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食パンの山型と角型の違いは?発祥や目的、製法の違いを解説!

日本人にもとても馴染みのある食パン。毎日のように食べるという人も多いのではないでしょうか?

朝食やランチの定番となっている食パンですが、食パンには大きく分けて2つの種類があります。

それが山型食パンと角型食パンです。

蓋をせずにそのまま焼くことで、ドーム状に焼き上がる山型パンと、蓋をして焼くことで四角く焼き上がる角型食パン。

形が違うだけでは?と思っている人も多いかもしれません。

しかし、形が違うことで食感や食べ方なども変化します。

今回は、山型食パンと角型食パンについて、形の違いだけではない、発祥や目的について解説していきたいと思います。

目次

山型食パンとは

山型食パンは、別名「ラウンドトップ」や「イギリスパン」と呼ばれる食パンです。

業界では単に「山食」と呼ばれることもあります。

パンの上面が、ドーム状になっているのが特徴的です。

さらに、イギリスではティンというブリキ製の型で焼いていることから「ティンブレッド」と呼んでいたり、焼成による焼き色の違いにより「ホワイトブレッド」、「ブラウンブレッド」と呼び分けたりもします。

角型食パンとは

角型食パンは、別名「プルマンブレッド」と呼ばれる食パンです。

業界では単に「角食」と呼ばれることもあります。正方形または長方形のタイプの食パンです。

山食と角食の発祥の違い

形の違う食パンですが、山型食パンはイギリスが発祥の食パン。

一方、角型食パンはアメリカが発祥の食パンなのです。

ここでは、山型食パンと角型食パンの発祥から、どのように日本で普及していったのかについて紹介していきたいと思います。

山型食パンの発祥

山型食パンの発祥は18~19世紀のイギリスです。

もともとイギリスでは、ブールというボールの意味を持つ球状のパンが主流でした。

しかし、産業革命により活発化してきたイギリスでは、人の動きも多くなり、より効率的に多くのパンを焼く必要が出てきたのです。

そこで、型に入れて上に膨らむように焼成し、幅をとらずに多くのパンを一度に作ることができるようにしました。

日本では、イギリスのパン職人であるロバート・クラークが創業した「ヨコハマベーカリー」が発祥とされており、1864年、主に横浜に居留する外国人向けに製造し始めたことが原点となっています。

角型食パンの発祥

角型食パンは、イギリスで焼かれていた山型食パンがアメリカに渡り、独自の形となって誕生したものです。

アメリカではパン型に蓋をし、一つの食パンに必要な熱量を少なくしてより多くのパンを焼成できるようにしました。

後述する「山食と角食の製法の違い」の項で説明しますが、山型食パンは気泡が多いため、角型食パンよりもクラムに空気を多く含んでいます。

一方、蓋をして焼成する角型食パンは、水分の蒸発が少ないためクラムに水分を多く含んでいます。

熱の伝わり方を表す熱伝導率は、空気よりも水の方が高いため、水分を多く含む角型食パンの方が速く熱が伝わりやすいのです。

山型食パンのように大きく山型に窯伸びすることのない角型食パンは、パンとパンの間隔をギリギリまで狭くすることができます。

本来、一度にたくさんの量を入れるとそれだけ焼けにくくなるものです。

揚げ物をするときに一度にたくさんの量を入れてはいけないのはこのためです。

しかし、角型食パンは熱伝導率も高いため、同じ焼成温度や時間でも山型食パンと比較して多くのパンを一度に焼くことができます。

角型食パンの呼び名になっているプルマンブレッドという名前は、アメリカのプルマン社が由来と言われており、車両会社であるプルマン社の鉄道車両に似ていることから名付けられました。

日本で角型食パンが製造されるようになったのは、第二次世界大戦後。

アメリカの占領下となった日本では、学校給食で食パンが普及していきます。

山型食パンと比べ、蓋をしていることで比較的低い熱源で焼成することができた角型食パンは、より大量生産ができるようになり、給食には積極的に取り入れられるようになります。

また、機械化に伴い、大量の角型食パンを作ることができたため、家庭でも角型食パンが普及していくようになったのです。

山食と角食の材料の違い

見た目や発祥に違いのある山型食パンと角型食パンですが、材料にも違いがあります。

山型食パンと角型食パンの材料の違いは、砂糖や卵、牛乳やバターなどの副材料の違いです。詳しく見ていきましょう。

山型食パンの材料

山型食パンは、食パンそのものの発祥でもあることからシンプルな材料で作られています。

砂糖や卵、牛乳やバターなどの副材料が少ない、または含まれていないのが特徴です。

角型食パンの材料

一方、角型食パンは、砂糖や卵、牛乳やバターなどの副材料を使って作られているのが特徴です。

角型食パンが誕生したアメリカでは、食料資源が豊富であったため、もともとシンプルな材料だけで作られていた食パンから、副材料の多い食パンへと発展していったのです。

山食と角食の製法の違い

それでは、山型食パンと角型食パンの製法の違いについて解説していきたいと思います。

基本的には山型食パンと角型食パンの製法は、蓋をするかしないかの違いのみです。

山型食パンの製法

山型食パンは、パン型に生地を入れ、蓋をせずに焼きます。

蓋をせずに焼くことから、熱で膨張した生地は上へと膨らみ、しっかりと窯伸びします。

焼成後、クラムは気泡が大きく、パンはふわふわと軽い食感に仕上がります。

蓋をせず直接熱があたることから、山の部分のクラストがパリッと仕上がり、色もこんがり焼き上がるのが特徴です。

焼成時間は山型も角型も変わらず作ることができますが、より香ばしくコクのある仕上がりを目指し、やや長めに焼成するベーカリーもあります。

シンプルな材料であるからこそ、店ごとのこだわりを出す部分でもあります。

角型食パンの製法

一方の角型食パンは、パン型に生地を入れたあと蓋をして焼きます。

そのため、膨張した生地の逃げ場がなく、気泡は均一に広がり密度の高いクラムとなります。

蓋をしていることで水分の蒸発が少なく、クラムはしっとりきめが細かいのが特徴です。

よほど副材料が多くとてもリッチな角型食パンなどでもない限り、発酵時間や焼成時間など山型食パンと特に違いはありません。

蓋をしていることで水分の蒸発が少ない角型食パンですが、さらに卵や油脂などの副材料を含んでいるため保水性も高くなっています。

水分を多く含んだパンは老化が遅く、時間がたってもパサパサしにくいのが特徴です。

山食と角食の目的の違い

発祥も日本で普及し始めた時代も異なる山型食パンと角型食パンですが、多くのベーカリーでどちらの食パンも見かけることができます。

山型食パンと角型食パンはそれぞれ違う目的で作られており、その目的は個人店のベーカリーやスーパーに卸している大手製パン業者によっても異なります。

その違いについて紹介していきましょう。

食感の違い

山型食パンと角型食パンを作る目的で、大きな違いは食感の違いです。

山型食パンはふわふわと軽い食感が特徴。

角型食パンはしっとりときめが細かく、もちもちとした食感が特徴です。

山型食パンはトーストにしたときに特にサクッとした食感になりやすく、小麦そのものの味わいを楽しむことができます。

一方、角型食パンはそのままでもしっとりとやわらかく食べやすいのが魅力です。

調理パンの違い

具の多いサンドイッチ用のパンとして使用したい場合は、クラムのきめが細かい角型食パンが適しています。

サンドイッチ用にカットされて販売されている食パンは、ほとんどが角型食パンです。

また、フィリングを多く入れたい場合も、気泡の多い山型食パンより角型食パンの方が、膨らんだときに空洞ができにくく適しています。

作業効率の違い

使い分ける目的はパンの仕上がりだけではありません。

個人経営などのベーカリーではあまり差が無いものの、大手製パン業界では大量生産に向く角型食パンが積極的に作られています。

蓋が付いてオートメーション化に対応しやすいことと、一度に多くのパンを輸送しやすいことで、コストを抑えることができるからです。

そのため、スーパーなどでは山型食パンの方が角型食パンに比べやや高い値段設定となっていることが多いです。

山食と角食のどちらを選ぶべき?

それでは実際に購入する場合は、山型食パンと角型食パンのどちらを選ぶと良いのでしょうか?

これまでに紹介したそれぞれの特徴を踏まえて、利用目的別に紹介していきましょう。

トーストにするなら山型食パン

山型食パンは、トーストしたときにサクッとした食感になるのが特徴です。

シンプルな材料で作られ、小麦の味を特に感じることができる山型食パンは、よりトーストに適したパンと言えるでしょう。

もちろん角型食パンのしっとりと引きのある食感も、トーストをしても失われることのない魅力的な部分の一つです。

好みに応じて使い分けても良いですね。

サンドイッチにするなら角型食パン

イギリスでは山型食パンもサンドイッチとして多く食べられていますが、よりおすすめなのは角型食パンの方です。

クラムのきめが細かいため、薄くスライスしても密度が高く、具を多く挟むことができるのでサンドイッチに適しています。

リッチなパンが好みなら角型食パン

山型食パンと比べ、角型食パンは材料に副材料を多く使っていることから、しっとりとリッチなパンに仕上がります。

日本で流行している高級食パンは、副材料の多いリッチな仕上がりが特徴で、角型食パンが主流となっています。

角型食パンは、トーストせずにそのまま食べても味わいが濃厚で、くちどけが良く食べやすいのが特徴です。

値段で選ぶなら角型食パン

スーパーで食パンを買う場合、値段の安さで選ぶとしたら角型食パンです。

大量生産に適しており、コストを抑えて生産できるので比較的安く設定されています。

しかし、大量生産をしていない個人経営のベーカリーではさほど差はありません。

また、前述の高級路線の角型食パンもこの限りではありません。

まとめ

山型食パンはサクッとした軽い食感、角型食パンはしっとりときめが細かいのが特徴です。

それぞれトーストやサンドイッチなど、より向いている食べ方がありますが、どちらがダメという物ではありません。

好みに応じて使い分け、楽しんでみるのもおすすめです。

いままであまり違いを意識していなかったという人も、個性の違う山型食パンと角型食パンの味の違いや食感の違いをぜひ比べてみてください。

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この記事を書いた人

医療技術系短大卒業後、バイオ系研究室テクニシャンなどを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中です。
製パンスクールのプロコースを卒業した経歴を活かし、実践に役立つ製パン知識を、よりわかりやすく科学的にお伝えします。
食育アドバイザー、幼児食インストラクター資格保持。

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