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デンマークといえばデニッシュ!パンの種類や特徴を発祥や伝統など歴史的な観点から紹介!

ヨーロッパの北部に位置するデンマーク。

漁業や酪農が盛んで、おいしい牛乳がたくさんとれることからバターやチーズなどの乳製品を使った料理がたくさんあります。

乳製品は菓子やパンにも多く使われており、バターをたっぷり使ったデンマークの代表とも言えるパンがデニッシュです。

ここでは、デンマークのパンの種類や特徴などを紹介したいと思います。

目次

デンマークのデニッシュ

デンマークと言えば、日本でもお馴染みのパンであるデニッシュの本場です。

デニッシュとは、バターと砂糖を生地に多く配合し、イーストで発酵させ何層にも折りたたんで焼き上げたパンのこと。

デニッシュ・ペストリー(Danish Pastry)の略称で、デニッシュは「デンマークの」という意味があり、デニッシュ・ペストリーはデンマークではお菓子のような存在として扱われています。

デンマークではデニッシュと呼ばない

デンマークを代表するパンとして知られているデニッシュ。

ところが、デンマークではこのパンのことをデニッシュとは呼ばないのです。

デンマークでの呼び名はヴィエナブロート(Wienerbrød)

というのも、デニッシュはもともとデンマークではなくオーストリアの首都ウィーン発祥のパン

ウィーンから製法が伝わり、デンマークでも作られるようになったのです。

デンマークではヴィエナブロートと呼ばれており、「ウィーンのパン」という意味があるのです。

オーストリアはヨーロッパ各地へ影響力を持っていた

中世のオーストリアは政治や文化の中心であり、周囲の国々に多大な影響を与えていました。

デンマークでデニッシュが作られるようになったのもそのためで、デンマークだけでなくフランスにもその製法が伝わります。

きっかけはパン職人のストライキ?

デンマークにデニッシュが伝わった理由にはいくつかの説があり、その一つにパン職人のストライキが関係していると言われています。

1800年代、給料などの不満からデンマークのコペンハーゲンでパン職人がストライキを起こします。

そのとき、店のオーナーがオーストリアのウィーンからパン職人を呼び寄せたことをきっかけに、デンマークの職人たちにデニッシュの製法が伝わり、デンマークにデニッシュが広まっていったとされているのです。

デンマークのパン職人がオーストリアに製法を学びに行った?

デンマークにデニッシュが伝わったきっかけとして、もう一つ考えられている説が、デンマークのパン職人がオーストリアのウィーンに製法を学びに行ったというものです。

当時、ヨーロッパでは政治や文化の中心であったオーストリア。

オーストリアのパンはヨーロッパの国々でも話題となっていたため、デンマークにはなかった菓子のようなパンを学びに、デンマークのパン職人がオーストリアへ渡り持ち帰ったとされています。

デニッシュは他国での呼び名

デンマークではデニッシュのことをヴィエナブロートと呼んでいますが、デニッシュというのは他国での呼び名。

デニッシュには「デンマークのパン」という意味があるのです。

ウィーンからデンマークに伝わったパン(デニッシュ)は、デンマークからさらに北欧諸国やアメリカに広まっていったため、他の国では「デンマークのパン」という認識となり、デニッシュと呼ばれているのです。

デニッシュとヴィエノワズリー

ウィーンから伝わった“デニッシュ”ですが、同じようにデンマークだけでなくフランスにも伝わります。

フランス語で「ウィーン」はヴィエンヌ。

そのため、フランスでは「ウィーンのパン」という意味を持つヴィエノワズリーと呼ぶようになったのです。

ヴィエノワズリーとは

ヴィエノワズリーは菓子パンや焼き菓子のことを指し、生地にバターや卵、牛乳、砂糖をたくさん使っているのが特徴です。

フランスへは、マリーアントワネットがオーストラリアからフランスのルイ16世のもとへ嫁いできたときに伝わったとされています。

ヴィエノワズリーには、バターを折り込んだ生地で作る三日月の形をしたクロワッサンや、チョコレートを包んだパン・オ・ショコラ、レーズンを包んだパン・オ・レザンなどがあります。

デニッシュとヴィエノワズリーの違い

ウィーンから伝わったパンは、それぞれ「デンマークのパン」という意味でデニッシュ、「ウィーンのパン」という意味でヴィエノワズリーと呼ばれるようになりました。

もともとは同じパンの製法を元にしているものですが、ヴィエノワズリーはブリオッシュのようなバターと卵をたっぷり使ったパンも含み、必ずしもバターを何層にも折り込んだ生地で作るパンのこととは限りません。

そのため、フランスでは菓子パンの総称としてヴィエノワズリーが使われています。

一方、デニッシュはウィーンからデンマークに伝わったパンに、フランスの折り込み製法を加えた独自のパンとしてさらに発展したものです。

酪農の盛んなデンマークでは生地にバターをたっぷり折り込み、砂糖をさらに加えたよりリッチなパンへと変化したのです。

基本的にはバターを折り込んだ生地で作るリッチなパンのことを指し、国は違いますがヴィエノワズリーの一種として扱われています。

デンマークのパン

デニッシュを中心としたリッチなパンが豊富なデンマーク。

ここからはデンマークのさまざまなパンを紹介していきます。

ティビアケス(Tebirkes)

成形したデニッシュ生地の表面に、白ケシの実をつけて焼くデンマークを代表するパンです。

黒ケシの実をトッピングすることもあります。

ティビアケスの名前にあるTeは「お茶」、Birkesは「ケシの実」のことを指します。

形は丸みを帯びた台形で、薄い層が何層にも重なって膨らんでいます。

見た目ほどの重量はなく、バターが効いているものの軽くサクサクとした食感が特徴で、デザートの後などにコーヒーと一緒に食べるのが定番です。

発祥や伝統、歴史的エピソード

ティビアケスの発祥は不明とされていますが、一説には19世紀にオーストリアで誕生したのが始まりとされています。

この頃はバターを使ったパンというものでしたが、パン屋のストライキをきっかけにデンマークにこの製法が伝わるとさらにバターや砂糖を増やし、甘くリッチなパンに発展していったと言われています。

ラージクリンゲル(Large Kringle)

ドイツのプレッツェルに似た形で、ヨーロッパではパン屋のシンボルとなっている形をしているパンです。

生地はマジパンやドライフルーツを包んで成形し、アーモンドスライスやグラニュー糖などをトッピングして表面をカリッと焼き上げます。

外層はカリッとしているものの、内層は甘くしっとりとした食感が特徴のリッチなパンです。

発祥や伝統、歴史的エピソード

デンマークではプレッツェルのような形のことをクリンゲルと呼び、その形からラージクリンゲルと名づけられたと考えられます。

デンマークでは、ラージクリンゲルを誕生日に本人がパン屋で購入し、知人に振る舞って自身の幸せを分け与えるという風習があります。

コペンハーゲナー(Copenhagener)

デニッシュ生地にクルミやレーズン、はちみつなどを加えたリッチなパンです。

発祥や伝統、歴史的エピソード

コペンハ-ゲナーについては、パンの情報が少なく詳しいことはわかりませんでしたが、デンマークの首都コペンハーゲンを名前に持つこのパンは、一般的にデンマークでデニッシュ全般の呼び名として使われているようです。

スパンダワー(Spandauer)

デニッシュ生地の中央にアーモンドパウダー入りのマジパンペーストを乗せ、生地の四隅を折りたたんで焼き上げたパンです。

油脂の量が粉の50~70%と非常に多いため、通常のパンよりも低い温度で発酵し油脂が溶けて流れないようにします。

菓子パンのような存在で、休日の朝やおやつに食べられ、焼き立てがおいしいパンです。

発祥や伝統、歴史的エピソード

スパンダワーは「封筒」の意味。

生地を封筒のように折って成形することから名づけられたという説があります。

さらに、スパインダーの名前の由来にはもう一つの説があり、ドイツのベルリン近郊にあるスパンダウという街から伝わってきたということも考えられています。

チョコボーラ(ショコレーゼボロ) <ChokoLade Boller>

画像引用元

デンマークでは定番となる丸い形をしたペストリーです。

なかにはカスタードクリームが入っており、トッピングにチョコレートシュガーを絞って焼き上げます。

さらに、リンゴを煮たものが入っていることもあります。

生地はペストリーの基本である27層になるように折り、中が空洞になるように焼き上げ、見た目よりも軽いのが特徴です。

コーヒーなどと一緒に食べるのがおすすめなパンです。

発祥や伝統、歴史的エピソード

ショコレーゼは「チョコレート」、ボロは「丸い」という意味です。

トッピングにチョコレートを使用した丸いパンであることから名づけられたとされています。

ロンステッカー(Rundstykker)

通常よりも多めのイーストを使って短時間で発酵させ、高温短時間で焼き上げたパン。

蒸気をかけて焼き上げるため、クラストは薄くパリッとした食感が特徴です。

ロンステッカーには砂糖や卵、油脂などが入りますが、塩味の効いたリーンなパンとして扱われています。

そのため、どんなものにも合わせやすく、朝食として食べられています。

発祥や伝統、歴史的エピソード

軽い食感と薄いクラストに焼き上げるために、イーストが多く高温で発酵させることから、作業中にどんどん発酵が進んでしまいます。

パン作りにはスピードが求められ、パン職人の力量が試されると言われているパンです。

スモーケーア(Smorkager)

デニッシュ生地にラムレーズンやカスタードクリーム、バターシュガーなどを乗せてロール状にし、切り分けて丸型に並べて焼き上げるパンです。

バターシュガーをたっぷり使っているため焦げやすいことから、低温で長時間焼くのが特徴です。

焼き上がりは成形したそれぞれのパンがくっついて1つとなり、直径20㎝ほどと大きなパンになります。

渦巻き状のそれぞれのパンの穴のなかに、仕上げにアイシングをトッピングします。

ホールケーキのように切り分けて、おやつや食後のデザートとして食べられています。

発祥や伝統、歴史的エピソード

スモーは「バター」、ケーアは「ケーキ」のことです。

バターをたっぷり使ったパンで、ケーキのように切り分けて食べることから名づけられたとされています。

スモースナイル(Smorsnegle)

ティビアケスの生地をベースとしたデニッシュ生地でシナモンを巻き、カットした断面を上にして焼いたあと、アイシングをかけたパンです。

軽くサクサクとした食感が特徴です。

発祥や伝統、歴史的エピソード

スモーは「バター」、スナイルは「渦」という意味です。

日本やアメリカで食べられているシナモンロールの、原型と言われているパンです。

スモー・ビアキス(Smorbirkes)

ロンステッカーと同じくイーストが多く砂糖や卵や油脂などが入った生地をベースとし、さらに30%程度のバターを折り込んだ生地で作るパンです。

表面にがケシの実がとっぴんぐしてあります。

バターの量は30%とデニッシュ生地などと比べると少ないため、クラムは詰まって塩気のきいたあっさりした味が特徴です。

味は淡白であるため、バターやチーズ、サラミを乗せてオープンサンドにしたり、レバーペーストを塗って食べたりと、濃厚な味のものと相性が良いパンです。

発祥や伝統、歴史的エピソード

スモーは「バター」、ビアキスは「ケシの実」の意味です。

ロンステッカーにバターを加えた生地に、焼成前にケシの実をトッピングしていることから名づけられたとされています。

ギフラ(Gifler)

バターロールのような見た目のパンですが、バターなどは入っておらず、リーンな生地のパンです。

素朴な味であるため、水平にカットして、チーズや具材を乗せ、オープンサンドとして食べられています。

発祥や伝統、歴史的エピソード

赤ちゃんも食べられる材料のみで作っているので、デンマークでは赤ちゃんのおしゃぶり代わりに与えています。

トレコンブロート(Trekornbrød)

小麦粉をベースに、小麦全粒粉やライ麦、ゴマを加えたパンで、成形後にさらにゴマをトッピングし焼き上げたとても栄養価の高いパンです。

ゴマが香ばしく香り、チーズやサーモンなどをトッピングしたオープンサンドにしたり、薄くスライスして魚や野菜と一緒に食べられています。

発祥や伝統、歴史的エピソード

トレは「3種」、コンは「穀物」、ブロートは「パン」の意味です。

つまり、3種類の穀物を使ったパンであることを表しています。

フランスクブロート(Franskbrød)

食パンのように成形したパンに、ケシの実をトッピングしたパンです。

焼き色は白く、一般的にトーストせずにクラムのしっとりとした食感を楽しみます。

塩や砂糖は少なくとても素朴な味で、バターやチーズ、ジャムなどを塗って、おもに朝食に食べられています。

昼食や夕食では、海老やタルタルなどを乗せてオープンサンドとして食べるのが主流です。

発祥や伝統、歴史的エピソード

「フランスのパン」という意味のパン。

フランクブロートはデンマーク発祥のパンですが、なぜこのような名前がついているのか、その理由については、残念ながら文献を見つけることができずわかりませんでした。

スティンガー(Stagnger)

画像引用元

デニッシュ生地でカスタードクリームやマジパンペースト、バターシュガーやレーズン、オレンジピールなどを包んで、アーモンドスライスやグラニュー糖をトッピングして焼き上げたパンです。

天板にシート状に広く焼き上げたものを、半分や3等分にカットして売られています。

とてもリッチな味で、パーティの食後のコーヒーと一緒に出されることが多いパンです。

発祥や伝統、歴史的エピソード

スティンガーは「棒状」の意味。

シート状に薄く伸ばした生地を、棒状にカットして焼き上げることから付けられた名前です。

まとめ

デンマークを代表するデニッシュは他国での呼び名で、現地ではヴィエナブロートと呼ばれていることがわかりました。

酪農が盛んなデンマークでは、パンにチーズやバターを塗って食べることも多く、食の宝庫であることもわかります。

ウィーンから伝わったデニッシュが、よりリッチなパンになったのもデンマークだからこそかもしれませんね。

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この記事を書いた人

医療技術系短大卒業後、バイオ系研究室テクニシャンなどを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中です。
製パンスクールのプロコースを卒業した経歴を活かし、実践に役立つ製パン知識を、よりわかりやすく科学的にお伝えします。
食育アドバイザー、幼児食インストラクター資格保持。

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