型に合わせたグラム数に変換することはできませんので、材料をそろえる前に必ずチェックしておきましょう。

自分の手持ちの型の容積を計算する

自分の手持ちの型の容積を計算することも必要です。

同じレシピで作るには、正しく容積を計算する必要があります。

ベーカーズパーセントの理解

ベーカーズパーセントについても理解しておく必要があります。

ベーカーズパーセントは、粉に対するその他の材料の重量を、割合として表したものです。

型比容積の理解

型比容積についての理解も必要です。

型比容積とは、その型に入れる適切な量の生地に対して、型の容積がどれだけの割合かということを数値化したものです。

自分の手持ちの型の容積の求め方

では、まず初めに自分の手持ちの型の、容積の求め方について説明していきたいと思います。

容積の求め方には、型の辺の長さを測って容積を求める方法と、水を入れて重量を量って容積を求める方法があります。

型の辺の長さを測って容積を求める方法

まずは型の辺の長さを測って容積を求める方法で説明していきましょう。

パン型は意外と厚みがあるもの。

外寸と内寸では辺の長さも違います。

長さを測る場合は、実際に生地の入る部分である型の内寸を測るようにしてください。

型にもさまざまな形がありますので、いろいろなパターンで紹介したいと思います。

四角い型の計算方法

もっとも一般的な焼き型である四角い型。

食パンの型でよく使われています。型の上底と下底が同じであれば、容積は簡単に求めることができます。

四角い型の容積の計算式は


容積=縦A×横B×高さH


です。

たとえば、縦Aが10㎝、横Bが20㎝、高さHが12㎝の型の場合


容積=10×20×12
容積=2,400㎤ 


となります。

台形の型の計算方法

同じ食パン型でも上底と下底で長さが違うもの、つまり台形の型の場合は、上底と下底の中間の長さを割り出して計算する必要があります。

計算式は


容積=(縦の側面の上底A+下底a)÷2×(横の側面の上底B+下底b)÷2×高さH


となります。

たとえば、縦の側面の上底Aが11㎝、下底aが10㎝、横の側面の上底Bが21㎝、下底bが20㎝、高さHが12㎝の場合


容積=(11+10)÷2×(21+20)÷2×12
容積=21÷2×41÷2×12
容積=2,583㎤


ということです。

円柱の型の計算方法

円柱の型の場合は、底面積×高さで容積を出すことができます。

計算式はこのようになります。


半径r×半径r×円周率π×高さH


たとえば、円の直径を計り、直径が10㎝だとすると、この円の半径は5㎝となります。

高さが20㎝で円周率πを3.14として計算すると


容積=5×5×3.14×20
容積=1,570㎤


ということになります。

ラウンド型の計算方法

ラウンド型は波紋があり、計算で容積を求めるのはとても困難です。

そのため、のちほど紹介する水を入れて容積を量る方法が適しています。

シフォン型の計算方法

シフォン型の計算方法は少し計算がややこしく感じますが、考え方としては単純です。

シフォン型は円錐から上の部分を取り除いた、円錐台という形の容積を求める方法を使えば、導くことができます。

手順としては、シフォン型の円錐台の部分の容積から、中の空洞にあたる部分の容積を引くと、実際に生地を入れる部分の容積を求めることができるのです。

一つずつ順を追って解説していきたいと思います。

手順1 円錐台の容積を求める

まず、円錐の容積の計算式は、底面積×高さ×1/3 です

底面積は、半径×半径×円周率π なので、


円錐の容積=r×r×π×高さH×1/3


となります。

ここでは、実際には削除する部分にあたる上部の円錐(小円錐としましょう)の底面の半径をr1、円錐全体(大円錐としましょう)の底面の半径をr、大円錐の高さをH、小円錐の高さをhと置きます。すると

1/r2=H-h/H という関係が成り立ちます。

つまり、高さは


H=rh/(r-r1)


となります。

円錐台の容積は大円錐の容積-小円錐の容積で求めることができるので、


1/3πr22H-1/3πr12(H-h)


となり、ここに高さHの式を代入すると


円錐台の容積=πh/3(r1+ r1+ r22)


となります。

実際に数値をあてはめて計算してみましょう。

計る部分は半径r1、半径r2、高さh です。

たとえば、半径r1が9㎝、半径r2が10㎝、高さhが10㎝、円周率πが3.14として計算した場合


円錐台の容積=3.14×10÷3(9+9×10+102)
円錐台の容積≒10.5(81+90+100)
円錐台の容積≒10.5×271
円錐台の容積≒2845.5㎤


となります。

手順2 空洞部分の円錐台の容積を求める

手順1と同じやり方で、空洞部分の円錐台の体積を求めましょう。

たとえば、空洞部分の半径r1が2㎝、半径r2が3㎝、高さhが10㎝、円周率πが3.14として計算した場合


空洞部分の円錐台の容積=3.14×10÷3(2+2×3+32)
空洞部分の円錐台の容積≒10.5(4+6+9)
空洞部分の円錐台の容積≒10.5×19
空洞部分の円錐台の容積≒199.5㎤


となります。

手順3 型の円錐台部分の容積から空洞の円錐台の容積を引く

最後に、型の円錐台部分の容積(手順1)から空洞の円錐台部分の容積(手順2)を引くと、シフォン型の容積を導き出すことができます。

つまり、手順1で求めた2845.5㎤、手順2で求めた199.5㎤をあてはめると


シフォン型の容積=2845.5-199.5
シフォン型の容積=2646㎤


ということになります。

水を入れて水の重量を量って容積を求める方法

変形型を利用する場合には、型の長さを測って容積を出すのはなかなか難しいものです。

そこで便利なのが、水を入れて水の重量から容積を求める方法。

型ギリギリまで水を入れる必要があるため、万が一こぼれたぶんも量れるようにビニール袋を量りの上に乗せ、そのなかで計測すると良いでしょう。

水の重さがそのまま型の容積となります。

この方法なら、計算が困難なラウンド型や動物型など、どんな形の型でも容積を求めることができます。

シフォン型も計算が難しければ、この方法で容積を求めても構いません。

ベーカーズパーセントとは

ベーカーズパーセントとは、パンの材料の粉を100%としたとき、各材料が粉に対して何パーセントの割合かを示すものです。

用途

一般向けのレシピでは、グラム数が書かれていることが多いのですが、日によって作るパンの量が違う製パン業界では、ベーカーズパーセントで書かれていることがほとんどです。

仕込む量が変わっても、材料を計算しやすいように、粉に対する割合で書かれているのです。

同じ生地で多種多様な商品を作ることも多く、型が変わってもベーカーズパーセントを理解しておくことで、どんな量にも対応できます。

計算方法

ベーカーズパーセントは


目的の材料の分量÷粉の分量×100


で計算することができます。

たとえば、材料に使う小麦粉の分量が250gの時、この小麦粉の分量が基準となる100になります。

レシピの塩の分量が4gであれば


4÷250×100=1.6


つまり、このレシピの塩のベーカーズパーセントは、1.6%ということになります。

型比容積とは

型比容積とは、その型に入れる適切な量の生地に対して、型の容積がどれだけの割合かということを数値化したものです。

たとえば、型比容積が3であれば、その型に必要な生地の量は型の容積の1/3量ということになります。

蓋をして焼成する角食パンは、型比容積が3.8~4.0であることが多く、蓋をせずに焼成する山型食パンは、型比容積が3.5~3.7であることが多いです。

つまり、角食パンは型の容積の1/3.8~1/4の生地を入れるのが適正で、山形食パンは1/3.5~1/3.7の量入れるのが適正ということになります。

型にどのくらいの重量の生地を入れたらよいのかを知っておくことで、その生地を仕込むために必要な材料を計算することができます。

・角食パンの型比容積は「3.8〜4.0」
・山食パンの型比容積は「3.5〜3.7」

計算方法

型比容積は、型の容積と生地量から求めることができます。

計算式はこのようになります。


型比容積=容積÷生地量


たとえば、容積が1280㏄で、生地量が365gの場合は


1280÷365=3.5


つまり、このレシピの型比容積は3.5ということになります。

型比容積ごとの仕上がりの差

一般的に型比容積の数値が高くなるほど、型に対する生地の量は少なく、焼き上がりのパンはソフトな仕上がりになります。

型比容積の数値が低いと、型に対する生地の割合が多いため、焼き上がりのパンは重く硬い食感に仕上がります。

・型比容積が高いとソフトに仕上がる
・型比容積が低いと重く硬い食感に仕上がる

手持ちの型に必要なグラム数を計算する手順

次に、手持ちの型に必要な生地のグラム数を計算する手順を説明していきましょう。

レシピの型比容積を計算する

最初に型比容積を計算する必要があります。

まずは、レシピに使われている型の容積を割り出しておきましょう。

レシピの型の容積がわかれば、以下のような計算方法でレシピの型比容積を計算することができます。


レシピの型比容積=レシピのパン型の容積÷レシピの生地量(材料の合計重量)


手持ちの型の容積を計算する

次に、手持ちの型の容積を計算します。

“自分の手持ちの型の容積の求め方”の項で紹介したように、手持ちの型に合わせた方法で計算していきましょう。

手持ちの型に必要な生地量を求める

手持ちの型の容積が計算できたら、必要な生地量を求めます。

ここで、型比容積が役に立ちます。

手持ちの型に必要な生地量を求める計算式は


手持ちの型に必要な生地量=手持ちの型の容積÷型比容積


となります。

レシピのベーカーズパーセントを求める

最初からレシピのベーカーズパーセントが書かれていれば便利ですが、もし書かれていない場合はベーカーズパーセントを求める必要があります。手順を説明していきましょう。

①レシピの粉のパーセンテージを求める

まずはレシピの粉のパーセンテージを求めましょう。粉のパーセンテージを求める計算式は


粉のグラム数÷100


で出すことができます。

たとえば、粉のグラム数が250gであれば


粉のパーセンテージ=250÷100
粉のパーセンテージ=2.5


ということになります。

②材料のグラム数を①のパーセンテージで割る

次に、材料のグラム数を①で導き出した粉のパーセンテージで割ることで、材料のベーカーズパーセントを求めることができます。

材料のベーカーズパーセントの計算式は


材料のグラム数÷①のパーセンテージ


となります。

たとえば、材料の塩4gのベーカーズパーセントを出したければ


塩のベーカーズパーセント=4÷2.5
塩のベーカーズパーセント=1.6


塩のベーカーズパーセントは1.6%ということになります。

手持ちの型に必要な粉のグラム数を求める

次は、手持ちの型に必要な粉のグラム数を求めていきます。

手持ちの型に必要な粉のグラム数は


手持ちの型に必要な生地量÷合計のベーカーズパーセント(粉100%も含めた全ての%)


で求めることができます。

手持ちの型に必要な材料のグラム数を求める

手持ちの型に必要な粉のグラム数がわかったら、次に材料のグラム数を求めていきます。

材料のグラム数は


粉のグラム数×材料のベーカーズパーセント


で求めることができます。

手順に沿って計算してみる

では、実際のレシピを使って手順に沿って計算してみましょう。

ここでは、四角い型の場合で計算していきます。

【レシピの型の容積と配合】

レシピのパン型の容積は1280㏄、粉200g、砂糖8g、塩4g、イースト3g、バター10g、水140㏄

【手持ちの型】

縦11㎝、横20㎝、高さ5㎝

レシピの型比容積を計算する

まず、レシピの型比容積を計算します。

レシピではパン型の容積が1280㏄、材料の合計重量である生地量が365gです。

すると、型比容積は


レシピの型比容積=レシピのパン型の容積÷レシピの生地量
レシピの型比容積=1280÷365
レシピの型比容積=3.5


型比容積は、3.5となります。

手持ちの型の容積を計算する

次に、手持ちの型の容積を計算します。

手持ちの型は、縦11㎝、横20㎝、高さ5㎝なので、


手持ちのパン型の容積=11×20×5
手持ちのパン型の容積=1100


つまり、このパン型の容積は1100㏄ということになります。

手持ちの型に必要な生地量を求める

手持ちの型に必要な生地量は、手持ちの型の容積×型比容積で求めることができるので、


手持ちの型に必要な生地量=手持ちの型の容積×型比容積
手持ちの型に必要な生地量=1100÷3.5
手持ちの型に必要な生地量=314


つまり、314gの生地量が必要となります。

レシピのベーカーズパーセントを求める

次に、レシピのベーカーズパーセントを求めていきましょう。

1. 粉のパーセンテージを求める

まずは粉のパーセンテージを求めます。

レシピの粉のグラム数は、200gなので、粉のパーセンテージは、粉のグラム数÷100で出すことができます。つまり


200÷100=2


となるのです。

2. 材料のグラム数を①のパーセンテージで割る

粉のパーセンテージが2ということがわかったので、あとは材料のグラム数を一つずつ粉のパーセンテージで割っていくとよいです。

材料のベーカーズパーセントは

材料のグラム数÷①のパーセンテージなので、

【砂糖】


8÷2=4


砂糖のベーカーズパーセントは、4%です。

【塩】


4÷2=2


塩のベーカーズパーセントは、2%です。

【イースト】


3÷2=1.5


イーストのベーカーズパーセントは、1.5%です。

【バター】


10÷2=5


バターのベーカーズパーセントは、5%です。

【水】


140÷2=70


水のベーカーズパーセントは、70%になります。

手持ちの型に必要な粉のグラム数を求める

ベーカーズパーセントを求めることができたら、次に手持ちの型に必要な粉のグラム数を計算していきます。


粉のグラム数=生地量÷合計ベーカーズパーセント(粉の100%も含める全ての%)×100
粉のグラム数=314÷182.5×100
粉のグラム数=172


つまり、手持ちの型に必要な粉のグラム数は、172gということになります。

手持ちの型に必要な材料のグラム数を求める

必要な粉の量がわかれば、あとはベーカーズパーセントを使って材料のグラム数をそれぞれ求めていけばよいのです。

材料のグラム数は


粉量×材料のベーカーズパーセント


で求めることができます。

一つ一つ計算していきましょう。

【砂糖】


172×4%=6.88


砂糖のグラム数は、約6.9gとなります。

【塩】


172×2%=3.44


塩のグラム数は、約3.4gとなります。

【イースト】


172×1.5%=2.58


イーストのグラム数は、約2.6gとなります。

【バター】


172×5%=8.6


バターのグラム数は、8.6gとなります。

【水】


172×70%=120.4


水のグラム数は、約120g、つまり120㏄ということになります。

まとめ

いかがでしたか?

今回は、手持ちの型に必要なグラム数の計算方法について解説しました。

最初は少し理解するのに時間がかかったり、計算するのが億劫に感じるかもしれません。

しかし、型のおおよその大きさから判断して生地量を求めるのはおすすめできません。

結果的に生地の量が足りずに型よりも小さいパンができたり、多すぎて型をはみだしてしまうこともあります。

一度計算ができれば、次からはどんな型に変わっても対応することができますよ。

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この記事を書いた人

医療技術系短大卒業後、バイオ系研究室テクニシャンなどを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中です。
製パンスクールのプロコースを卒業した経歴を活かし、実践に役立つ製パン知識を、よりわかりやすく科学的にお伝えします。
食育アドバイザー、幼児食インストラクター資格保持。

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