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市販の粉末サワー種とは?イーストとの違いは?種類や使い方を紹介!

ライ麦パンを中心としたドイツパンに使われているサワー種は、ライ麦の風味を強くしたり酸味のあるパンを作るのに欠かせないものです。

しかし、自分で作るサワー種は何日も時間をかけて作る必要があり、温度管理や品質を保つのに非常に手間がかかります。

市販のサワー種を使うことで、ライ麦パンを作る時間や手間を大幅にカットすることができるのです。

ここでは、市販の粉末サワー種についてイーストとの違いやその種類、使い方を紹介したいと思います。

目次

サワー種とは

サワー種は、小麦粉やライ麦粉などの穀物に水を混ぜ、発酵させたものです。

水と混ぜる際に大気中の酵母や乳酸菌、酢酸菌などが入り、これらの菌を利用して発酵させます。

グルテンをほとんど含まないライ麦粉のパンは、サワー種が産生する二酸化炭素の泡を利用してパンを膨らませます。

そのため、おもにライ麦粉から作ることが多く、ライ麦パンの独特の風味や香りを引き出すのに使われているのです。

サワーとは「酸っぱい」という意味を表し、乳酸菌の産生する乳酸や酢酸菌の影響で強い酸味があるのが特徴です。

サワー種を作るのにかかる時間や手間

サワー種を作る際は、ライ麦粉と水を合わせて発酵させる種起こしをおこなう必要があります。

ライ麦粉と水を合わせて一晩発酵させた種の底の一部を取り出し、そこにライ麦粉と水を加えて再び一晩発酵させます。

さらに同じ作業をあと2回ほど繰り返し、5日ほどかけて出来上がったものが初種です。

この状態で、冷蔵庫で4~5日ほど保存可能です。

さらに保存したい場合は、初種にライ麦粉や水を加えていくことで1ヶ月ほど保存することができます。

しかし、実際にパン生地に使用する場合はこの初種の段階では使用できず、さらに「種仕上げ」という工程を経てサワー種の完成となります。

種仕上げは初種にライ麦粉と水を加えて一晩発酵させるもので、これには3つの方法があり、1回のみ発酵をおこなうものを一段階法(アンフリッシュザワー)といいます。

この工程をもう一日繰り返したものを二段階法(グルントザワー)、さらにもう一日繰り返したものを三段階法(フォルザワー)といい、段階が増えるほど発酵力が増し酸味の強いサワー種となりますが、そのぶん時間と手間がかかるのです。

市販のサワー種とは

サワー種は大気中のさまざまな菌を培養し作りますが、市販のサワー種は、乳酸菌などを添加し、ある程度の工程まで発酵させたものです。

市販のサワー種には、スターター、フォルサワー、サワータイクニューと呼ばれるものがあり、それぞれ添加されているものや発酵の工程などに違いがあります。

詳しくは後述する市販のサワー種の種類で紹介したいと思います。

市販のサワー種のメリット

自分で作ると非常に手間と時間のかかるサワー種。

まずは市販のサワー種のメリットを見ていきましょう。

時間と手間が短縮される

市販のサワー種はある程度のところまで発酵させたもの。

種起こしにかかる時間と手間を大幅に省くことができます。

また、市販のサワー種の種類によっては予備発酵をする必要がないので、イーストと同じようにストレート法で作ることができます。

ライ麦粉の廃棄ロスを減らすことができる

自分でサワー種を作る場合、ライ麦粉と水を混ぜて発酵させた後、次の日は1日目にできた種の底の一部のみ取り出し、2日目に使用します。

この作業は乳酸菌や酢酸菌がたくさん増殖している部分のみを取り分けていくもので、スクリーニングと呼ばれています。

このように、必要な菌と不必要な菌とをスクリーニングしていくことで、パン作りに最適な初種へとなっていくのです。

品質の良い初種を作るには欠かせない作業ですが、このとき残った種は、使用することなく処分しなければならないので、ライ麦粉の廃棄ロスが出てしまいます。

しかし、市販のサワー種は初種までの工程を終えた状態となっているため、スクリーニングによってライ麦粉を廃棄する必要がないのです。

品質が安定している

市販のサワー種は、最低でも初種までの工程を終えた状態で販売されています。

初種を作る工程では、温度管理をしっかりおこなわなければいけません。

環境が安定せず、品質の維持が難しいことも多いのですが、市販のサワー種では初種を作る必要がなく、安定した品質を維持することができます。

市販のサワー種のデメリット

自分で作るサワー種と比べ、さまざまなメリットのある市販のサワー種ですが、市販のサワー種ならではのデメリットには次のようなものがあります。

作り手の個性が出しにくい

誰が作っても、同じ品質に仕上げやすいのが市販のサワー種。

これは、日によって違うスタッフがパンを仕込むパン屋さんではメリットとなりますが、個性を出したい個人経営のパン屋さんではなかなか作り手の個性が出しにくく、デメリットにもなりかねません。

基本的に、初種は26℃前後を保つことで乳酸菌と酢酸菌のバランスが保たれます。

乳酸菌と酢酸菌は活発になる温度帯が違うため、温度の違いによりそれぞれの菌の数に違いがあらわれるのです。

乳酸菌は30℃以上で活発になりやすく、乳酸菌の多い初種は比較的酸味が弱くマイルドな味わいになります。

一方、酢酸菌は25℃以下の環境で活発になりやすく、酢酸菌が増えるほど酸味の強い初種となります。

自家製のサワー種を作る場合は、このような温度による菌の増え方の違いを利用して、個性的なパンを作ることができるのです。

市販のサワー種の種類

それでは、市販のサワー種の種類を紹介したいと思います。

TKスターター

画像引用元: ブランスリー

TKスターターは、ドイツのボッカー社が製造するサワー種。

ドイツパンに使われるとても有名なスターターで、ライ麦粉にサンフランシスコ乳酸菌のみを種付けし、添加物の含まれないシンプルな原料で、自家製のサワー種に近い本格的なドイツパンを作ることができます。

サンフランシスコ乳酸菌は冷凍耐性があり、冷凍保存が可能。

冷凍で約9か月保存することができます。

使い方

スターターとは、別名「初種」と呼ばれるものです。

そのため、TKスターターは使用するときにライ麦粉と水をTKスターターに対しそれぞれ10倍量加えて一晩発酵させ、種仕上げをする必要があります。

フォルサワー

フォルサワーは、三段階法(フォルザワー)で仕上げたサワー種を乾燥させ、粉末にしたものです。

ライ麦粉に小麦粉、ホエイパウダーや乳化剤などが含まれており、品質の安定したパンを作ることができます。

不活性タイプのため、未開封の状態で、常温で270日ほど保存することができます。

粉末であることから、ホームベーカリーに使いやすいサワー種です。

また、べたつきにくいため作業性が向上し、手捏ねでも使いやすいのが特徴です。

使い方

フォルサワーは、材料の粉の約10%を置き換えて、そのままほかの材料と混ぜて使用することができます。

予備発酵の必要もなく、簡単に気軽に使用することができるサワー種です。

インスタントドライイーストと同じような感覚で、ストレート法で作ることができます。

ウルマ・フォルサワー

ウルマ・フォルサワーは、鳥越製粉が販売するフォルサワーです。

他社のフォルサワーと同じく、3段階サワー種を乾燥させ粉末状にしたもので、ライ麦粉のほかに小麦粉、ホエイパウダー、乳化剤が含まれています。

常温で半年以上保存可能です。

使い方

ウルマ・フォルサワーも、材料の粉の約10%を置き換えることで、そのままほかの材料と混ぜて使用することができます。

予備発酵も不要で、初心者におすすめのサワー種です。

インスタントドライイーストと同じような感覚で、ストレート法で作ることができます。

ウルマ・サワータイクニュー

ウルマ・サワータイクニューは鳥越製粉が販売するライ麦粉を原料としたサワー粉末です。

ウルマ・フォルサワーに対し、ウルマ・サワータイクニューは乳化剤不使用となっています。

フォルサワーよりも安定性はやや劣りますが、添加物が気になる方におすすめのサワー種です。

ウルマ・フォルサワーと同じく粉末タイプであるため、常温で半年以上保存可能です。

使い方

使い方はフォルサワーと同じで予備発酵が不要、材料の粉の約10%を置き換えてそのまま使用することができます。

ウルマ・サワータイクニューも、インスタントドライイーストと同じような感覚で、ストレート法で作ることができるサワー種です。

イーストと市販のサワー種の違い

一般的にパン作りで使われているイーストと、市販のサワー種にはどのような違いがあるのでしょうか?

イーストとは

イーストとはパン作りに適した単一酵母を純粋培養したもので、安定して発酵させることができる酵母のことです。

発酵に適した酵母のみを培養しているため、発酵力が高いのも特徴です。

用途や役割の違い

イーストは発酵に適した酵母を用いてたくさんの炭酸ガスを発生させ、グルテンの網目構造でガスを包み込むことでパンを膨らませます。

発酵力が強く、グルテンを含む小麦粉のパンに適しています。

一方、サワー種は発酵の段階で発生する二酸化炭素の泡で生地を膨らませるもので、膨らみは弱くグルテンを含まないライ麦パンに使われています。

サワー種に含まれる酢酸菌の影響で酸味が強いため、イーストで作ったパンと比べて腐りにくく、カビが生えにくいのが特徴です。

また、保水性も高いことから老化を遅らせることができます。

使い勝手の違い

イーストと比べ、ややハードルの高いイメージのあるサワー種ですが、市販のサワー種にはそのまま材料の粉の一部を置き換えるだけで使用できるものがあります。

このような市販のサワー種の場合は、イーストと同じようにストレート法で作ることができるため、使い勝手の差はほとんどないと言えるでしょう。

風味や仕上がりの違い

サワー種を使用した場合は、よりライ麦の風味が強くなり、酸味の強いパンに仕上がります。

さらに、イーストは単一酵母であるのに対し、サワー種は市販のものでも酵母以外に乳酸菌が含まれています。

より複雑な風味や味わいに仕上がると言えるでしょう。

まとめ

サワー種は作るのに時間と手間がかかるため、非常にハードルの高いものと思われがちですが、市販のサワー種を使うことで工程を短縮することができ、失敗のリスクを減らして気軽にライ麦パンを作ることができます。

選ぶサワー種の種類によって、含まれる材料や使い方が違うので、より目的に合ったものを選ぶと良いでしょう。

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この記事を書いた人

医療技術系短大卒業後、バイオ系研究室テクニシャンなどを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中です。
製パンスクールのプロコースを卒業した経歴を活かし、実践に役立つ製パン知識を、よりわかりやすく科学的にお伝えします。
食育アドバイザー、幼児食インストラクター資格保持。

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