メキシコのパンはトルティーヤ以外になにがある?種類や特徴を紹介!
メキシコのパンと言えば、日本ではトルティーヤを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
メキシコにはトルティーヤ以外にも、トウモロコシ粉を使ったパンや甘い菓子パン、宗教に欠かせないパンなどたくさんのパンがあります。
ここでは、メキシコのパンの種類や特徴を紹介したいと思います。
メキシコのパンとは
メキシコのパンは、トウモロコシ粉を使って作る無発酵パンと、小麦粉を使って作る発酵パンの両方が食べられているのが特徴です。
主食として食べるパン
メキシコでは、主食として食べるパンの一つに私たちも良く知るトルティーヤがあります。
トルティーヤはトウモロコシ粉を使って作る無発酵のパンです。
また、ボリージョという小型のフランスパンも主食として食べられています。
ボリージョは小麦粉を使って作る発酵パンで、メキシコではトルティーヤとボリージョが日常的に食べられています。
特別な日に食べるパン
メキシコには「死者の日」という日本でいうお盆のようなものがあります。
死者の日には、パン・デ・ムエイトというパンを供えるのです。
後述するメキシコのパンの項で詳しく紹介しますが、パン・デ・ムエイトは日常食べるパンとは分けて、特別なパンとなっています。
メキシコの食文化
次に、メキシコの食文化について見ていきましょう。
食事の基本はトウモロコシと豆
メキシコでは、たくさん採れるトウモロコシを収穫したあと乾燥させ、保存しておきます。
乾燥させたトウモロコシは粉にしてさまざまな料理に使い、メキシコ人は毎日トウモロコシを使った料理を食べているのです。
なかでも、トウモロコシを水で溶いて焼いたトルティーヤは主食として食べられ、おかずをのせたり巻いて食べられます。
また、豆を使った料理も多く、煮込み料理や茹でて潰した豆をスパイスと一緒に炒めて食べます。
代表的な料理
メキシコの代表的な料理と言えば、日本でもよく知られているタコスがあります。
タコスはトルティーヤで具材を包み、サルサというソースをかけて食べる料理です。
食事の時間
メキシコ人の食事の時間は、日本の食事の時間とは少し違っています。
朝食の時間こそ日本と変わりませんが、昼食の時間は午後2~3時と日本と比べて遅め。夕食は20~22時くらいになります。
昼食は遅い分しっかり食べるため、夕食は軽めに菓子パンのようなもので済ませるようです。
甘いもの好きが多いメキシコでは、夕食に甘いパンを食べることが多いのです。
また、朝食と昼食の時間が長くあいているので、間食することも多いメキシコ。
一方、あまり食事の時間は意識せず、お腹がすいたときに食べるという人も多いのだそうです。
メキシコ人にとって重要なビタミンT
ビタミンTと聞いて、不思議に思った方も多いのではないでしょうか?
栄養素として食品に含まれるビタミンは13種類あり、そのなかにビタミンTというものはありません。
厳密には、過去にビタミンという扱いだったものの現在はビタミンに当てはまらないビタミン様物質に、ビタミンT(テゴチン)と呼ばれるものはあります。
しかし、ここでいうビタミンTはビタミン様物質の種類のことではなく、なんとタコスのように頭文字に「T」のつくメキシコ料理のことなんです。
メキシコには、タコスをはじめ、トルティーヤ、トルターダス、トルタ、トトポスなど頭文字に「T」のつく伝統料理がたくさんあります。
これらの食べものを総称して、ビタミンTと呼んでいるのです。
どれもメキシコ人には欠かせない食べ物で、疲れていたりお腹がすくと周囲に「ビタミンT不足では?」と言われたりするのがメキシコあるある。
ただし、ビタミンTは太りやすいことでも知られ、摂りすぎには要注意なのです。
メキシコのパンの特徴
メキシコのパンは、メキシコで古くから食べられているものに加え、スペインの影響を受けた食べ方やフランスのパンをもとに発展したものがあります。
トウモロコシを使った伝統的なパン
メキシコの先住民が穂のある雑草を改良して栽培していた穀物が、トウモロコシの起源だと言われています。
メキシコは寒暖の差が大きく、やや乾燥した地域である北部では小麦の栽培をおこなっていたものの、小麦のサビ病に悩まされておりあまり収穫できない状態でした。
一方、標高差や気候の変動にも強いトウモロコシは、南部を中心に栽培されています。
一度茹でたトウモロコシをすり潰して乾燥させ粉にし、水で溶かして焼いて食べていたのです。
トウモロコシを使った発酵させないパンとして、今でもメキシコではよく食べられています。
死者のパン
アステカ文明の習慣が起源となる伝統行事に「死者の日」というものがあります。
アステカ帝国の時代は生贄の心臓を神に捧げる儀式をおこなっていたのですが、次第に心臓を模したパンを食べる風習が民衆に広がります。
1521年にスペインに征服されアステカ帝国が滅亡すると、キリスト教の聖人のお祝いが合わさったような行事となり、死者のパンは少しずつ形を変え、現在は骨をかたどった生地をトッピングして焼いたものが一般的となったのです。
スペインやフランスの影響を受けたパン
スペインによる征服後、メキシコの食文化はスペインから影響を受けます。さらに小麦や米といったさまざまな食材がヨーロッパから入ってくるようになり、小麦を使ったパンが発展していくのです。
スペインの影響を受けたメキシコの食事は辛い味付けが増え、トルティーヤに具材をのせてサルサをかけて食べるようになります。
パンにおいては特にフランスからの影響が大きく、バゲットをもとにボリージョ、ブリオッシュをもとにコンチャが作られました。
緑の革命によって小麦の自給率向上
緑の革命とは、1940年代から1969年代にかけておこなわれた農業技術革命のことです。アメリカからも大量の食糧を輸入していたメキシコですが、小麦の品質改良をおこない、小麦の生産量は3倍にもなったのです。
革命ではメキシコを悩ませていたサビ病に強い品種の小麦を作ることに成功したのですが、アメリカを含め、世界で栽培されている小麦は背が高いのが特徴。
しかし、土地の肥えたメキシコで小麦を育てると背が高くなりすぎ、雨風ですぐに倒れてしまったのです。
そのため、結果的に収量が見込めないということが起こりました。
さらに改良は進み、背が低い小麦を開発することでメキシコでも収量が見込めるようになったのです。
このとき掛け合わせに利用したのが、「農林10号」という日本の品種だとされています。
小麦の自給率向上により、小麦を使ったパンがさらに普及していきます。
メキシコのパン
メキシコにはトウモロコシ粉を使ったパンを中心に、さまざまなパンがあります。
トルティーヤ(Tortilla)
メキシコでは主食の一つであるトルティーヤは、トウモロコシ粉から作る平たい無発酵パン。
生地は干したトウモロコシを茹でてすりつぶし、乾燥させたものに水を加えてパン種を作ります。
この種はマサと呼ばれるもので、団子状に丸めてから薄く伸ばし、鉄板で焼くのが特徴です。
トウモロコシ粉の甘い香りともちもちした食感が特徴です。
トルティーヤはもともとスペイン人がメキシコに入植する前から、地元の人たちに食べられていたパンですが、スペインのオムレツであるトルティージャに見た目が似ていることから、入植したスペイン人が同じ名前で呼ぶようになったと言われています。
地域によってトルティーヤやトルティージャと発音が異なります。
メキシコやメキシコ国境付近のアメリカではトウモロコシ粉だけを使用し、もちもちとした食感が特徴ですが、その他の地域で食べられるトルティーヤは小麦粉で作ったり、トウモロコシと小麦粉を混ぜて作ることが多く、しっとりとした食感に仕上がるのが特徴です。
小麦粉で作ったトルティーヤは、フラワートルティーヤと呼ばれています。
手のひらサイズの柔らかい生地で、出来立てをそのまま食事と一緒に食べたり、お肉やみじん切りにした玉ねぎなどの具材とパクチーやサルサを入れて包んで食べます。
トルティーヤを切って油で揚げ、チップスにしたトトポ(トトポス)にして食べることもあります。
また、トルターダ/トルターダス(Tostadas)というトルティーヤを油で揚げたものに付け合わせを添えたり、のせて食べる前菜もあります。
ちなみにトスターダはTostar「トーストしたもの」という意味からきているのですが、実際には焼いたものより揚げたものが一般的です。
ボリージョ、ボリリョ、ボリロ(Bolillo)
メキシコを代表するパンの一つで、外はパリッとしていながらなかはふんわりとした小型のソフトフランスパンで、軽い食感が特徴です。
オーストリア皇帝の弟であるマクシミリアンが、1860年代にメキシコ皇帝に就いたころ、料理人たちによって持ち込まれたのが始まりです。
ボリリョ、ボリロ、パオ・フランセス、パン・フランセスなどとも呼ばれています。
横に切れ目を入れて、トルタと呼ばれるサンドイッチとして具材を詰めて食べられています。
トルタは専門の屋台も多く、タコスと並びローカルフードとして親しまれています。
ビローテ (Birote)
ボリージョとほぼ同義として扱われている塩気のあるフランスパンですが、小麦粉やライ麦粉に水を加えて自然発酵させて作るサワードゥを発酵種に使うのが特徴です。
ボリージョはメキシコ全土に広がってさまざまな地域で食べられており、その場所によって呼び名が変わります。
ビローテもまさにボリージョの別名で、メキシコのハリスコ州グアダラハラでの呼び名です。
ただし、ビローテはサワードゥを使って作ることが多いのが特徴です。
ビローテの横に切れ込みを入れてなかに肉を挟み、温かいトマトベースのソースをかけて、スライス玉ねぎやレモンを添えて食べられています。
このような食べ方は、トルタス・アオガーダス(Tortas ahogadas)という名前の料理で、「溺れたトルタ」という意味があります。グアダラハラではとても人気の食べ方です。
ソースでひたひたになっているので、ビニール手袋をつけて食べることが多いようです。
テレラ(Telera)
ボリージョの一種であるメキシコのロールパン。
丸くやや平べったい楕円形に成形し、縦に2本の切れ目を入れて焼き上げたパンです。
コルドバ名物のパンで、テレラやテレラロールなどと呼ばれます。
ボリージョと同じく、1860年代に誕生しました。
トルタと呼ばれるサンドイッチに使われているパンで、同じくトルタに使われるボリージョよりも、よりトルタ向けのパンとして認知されています。
ボリージョと同様、切れ込みを入れて具材を挟んだトルタというサンドイッチにして食べることが多いです。
コンチャ(Concha)
コンチャは貝の形をした菓子パンです。
メキシコでとても人気があり、パン屋さんには必ずと言って良いほど売ってある定番のパンです。
砂糖やバター、小麦粉で作った生地を成形したパン生地の上に乗せて、模様をつけて焼きます。まるで日本のメロンパンのような見た目のパンです。
1800年代のメキシコがスペインの植民地だった時代に、メキシコにはフランスのパン屋さんが増え始めました。
そこではブリオッシュが並び、ブリオッシュが発展してコンチャが誕生したと言われています。
ちなみに、コンチャとはスペイン語で「貝殻」の意味。見た目が貝殻に似ていることから名づけられました。
コンチャには、クリーム色や茶色などさまざまな色のものがあり、色の違いで味も違います。
カラフルな見た目が特徴的なピンク色をしたコンチャは、ピンク・コンチャ・パン・ドルセなどと呼ばれています。
パン・ドゥルセはメキシコで甘いパンの総称のことです。
メキシコでは夕食として甘いコーヒーやココアに浸して食べます。
オレハス、オレハ(Orejas)
オレハスはメキシコの甘い菓子パンです。
ハートの形が特徴的で、パイ生地を使って作ります。
フランスの影響を受けて誕生したパイ生地を使った甘い菓子パンです。
オレハスは「豚の耳」という意味を持ち、その見た目から名前がつけられました。
メキシコでは甘いパンを甘いコーヒーなどと一緒に食べる風習があります。
オレハスも同じく甘い飲み物と共におやつや夕食で食べられています。
メキシカンコーンブレッド(Mexican CornBread)
トウモロコシを使ったパン。酵母は使わずに、ベーキングパウダーや重曹で膨らませます。
トウモロコシや玉ねぎに加え、ハラペーニョが入った甘くない塩味のパンです。
コーンブレッドと言えば、アメリカのクイックパンとして知られていますが、アメリカのコーンブレッドはトウモロコシ粉で作った具材が入らないやや甘い生地のパン。
一方、メキシコのコーンブレッドは生のトウモロコシやクリームコーン、玉ねぎ、ハラペーニョなどが入った塩味が特徴的なパンです。
発酵の手間がかからず、すぐに作ることができるため、夕食などの軽めな食事で食べられています。
パン・デ・ムエルト(Pan de Muerto)
生地にオレンジピールが練りこんで、やや平らの丸型に成形したパンの上部に骨をかたどった生地をクロスさせた状態で飾り、砂糖を振りかけて焼くビスケットのような食感が特徴の甘いパンです。
メキシコには「死者の日」という日本で言うお盆のような日があります。
その歴史は3000年以上にもなり、アステカ文明のころの死者の日の起源とされる風習では、神に生贄の心臓を捧げていたのだとか。
その後、その行事では心臓を模したパンを供えるようになり、民衆にも広がっていきます。
1521年にスペインに征服されると、キリスト教の聖人のお祝いを組み合わせた新たな形の「死者の日」として伝統が受け継がれるようになりました。
現在では心臓を模したものではなく、上部に骨をクロスさせたものを飾って焼いたパン・デ・ムエイトというパンをお供えします。
11月1日は幼くして亡くなった子供、11月2日は亡くなった大人を偲び、故人に敬意を表します。
死者の日には、日本のように墓参りをおこないますが、祝祭としてメキシコ全土でパレードをおこない、お祭りのような様子です。
この伝統行事は、ユネスコの無形文化遺産に登録されています。
メキシコでは、よく甘いパンと共に甘い飲み物が飲まれていますが、パン・デ・ムエルトもアトレというトウモロコシ粉を原料とした甘い飲み物と一緒に食べられています。
ロスカ・デ・レジェス(Rosca de Reyes)
ロスカ・デ・レジェスは、大きなドーナツ型の甘いパンです。
ドライフルーツやチェリーなどの砂糖漬け、スライスアーモンドなどがトッピングしてあります。
ロスカ・デ・レジェスとは、「王様のケーキ」という意味のパン。
ドーナツ型の見た目は王冠に見立てたもので、お祝いのケーキを表しています。
メキシコは、クリスマスが翌年の1月6日までと長い期間続きます。
なぜこのように長い期間クリスマスが続くのかというと、1月6日は三賢者の日という新約聖書に登場する三賢者(または三博士)にまつわる日だからです。
1月6日は12月25日に誕生したキリストを祝うために、東方から来た三人の賢者が贈り物を届けた日とされています。
メキシコではクリスマス期間が1月6日まで続き、12月25日に子どもたちにプレゼントを渡した後、1月6日にもプレゼントを用意するので、街のおもちゃ屋にはプレゼントを買う大人たちで賑わっているのです。
1月5日の夜や、6日にはロスカ・デ・レジェスを家族で切り分け、その年の幸せを願って食べられます。
なかにはプラスチックでできた小さな人形が入っており、人形が当たった人は幸運になると言われています。
ケーキのように切り分けて、ホットチョコレートと一緒に食べられています。
まとめ
メキシコには、スペインやフランスなどのヨーロッパをはじめ、アメリカ大陸の食文化が入り混じりさまざまな食べ物が食べられています。
日本でも馴染みのあるトルティーヤ以外にも、あまり見慣れないパンがたくさんありました。
具材を挟んで食べるパンや、甘いパンが多いのも特徴的ですね。