ベンチタイムとは?発酵との違いは?効果と役割を解説!
製パンの工程に出てくるベンチタイム。
パンを丸めてしばらく放置することから、発酵の工程のようにもみえますが、ベンチタイムと発酵との違いは一体何でしょうか?
ここでは、ベンチタイムの効果と役割について詳しく解説していきたいと思います。
ベンチタイムとは
ベンチタイムとは、一次発酵後にガス抜きして分割し、丸めた生地を10~20分ほど発酵させてガスを含ませ休ませたあと、次の成形の工程で生地がスムーズに伸びるように調整する工程のことです。
ベンチタイムは英語でbench timeと書きます。
その名前の由来は複数あり、一つは作業台のことをワークベンチというため、ベンチで休ませる工程としてベンチタイムと呼ぶようになったこと。
もうひとつは、まさに公園などにあるベンチのことで、スポーツ選手などが運動後にベンチで休むことにちなんで、生地を休ませる工程のことをベンチタイムと呼ぶようになったということです。
ベンチタイムは一次発酵から二次発酵に移る途中で、発酵過程の一部でもあるため、別名、中間発酵とも言います。
ベンチタイムの効果と役割
成形前発酵の工程の一部でもあるベンチタイム。
その効果と役割について解説していきましょう。
ベンチタイムの目的
ベンチタイムの大きな目的は、生地を緩ませること。
丸めた生地は張り詰め、緊張した状態になります。
そのままでは伸ばしにくく、成形がしづらいため、ベンチタイムをおこなって生地が緩むのを待つ必要があるのです。
成形すると生地はストレスを受けた状態となり、傷つけられます。
そのため、ベンチタイムは生地が成形に耐えられるようにする準備時間でもあるのです。
なぜ分割・丸めで生地が張り詰めるのか
生地は分割することによって断面が痛めつけられ、丸めによって生地は引き伸ばされ薄い膜を作ります。
そのため、生地は張り詰めた状態となります。
ここで分割して適度な量のガスを抜いておくことで、粘着性が少なくなってベンチタイムで粘着しにくくなったり、丸めたことで新しく発生したガスを漏らしにくくなるのです。
なぜベンチタイムで生地が緩むのか
ベンチタイムは発酵活動の一部であるため、ベンチタイムをとることによって生地は発酵しガスを蓄え膨張します。
結果、グルテンの組織は引き伸ばされ、弾力性が低下するのです。
ベンチタイムで生地が緩むというのは、生地の伸展性が良くなるということなのです。
ベンチタイムと発酵の違い
発酵活動の一部であるベンチタイムですが、一次発酵や二次発酵とはその目的が違います。
一次発酵の目的
一次発酵では、おもに次の3つの目的が挙げられます。
生地の風味を良くする
一次発酵をおこなうことで、生地中に発酵生成物を蓄積し、風味を良くする効果があります。
生地を膨らませる
一次発酵によって柔軟性や弾力性、伸展性はバランスのとれた状態となり、ガスを最適な状態で保持することができるようになります。
ここで生地をしっかり膨らませておくことで、パンはふんわりと柔らかく弾力のある生地に仕上がるのです。
イーストの発酵力を強める
イーストの種類によっては、その能力を発揮するまでに時間がかかります。
インスタントドライイーストなどを使ったストレート法であれば、比較的すぐにイーストの力が発揮されますが、中種法や液種などの場合は、ある程度時間をかけたころに力が出始めるのです。
そのため、一次発酵によって十分な発酵時間をとることが必要となります。
ベンチタイムの発酵の目的
ベンチタイムの発酵は、生地を緩ませて生地のダメージを回復するための時間です。
また、生地の伸展性を良くし、次の成形をしやすくする効果があります。
二次発酵の目的
二次発酵は、成形で締まった生地を緩めることと、もう一度ガスを含ませる目的があります。
これはベンチタイムとも同じような目的ですが、二次発酵で生地を緩めるのは、焼成で窯伸びを良くするため。
さらに、ガスが増えることによって香りが増し、生地も膨張しやすくなるのです。
ベンチタイムに適した環境
ベンチタイムには、どのくらいの温度や時間が適しているのでしょうか?
ベンチタイムに適した温度
ベンチタイムは、作業台で休ませることから来ている名称であることからも、室温でおこなうことも多い工程です。
とは言え、温度が高すぎると発酵過多となり、低すぎると発酵不足となってしまいます。
20~25℃の範囲でおこなうようにしましょう。
ベンチタイムに適した時間
ベンチタイムに必要な時間は、10~20分程度。
総菜パンや菓子パンなどに使う1個当たり50~60gの生地であれば、15分程度が良いでしょう。
それよりも大型のパン生地であれば20分ほど、小型であれば10分程度がおすすめです。
ベンチタイムのやり方
ここからは、ベンチタイムの手順について紹介していきたいと思います。
ベンチタイムの手順
丸め終わった生地は、天板に並べ、生地が乾燥しないように硬く絞った濡れ布巾などをかけておきます。
スペースが無い場合は発酵器のなかに入れ、濡れ布巾はかけずにベンチタイムをとります。
この場合は、温度を20~25℃に設定しましょう。
15分ほどたったら完了です。
ベンチタイム終了の見極め方
基本的には、ベンチタイムの時間が15分ほど経過したら終了です。
生地はひと回り大きくなり、ややふっくらとします。
人差し指の腹で生地の表面を軽くおさえ、生地が戻ってこなければ完了です。
ベンチタイムが終わった時の注意点
ベンチタイム中も、生地は常に発酵を続けています。
最初に丸めを終えた生地は先に発酵が進んでいる傾向にあるため、丸め終えた順に成形していくようにしましょう。
ベンチタイムしないとどうなる?
ベンチタイムをおこなわずに、すぐに次の成形の工程へと進むとどうなるのでしょうか?
成形時の問題点
ベンチタイムをおこなわずに成形の工程に入ってしまうと、生地は引き締まった状態で伸展性が無く、うまく成形することができません。
たとえ成形したとしても、生地がすぐに縮んでしまうのです。
焼成時の問題点
伸展性が十分でないまま成形されてしまうと、ガスの保持力が劣り、窯伸びしにくくなります。
仕上がりの問題点
ベンチタイムをとって休ませていない生地は、傷んだ状態で二次発酵されているためクラムやクラストが粗く、水分が飛びやすくなり老化が早まる傾向にあります。
また、膨らみが弱いため、ボリュームに欠けるパンに仕上がります。
ベンチタイムが短い(発酵不足)とどうなる?
ベンチタイムが短い場合や、温度が低いなどが原因で発酵不足となった場合、生地の伸展性が低く、成形がしづらくなってしまいます。
また、生地は傷んだままで表面が破れやすくなります。
そのため、ガスが抜けやすくなったり、水分が蒸発しやすくなってしまうのです。
ベンチタイムが短い時の対処法
成形をおこなっていて、ベンチタイムが短く成形しづらかったという場合、もう一度ベンチタイムからやり直すことはできるのでしょうか?
対処法としてはそのまま成形し、発酵時間を長めにとって様子をみるのがおすすめです。
もう一度ベンチタイムからおこなって、さらに成形作業をおこなうとなると、生地を必要以上に傷めることになります。
成形はやや難しいかもしれませんが、ベンチタイムが短いまま次の工程へ進んでしまった場合は、戻ることなく先に進め発酵を長めにとるのが良いでしょう。
ベンチタイムが長い(過発酵)とどうなる?
ベンチタイムを長くしすぎて過発酵となってしまった場合、生地にどのような影響があるのでしょう?
ベンチタイムの時間が長く過発酵になってしまうと、生地はダレて緩い状態になってしまいます。
ガスが必要以上に生産され、成形時に大きなガスを程よく抜くことができないため、焼成後は横に広がったり、穴の開いたクラムに仕上がりやすくなるのです。
また、発酵のしすぎによって糖分は分解され、焼き色が薄くなることがあります。
ベンチタイムを長くしてしまった時の対処法
多少ベンチタイムを長くしてしまった程度であれば、二次発酵を短めにするなどで対応することが可能です。
しかし、あまりにも過発酵で生地がダレてしまった場合は、薄く伸ばしてピザ用の生地にするのが良いでしょう。
ベンチタイムをしない場合とは
基本的には、ベンチタイムは重要な役割をもっているためほとんどのパンで必要な工程です。
しかし、なかにはベンチタイムの必要性が高くない、あえてする必要がないパンも存在します。
たとえば、ロデヴやリュスティックなどの高加水でほとんど成形をしないようなパンです。
グルテンが形成されにくく弾力性の低い高加水パンは、ベンチタイムをおこなうことで必要なガスが抜けてしまいます。
また、発酵後はおおざっぱに切りわけほとんど成形することがないので、ベンチタイムで生地の状態を整える必要がないのです。
まとめ
一次発酵と二次発酵の間におこなうベンチタイムは、丸めて休ませることから、作るパンの種類によっては成形と変わらない作業をしていると感じる方もいるかもしれません。
しかし、ほんの15分前後のベンチタイムでも、生地の状態は大きく変化し、その後の成形がしやすくなったり、焼成時や仕上がりにも影響が出ます。
パン作りには必要な工程と考え、省かないようにしましょう。