焼減率とは?何のために計算する?目的や用途、調整方法を紹介!
パン作りをしていると、焼減率という言葉を聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか?
パンは外相からは焼けているように見えても、実際に切ってみるとクラムの目が詰まっていたり、食べると食感がいまいちということもしばしばあります。
パンのクラムを一つ一つ確認したり、食べてみることでパンの仕上がりを確認することもできますが、パンには種類ごとに適切な焼減率というものがあり、完成した製品の焼減率を計算することで、パンが適切に焼けているのかを見極めることができるのです。
ここでは、どのようなときに焼減率を計算するのか、目的や用途、調整方法を紹介していきたいと思います。
焼減率とは?
冒頭でも触れたように、焼減率はパンが適切に焼けているのかを見極めることができる重要な要素です。まずは、焼減率がどういったものなのかについて説明しましょう。
焼くことで減った重量の割合のこと
焼成率は、辻調理師専門学校によると下記のように解説されています。
焼成したときに減った重量を分割したときの生地の重量で割った数字を百分率で表したもの
辻調理師専門学校: 基本用語・パン (tsuji.ac.jp
つまり、オーブンで焼くことによって減った重量の割合のことを表しているのです。
発酵によって生成された揮発性物質が、焼成によって無くなったり、水分が蒸発したりすることによって重量の減少が生じます。
自由水が関係している
水分の蒸発と言っても、パンに含まれる水分には自由水と結合水があり、焼減率に影響するのは自由水のほうです。
結合水はたんぱく質などと結びついている水であるのに対し、自由水はほかの分子と結びついていない水のことで、分子が自由に動きまわることができます。
そのため、水蒸気としてパンの外に放出されるのです。
パンの焼き具合の判断材料になる
パンは種類によって適切な焼減率があります。
焼減率が適切でないと、生焼けになっていたり、水分が蒸発しすぎてパサパサになってしまうことがあるのです。
焼減率を計算することで、焼き上がったパンにどのくらい熱が入ったかを確認し、焼き具合の判断材料にすることができます。
焼減率を計算する目的や用途
普段、パンを焼くうえで毎日焼減率を計算するというパン屋さんはほとんどいないでしょう。
それは、毎日作っているパンの材料や分量、焼成方法などは、すでに一番良い状態で決められているからです。
いつも同じように作っていれば、きちんとした状態のパンが仕上がります。
それでは、一体どのようなときに焼減率の計算が必要になるのでしょうか?
商品開発
大手企業での商品開発や、個人経営での新作パンの開発時には、適切な焼減率を知っておくことで、開発の進行に大きく影響します。
企業では、作業効率を良くするために焼成時間や温度、材料を見直すことが多々ありますが、焼減率を適切な範囲内に収めておくことで、パンはきちんと製品として仕上がります。
焼減率を決めた値から外れない範囲であれば、作業工程を少しずつ調整していくことができるのです。
焼減率の基準があれば、ほかの部分を少しずつ変えることで新しい製品を作りだすのにも役立てることができます。
レシピを初めて試すとき
パンは使うオーブンや環境によっても焼け具合が変わります。
市販の本などに書かれているレシピで同じように作っても、使うオーブンが違えば、仕上がりが変わることがあるのです。
初めてレシピを試すときは焼減率を計算することで、きちんと焼けているのかを見極めることができます。
作業環境が変わったとき
さきほども説明したように、オーブンや環境が変わることによってパンの焼け具合が変わることがあります。
これは、いつも作り慣れたレシピであっても、環境が変わればパンの仕上がりが変わるということです。
たとえば、店舗の拡大や新しいオーブンの導入など、作業環境が変わることでパンの焼き上がりが変わることがあるのです。
目的のパンに適した焼減率がわかっていれば、このように作業環境が変わったときでも、以前と同様のパンに仕上げることができます。
焼減率の計算式
焼減率は、以下の計算式で導き出すことができます。
焼減率が高いほど、焼成前と比べて焼成後のパンの重量が減っているということになります。
焼減率の計算の手順
焼き上がったパンは、焼成直後にもどんどん水分が蒸発していきます。
焼減率は生地がオーブンで焼成されて失う重量を割合で表したものです。
そのため、焼減率はパンの焼成直後に計る必要があります。
パンが冷却してから焼減率を計算すると焼成直後よりも高い値となり、正確な数値を出すことができなくなってしまうのです。
それでは焼減率を計算する手順を見ていきましょう。
手順① 生地の分割重量を量る
まずは生地の分割重量を量ります。
1次発酵後に、分割した生地の重量を量っておきましょう。
型に入れないパンであれば分割した生地1個分の重量を、食パンのように形に入れる生地であれば、一つの型に入れる量の生地の重さを量ります。
手順② 焼成後のパンの重量を量る
次に、焼成後のパンの重量を量ります。
焼き上がったパンの重さはすぐに量るようにしましょう。
食パンなど型に入っているパンであれば、型から取り出してから量ります。
手順③ 計算式に当てはめて焼減率を導き出す
生地の分割分量と、焼成後のパンの重量がわかったら、あとは計算式に当てはめて実際に計算してみましょう。
たとえば、手順①で生地の分割分量が60g、手順②で焼成後のパンの重量が54gだったときの焼減率を計算してみます。
焼減率は10%ということになります。
適切な焼減率の値
しっとりとした仕上がりが良いと感じるもの、水分の蒸発が多く軽い仕上がりが良いと感じるものなど、パンの種類によって美味しいとされる状態は違います。
そのため、焼減率もパンの種類によって適切な値が変わるのです。
以下はパンの種類別の適切な焼減率を表しています。
パンの種類ごとの適切な焼減率
パンの種類 | 焼減率 |
---|---|
フランスパン | 22%前後 |
山型食パン | 10~12% |
角型食パン | 8~10% |
テーブルロール | 10~12% |
菓子パン | 10~15% |
フランスパンはクラストがバリバリとして硬い方が良い仕上がりの目安とされています。
ほかのパンに比べて水分の蒸発が多く、焼減率が高いのが特徴です。
また、食パンのなかでも角型食パンは蓋をして焼成するため、山型食パンに比べて水分の蒸発が少なく焼減率は低くなります。
水分の蒸発は、砂糖や油脂の有無によっても差があるため、パンの種類によって変わるのが特徴です。
焼減率の調整方法
焼減率はオーブンの温度や時間、湿度や上火と下火の調整などで管理することができますが、一番調整することが多いのは焼成温度です。
オーブンが変わるだけで熱の伝わり方が変わることが多いためです。
基本的には決まったレシピを使用している場合、分量などを変更することはせず、焼成温度で調整するのが良いでしょう。
たとえば家庭で使うことの多い電子レンジのオーブン機能と、業務用のガスオーブンでは同じ温度に設定しても熱の伝わり方が違います。
また、同じベーカリーチェーンであっても、窯によって癖があります。
パンそのものの焼成時間は共通して決まっていても、窯によって焼き上がり具合が違うので、設定温度を変えることで同じように仕上げることができるでしょう。
ここからは、焼減率が高いときと、低いときの対処方法を紹介していきたいと思います。
焼減率が高いとき
焼減率が高いというのは、水分が多く失われているということです。
これは、温度が低く長時間焼いていることが原因となっている場合が多いです。
最初から最後まで低温で焼き続けていると、クラストが焼けるのに時間がかかり、水分がどんどん蒸発してしまいます。
水分が逃げやすい状態であるため、クラムの水分も失われていくのです。
焼減率を低くするには、最初に高温で焼くようにしクラストにしっかり焼き目をつけて水分が蒸発しにくいように工夫すると良いでしょう。
焼減率が低いとき
焼減率が低いときというのは、水分が多く残っている状態で、焼きが甘いということです。
レシピ通りの焼成時間で作っているのに焼減率が低いのであれば、オーブンの温度だけを上げるようにし、明らかに焼成時間が短い場合は焼成時間も合わせて長くするようにしましょう。
まとめ
慣れないうちは焼減率を計算するのが少し面倒であったり、量るのを忘れてしまうことがあるかもしれませんが、失敗したときにも焼減率を計算することで解決する場合があります。
家庭で作るパンも、焼減率を計算することで理想の仕上がりに近づけることができるので、ぜひパン作りのなかにとりいれてみてください。