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ホイロとは発酵器と二次発酵の2つの意味!どちらも掘り下げて解説!

パンを作るなかでよく耳にする「ホイロ」。

発酵のことかな?と、何となく意味を分かっているようで、いまいちはっきりしない方も多いかもしれません。

ホイロには発酵器と二次発酵の、2つの意味があるのです。

ここでは、発酵器としてのホイロと、二次発酵の意味のホイロ、どちらも詳しく解説していきたいと思います。

目次

ホイロとは

ホイロには発酵器と二次発酵の2つの意味があります。

発酵器

ホイロとは発酵器のことで、漢字で「焙炉」と書きます。

つまり、ホイロという言葉は英語などではなく、日本語であることがわかります。

ちなみに発酵器は、英語にするとファーメンター(Fermenter)です。

二次発酵

もう一つのホイロの意味は、二次発酵です。

成形してガス抜きされた生地にふたたびガスを含ませて生地を膨張させる工程のことで、焼成前におこなう発酵をさします。

一次発酵が基本的に室温でおこなわれるのに対し、二次発酵はホイロに入れて発酵させます。

そのため、この工程そのものがホイロと呼ばれているのです。

二次発酵は、英語ではセカンダリファーメンティション(Secondary fermentation)と言い、さらに、二次発酵は一次発酵の後におこなうことから後発酵、最終発酵、仕上げ発酵とも呼ばれています。

「ホイロをとる」とは?

製パン業界では、しばしば「ホイロをとる」という言葉を聞くことがあります。

これは二次発酵をとるという意味を表します。

つまり、「ホイロをとって」と言われたら、「二次発酵をとって」と、二次発酵へ進む合図になるのです。

ホイロには、ほかにもさまざまな言い回しがあります。使い方の例を見てみましょう。

ホイロの使い方例

  • 「ホイロが足りなかったよ」→「二次発酵(最終発酵)が足りなかったよ」
  • 「ホイロ、30分で見といて」→「二次発酵(最終発酵)を30分で様子見てみて」
  • 「この生地まだホイロが若いよ」→「この生地、まだ発酵が若い(発酵不足だ)よ」
  • 「この生地、ホイロオーバーになっているよ」→「この生地、過発酵になっているよ」

ホイロをとるのは「二次発酵をおこなう」という意味、ホイロを見るのは「発酵状態の様子をみる」という意味があるなど、ホイロという言葉ひとつでも使い方によって意味合いが少し異なることがわかります。

発酵器としてのホイロ

2つの意味で使われているホイロ。

まずは発酵器としてのホイロについて解説していきましょう。

発酵器とは

発酵器とは、効率的に発酵させるための機器のことです。

発酵をおこなうときに必要な条件となる「温度」、「湿度」、「時間」を設定して安定した状態を保つことができます。

発酵器には業務用と家庭用があり、発酵させる生地の量が多い業務用では湿度まで設定できますが、家庭用では湿度測定の機能はありません。

さらに、業務用発酵器には乾燥ホイロという一般的なホイロよりも湿度が低い状態の発酵器もあります。

一般的なホイロは生地がやや湿り気味であるのに対し、乾燥ホイロはややサラッとしており、乾燥する一歩手前のような状態を保つことができます。

おもに低温で発酵させるダレやすい生地、たとえばフランスパンや、デニッシュ、クロワッサンなどの生地に用いられます。

発酵器のメリット

発酵器は必ずしもないといけないというものではありません。

特に家庭では発酵器なしでパンを作っているという方も多いでしょう。

発酵器を使うことには次のようなメリットがあります。

温度が一定になる

発酵器を使うことで、温度を安定させて発酵をおこなうことができます。

室温は、二次発酵に必要な温度(35℃前後)になることは稀で、季節によっても大きく変わります。

お湯を張った容器を横に並べ、大きな箱などで発酵器のなかを再現しておこなうことも可能ですが、室温に左右され温度を一定に保つのはなかなか難しいものです。

発酵器を使うことで温度は一定に保たれ、安定した状態で発酵をおこなうことができます。

オーブンレンジですぐに予熱をおこなうことができる

家庭でパンを焼くという方のなかには、電子レンジにオーブン機能が備わったオーブンレンジを使っているという方が多いかと思います。

オーブンレンジは発酵機能がついており大変便利なのですが、発酵が終わったら一度パン生地を取り出し、予熱をして目的の温度になるまで待つ必要があるのです。

その間、パン生地は室温でも発酵し続け、放置していることによりどんどん乾燥してしまいます。

オーブンレンジはガスオーブンと比べても予熱に時間がかかるため、パン生地を長い時間待機させなければいけなくなるのです。

発酵器があれば、発酵が終わる時間に合わせてあらかじめオーブンを熱しておくことができ、その後の工程もスムーズに進みます。

ホイロとドウコンの違いは?

ホイロと似たような機械に、ドウコンというものがあります。

ドウコンは冷蔵と冷凍機能付き

ドウコンはドゥコンディショナー(Dough Conditioner)の略語で、ホイロの機能に加え、冷蔵や冷凍の機能が備わっているのが特徴です。

そのため、ドウコンはホイロの上位互換機械ということになります。

基本的に業務用のみ

ドウコンに備わっている冷凍機能は、生地を冷凍するだけの目的であるため、-10℃までしか下がりませんが、ドウコン一台で発酵をコントロールすることができます。

例えば前日のうちに成形した生地を冷凍に設定したドウコンに入れて、酵母の活動を一時休止しておきます。

夜になると冷凍から冷蔵に自動で切り替わるように設定しておけば、ゆっくり生地が解凍され、酵母が目覚めます。

さらに深夜に冷蔵からホイロの設定に切り替わるようにしておけば、生地の発酵を始めることができます。

すると早朝には生地の発酵が完了し、出勤したスタッフはすぐに焼成に入ることができるのです。

このように、生産性の向上や労務管理の改善などをおもな目的としているため、ドウコンは業務用が基本です。

ホイロと比べて機能性が高い分、価格も高額となりますが、自動で温度設定を切り替えることもできるので、パン屋さんでは非常によく使われています。

作るパンの量も少なく、ここまでシビアにコントロールする必要のない家庭では、ドウコンを使うことはほぼないでしょう。

二次発酵としてのホイロ

次に、二次発酵としてのホイロについて解説していきます。

二次発酵とは

二次発酵とは、焼成前におこなう最終発酵のことです。

一般的には一次発酵を経て二番目におこなう発酵であることから、二次発酵と呼ばれます。

ほかにも後発酵最終発酵仕上げ発酵とも呼ばれます。

ただし、パンの製法によってはミキシング後におこなう一次発酵をおこなわないものもあります。

その場合、発酵は1回のみとなるため、焼成前の発酵は二次発酵とは呼ばず、最終発酵と呼ばれます。

最終発酵は一次発酵のあるなしに関わらず焼成前の発酵のことを表します。

いずれにしても二次発酵=最終発酵のこと。

ホイロと呼ばれることには変わりありません。

二次発酵の目的

二次発酵には、2つの目的があります。

生地を緩めるため

成形された生地は、膨らみが少なく粘着性があります。

そこで、成形をしたことによって引き締まった生地の伸展性を上げ、焼成時に最大限膨張しやすいようにするため、熟成させる必要があるのです。

それをおこなうことができるのが二次発酵です。

香りを強くするため

さらに、二次発酵をおこなうことで、酵母が生成する有機酸などの香味成分を生地に蓄えることができ、風味のあるパンに仕上げることができます。

二次発酵に適した環境

二次発酵は、一次発酵に比べて温度はやや高めに設定し、短い時間で一気に発酵させます。

二次発酵に適した温度

二次発酵の温度はパン生地によって幅がありますが、最後に酵母の力を十分に出すために一次発酵よりはやや高めに設定します。

ソフト系のようにボリュームの必要な生地では、35~36℃にし生地内の温度をしっかり上げます。

ハード系の場合は生地が弱いため、32~33℃にし、ゆっくり熟成させるのが良いでしょう。

バターを多く練り込んだクロワッサンやブリオッシュなどの生地では、油脂が溶けてしまうため30℃前後で発酵させます。

二次発酵に適した時間

二次発酵に適した時間は30分から80分ほどと非常に幅が広いです。

これは作るパンの種類やイーストの量、温度などによって大きく環境が変わるためです。

食パンなどの大きな生地ほど発酵に時間がかかりますが、時間に合わせて発酵をおこなうのではなく、あくまでパンの発酵状態を確認して終了時間を決めなければいけません。

二次発酵のやり方

STEP
二次発酵は成形後

二次発酵はベンチタイムが終わった後の成形後におこないます。

ベンチタイムは家庭では室温で乾燥しないように布などをかけておこなう方も多いかもしれませんが、パン屋さんでは場所の確保や生地の安定性から、発酵器(ホイロ)のなかでおこなうことが多いです。

そのため、ベンチタイムが終わったら、まず発酵器から生地を取り出し、発酵器の温度を二次発酵に適した温度に設定します。

STEP
成形して天板に並べる

発酵器庫内が適正温度になる間に、生地を成形し天板に並べます。

STEP
発酵に入れる

成形が終わったら、乾燥しないよう速やかに発酵器のなかに入れ、二次発酵をおこないましょう。

二次発酵終了の見極め方

二次発酵終了の見極め方は、生地の膨張と生地表面の弾力で判断します。

一次発酵でおこなわれるフィンガーテストは、成形した後の二次発酵ではおこないません。

生地の膨張

生地の膨張を目で見て確認することで、どれだけガスを含んだ状態であるのかがわかります。

しっかりガスを含んだ生地は、生地の伸張性が十分にあり発酵がピークであることの目安になります。

成形したパンであれば、生地が発酵前の1.5~2倍。

食パン型に入れた生地は型の7~8分目まで膨らんだところを終了とするのが良いでしょう。

特に食パンは、生地の膨張を見て発酵状態を見極めます。

表面の弾力

食パン以外の生地では、膨張よりも弾力で発酵状態を判断します。

焼成時に発酵する余力や抗張力(引っ張られるときに耐える力)を残しておく必要があるため、成形したパンを人差し指で軽く押してみて、適度に弾力が残っている状態が好ましいです。

二次発酵を短くするとどうなる?

二次発酵は、生地を熟成させ伸展性を上げることが目的です。

しかし、二次発酵を短くしてしまうと生地の伸展性が不十分になります。

すると、発生する炭酸ガスを保持することが難しくなり、生地が伸びないため膨張しにくくなってしまうのです。

伸展性がないと、クラムが詰まったパンに仕上がります。

場合によっては、発生したガスを保持できず生地が膨張しないまま破裂してしまう恐れもあるのです。

二次発酵を長くするとどうなる?

二次発酵を長くしてしまうと、表面に気泡が浮いてきてデコボコした生地になってしまいます。

このような生地は、それ以上発酵する力がなく焼成時にボリュームが出にくくなってしまいます。

生地は緩みすぎてダレやすくなっているため、シワが寄ったり、陥没したりすることもあるのです。

さらに、発酵時間が長いと生地の糖分が分解されすぎて、パンに甘みがなくなります。

アルコール臭も強くなり味が落ちてしまうのです。

まとめ

発酵器と二次発酵の二つの意味を持つホイロ。

現場では当たり前のように出てくるので、言葉の意味を理解して2つの意味のホイロを上手く使いわけなければいけません。

特に二次発酵は焼成直前の工程であるため、状態をしっかり見極める必要があります。

作業をスムーズに進めるためにも、会話のなかで「ホイロ」をしっかり使えるようにしておきましょう。

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この記事を書いた人

医療技術系短大卒業後、バイオ系研究室テクニシャンなどを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中です。
製パンスクールのプロコースを卒業した経歴を活かし、実践に役立つ製パン知識を、よりわかりやすく科学的にお伝えします。
食育アドバイザー、幼児食インストラクター資格保持。

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