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[岩手県産] テリア特号(南部小麦粉)に向いているパンや特徴を解説!

国産の小麦粉というと、製パンにおいては北海道産の「春よ恋」などが有名ですが、全国にはほかにも特徴のある国産小麦粉がたくさんあります。

岩手県産のテリア特号(南部小麦粉)もその一つで、岩手県の奨励品種に採用されている貴重な国産小麦粉なんですよ。

ここでは、テリア特号(南部小麦粉)に向いているパンや特徴を解説していきたいと思います。

目次

テリア特号とは

テリア特号は秋まきの硬質小麦で、農林27号農林33号を交配して誕生した品種です。

おもに岩手県を産地とし、1951年には県の奨励品種に採用されました。

タンパク質の量は10.5%、灰分は0.46%と一般的な強力粉と比べタンパク質の量が少なめ。

テリア特号はおもにパン用小麦粉として使われていますが、小麦粉の分類では中力粉に該当するんです。

そのため、うどんやすいとんなどにも使用することができます。

奨励品種とは

各都道府県が、「各々の都道府県で普及すべき優れた品種」として採用した品種のことです。

米、麦、大豆を中心に、サトウキビやテンサイ、馬鈴薯やソバなど、各都道府県によって採用品種は異なります。

農業試験場などで栽培試験をおこなったり、県がおこなう奨励品種選定会などを経て、栽培のしやすさや品質、収量、需要などを総合的に判断し決定されます。

農林○○号とは

農林○○号というように、イネの呼び方で農林のあとに数字のついた名前を聞いたことがある方もいるかもしれませんね。

これは、農林水産省の試験場や指定の試験場でできた品種につけられるもので、できた順番に1から番号がふられます。

米にはコシヒカリなど、親しみやすい名前がついていますが、正式にはコシヒカリには水稲農林100号というように、登録番号があるのです。

同じように、小麦にも農林○○とできた順番に番号がふられています。

南部小麦粉とは

ナンブコムギを100%使用した地粉のことで、一般的に、南部小麦粉=テリア特号として使われています。

「南部」というのは、江戸時代に南部氏が統治していた地域のことで、現在の岩手県北部や青森県南部の地域です。

「南部」を領地として栄えた南部藩は、のちに岩手県中部の盛岡を地盤としたことから、盛岡藩と呼び名を変えています。

盛岡では「南部せんべい」や小麦粉を水でこねて薄く伸ばし、手でちぎって煮た「ひっつみ汁」などが有名で、この地で誕生したナンブコムギを使用した地粉、南部小麦粉が使用されています。

小麦粉の選び方の基準

小麦粉は品種によってさまざまな特徴があります。

そのため、求めるパンの仕上がりに合わせた小麦粉選びが重要です。ここでは小麦粉の選び方の基準について紹介します。

パンのボリューム(窯伸び)

タンパク質含有量の多い小麦粉ほど、パン生地は窯伸びしやすくボリュームのあるパンになります。

窯伸びが仕上がりに大きく影響する山型食パンや、窯伸びしにくいフィリングを多く入れたパンなどは、タンパク質含有量が13.5%以上の最強力粉を選ぶのが良いでしょう。

パンのもちもち食感

一般的に、国産小麦粉を使用した場合、パンがもちもちの食感になりやすいです。

国産小麦粉は繊維質が多いことから、水分を吸収しやすくもちもちとした食感に仕上がります。

また、タンパク質の量が少ないため、窯伸びしにくく密度の詰まったパンになり、結果もちもちとした食感に繋がります。

もちもちとした食感に仕上げたい場合は国産小麦粉、歯切れの良い軽い食感にしたい場合は外国産小麦粉を選ぶと良いでしょう。

小麦の風味や香り

小麦の風味や香りは、灰分の量による影響が大きいです。

灰分とは小麦の外皮に含まれるミネラルのことです。そのため、外皮を多く含む小麦ほど風味や香りを感じやすくなります。

パンに小麦そのものの風味や香りを求めるなら、灰分の量が多い小麦粉を選ぶのがおすすめです。

クラムの色の白さ

灰分の量が少ないほど、小麦粉の色は白くなります。

小麦粉は外皮の部分を削って胚乳部分を粉末にしたものですが、外皮部分を多く削ってより小麦の中心に近い部分のみ使用した小麦粉は、色が白いためクラムの色が白くなりやすいです。

クラムの部分が多い食パンなどで、色を白く仕上げたい場合は、灰分の量が少ない小麦粉を選ぶと良いでしょう。

甘み・うま味

小麦の甘みやうま味は、小麦に含まれるグルタミン酸やデンプンが深くかかわっています。

しかし、デンプン由来の甘みは、デンプンの量ではなくデンプンがどれだけ分解されやすいかが関係しているため、タンパク質の量や灰分の量では判断できないのです。

一般的に外国産小麦粉よりは国産小麦粉、強力粉よりは準強力粉の方が、うま味や甘みが強い傾向にあります。

小麦粉選びにおいて着目すべき成分

小麦粉選びにおいて着目すべき成分は、タンパク質と灰分です。

製品として販売されている小麦粉にも、タンパク質量と灰分量が表示されています。

タンパク質

小麦粉(強力粉)に含まれるタンパク質は、グリアジンとグルテニンです。

小麦粉に水を加えて捏ねると、グリアジンとグルテニンが複雑に絡み合い、グルテンが生じます。

グルテン膜は、パン生地から発生した炭酸ガスを包み込むのに非常に重要な役割をしています。

外に逃げようとする炭酸ガスを膜が包み込むことでパン生地が膨張し、窯伸びするのです。

そのため、タンパク質の多い強力粉ほど窯伸びしやすく、ボリュームのあるパンに仕上がります。

灰分

風味の良いパンを作りたい場合は、灰分の多い小麦粉を選ぶのがおすすめです。

灰分は小麦の外皮部分に含まれるミネラルのことです。

小麦粉はこの外皮部分を削って胚乳部分を粉にしたものですが、胚乳のなかでも外皮に近い部分は灰分が多くなります。

灰分が多い小麦粉ほど、ミネラルが多く風味が良いのが特徴です。

テリア特号の特徴

ここからは、テリア特号の特徴について紹介します。

産地・メーカー

テリア特号は岩手県をおもな産地とし、地元メーカーである東日本産業株式会社、府金製粉株式会社などで製粉されています。

小麦粉の分類

テリア特号は、小麦の分類では中力粉に該当します。

しかし、卸売店によっては強力粉などと書かれていることもあります。

小麦粉の分類は、一般的にタンパク質の含有量によって決められており、タンパク質量が10.5%であるテリア特号は準強力粉と中力粉のちょうど境界の値なのです。

テリア特号は硬質小麦であることや、おもにパン作りに使われていることから、強力粉として売り出されている場合があるのではないかと考えられます。

しかし、一般的な強力粉と同じような感覚で使うと、グルテンができにくかったり膨らみにくかったりするため注意が必要です。しっかりと捏ねることで弾力が出ますよ。

吸水率

吸水率は52~54%が目安で、一般的な国産小麦粉よりも水分量を少なくする必要があります。

テリア特号が評価されている点

テリア特号は香りうま味が強く、きれいに焼き色がつきやすいのが特徴。

半世紀以上も品種改良されておらず、長い間変わらず親しまれている小麦粉です。

テリア特号を選ぶ理由

小麦粉にはさまざまな種類がありますが、そのなかで、あえてテリア特号を選ぶ理由は何でしょうか?

風味が良い

テリア特号は岩手県産ナンブコムギ100%を一本挽きした小麦粉です。

一本挽きというのは、外皮以外の部分を丸ごと挽いて作る製粉方法で、テリア特号そのものの香りやうま味をダイレクトに感じることができます。

地元岩手県にある老舗せんべい店では、ごまやピーナッツにも負けない風味を持つと好んでテリア特号が使われているほどです。

小麦の香りうま味を感じるパンを作りたい方にはぜひおすすめの小麦粉です。

パン以外の用途にも使いたい

一般的な中力粉のタンパク質の量は8~9%ですが、テリア特号のタンパク質量は10.5%と中力粉のなかでは多め。

強力粉が11.5~12.5%ということから考えると少ないですが、一般的な中力粉と強力粉の両方の用途として使用することができます。

パン作りだけでなく、うどんやお菓子作りなどオールマイティーに使用できる点も、テリア特号が選ばれている理由の一つです。

テリア特号に向いているパン

テリア特号の特徴は、何と言っても風味の良さ。

副材料やフィリングをあまり加えていない、シンプルなパンに向いています。

テーブルパン

食事に添えて食べられるテーブルパンは、料理の味を邪魔しないシンプルなパンがおすすめ。

テリア特号で作ったテーブルパンなら、料理の味を邪魔せずパンそのものの風味も楽しむことができます。

テーブルパンは小型パンであるため、膨らみにくいテリア特号でも失敗しにくくおすすめですよ。

ベーグル

ベーグルはよく噛みしめて食べるため、より小麦の香りやうま味を感じやすくなります。

もちもちとした食感もベーグルには最適です。

テリア特号とゆきちからの違いは?

テリア特号と同じく、岩手県にはゆきちからというパン用小麦粉があります。

ゆきちからは「さび系23号」を父に、「東北141号」を母に持ち、耐寒雪性や耐倒状性、耐病性に優れた品種として開発され、2002年に奨励品種に採用されました。

テリア特号もゆきちからも、岩手県を代表する小麦粉で、東日本産業株式会社や府金製粉株式会社などで製粉されています。

どちらもインターネットなどで気軽に購入することができます。

それでは、テリア特号とゆきちから、それぞれどのような違いがあるのか見ていきましょう。

成分

ゆきちからに含まれるタンパク質の量は11.0%、灰分は0.48%です。

テリア特号のタンパク質の量は10.5%、灰分は0.46%なので、ゆきちからはテリア特号よりもタンパク質の量が多いのが特徴です。

作業性

ゆきちからの吸水率は64~65%と、テリア特号よりも吸水性が高いです。

吸水性の高さから作業性が良いこと、また、テリア特号はパン以外にもうどんや菓子などにも使われていますが、ゆきちからはパン用の硬質小麦であることから、テリア特号と比べて製パン適正が高いのが特徴です。

仕上がり

吸水性の高いゆきちからは、きめが細かくしっとりとした仕上がりになります。優しい甘さが特徴で色が白く、ボリュームが出やすいです。

向いているパン

色が白くボリュームの出やすいゆきちからは、食パンに向いています。

風味やうま味を重視した食パンならテリア特号、クラムの白さやボリュームを出したい場合はゆきちからと使い分けると良いでしょう。

また、うま味はテリア特号ほど強くはなくあっさりとしているため、菓子パンやフィリングを入れたパンにも向いています。

ゆきちからは、外国産の小麦粉のような感覚で使用することができます。

まとめ

2002年には扱いやすく製パン適正が高いゆきちからも誕生しましたが、テリア特号は小麦のうま味や風味を感じることができることから、今でも根強い人気がある小麦粉です。

半世紀以上も品種改良されておらず、地元ではさまざまな料理にテリア特号が使い続けられています。

毎日の食事パンの材料としても取り入れやすく、うどんやお菓子にも使えるので、定番粉として常備しておくのもおすすめですよ。

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この記事を書いた人

医療技術系短大卒業後、バイオ系研究室テクニシャンなどを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中です。
製パンスクールのプロコースを卒業した経歴を活かし、実践に役立つ製パン知識を、よりわかりやすく科学的にお伝えします。
食育アドバイザー、幼児食インストラクター資格保持。

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