[岩手県産]ゆきちからに向いているパンや特徴を解説!
近年、外国産食材の価格が高騰していることから、国産の食材への注目度が高くなっています。
小麦粉においても例外ではなく、外国産小麦粉の価格は高騰しています。
今までは外国産小麦粉でパンを作っていたという方も、この機会に国産小麦粉を選んでみたいと思っている方も多いのではないでしょうか?
国産小麦粉を使ったパン生地は、吸収性が低かったり膨らみにくかったりするのが難点。
その点、岩手県産小麦粉のゆきちからは、作業性が良いため製パン適正が高くおすすめなんですよ。
今回は、ゆきちからに向いているパンや特徴を解説していきたいと思います。
ゆきちからとは
年々、米の需要量の減少から稲の作付面積が減少していますが、岩手県では水田の有効利用のために麦の栽培が進められています。
そんななか、耐寒雪性や耐倒状性、耐病性に優れた品種として、2002年12月に東北農業センターで開発されたのが「ゆきちから」です。
ゆきちからは父に「さび系23号」、母に「東北141号」を持つ品種で、地産地消や地域活性化の目的で岩手県のみならず、宮城県、福島県、新潟県、富山県などでも栽培されています。
また、岩手県、宮城県、福島県では奨励品種に採用されています。
小麦粉の選び方の基準
どのような小麦粉を選ぶかによって、パンの性質は大きく変わります。
小麦粉選びはパン作りの要と言っても過言ではありません。
ここでは、小麦粉の選び方の基準について紹介します。
パンのボリューム(窯伸び)
タンパク質含有量の多い小麦粉を使ったパン生地は、タンパク質含有量の少ない小麦粉を使った場合と比べて窯伸びしやすく、ボリュームが出やすくなります。
そのため、窯伸びが仕上がりに大きく影響する山型食パンや、フィリング入れた場合のように窯伸びしにくいパンは、タンパク質含有量が13.5%以上の最強力粉を選ぶのがおすすめです。
パンのもちもち食感
もちもちした食感や歯切れの良い軽い食感など、パンの食感はそのパンの個性を出す大きなポイントとなります。
一般的に国産小麦粉を使用した場合には、パンはもちもちとした食感に仕上がりやすいです。
国産小麦粉は繊維質が多いことから、水分を吸収しやすくもちもちとした食感になります。
また、タンパク質の量が少ないことも、窯伸びしにくく密度の詰まったパンになり、結果もちもちとした食感に繋がります。
もちもちとした食感に仕上げたい場合には国産小麦粉を、歯切れの良い軽い食感に仕上げたい場合には外国産小麦粉を選ぶと良いでしょう。
小麦の風味や香り
小麦の豊かな風味や香りは、パンの大きな魅力の一つです。
小麦の風味や香りは、小麦粉の灰分の量による影響が大きいです。
灰分とは、小麦の外皮に含まれるミネラルのことで、外皮を多く含んだ小麦粉ほど風味や香りが強くなる傾向にあります。
小麦の風味や香りを重視したい場合には、灰分の多い小麦粉を選ぶと良いでしょう。
クラムの色の白さ
小麦粉に含まれる灰分の量が少ないほど、小麦粉の色は白くなります。
小麦粉は外皮の部分を削って胚乳部分を粉末にしたものですが、外皮部分を多く削ってより小麦の中心に近い部分のみ使用した小麦粉は、色が白いためクラムの色が白くなりやすいのです。
食パンのように、クラムの部分を白く仕上げたい場合は、灰分の量が少ない小麦粉を選ぶと良いでしょう。
甘み・うま味
小麦の甘みやうま味は、小麦に含まれるグルタミン酸やデンプンが深く関わっています。
しかし、デンプン由来の甘みは、デンプンの量ではなくデンプンがどれだけ分解されやすいかが関係しているため、タンパク質の量や灰分の量では判断できないのです。
一般的には、外国産小麦粉より国産小麦粉、強力粉より準強力粉の方が甘みやうま味が強い傾向にあります。
小麦選びにおいて着目すべき成分
小麦粉選びにおいて着目すべき成分は、タンパク質と灰分です。
一般的に、ほとんどの小麦粉(強力粉)の商品パッケージにタンパク質量と灰分量が表示されていますので、購入する際はまずチェックしてみてください。
タンパク質
小麦粉(強力粉)に含まれるタンパク質は、グリアジンとグルテニンです。
小麦粉に水を加えて捏ねると、グリアジンとグルテニンが複雑に絡み合い、グルテンが生じます。
グルテン膜は、パン生地から発生した炭酸ガスを包み込むのに非常に重要な役割をしています。
外に逃げようとする炭酸ガスをグルテン膜が包み込むことで、パン生地が膨張し窯伸びするのです。
そのため、タンパク質の多い強力粉ほど、窯伸びしやすくボリュームのあるパンに仕上がります。
灰分
灰分は小麦の外皮部分に含まれるミネラルのことです。
小麦粉はこの外皮部分を削って胚乳部分を粉末にしたものですが、胚乳のなかでも外皮に近い部分は灰分が多くなります。
灰分が多い小麦粉ほど、ミネラルが多く風味が良いのが特徴です。
風味の良いパンを作りたい場合は、灰分の多い小麦粉を選ぶのがおすすめです。
ゆきちからの特徴
ここからはゆきちからの特徴について紹介していきます。
産地・メーカー
ゆきちからのおもな産地は岩手県で、宮城県や福島県、福島県、富山県などでも栽培されています。
東日本産業株式会社を始め、阿部製粉株式会社、沼田製粉株式会社など、さまざまなメーカーで取り扱っています。
製粉会社によるオンライン販売や富澤商店などのパン材料店でも販売しているため、簡単に入手することができますよ。
小麦粉の分類
ゆきちからに含まれるタンパク質の量は11.0%、灰分は0.48%です。
ゆきちからはパン専用の硬質小麦で、強力粉に分類されます。
ゆきちからが評価されている点
耐寒雪性に優れているため、積雪状態が長く続く東北地方でも栽培が可能です。
また、ゆきちからは吸水率が64~65%と高いことから、作業性が良く、製パン適正が高いことが評価されています。
小麦粉選びの観点からは、パンのボリュームが出やすい小麦粉として選ばれています。
ゆきちからを選ぶ理由
日本には北海道産の春よ恋など、人気の国産小麦粉もたくさんあります。
そのなかでゆきちからを選ぶ理由はどのようなものがあるのでしょうか?
製パン適正が高い
ゆきちからは吸収性の高さから作業性が良く、製パン適正が高いのが特徴です。
一般的に国産の小麦粉は吸収性が低いため、レシピ通りに作ると生地がベタベタしてしまいます。
水分量の調整をする必要があり、初心者には少々扱いにくいのが難点です。
一方、ゆきちからは吸収性の高さからレシピをほとんど変えることなく使用することができます。
失敗しにくい小麦粉として、おすすめの小麦粉なのです。
ボリュームを出したい
国産の小麦粉は、膨らみにくいのが難点です。
その点、ゆきちからは製パン適正が良く、ボリュームも出やすいので、さまざまなパンに使用できます。
外国産小麦粉のような使用感で、国産小麦粉の安心感を得ることができるのです。
ゆきちからに向いているパン
ここからは、ゆきちからに向いているパンについて紹介します。
扱いやすいゆきちからは、基本的にどのようなパンにも使えますが、ここでは特におすすめのパンを紹介します。
食パン
ゆきちからは、きめが細かくボリュームが出やすいのが特徴。食パンに非常に向いています。
山型食パンでも、外国産小麦粉を使用したときのようにしっかり窯伸びしてくれますよ。
フィリングを入れたパン
フィリングを入れたパンは、具の重さでパンが膨らみにくくなります。
しかし、ゆきちからを使えばしっかり生地が膨らみ、ボリュームのあるパンに仕上がります。
ゆきちからとテリア特号の違いは?
南部小麦粉として50年以上も栽培されてきたのが、地元で人気の岩手県産テリア特号。
ゆきちからと同じく岩手県がおもな産地ですが、ゆきちからとテリア特号との違いについて見てみましょう。
成分
テリア特号に含まれるタンパク質の量は10.5%、灰分は0.46%です。
ゆきちからのタンパク質の量は11.0%、灰分は0.48%なので、テリア特号はゆきちからよりもタンパク質の量が少ないことがわかります。
強力粉に分類されるゆきちからに対し、テリア特号は中力粉に分類されているのです。
作業性
テリア特号の吸水率は52~54%で、一般的な国産小麦粉よりもやや高めですが、ゆきちからは64~65%とさらに高い吸収率です。
ゆきちからはパン用の硬質小麦として栽培されているため、テリア特号よりも製パン適正が高く作業性が良いのが特徴です。
仕上がり
テリア特号は岩手県産ナンブコムギ100%を一本挽きした小麦粉です。
一本挽きは外皮以外の部分を丸ごと挽いて作る製法のことで、その分小麦粉そのものの香りやうま味をダイレクトに感じることができます。
一方、ゆきちからは癖がなくあっさりとした味が特徴です。
白くボリュームが出やすいゆきちからに比べて、テリア特号はタンパク質の量が少なめ。
白さやボリュームには欠けますが、強力粉と中力粉の両方を兼ね備えた小麦粉として、うどんや煎餅などにも使われています。
向いているパン
テリア特号は香りとうま味が特徴。
ゆきちからほど膨らみにくいので、シンプルなテーブルパンやベーグルなどに向いています。
噛みしめるほどにパンの香りやうま味を楽しむことができますよ。
まとめ
国産小麦粉は、ボリュームに欠け思い通りのパンが作れなかったりと、扱いにくいのが難点です。
そんななか、製パン適正の高いゆきちからなら、ボリュームが出やすく外国産小麦粉のような感覚で使用することができます。
できるだけ国産の材料を選びたいという方に、非常におすすめの小麦粉ですよ。