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ライ麦パンを食べる国と小麦パンを食べる国の違いとは?

小麦は米、トウモロコシと並び世界三大穀物と称されています。

米を主食としている人は世界の人口の約半分を占めており、それに次ぐのが小麦です。

パンの主な材料は小麦であるため、小麦を使ったパンが多く食べられています。

一方、世界には小麦パンではなくライ麦パンを食べる国もあります。

特に寒冷な地域でライ麦パンを食べる傾向にあるのです。

ここでは、ライ麦パンを食べる国と小麦パンを食べる国の違いについて、説明していきたいと思います。

目次

ライ麦パンと小麦パンの違い

ライ麦パンと小麦パンの違いについて紹介します。

ライ麦パンの特徴

まずはライ麦パンの特徴について見ていきましょう。

見た目

ライ麦パンの見た目は全体的に黒っぽい色をしています。

ライ麦自体が黒っぽい色をしており、小麦と比べて精製度の低いライ麦で作るパンは、黒っぽい色になります。

香り

ライ麦を使ったパン生地にはグルテンが形成されないため、サワー種を使って発酵させます。

サワー種特有の酸味のある香りと、ライ麦の香ばしい香りが特徴です。

触感

ライ麦パンの生地は、粘り気があり、ベトベトしています。

小麦パンと比べて弾力がありません。

発酵

ライ麦にはグルテンが形成されないため、サワー種を使って発酵させます。

ライ麦に含まれるアミラーゼという酵素がデンプンを分解し糖を作るのですが、サワー種はこの糖を栄養にし、乳酸発酵によって粘りがでて、生地が繋がります。

膨らみ加減

グルテンが形成されないため、弾力性や伸展性に欠けます。

ガスの保持力が弱いため、膨らみにくいのが特徴です。

ライ麦パンにはサワー種が使われていますが、サワー種によって生地を酸性にすることで、デンプンを糖に分解するアミラーゼの働きを抑制し、デンプンが凝固するのを助けるのです。

焼き上がり

焼き上がりは密度が詰まってずっしりと重たいのが特徴。

小麦パンに比べて硬い触感に仕上がります。

保存性

ライ麦パンの日持ちはおよそ一週間程度。

小麦パンと比べると、保存性が高いのが特徴です。

ライ麦パンに使用するサワー種は、おもに乳酸菌と酢酸菌からなるものです。

乳酸菌と酢酸菌はカビなどの他の菌の増殖を抑え、さらにライ麦パンのpHは4.0~5.2と酸性よりであることから、小麦パンよりも腐食しにくくなります。

小麦パンの特徴

次は、小麦パンの特徴を見ていきましょう。

見た目

小麦粉は小麦の外皮を削って胚乳部分を粉末にしたもので、色が白いのが特徴。

そのため、クラムの色が白く仕上がります。

香り

小麦パンの香りの強さは、小麦粉の種類によっても変わります。

小麦そのものの持つ香りに加え、酵母の香りがするのが特徴です。

触感

グルテンが形成され発酵によって炭酸ガスを含んでいる小麦パンの触感は、ふわふわと柔らかいのが特徴です。

パンの美味しさは好みがあるため一概には言えませんが、ライ麦パンはずっしりと重たくぼそぼそしているため、食べにくいと思う方も少なくありません。

ふわふわと柔らかい小麦パンは、口当たりがよく多くの人に受け入れやすく美味しいと感じられています。

発酵

パン生地のなかにある糖分を酵母が分解し、炭酸ガスやアルコールを発生させます。

小麦にはグリアジンとグルテニンというたんぱく質が含まれ、この2つが複雑に絡み合いグルテンが形成されます。

グルテン膜が炭酸ガスを保持して、しっかり発酵が促されるのです。

膨らみ加減

グルテン膜の形成によって生地に弾力性と伸展性がうまれます。

そのため、炭酸ガスを保持し生地はしっかりと膨らみます。

焼き上がり

クラムは白く、クラストは糖のメイラード反応とカラメル化によってほんのり茶色く色づきます。

保存性

一般的に保存料などを使用していない小麦パンの日持ちは、常温で2~3日程度です。

ライ麦パンと比べると保存性は高くありません。

ライ麦と小麦の違い

ここからは、ライ麦と小麦の違いについて紹介します。

ライ麦の特徴

ライ麦は1~2℃でもっとも発芽しやすい作物。

耐寒性に優れ、痩せた土地でも育ち乾燥にも強いため、育てやすいのが特徴です。

土壌はやや酸性で水はけのよい場所を好み、高温には弱く、35℃を超えると成長が止まってしまいます。

ビタミンB1、B2などの栄養素や食物繊維が豊富で、健康面でも注目されています。

小麦の特徴

小麦は20℃前後で発芽しやすく、冷涼乾燥気候を好みます。

最低発芽温度は一般的に3~4℃ですが、低温では発芽が遅れ発育しにくく、さらには温暖多湿の環境でも生育しにくいのが特徴です。

小麦にはパン作りに欠かせないグルテンが含まれるため、パンを始めさまざまな料理に使用することができます。

また、ライ麦と比べて精製度が高く、口当たりの良さが特徴です。

ライ麦パンが食べられている地域

ライ麦パンが食べられている地域には、どのようなものがあるのでしょうか?

おもにライ麦パンを食べている地域について紹介します。

ドイツ

ライ麦パンを食べる代表的な国と言えば、ドイツです。

ドイツでは古くから寒冷な土地でも栽培可能なライ麦が育てられ、ライ麦パンが食べられてきましたが、ドイツの南部では小麦の栽培が可能なため、ライ麦パンに小麦を混ぜて作るものも多いです。

ドイツではライ麦の配合によってパンの呼び名が変わります。

粉の配合呼び名備考
ライ麦粉が90~100%ロッゲンブロートロッゲンは「ライ麦」の意味。
ライ麦粉が主体で残りが小麦粉ロッゲンミッシュブロートミッシュは「混ぜる」の意味。ライ麦粉に小麦粉が少し混ざっていることを表しています。
ライ麦粉と小麦粉が同量ミッシュブロートライ麦粉と小麦粉を混ぜたパン。
小麦粉が主体で残りがライ麦粉ヴァイツェンミッシュブロートヴァイツェンは「小麦」の意味。小麦粉にライ麦粉が少し混ざっていることを表しています。
小麦粉が90~100%ヴァイツェンブロートヴァイツェン=小麦が主体のパン。

ロシア

広大な土地を持つロシアですが、そのほとんどが寒冷地です。

そのため、小麦の栽培にはあまり向かず、古くから黒パンと呼ばれるライ麦パンが作られてきました。

東欧

南欧を除くヨーロッパは、ほとんどが北緯45°以北。

なかでも北緯50°以北となる地域は寒冷地帯が多く占めています。

同じ高緯度でも、西欧は偏西風と北大西洋海流の影響で温暖である一方、東欧は冬になると厳しい寒さとなります。

そのため東欧は小麦の栽培には向かず、紀元前500年頃からライ麦が主食となっていました。

今でこそ東欧でも小麦パンは簡単に手に入りますが、伝統的にライ麦が食べ続けられています。

北欧

北極に近い北欧は、国土のほとんどが寒冷地で小麦の栽培には向かず、ライ麦パンが食べられています。

北欧のなかでも、フィンランドは世界でもっともライ麦パンを消費する国と言われています。

そのため、ライ麦パンの種類も豊富。ライ麦の配合の多いパンが好まれますが、小麦粉を混ぜたパンも多くあります。

小麦パンが食べられている地域

世界的に見ると、日本を含め小麦パンを食べている地域が多いのですが、ここでは主食として小麦パンを食べている代表的な地域を紹介します。

フランス

パンを主食にする国として、まず頭に浮かぶのがフランスではないでしょうか?

ただし、庶民が小麦パンを食べるようになったのは、フランス革命以降だったと言われています。

それまでは精製した小麦粉で作るパンは貴族しか食べることができず、庶民は粗く砕いた大麦などをお粥にして食べていたのです。

トルコ

パンというとフランスやイタリアなどのイメージが強い方もいるかもしれませんが、実はトルコはパンの消費量が世界一なのです。

トルコはパン発祥の国と言われており、今から8000年前にチグリス・ユーフラテス川の地域で初めてパンの起源と考えられるものが食べられたと言われています。

当時は潰した麦に水を混ぜ、平たく焼いただけの無発酵パンでした。

昔と現代での食文化の変化

もともとライ麦パンのように茶色い見た目をしたパンは、黒パンと呼ばれ、身分の低い人たちが食べる食べ物でした。

一方、見た目の白い小麦パンは、黒パンに対し白パンと呼ばれ、身分の高い人だけが食べられる食べ物だったのです。

現代ではライ麦パンなどの茶色い見た目のパンは、栄養価が高く健康面からも人気となっています。

主食に関係なくさまざまな地域で食べられるようになってからは、小麦パンが主流な地域においては、小麦パンよりも価格が高いことも少なくありません。

まとめ

ライ麦パンは、小麦が育たない寒冷な地域で食べられてきました。

現代は環境の変化や育てやすい小麦、輸入などによりさまざまな地域でライ麦パンも小麦パンも食べることができます。

日本人には食べにくいと感じられるライ麦パンですが、国によっては好んで食べられていたり、伝統的に食べ続けられているのです。

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この記事を書いた人

医療技術系短大卒業後、バイオ系研究室テクニシャンなどを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中です。
製パンスクールのプロコースを卒業した経歴を活かし、実践に役立つ製パン知識を、よりわかりやすく科学的にお伝えします。
食育アドバイザー、幼児食インストラクター資格保持。

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