トルコのパンは多種多様!伝統的なパンの種類や名前の意味や由来を紹介!
アジアとヨーロッパの中間に位置するトルコは、東西の交易で栄え豊かに発展してきた国です。
広大な土地を持ち、非常にパンの種類が多いのが特徴です。
ここでは、伝統的なパンの種類や名前の意味、由来などを紹介していきます。
トルコの自然と農業の特徴
トルコはアジアとヨーロッパの中間に位置し、北部は黒海、南部は地中海、西部はエーゲ海、さらに東部にはユーフラテス川の源流があるなど、海や川に恵まれ魚介類が豊富に獲れます。
また、肥沃な土地を持つことから米と小麦の両方が栽培されており、野菜や果物、豆類も豊富です。
トルコの食文化
トルコ系民族は、もともと中央アジアの遊牧民でした。
そのため、遊牧民の食文化を土台とし、アラブやヨーロッパの食文化の影響を受けて独自の食文化が発展しました。
世界一パンを食べる国
トルコはなんと、1人当たりのパンの年間消費量が世界一!ギネス記録として認定されています。
そんなトルコではパンが主食です。
そして米が主食である日本人からみると少々驚きなのが、トルコでは米をおかずのようにして食べるということです。
ピラフを料理の中のひとつとして添えてあったり、トマトやピーマンのなかに詰めて煮込み料理として食べられています。
トルコ料理は世界三大料理の一つ
トルコ料理は、フランス料理、中華料理と並び世界三大料理の一つとして数えられています。
オスマン帝国は1299年から1922年まで続きましたが、その巨大な領土の各地から宮廷に料理人を呼び寄せ、腕を競わせたのです。
洗練された宮廷料理は伝統としてトルコ料理に受け継がれています。
代表的なトルコ料理
トルコの代表的な料理と言えば、ケバブが挙げられます。
薄切り肉を棒に何層にも巻き付け、回転させながら焼き、焼けたところからナイフで表面を削いで食べるドネルケバブや、肉の串焼きのシシケバブなど、種類も豊富です。
トルコのパンの特徴
今から8000年ほど前、古代メソポタミアでは砕いた小麦粉に水を加え平たく焼いただけの無発酵パンが食べられていました。
パンの起源と呼ばれるもので、場所は今でいうイラクやシリア、トルコのあたりと考えられています。
そのため、トルコの東部はパン発祥の地とされています。
古代から小麦粉を使ったパンが食べられていたトルコ。
広大な土地を持つトルコではパンにも地域性があります。
黒海沿岸の地域はトウモロコシの栽培が盛んなため、トウモロコシ粉を使ったパンが、エーゲ海沿岸の地域では、オリーブを使ったパンなどが好まれています。
トルコのパン
それでは、トルコのパンを紹介していきましょう。
エキメッキ(Ekmek)
エキメッキとはトルコ語で「パン」の意味。
一般的にはパンの総称のことを指しますが、パンの名称として、エキメッキという名で売られている場合もあります。
エキメッキという名で売られている場合のパンは、ずんぐりとしたバゲットのようなパンが主流ですが、ドーナツのように中が空洞のものやナンのように平たいものなど、さまざまな形があります。
パンの総称を表すエキメッキには、「食事」や「生活の糧」という意味もあります。
それくらいトルコ人にとって欠かせない存在のパンなのです。
煮込み料理やスープ、サラダと一緒に主食として食べられています。
シミット(Simit)
ドーナツ型のパンで、棒状に伸ばした2本の生地をねじりながらリング状にし、表面にペグメスという甘い液体を塗ってゴマをたっぷりとまぶして焼き上げます。
シミットの歴史は古く、1525年にはすでに食べられていたとされています。
15世紀のオスマン帝国の宮廷台所の仕入帳にも、シミットの名があったと記録されているのです。
シミットはトルコの国民食とも言えるパンで、屋台で販売されており、朝食やおやつに食べられています。
国民のほとんどがイスラム教徒であるトルコ。
太陰暦で年に5日カンディルという聖なる日があり、シミットは宗教的な行事でも食べられています。
この日に食べるシミットは、カンディル・シミットという名で販売されています。
そのままでも美味しいシミットですが、生地はシンプルであっさりしているため、バターやクリームチーズを塗って食べるのがおすすめです。
シミットはチャイと一緒に食べられることも多いです。
ピデ(Pide)
円形のトルコ風ピザ。外はパリッと、中はもちもちとして、その食感はインドのナンに似ています。
材料は強力粉にイースト、塩、油とシンプルで、通常は丸形に伸ばした生地にゴマをまぶした素朴な味わいのパンですが、小舟形に成形し、肉や野菜などの具材をのせて食べることもあります。
おもにトルコの東部で食べられており、イタリアのピザの原型と言われているパンです。
ラマザンという断食月には、ラマザンピデというパンが出回る地域があります。
ゴマが香ばしく、シンプルなパンなのでスープなどと一緒に食べられています。
ラフマジュン(Lahmacun)
薄く伸ばした円形の生地に、羊や牛のひき肉、みじん切りにした玉ねぎやピーマン、トマト、パセリなどの野菜を乗せ、香辛料で味付けをしてオーブンで焼いたトルコ風のピザです。
ラフマジュンとはアラビア語で「パン生地付きの肉」を意味します。
薄焼きピザのようなパンですが、一般的なピザのようにチーズは使っていません。
生野菜をトッピングし、レモンを絞って食べるのがおすすめの食べ方です。
ピザのようにカットして食べたり、半分に折りたたんで食べられています。
ユフカ(Yufka)
小麦粉で作ったクレープ状の大きく薄い生地です。
ユフカ単体で食べるというよりは、さまざまな料理の材料に用いられています。
古代から食べられてきたユフカは、2016年には世界無形文化遺産に登録されています。
トルコ民族はもともと中央アジアを移動しながら暮らす遊牧民だったことから、日持ちのする携帯食として重宝されていたのです。
ユフカのような薄焼きのパンは、フラットブレッドと呼ばれ、さまざまなお祝いの場や葬式などで出されます。
ケバブや野菜を巻いて食べたり、生地を何層にも重ねてお菓子に使ったりとさまざまな食べ方をすることができます。
ミスール・エキメギ(Mısır ekmeği)
ミスール・エキメギはトルコ風コーンブレッドのこと。
コーンミールと小麦粉にヨーグルトやベーキングパウダー、砂糖、塩を混ぜて型に流し焼き上げます。
トルコの黒海地方はとうもろこしの栽培が盛んで、トウモロコシ粉を使った料理がたくさんあります。
ミスール・エキメギはそんな黒海地方を代表する郷土料理です。
ミスール・エキメギの食べ方はさまざま。
主食のパンとして食べたり、甘さがあるのでお茶と一緒にケーキのように食べたりもします。
バズラマ(Bazlama)
バズラマはトルコの円形の薄焼きパンです。やや厚みがあり、日本のおやきのような見た目をしています。
柔らかくふわふわとした食感が特徴です。
もともとは、トルコ人の祖先とされる遊牧民族テュルク人の間で食べられてきたパンで、現在はアナトリア全域で食べられています。
生地を焼いただけのものに、オリーブオイルと塩をつけて食べたり、なかに具材を挟んで成形したものを焼いて食べたりと、バズラマは種類もさまざまです。
いずれにしても焼き立てを食べるのが美味しく、朝食やおやつとして食べられています。
ギョズレメ(Gözleme)
長方形または円形に大きく薄く伸ばした生地(ユフカ)に、ほうれん草とチーズの組み合わせやラム肉などの具材を乗せ、半分に折りたたんで鉄板で焼いたパンです。
トルコを代表する小麦の生産地であるアナトリアで、田舎の家庭料理として誕生したのがギョズレメです。
ギョズレメはトルコではクレープのような位置づけで、大きく伸ばした生地に具材を乗せ折りたたんだ後、サチと呼ばれる専用の鉄板で焼いて作ります。
トルコの田舎町では至るところでギョズレメを作る女性たちを見ることができます。
トルコの定番軽食で、レストランや屋台などさまざまな場所で提供されています。
レストランでは朝食などで出されることもあり、ギョズレメをカットした状態でお皿に盛り、サラダなどを添えて食べられています。
屋台で食べるときは、大きなギョズレメをくるくると巻いて頬張るのが地元民の食べ方です。
ポアチャ(Poğaça)
生地にヨーグルトを混ぜてなかに具材を詰めて焼きます。
トルコの調理パンですが、一般的にベーキングパウダーを使っており、スコーンのようなパンです。
オスマン帝国の頃には食べられていたとされ、スルタン・ムラト三世時代の宮廷台所帳には、お客様のおもてなしのパンとして出された記録が残っています。
朝食によく食べられています。チャイなどと一緒に食べるのがおすすめです。
アチュマ(Açma)
ドーナツのような形のパンです。シミットにも似た見た目ですが、シミットよりも柔らかくもちもちとした食感で甘いのが特徴です。
伸ばした生地で少量のバターを包んで成形するため、バターの風味がありクロワッサンのようなふわふわとした食感に仕上がります。
アチュマまたはアチマという名で呼ばれています。
ポアチャと似たリッチな菓子パンであるため、アチュマ・ポアチャと呼ばれることもあります。
そのままでも美味しいアチュマですが、オリーブやチーズを添えて食べるのもおすすめの食べ方です。
チョレッキ(Çörek)
チョレッキは、トルコの菓子パンです。
なかにチョコレートを包んで焼いたり、クルミやシナモン、ケシの実ペーストを入れたりとさまざまなバリエーションがあります。
チョレッキとは、テュルク語で「パン」の意味。
ただし、主食になるようなパンではなく、お菓子のように主食ではないパンを指します。
チョレッキで有名なのが、アイ・チョレッキというフランスのクロワッサンのような見た目のパンです。
実はクロワッサンもアイ・チョレッキも、起源は1683年のオスマン帝国のウィーン包囲だと言われています。
オスマン帝国がウィーンを包囲していたときに、夜中にパンの仕込みをしていたパン職人が、オスマン帝国軍が地下から道を掘って城に侵入しようとしていた物音に気付きます。
このことを、いち早くウィーン軍に報告したことで、包囲を破り戦いに勝利することができたのです。
勝利を祝いオスマン帝国のシンボルである三日月形のパンを作って食べたのが、クロワッサンの原型となった「キプフェル」というパンだったのでした。
キプフェルはのちにマリーアントワネットがオーストリアからフランスに伝え、キプフェルを原型としたクロワッサンが誕生します。さらにトルコでは、アイ・チョレッキとしてクロワッサンに似たパンが誕生したのです。
おやつとしてチャイなどと一緒に食べられています。
タンドル・エキメギ(Tandır ekmeği)
1cmほどの厚さの円盤状またはドーナツ状に伸ばした生地を、地面に穴を掘って埋め込んだタンドール窯の内側に貼り付けて焼くスタイルで、インドのナンのようなパンです。
おもにトルコ南東部の都市ディヤルバクルの農村部で作られているパン。
材料は小麦粉、塩、水、イーストとシンプルで、大量に作って長期保存することもあります。
ディヤルバクル以外の地域でも作られ、冬が寒い場所ではタンドールの窯が暖房の役割も担っています。
シンプルな味なので、どんな料理にも合います。
特にシチューに浸して食べるのがおすすめの食べ方です。
カトメル(Katmer)
カトメルは、薄く伸ばした生地にピスタチオとカイマック(クロテッドクリーム)、砂糖を乗せ、四角く折りたたんで焼いたトルコのピスタチオ菓子です。
トルコ語で「折りたたむ」という意味の“katlamak”が語源とされています。
薄く伸ばした生地にフィリングを乗せ、四角く折りたたむ成形方法から名づけられました。
甘いフィリングのほかに、パセリやチーズを使った塩気のあるカトメルもあります。
切り分けてお皿に盛り、おやつに食べられています。
ロル・エキメッキ(Rulo ekmek)
茹でたじゃがいもや玉ねぎ、パセリに粉チーズなどを混ぜた具材をパン生地でロール状に巻き、型に入れて焼き上げた大型のロールパンです。
ロル・エキメキの具材はさまざま。
食べる地域の特産などを活かし、なかに包む具材は、じゃがいもなどのほかに、サラミやオリーブ、きのこなどを包むこともあります。
焼き上がったパンは、ロールケーキのようにカットしてお茶の時間などに楽しまれています。
ピシ(Pisi)
トルコの揚げパン。日本の揚げパンのように甘いものではなく、ほんのり塩気のある味わいで、軽いのが特徴です。
イスラム教には、クルバン・バイラムという別名、犠牲祭りと訳される宗教行事があります。
犠牲祭りの名の通り、牛や羊などを生贄にしてアッラーの神に捧げ、信仰心を示すのです。
クルバン・バイラムの前日である「アリフェの日」にはピシをたくさん作り、近所の人や貧しい人たちに配る風習が残る地域もあります。
スープと一緒に食べたり、シロップをつけておやつにも食べられています。
トラブゾン・エキメギ(Trabzon ekmeği)
クープの入った丸く大きなパンです。
材料に使う粉は小麦粉ですが、サワー種を使っているのが特徴です。
クラストは硬めで、クラムはふわふわと柔らかい触感です。
黒海地方のトラブゾンを代表する伝統的なパンで、サワー種を使うことによって日持ちがし、長期保存できるパンとして食べられています。
トラブゾンの高地では、長い冬を終え春になると、高原の小屋へ行く機会が出てきます。
移動には数日かかることもあるため、日持ちがして家族で分けられる大きなパンを作るようになったのです。
薄く切り分けて、ジャムやはちみつ、チーズなどをつけて食べられています。
ケテ(Kete)
円盤状の形をした、香ばしい焼き色が特徴のパン。
ヨーグルトやバターを練りこんだ生地を何層にも重ね、間にバターを挟んで焼き上げたリッチなパンです。
トルコ東部のアナドリアを中心に食べられているパンです。
バターをたっぷりと使っており腹持ちが良いので、断食月の朝に好んで食べられています。
日常の朝食でチャイと一緒に食べたり、断食月の朝に食べられています。
まとめ
トルコはパンの消費量が世界一であることや、パンの発祥とされる地域であることがわかりました。まさにパン大国ですね。
トルコ料理全般にも言えますが、トルコのパンは日本人の口にも合うものが多いと言われています。
トルコのパンを見かける機械があれば、ぜひ食べてみて下さいね。