捏ね上げ温度とは?計算式は?温度の高い・低いが発酵時間にどう影響する?

2020 6/26
捏ね上げ温度とは?計算式は?温度の高い・低いが発酵時間にどう影響する?

パンの発酵管理で、無視することができない工程として挙げられるのが、生地の捏ね上げ温度。

生地の捏ね上げ温度次第で、発酵時間にも影響がでるのです。

そのため、捏ね上げ温度をないがしろにしては、パン作りは失敗へと繋がってしまいます。

そこで、今回は捏ね上げ温度と発酵時間の関係と、捏ね上げ温度の計算方法について紹介していきたいと思います。

目次

捏ね上げ温度とは

捏ね上げ温度とは、パンの材料をミキシングし、捏ね上がってすぐの生地内の温度のことです。

自家製酵母で長時間発酵させる場合は、捏ね上げ温度はさほどシビアになることはありませんが、発酵時間の短いイーストを使ったパン生地は、捏ね上げ温度を正確に計ることがそのあとの工程に大きく影響してきます。

捏ね上げ温度と発酵時間の関係とは

捏ね上げ温度の管理は、パンの製造にとても欠かせないもので、生地の仕上がりの目安としてグルテンの形成の次に確認する大事な工程です。

捏ね上げ温度と発酵時間には相関関係があり、捏ね上げ温度が高いと発酵時間は短く、捏ね上げ温度が低いと発酵時間は長くなります。

しかし、作るパンによって発酵に適した時間は違います。

発酵管理のために、捏ね上げ温度を管理する必要があるのです。

一般的な最適捏ね上げ温度とは

一般的な捏ね上げ温度は、26~28℃程度が適しており、28℃で設定してあるレシピがほとんどです。

一般的な最適捏ね上げ温度が26~28℃の理由は?

生地は窯入れの時点で、32~35℃にあることが望ましいとされています。

その理由は、イーストがもっとも活発に働く温度が32~35℃だからです。

パン生地は窯入れして最初の数分で、一気に窯伸びすることが大事です。

ある程度焼けてしまった生地を、さらに窯伸びさせるのは困難だからです。

そのため、窯入れしてすぐにイーストがもっとも活発な温度にしておく必要があります。

生地は発酵中に5℃前後温度が上昇するため、窯入れから逆算して26~28℃程度が最適な捏ね上げ温度となります。

捏ね上げ温度が高すぎることの問題

捏ね上げ温度の調整は決して簡単なものではありませんが、捏ね上げ温度が狂ってしまうとさまざまな問題が発生します。

まずは、捏ね上げ温度が高すぎることの問題から説明していきましょう。

過発酵になる

発酵しすぎると、必要以上にイーストが炭酸ガスとアルコールを発生させてしまいます。

結果、イーストやアルコールの匂いが強くなり、仕上がりに影響を与えます。

酵母菌が死滅する

酵母菌の活性は、28~35℃で良好となります。

それ以上高くなると酵母菌の活性は限界を迎え、45℃以上になると酵母菌が弱り、一部死滅する酵母がでてきます。

締まりのない生地になる

捏ね上げ温度が高いと、生地がだれ、締まりのない生地になってしまいます。

捏ね上げ温度が低すぎることの問題

次に、捏ね上げ温度が低すぎることの問題について見ていきましょう。

発酵に時間がかかる

捏ね上げ温度が低すぎると、イーストが活発になる温度になるまでに時間がかかります。

それはすなわち、発酵時間が長くかかってしまうということです。

発酵にいつも以上に時間をかけていれば、十分に膨らむことなく小さく硬いパンになりがちです。

パンの仕上がりにも影響するうえ、そのあとの作業工程にも支障をきたしてしまうのです。

パンの種類で違う最適な捏ね上げ温度

捏ね上げ温度は、作るパンの種類で目標の温度が違います。

一般的な捏ね上げ温度は26~28℃でしたが、これは食パンや食事パン、菓子パンなどの場合です。

しかし、フランスパンでは24~26℃くらいになるように捏ね上げ温度を設定するのがベスト。

発酵時間の長いフランスパンは、そのぶん捏ね上げ温度も低く設定する必要があります。

捏ね上げ温度に影響する要素

では、捏ね上げ温度に影響する要素にはどういったものがあるのか、紹介していきましょう。

作業場所の室温

作業場所の室温は、夏場と冬場では全く違うため、捏ね上げ温度に大きく影響します。

冷暖房は捏ね上げ温度と同じくらいに設定してあると、失敗しにくく毎日安定した仕上がりになります。

粉の温度

粉の温度は基本的には室温と同じと考えます。

しかし、保管場所によっては作業場よりも温度が高かったり低かったりするので、ミキシング前にしっかり粉の温度も計る必要があるでしょう。

ミキサーボウルの温度

ミキサーボウルの温度も、室温と同じと考えて良いのですが、機械の設置場所によってはその限りではありません。

排熱装置など、温度の影響を受けやすい場所に置いていないかを確認しておきましょう。

仕込み水の温度

仕込み水は生地そのものに直接加えるため、仕込み水の温度が捏ね上げ温度を左右すると言っても過言ではありません。

ミキサーの摩擦熱

見落としがちなのが、ミキサーの摩擦熱による温度上昇です。

ミキサーの摩擦熱は生地の分量が多いと上昇しやすく、副材料の少ないリーンな生地は、潤滑剤となるものが少ないため、リッチな生地に比べて摩擦熱が上がりやすい傾向にあります。

摩擦熱による温度上昇の見極めは、慣れないうちは難しく、経験が必要です。

捏ね上げ温度を調整する方法

目的の捏ね上げ温度を調整するには、仕込み水の温度調整をする必要があります。

室温や粉の温度を直前に変えるのは困難です。

そこで、作業環境や材料の状態に合わせて仕込み水の温度を調整すると、目的の捏ね上げ温度に調整することができるのです。

捏ね上げ温度の計算式

ここからは、捏ね上げ温度の計算式について説明していきましょう。

捏ね上げ温度は、以下の計算式で出すことができます。


捏ね上げ温度 = (水温+粉温+室温) ÷3+7


水温とは仕込み水のことを指します。

目的とする捏ね上げ温度は決まっているので、最初に仕込み水を調整するために、用意するべき仕込み水の温度を計算する必要があります。

あらためて計算式を正しましょう。


水温(仕込み水の温度) = 3(捏ね上げ温度-7) - (粉温+室温)


上記の計算式を利用していくとよいでしょう。

ここで少し気になるのが、7という数字。

これはミキサーの摩擦熱を表しています。

ミキサーで捏ねるときに、摩擦によって生地は6~10℃上昇します。

このぶんを加味して、仕込み水を計算する必要があるのです。

仕込み水の温度を計算してみる

日々の製造を安定させるには、毎日、室温、粉温、仕込み水の温度を記録しておくのがおすすめです。

毎日同じ量の生地を仕込んでいれば、室温が同じ日のデータを参考にし、粉温も変わらず同じであれば、そのときと同じ温度の仕込み水を用意すればいいからです。

しかし、これは全く同じ量の生地を仕込む場合に限ります。

仕込む生地の量が変われば、摩擦熱も変わります。

基本的には摩擦熱は7℃上昇するものとして計算式には書いていますが、仕込む生地の量で変えなければいけません。

これは毎日の記録と経験からおのずとわかるようになるでしょう。

それでは実際に例をあげて、生地を仕込むさいの捏ね上げ温度を計算していきたいと思います。

今回は食パン生地を仕込む場合の仕込み水の温度を計算してみます。

計算するまでの準備

まずは計算まえにおこなう準備について紹介しましょう。

室温を計る

他の場所から温度計を持ってきていては、温度が安定し測定するまでに時間がかかってしまいます。

作業場に常に温度計を置いておくとすぐに確認することができるでしょう。

粉の温度を計る

料理用のデジタル温度計で計ります。

ボウルのなかで粉の中心に温度計を指し、測定します。

食パン生地の仕込み水の温度を計算してみる

では、実際に仕込み水の温度を計算してみましょう。

室温25℃、粉温25℃、目標の捏ね上げ温度28℃、摩擦熱は7℃の想定での仕込み水の計算です。


水温(仕込み水の温度) = 3(捏ね上げ温度-7) - (粉温+室温)

水温(仕込み水の温度) = 3(28-7) - (25+25)

水温(仕込み水の温度) = 13


この場合、仕込み水の温度は13℃ということになります。

食パンの捏ね上げ温度は、28℃を目標温度として計算しますが、実際の捏ね上げ温度は26~28℃にあれば許容範囲と考えてよいでしょう。

捏ね上げ温度をうまく調整できない時の対処法

きちんと温度を計って計算していても、なかなか思うように捏ね上げ温度を調整できない場合も少なくありません。

室温が目標の捏ね上げ温度と同じ26~28℃であれば、捏ね上げ温度が大きくずれることはありません。

しかし、温度が安定していない作業環境では、捏ね上げ温度もうまく調整できません。

温度変化の少ない作業環境に整えておくことが、捏ね上げ温度を調整できる一番の近道といえます。

捏ね上げ温度が高すぎた場合のリカバリー方法

捏ね上げ温度が高すぎた場合は、生地を冷やすことでリカバリーすることができます。

まず、生地を平らにしバットなどに乾燥しないように入れ、1分程度冷凍庫に入れます。

生地を取り出したら一度捏ねて温度を計り、まだ高いようであれば再度1分ずつ同じ作業を繰り返し、温度を調整してください。

捏ね上げ温度が低すぎた場合のリカバリー方法

次に、捏ね上げ温度が低すぎた場合のリカバリー方法について見ていきましょう。

ミキシングを終え、計った捏ね上げ温度が低い場合は、ミキサーボウルを温めながらさらに追加でミキシングをおこないます。

具体的には、お風呂のお湯程度の温かいお湯を張ったボウルに、ミキサーボウルを浸け、湯せんのようにしてミキシングをおこなうという方法です。

ミキサーボウルが大型の場合は、一度生地を取り出し、別のボウルに入れて湯せんのようにして温め、再度ミキシングします。

しかし、本来ミキシングはすでに完了しており、グルテン形成のためのミキシングはこれ以上必要ないはずです。

そこで、ここでは必要以上にミキシングをおこなわないようにし、表面が温まった生地を少しだけミキシングすることで、生地の中と外の温度を均一にすることを目的としています。

まとめ

今回は、捏ね上げ温度と発酵時間の関係について紹介しました。

捏ね上げ温度は軽く考えられがちですが、その後の発酵時間にも大きく影響するため、とても大切なものです。

計算式を活用し、毎日データを取ることで安定したパンを作れるようになります。

パン作りは酵母という生き物を扱うため、決して大雑把におこなっていてはうまくいきません。

生地はとても繊細なため、細かい部分にも気を使い、少しの変化も見逃さないようにすることが、おいしいパンを作るには欠かせないことなのです。

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