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過発酵の原因と防ぎ方とは?生地の再利用や救済できない時の廃棄方法を紹介!

季節や場所、材料などさまざまな条件でパン作りをおこなっていると、誰しも起こりうるのが過発酵です。

せっかく作った生地も、過発酵によって無駄になってしまったらもったいないですよね。

慣れないうちは発酵状態の見極めも難しく、適正な発酵にならないこともしばしば。

過発酵となる原因を知っておけば、未然に防ぐことができます。

ここでは過発酵の原因や防ぎ方に加え、ついつい過発酵になってしまったときの生地の再利用や廃棄方法についても紹介したいと思います。

目次

パン生地の過発酵とは

パンは、酵母という菌が糖分を餌にアルコール発酵をおこない、発生した炭酸ガスを充満させることによって膨らみます。

パン生地の過発酵とは、パンの発酵が進みすぎている状態のことです。

過発酵になった生地は、表面に気泡ができてぼこぼこしていたり、触るとしぼんでしまったりします。

過発酵になるとどうなる?

過発酵になると、パンにどのような影響が出るのでしょうか?

アルコール臭がする

パンの生地内において酵母がおこなう発酵はアルコール発酵というものです。

そのため、必要以上に発酵が進むと、アルコールが過剰に生産され、アルコール臭のきついパンになってしまいます。

酸味がある

過発酵した生地で作ったパンは、酸味の強いパンになります。

これは、酵母以外の菌が活発になることが影響しています。

特に天然酵母を使用したパン生地には、さまざまな菌が含まれています。

過発酵によって乳酸菌や酢酸菌が増えると、酸味の強いパンになってしまうのです。

クラムのきめが粗く硬いパンになる

過発酵した生地は炭酸ガスが充満し、クラムに大きな気泡が多くなってきめが粗くなります。

生地の弾力もないため、硬いパンに仕上がるのです。

クラストに焼き色がつきにくくなる

酵母は材料の砂糖などを餌として、アルコール発酵をおこないます。

適正な量が使われると、餌として利用されなかった糖分は生地に残り、カラメル化によってクラストに焼き色がつきます。

しかし、過発酵してしまった生地の砂糖は餌として利用しつくされ、生地に糖分が残らずクラストに焼き色がつきにくくなるのです。

甘みがなくなる

過発酵によってパンに甘みがなくなるのも、クラストに焼き色がつきにくくなることと同じ理由です。

過発酵によって必要以上に餌として消費されてしまった糖分は、生地に残らず食べても甘みを感じにくくなるのです。

腰折れ(ケービング)を起こす

過発酵のパンは、生地がダレて力がないため、潰れやすくなります。

このような現象を腰折れ(ケービング)と言います。

炭酸ガスが多く充満し、空洞がたくさんできてしまったクラムは、グルテンの弾力性が弱く骨格がしっかりしていないため、焼成後に時間が経つとケービングという腰折れの状態になってしまうことがあるのです。

過発酵の原因とは

発酵とは、酵母という菌に餌として糖分(砂糖)を与えることでアルコール発酵をおこない、アルコールや炭酸ガスを産生させる現象のことです。

発酵によって生地に炭酸ガスが充満し、生地が膨らんでふわふわのパンに仕上がります。

過発酵はこの発酵という一連の現象が過剰に起こっている状態ですが、その原因として考えられるものには、次のようなものがあります。

発酵時間が長すぎる

過発酵の原因としてよくあるのが、発酵時間が長すぎることです。

酵母は餌となる糖分を利用してどんどんアルコール発酵をし、炭酸ガスやアルコールを産生させます。

そのため、適正な発酵時間を過ぎてしまうと過発酵となってしまうのです。

一般的にはレシピ通りの発酵時間でパン作りをすることが多いかと思いますが、適正な発酵時間より長くなるシチュエーションというのは、レシピより発酵時間を長くしてしまったという場合だけに限りません。

酵母は生き物であるため、発酵の進み具合はそのときの環境に大きく左右されてしまうものです。

適正な発酵時間はその都度変わるので、さまざまな条件から発酵時間を見極めなければならないのです。

発酵温度が高い

通常、パンの発酵に適正な温度は30~35℃です。

酵母は25℃以上から活動が盛んになり、35℃付近で最も活発になります。

発酵温度が高い場合、発酵が速く進んで過発酵になってしまうことがあるのです。

イーストの量が多い

イーストの量を間違えて多く入れてしまった場合は、より多くの酵母がアルコール発酵することとなり、生地の過発酵に繋がります。

過発酵になりやすい状況

過発酵になりやすい状況には、次のようなものがあります。

これらの状況に注意して、過発酵になるのを防ぎましょう。

室温が高い

パン屋の規模や環境によっては、発酵器だけでなく、室温でパンの発酵をおこなうというのも珍しくありません。

気温の高い夏場は、室温も上がるため発酵に大きく影響します。

近年の日本では、夏の気温が35℃以上になる日も多くなってきました。

このような場合、空調の整っていない室内では熱が籠りやすく、さらに温度が高くなることもあるのです。

しかし、室温の高さは夏場だけ注意すればいいものではありません。

多くの機械を使っていたり、暖房などの影響によって冬場でも作業場の室温が高い場合は注意しなければいけません。

仕込み水の温度が高い

捏ね上げ温度は、その後の発酵に影響するため、きちんと調整する必要があります。

捏ね上げ温度は基本的に室温、粉の温度、仕込み水によって調整します。

仕込み水が本来の適正温度よりも高ければ、生地の温度に影響し発酵が進みやすくなってしまうのです。

過発酵を防ぐためには?

過発酵を防ぐためには、次のことに注意する必要があります。

発酵温度を下げる

温度が高いほど、生地は発酵しやすくなります。

発酵器などを利用する場合は、発酵温度の調整が可能なので温度をやや低めに設定するのも良いでしょう。

室温が高い場合は、冷房などで調整するなど工夫が必要です。

粉や仕込み水を事前に冷やしておく

生地の捏ね上げ温度を上げないために、材料の粉や仕込み水を事前に冷やしておくと良いでしょう。

室温が高いほど、粉や仕込み水は低い温度である必要があります。

特に仕込み水は温めたり冷やしたりと温度の調整がしやすいので、冷やした水は常に用意しておくと良いでしょう。

イーストの量を減らす

イーストの量が多いと、そのぶん、分解する糖分の割合が多くなり発酵が進みやすくなります。

基本的にはレシピ通りで問題ありませんが、オリジナルで生地を作る場合にはイーストの量を決めるのが難しいかもしれません。

発酵が進みすぎると感じる場合は、イーストの量を減らしてみるのも良いでしょう。

発酵時間を短くする

酵母は生き物であるため、餌があれば発酵を続けます。

発酵時間が長いと、そのぶん発酵が進んでしまうのです。

設定した発酵時間では発酵が進みすぎていると感じる場合は、発酵時間を短くしてみるのも良いでしょう。

過発酵した生地の再利用(リメイク)方法

過発酵してしまった生地は、程度にもよりますが少しの過発酵であれば生地を再利用(リメイク)することができます。

生地の再利用方法には、次のようなものがおすすめです。

老麺として再利用する

老麺法という製法に使われる中種として再利用することができます。

老麺法とは、材料の一部をあらかじめ混ぜて一次発酵させておき、その後、残りの材料に混ぜて本捏ねをする方法です。

一次発酵が終了した段階で生地を再利用したいという場合は、老麺として使うことが可能です。

しかし、老麺法で事前に発酵させる生地は、全材料の10~40%ほどで一般的には20%が多いです。

過発酵した生地を老麺としてすべて使いきるには、その5倍になるようにさらに材料を用意する必要があるので注意が必要です。

ラスクにする

発酵しすぎたと思っても、途中で諦めきれずとりあえず最後まで作ってみて、やっぱり美味しくなかったということもあります。

過発酵状態でパンを焼成までおこなって完成させた場合は、できたパンをラスクにするのがおすすめ。

アルコール臭や酸味も飛ばすことができるでしょう。

ナンやピタパンにする

途中で発酵しすぎたと気づいた場合は、ナンやピタパンの生地にするのもおすすめです。

ナンやピタパンは膨らむ必要はありますが、膨らむ力が弱い場合でも比較的失敗なく作ることができます。

ただし、パン生地そのものを味わうのでアルコール臭や酸味は感じやすくなります。

ピザ生地にする

過発酵になった生地は、それ以上膨らむ力がなくなっていることが考えられます。

そんな場合は、薄く伸ばしてピザ生地にするのがおすすめ。

ピザ生地なら膨らむ必要がなく、薄く伸ばした生地は過発酵生地特有の酸味も感じにくくなります。

ピザは具材も乗せるので、パン生地を楽しむというより具材を味わうと割り切って食べると良いでしょう。

揚げ菓子にする

ピザ生地のように薄く伸ばして、スティック状にカットして揚げ菓子にすると、膨らみにくさもアルコール臭や酸味も気にならなくなります。

シナモンシュガーやブラックペッパー、スパイスなどを使うと美味しく食べることができるので、おやつやおつまみに変更すると良いでしょう。

過発酵した生地が再利用できない場合

過発酵してしまった生地は、もったいないのでリメイクできると良いのですが、あまりにも発酵が進みすぎてしまうと、リメイクするのも難しくなります。

次のような場合は、残念ですがリメイクするのを諦め、廃棄するのが良いでしょう。

再利用できない場合の見極め「生地に少しも弾力がない」

過発酵した生地は、生地がダレて力がありません。

まだ生地に少し弾力が残って入れば、もう一度生地を丸めてハリや艶を与えることができますが、生地に少しも弾力がない場合は、生地はまとまらず成形することができないのです。

このような生地は、いつまでも艶やハリが出ずダレた生地のままになるでしょう。

過発酵した生地の廃棄の仕方

過発酵した生地を廃棄する場合、その廃棄方法に注意する必要があります。

生地は焼いてから捨てる

気を付けるべき注意点は一つだけ。

生地はオーブンで焼いてから捨てるということです。

発酵した生地は、たとえ過発酵状態であってもさらに発酵を続けようとしています。

そのままゴミ箱に捨ててしまうと、発酵がどんどん進みアルコールの臭いで充満してしまうのです。

生地に酵母という生き物が使われている限り、発酵状態を止めてから廃棄する必要があります。

まとめ

過発酵になった生地はもったいないのでできるだけ再利用したいものですが、できればどのような場合に過発酵が起こりやすいのか、事前に原因や対策を知っておくのがベストです。

基本的には発酵の温度や時間に気をつけることが重要です。

夏場や初めて作るレシピの場合は特に意識して、温度や時間に注意するようにしましょう。

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この記事を書いた人

医療技術系短大卒業後、バイオ系研究室テクニシャンなどを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中です。
製パンスクールのプロコースを卒業した経歴を活かし、実践に役立つ製パン知識を、よりわかりやすく科学的にお伝えします。
食育アドバイザー、幼児食インストラクター資格保持。

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