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フロアタイムとは一次発酵のこと!温度と時間、目安や見極め方などを解説!

パンの専門用語として使われているフロアタイム。

一般的にはあまり聞きなれない言葉ですが、製パン業界ではよく耳にする言葉です。

フロアタイムとは、一次発酵のことを表しています。

なぜ一次発酵のことをフロアタイムというのか、さらにフロアタイムに適した温度や時間、フロアタイム終了の目安や見極め方などを解説していきたいと思います。

目次

フロアタイムとは

フロアタイムとは、一次発酵のことです。

一次発酵は、生地のミキシング後から生地の分割を始める前までの生地発酵時間のことを指します。

フロアタイムのことを、パン屋では「フロア」と口頭で呼んだり、レシピに書くことがあります。

フロアタイムは、英語で Floor Time と書くため、レシピやタイムスケジュールなどでは、その頭文字をとってFTと書かれていることもあります。

ただし、一次発酵の英語は一番目の発酵を意味するプライマリーファーメンティション(Primary Fermentation)です。

一次発酵は単にファーメンティション(Fermentation)と呼ぶこともあります。

名前の由来

フロアタイムという名前は、その環境に由来しています。

フロア(Floor)は、部屋など室内を意味する単語。

一次発酵はホイロなどの発酵器には入れずにそのまま室内で放置して発酵することが多いため、このような名前がついています。

室内で放置とは言っても、発酵は常に安定した条件でおこなう必要があります。

一定の温度を保たなければいけないため、大規模なパン屋さんや工場では、ドウコンなどの温度管理ができる機械に入れることが多いです。

中種法でおもに使われる言葉

フロアタイムという言葉が表すように、一次発酵は室内放置。

しかし、フロアタイムという言葉が使われるのは、おもに中種法という製法のときなのです。

中種法とは、生地の一部を先に捏ね、発酵させた後に残りの材料を加えて本捏ねをおこなう製法のこと。

時間と手間のかかる方法ですが、生地の安定とグルテンの伸展性が上がり、ソフトでボリュームのあるパンに仕上がります。

おもに、大手製パン工場などで多く用いられている製法です。

一方、パン作りの基本製法であるストレート法は、最初から全ての材料を混ぜ合わせ、発酵から焼成に進む方法のこと。

工程も少なく短い時間で完成するため、家庭でパン作りをする方にもっとも利用されている方法です。

ストレート法では短時間で発酵させるため、工場などでは室温ではなく発酵器を利用することもあります。

そのため、工場などの大規模施設では、中種法での一次発酵によくフロアタイムという言葉が用いられているのです。

また、冷蔵庫で発酵させるような低温長時間発酵などでは、フロアタイムという言葉は用いられません。

一次発酵の目的

一次発酵の目的はおもに生地の熟成です。

グルテンが形成された生地は、熟成させることによって軟化し、伸展性が上がります。

伸展性が上がると、パン生地が膨張するための炭酸ガスを保持することができるのです。

さらに、発酵によって生じるアルコールや有機酸の香味成分は、パンの香りにも繋がります。

これらの成分を一次発酵で生地内にしっかり蓄えることも大きな目的の一つです。

一次発酵に適した環境

一次発酵に適した環境として意識するのは、温度や時間ですが、その条件は作るパンの種類によってやや変わります。

一次発酵に適した温度

一次発酵に適した温度は、一般的に28~30℃です。

酵母の活性は、28~35℃で良好となるため、この範囲内で発酵させるのがもっとも効率が良いのです。

一次発酵は、窯入れ前の二次発酵と比べて、やや低めの温度でゆっくり発酵させることで生地が熟成します。

一次発酵に適した時間

一次発酵の時間は、使う酵母の量や室温などによって変わります。

基本的には酵母が少ないと発酵はゆっくり進み、生地が膨張するまでに時間がかかります。

反対に、酵母が多いと発酵は早くなり、生地が膨張するまでの時間も早いです。

通常、40分ほどから様子をみます。

一次発酵に適した温度は28~30℃ですが、冬場はこの気温から大きく下がります。

その分2~3時間と長い発酵時間が必要です。

一次発酵のやり方

ミキシングが完了したら、速やかに一次発酵に移ります。

丸くまとめる

生地を滑らかに丸くひとまとまりにして生地をまとめ、繋ぎ目を下にします。

約2.5倍の容積のボウルに入れる

繋ぎ目を下にした生地をボウルなどの容器に移します。

用意する容器は、生地が発酵で膨張したときを想定し、約2.5倍の容積のものを用意すると良いでしょう。

ステンレス製のボウルは温度の影響を受けやすいため、冷蔵発酵などでは避けるのが無難です。

フロアタイムは基本的に常温での一次発酵を指すので、ここでは容器の種類についてさほど気にする必要はありません。

シートなどでボウルを覆う

生地が乾燥しないようにボウルにビニールシートやラップなどを被せ、室温に放置します。

一次発酵終了の見極め方

一次発酵の終了は、レシピ通りの温度や時間でおこなえば必ずしも終了となるとは限りません。

酵母は生き物です。

たとえ、いつも同じ温度と時間でおこなっていても、必ず生地そのものの状態を確認して一次発酵の終了地点を決める必要があります。

一次発酵終了の見極め方には次のような部分を確認すると良いでしょう。

生地の膨張

まずは目視で生地の状態を確認します。

どれだけ生地が膨らんでいるのかを確認することで発酵状態を知ることができます。

一次発酵では1.5~2倍の大きさに膨らんでいることが目安です。

表面の弾力

パンの表面を触って、生地の弾力を確認します。

適度な発酵の生地は、程よい弾力がある状態です。

ただし、次に紹介するフィンガーテストをおこなう場合は、生地の弾力も同時に確認することができるため、通常表面の弾力だけを確認する必要はほとんどありません。

フィンガーテスト

フィンガーテストは、発酵した生地に指を刺して開いた穴の状態を見て発酵を見極める方法のことです。

フィンガーテストをおこない、炭酸ガスの保持力を確認することができ、できた穴を確認することで発酵状態を極めることができます。

一次発酵が短いとどうなる?

一次発酵は、生地の伸展性を高め、熟成したパンにするための工程です。

一次発酵が短いと、弾力が強すぎて生地が伸びず、酵母の産生する炭酸ガスやアルコール、有機酸などの香味成分を十分に蓄えることができません。

特に一次発酵は、やや低めの温度でゆっくり熟成し、パンの香りや風味を引き出す大切な工程です。

発酵が短いと、熟成が不十分で旨味にかけるパンになってしまいます。

一次発酵が発酵不足の時の対処法

フィンガーテスト(発酵不足)

一次発酵が発酵不足のときは、そのまま同じ温度帯で発酵時間を延長しましょう。

フィンガーテストをおこなった場合でも、穴は塞がずそのままの状態で発酵を続けます。

ふたたびフィンガーテストをおこなう場合は、開けた穴から少しずらしておこないます。

それでもまだ発酵不足と感じたら、10分ずつ延長し再度フィンガーテストをおこなうようにしましょう。

一次発酵が長いとどうなる?

フィンガーテスト(過発酵)

一次発酵が長いと、酵母が餌として糖分を分解しすぎてしまいます。

糖分が生地に残らず、甘みを感じにくい生地になってしまいます。

また、糖がないことで保湿力も低下し、パサパサしたパンになってしまうのです。

また、適度な発酵の場合は、炭酸ガスやアルコールがパンに良い香りや風味を出してくれますが、一次発酵が長いと炭酸ガスやアルコールが過度に生成されてしまいます。

すると、パンにアルコール臭が多く残ってしまい、食べても美味しくないパンに仕上がります。

一次発酵が過発酵の時はリカバリできない

過発酵になってしまった生地は、残念ながらリカバリすることができません。

そうならないためにも、発酵中はこまめに状態を確認する必要があります。

過発酵になった生地の救済方法

過発酵になった生地は、生地としてリカバリすることはできませんが、焼成まで進めて単純にパンを完成させることは可能です。

ただし、味や風味、食感などに影響が出ます。

そこでおすすめなのが、完成させたパンをパン粉やラスクにすることです。

また、焼成前に生地を薄く伸ばし、ピザ生地にするのもおすすめです。

まとめ

一次発酵は発酵中であることを忘れて生地を放置しない限り、そうそう失敗するものではありませんが、生地を熟成させるための大切な工程です。

発酵が長くなってしまうとリカバリできないため、しっかり発酵状態を見極めるようになりましょう。

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この記事を書いた人

医療技術系短大卒業後、バイオ系研究室テクニシャンなどを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中です。
製パンスクールのプロコースを卒業した経歴を活かし、実践に役立つ製パン知識を、よりわかりやすく科学的にお伝えします。
食育アドバイザー、幼児食インストラクター資格保持。

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