パン作りでの砂糖の役割は?発酵・焼き色・老化・グルテンへの影響を解説!

パンの材料として使う砂糖には、単に甘みをつけるだけでなく、酵母の栄養になったり、パンの老化を遅らせたりする役割があります。

さらに、パンに焼き色がつくのも砂糖の影響が大きいのです。

ここでは、パン作りで砂糖が与える影響について詳しく解説していきたいと思います。

目次

砂糖(糖類)は酵母の栄養になる

酵素が砂糖をアルコールと炭酸ガスにする図

パンを作るのに酵母の存在は欠かせないものですが、その酵母の栄養となるのが糖です。

材料のなかに砂糖を入れると、酵母はインベルターゼという酵素を使って砂糖(ショ糖)をブドウ糖と果糖に分解します。

そのあと、さらに酵母が持つチマーゼという酵素によりブドウ糖と果糖が分解され、アルコールと炭酸ガスを産生するのです。

産生した炭酸ガスが生地内に充満することで、パンを膨らませることができます。

このように、砂糖は酵母が発酵をおこなうためのえさとして、重要なものなのです。

砂糖(糖類)はパンの老化を遅らせる

焼き上がったパンは、時間が経つと水分が蒸発しパサパサしてきます。

これが、パンが老化している状態です。

しかし、砂糖を材料に使うと水分の蒸発を防ぎ、老化を遅らせることができます。

砂糖がパンの老化を遅らせることができるのは、砂糖が水を抱え込んだら離さない性質(保水性)や、水に溶けやすい性質(親水性)を持っているためです。

もう少し詳しくみていきましょう。

砂糖の保水性と親水性

食品に含まれる水分は、タンパク質や炭水化物と結合している「結合水」と、それ以外の「自由水」とに分けることができます。

自由水は、分子が自由に動き回ることができるため、0℃で凍結し100℃で気化しやすい水です。

いっぽう結合水は、分子が自由に動き回ることができないため、0℃でも凍結せず100℃でも気化しにくい水です。

砂糖のもつ親水性の作用により、砂糖が水と結びつき、気化しにくい結合水として存在しやすくなるのです。

結合水を多く、自由水を少なくすることで、パンから水が蒸発するのを防ぎます。

さらに保水性の高さで、より水分が失われにくくなるのです。

砂糖(糖類)はパンに焼き色をつける

パンに茶褐色の焼き色がついているのは、パンを美味しそうに見せるためにも重要なことです。

砂糖は、加熱すると褐変反応であるメイラード反応とカラメル化を起こす作用があるため、パンに焼き色をつける効果があります。

メイラード反応とは

食品中に含まれるタンパク質やアミノ酸などが、加熱によって糖と反応し褐変する化学反応です。

ルイ・カミーユ・メイラードというフランスの医師が発見したことからメイラード反応と名づけられました。

お肉に香ばしく焼き色がつくのもメイラード反応によるものです。

カラメル化とは

糖が加熱によって褐変することです。

砂糖(ショ糖)の場合、加熱すると初めは溶けてシロップ上になってきますが、だんだん色がつき始め濃い茶褐色となります。

プリンなどのカラメルソースは、カラメル化を利用して作られたものです。

砂糖(糖類)は味に甘みと風味をつける

砂糖はパンの味に甘みと風味をつけることができます。

砂糖そのものの甘さはもちろん、発酵で生成されるアルコールや有機酸による風味もつきます。

また、メイラード反応やカラメル化は、パンの焼き色に関わるだけでなく味にも影響しているのです。

メイラード反応ではアミノ酸が反応していることから、窒素や硫黄などを含むさまざまな分子を生成するため、複雑な風味が生まれます

さらにカラメル化はメイラード反応ほど複雑な化学反応ではないものの、苦み成分や芳香成分が生成され独特な風味がでます。

砂糖(糖類)はグルテン形成を阻害する

通常使う砂糖の量(5~10%)ではさほど影響はないものの、20%を超える量の砂糖を入れた甘いパンの場合は、親水性のある砂糖が生地の水分を吸収してしまいます。

グルテンは小麦粉に含まれるグリアジンとグルテニンに水が加わり、捏ねることで形成されるものです。

砂糖によって生地の水分が奪われてしまうと、グルテンの形成が阻害され、網目構造を弱くしてしまうのです。

そのため、ミキシングをしてもいつまでもまとまらず生地として完成しません。

砂糖(糖類)は何パーセントが適量?

砂糖の使用量は小麦粉に対して5~10%ほどが適量です。

これは、5~10%のときに酵母がもっとも活動しやすく生地が膨らみやすいためです。

砂糖を増やすと浸透圧の影響で酵母の体内の水分が外に出され、活動が抑制されてしまいます。

また、先ほど説明したグルテンの形成を阻害することからも、5~10%の砂糖が適量でしょう。

砂糖(糖類)が少ないとどうなる?

砂糖の量が5%未満という少ない量であると、酵母の栄養が足りず、十分に発酵をおこなうことができません。

そのため、膨らみが悪くなります。

また、焼き色がつきにくく、白っぽい焼き上がりになり、保水性も低いため、固くパサついたパンに仕上がります。

砂糖(糖類)が多いとどうなる?

砂糖の量が10%を超えると多い状態で、さらに20%を超えると作業性や仕上がりに大きく影響してきます。

ベタベタしてまとまらない

砂糖が多い生地はグルテンの形成が阻害されるため、非常にベタベタしまとまりにくくなります。

発酵が遅れる

砂糖は酵母の栄養となるため、多いとそのぶん発酵が進みそうですが、小麦粉に対して20%を超えると活動が鈍くなってきます。

これは、「砂糖(糖類)は何パーセントが適量?」の項でも説明したように、浸透圧の影響で酵母の働きが抑制されるためです。

20%を超えると砂糖は一部分解されずに残り、45%となるとほとんど発酵が止まってしまいます。

砂糖(糖類)が少ないレシピの注意点

酵母の発酵には5~10%程度の砂糖が必要とされているため、5%未満のレシピは砂糖が少ないと言えます。

砂糖は酵母の栄養となるとお話ししましたが、砂糖が少ない場合や砂糖を入れないレシピでは、小麦粉に含まれる損傷デンプンを利用してアルコールと炭酸ガスを産生させています。

しかし、これにより産生されるアルコールや炭酸ガスは限られているため、発酵の手助けをおこなわなければいけません。

モルトシロップで発酵を補う

砂糖を含まないレジピの場合にもっとも良い方法としては、モルトシロップで発酵を補う方法です。

モルトシロップは麦芽糖を煮出した液体ですが、砂糖を使わないフランスパンなどによく使います。

酵素が損傷デンプンをアルコールと炭酸ガスにする図

小麦粉に含まれる損傷デンプンは、小麦粉に含まれるα‐アミラーゼによってデキストリンに分解されます。

デキストリンは同じく小麦粉に含まれるβ‐アミラーゼによって麦芽糖に分解され、さらに酵母の持つマルターゼという酵素によってブドウ糖へと変化します。

さいごに、ブドウ糖はチマーゼによって分解されアルコールと炭酸ガスを産生させるのです。

ここでモルトシロップがどのように発酵を補うのかというと、モルトシロップの原料である麦芽にはアミラーゼが多く含まれているため、損傷デンプンを麦芽糖に分解する手助けをしてくれるのです。

砂糖(糖類)が多いレシピの注意点

砂糖が10%を超えると徐々に酵母の働きが弱くなり始めます。

そのため、ミキシング時間の延長や発酵時間の延長、酵母の量を増やすなどの工夫が必要になります。

また、10%を超えるようなレシピの場合は、耐糖性のドライイーストを使うのがおすすめです。

耐糖性のイーストは、糖を分解する酵素であるインベルターゼの活性が弱くなっている製品です。

糖を急激に分解するのを防ぎ、浸透圧を安定させることができます。

砂糖(糖類)を入れ忘れるとどうなる?

砂糖を入れ忘れてしまった場合にもっとも大きな違いとして現れるのは、パンの焼き上がりです。

砂糖の入っていないパンは非常に焼き色がつきにくく、クラストが白い固いパンに仕上がります。

意外にも途中で砂糖を入れ忘れたことには気づかず、焼き上がったパンを見て初めて気づくということも少なくないのです。

砂糖(糖類)の種類による違い

パンの材料として使う砂糖には、さまざまな種類があります。

しかし、一部の糖類をのぞき、どの砂糖をどのパンに使うなど特に決まっているわけではありません。

作りたいパンの個性や需要に合わせて選ぶと良いでしょう。

上白糖

上白糖は、原料がサトウキビのものとテンサイを使ったものとあり、精製して不純物を取り除いて作ります。

精製されたものはいわゆるショ糖ですが、上白糖は固まらないようにするためにビスコという転化糖が入っています。

しっかりした甘さが特徴で、日本では料理はもちろん、パンにもよく使われています

転化糖はブドウ糖と果糖の混合物であるため、果糖の影響により焼き色がつきやすいのが特徴です。

グラニュー糖

サトウキビを原料とし、精製して不純物を取り除いて作ります。

精製度が非常に高く、糖度99.9%です。

上白糖と比べ結晶が大きく固まりにくいため、さらさらして癖がないのが特徴で、海外の製パンではグラニュー糖がよく使われています

そのため、海外のレシピに沿ったパンを作りたい場合におすすめです。

三温糖

三温糖は、上白糖と同じくサトウキビやてんさいを精製して作るもので、さらに煮詰めてカラメル化したものです。

カラメル化しているのでコクや香ばしさが加わりますが、ミネラルなどは上白糖とほとんど変わりません。

あまりパンでは使われず、煮物などによく使われる砂糖ですが、コクを出したいパンに使うと良いでしょう

きび砂糖

サトウキビを原料とし、精製度が低くミネラルが豊富なのが特徴です。

そのため、コクと甘みがあります。

素材の旨味を引き出してくれるので、シンプルな食パンや丸パンなどに使われます。

汎用性が高く流通量の多い上白糖に比べ、価格が高いためあまり定番で使われる砂糖ではありませんが、パン屋さんの個性を出すのに使われることが多いです。

ブラウンシュガー

ブラウンシュガーは、色が茶色い砂糖全般のことを指します。

おもに三温糖や黒砂糖などですが、上白糖やグラニュー糖にカラメルを添加して茶色くしたものも含まれます。

いずれも全く違う製法で作られているため、ブラウンシュガーにこれといった定義はありません。

上白糖やグラニュー糖と比べるとコクがあるのが特徴です。

洗双糖

上白糖を作る過程で最初の分離で結晶として出てくるのが洗双糖です。

種子島で栽培されたサトウキビで作るのが特徴で、ミネラルが多く含まれています。

黒砂糖よりもまろやかで癖がないため、コクは出したいものの、癖は抑えたいパンにおすすめです。

はちみつ

ミツバチが集めた花の蜜を巣の中で熟成し、それを人が集めて加工したものがはちみつです。

はちみつは上白糖やグラニュー糖よりも保湿性が高いため、しっとり焼き上がり、パンの老化をさらに遅らせることができます。

甘さはやや控えめになるため、素朴な丸パンなどによく使われます

黒糖

サトウキビの搾りかすをそのまま煮詰めたもので、糖蜜を多く含みます。

ミネラルが豊富でコクと甘みが強く風味も強いです。

癖が強く他の材料を活かしにくいため、黒糖パンとして主張したいときに使います

モラセスシロップ

サトウキビやてんさいから砂糖(ショ糖)を精製するさいに出る副産物です。

モラセスシロップは、おもにベーグルのケトリングで使われたり、黒糖パンなどの色づけとして使われています。

クラストに焼き色や艶を出したり、クラムを茶色く色づけする効果があり、砂糖と比べると不純物が多く含まれているので、味に深みが出るのが特徴です。

モルトシロップ

モルトシロップは、大麦を発芽させて粉砕したものに水を加え、麦芽糖を煮出して作る液体です。

フランスパンに使われることが多く、発酵を助ける目的や機械耐性の向上、クラストの色艶を良くするために使われています。

砂糖の代わりに入れるというよりは、発酵の補助、クラストの色艶を良くするために入れます。

まとめ

パンはそもそも小麦粉、塩、酵母、水のみで作ることができるため、砂糖が少ないからといって大きな問題になるわけではありません。

寧ろ、少ない場合よりも多すぎる場合に注意が必要です。

適量を加えることでパンの作業性や仕上がりを良くし、パンのバリエーションも大きく広がります。

砂糖の種類もさまざまなものがあるので、パンのイメージに合わせて選んでいくと良いでしょう。

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