サワー種作りでよく目にするTA(テーアー)とは?計算方法と役割を解説!
サワー種を作る際によく目にするTA(テーアー)という言葉。
実はこのTAはライ麦パンの味に関係する結構大事なワードなのです!
本記事では「TAとはなにか」と「サワー種でどう活用するのか」を説明します。
TA(テーアー)とは
TA とは Teigausbeute (タイクアオスボイテ)というドイツ語の略称です。
Teigausbeute を直訳すると「生地収量」となります。
TAは粉(小麦粉やライ麦粉など)と液体(水や牛乳など)を混ぜて作った、生地の量を相対的に示すものです。
粉に対して液体がどの程度入るかを表すため、TAの数値は生地の硬さ(柔らかさ)の目安として使うことができます。
TAは、主材料のみで作るハード系のドイツパンのレシピで使われます。
TA(テーアー)の表記
TAの数値は TA150 や TA180 という形式で表記されます。
TAでは、粉は常に100%として扱い、液体の割合を加算します。
ベーカーズパーセントと同じ要領ですね。
具体的な計算方法は後述しますが、例えば小麦粉と水をTAで表すと、下記のような関係となります。
ベーカーズパーセントで考えると分かりやすいかもしれません。
粉と水のベーカーズパーセントを足した数値が TA といえます。
さて、TAの数値が高いほど水分量が多くなることがわかるかと思います。
つまり、TAの数値が高いほど生地は柔らかく、TAの数値が低いほど生地は硬くなるわけです。
TA(テーアー)の計算式
TAの計算式は下記のようになります。
では、小麦粉が10kg、水が5L という場合を想定して計算してみましょう。
まずは生地量を求めます。
生地量は、小麦粉と水を混ぜ合わせて作るため、下記のように単純に足し算します。
10 + 5 = 15
あとはTAの計算式に当てはめればTAを求められます。
(15 × 100) ÷ 10 = 150
TA150 ということが求められました。非常に簡単ですね。
さて、前述の計算では小麦粉と水だけで計算しましたが、TAの種類によってはイーストや塩などの他の材料を含めて計算することもあります。
Brutto-Teigausbeute (総生地収量)
Brutto-Teigausbeute (ブルット タイクアオスボイテ)は、直訳すると「総生地収量」となります。
(本記事では以降「総TA」と表記します)
総TAは、粉類と液体だけでなく、その他の材料(酵母・塩・砂糖・卵・油脂、など)を全て含めた生地量で計算します。
TAを計算する際に、生地量を粉と水だけでなく全ての材料を合算してから計算することで、総TAを求めることができます。
サワー種の場合、ライ麦粉と水のみで作るので、総TAで計算することはないでしょう。
Netto-Teigausbeute (純生地収量)
Netto-Teigausbeute (ネット タイクアオスボイテ)は、直訳すると「純生地収量」となります。
(本記事では以降「純TA」と表記します)
純TAは、粉類と液体のみで計算します。
「TA(テーアー)の計算式」の項目では小麦粉と水だけで計算しましたので、計算方法はそちらの項目と同じです。
サワー種はライ麦粉と水のみで作るため、純TAで計算することになります。
サワー種でTA(テーアー)を使う意味
TAが生地の硬さを判断するための指標であることはわかりましたが、サワー種でTAを使う意味とはなんでしょうか。
それは、ライ麦パンの味を整えるために、生地の水分量を調整する必要があるからなのです。
サワー種で重要なのは乳酸菌
サワー種を作るときは、酵母菌・乳酸菌・腐敗菌のせめぎあいが起きています。
中でも重要なのは乳酸菌です。
乳酸菌は乳酸と酢酸を生成することで腐敗菌の増殖を抑制します。
また、酵母菌は乳酸に耐性があるため腐敗菌ほど増殖を抑制されることはありません。
乳酸菌のおかげでサワー種は腐らずに済むわけですね。
乳酸と酢酸の比率がパンの味に影響する
ライ麦パン特有の酸味は酢酸によるものです。
そのため、酢酸が増えれば増えるほどパンが酸っぱくなります。
乳酸と酢酸の比率は 80 : 20 が、酸味が利きつつも酸っぱすぎない比率とされています。
・乳酸と酢酸が 85 : 15 ならマイルドな味
・乳酸と酢酸が 80 : 20 なら酸味の利いた味
・乳酸と酢酸が 75 : 25 なら強い酸味
乳酸と酢酸の比率の調整にTAを使う
ライ麦パンの味に大きく影響する乳酸と酢酸の比率は、温度と水分量で調整することができます。
乳酸と酢酸がそれぞれ増えやすい環境は下記の通りです。
- 温度が高い(24 ℃ – 32 ℃)
- TAが高い(水分量が多い)
- 温度が引く(20 ℃ – 24 ℃)
- TAが低い(水分量が少ない)
酢酸を増やさないためには、温度かTA、もしくは両方を高くすればよいわけですね。
このように、乳酸と酢酸が増える環境には正反対な特徴があるため、TAは指標の1つとして利用されているでしょう。
TAという指標があるおかげで「温度が変更できないからTAを調整する」ということも可能になります。
さいごに
レシピに温度やTAが書いてあるならそれを忠実に守ればよいわけですが、自分の好みで「もっとマイルドな味にしたい」「もっと酸味を利かせたい」という場合には、TAを微調整してみてもよいでしょう。
部屋で常温で管理する時などは、温度調整は難しいでしょうからTAを変更する方が容易かもしれませんね。