生地玉冷凍法とは?オーバーナイト法との違いは?作り方や解凍の仕方を解説!
パン作りは焼成までにかかる時間が長く、パン屋では深夜や早朝から仕込みをおこなうことも多いです。
家庭でパンを作りたいと思っていても、最低でも3~5時間はかかるため、なかなか時間がとれずに作れないという方もいるかもしれません。
そこで、生地玉冷凍法を利用することで、スケージュールの調整がしやすくパン作りのハードルが一気に下がります。
実は多くの焼き立てパン屋さんで、生地玉冷凍法が使われているんですよ。
ここでは、生地玉冷凍法とオーバーナイト法の違いや、作り方・解凍の仕方を解説していきたいと思います。
生地玉冷凍法とは
生地玉とは、ミキシングして一次発酵させた生地を分割し、玉のように丸めた状態の生地のことを指します。
生地玉冷凍法は、そのようにして丸めた生地(生地玉)を冷凍保存して、発酵をとめておく方法です。
生地玉冷凍法では、生地を-20℃でしっかり冷凍する方法と、-5℃ほどの温度に入れ、手で潰すことができる柔らかさに冷凍する方法があります。
-20℃で冷凍した場合は、生地を柔らかくなるまで解凍して使用しますが、-5℃ほどの温度で冷凍した場合であれば、再び作業を始めるときもすぐに生地を扱うことが可能です。
生地玉冷凍法の目的
作業効率をあげる
生地玉冷凍法のおもな目的は、作業効率をあげることです。
生地を分割・丸めのあとの工程でストップしておくことで、次の成形からの工程を好きな時間から始めることができます。
時間の調整がしやすくなり、作業の効率をあげることができます。
労働時間の短縮
パン作りは、生地の計量から焼成までにとても長い時間を要します。
しかし、パン屋さんの多くは朝から開店しているのが基本です。
そうなると深夜や早朝からの仕込みとなり、過酷な労働環境となりかねません。
生地玉冷凍法なら、丸めの工程までで一度終了することができ、また別の日に成形から開始することができます。
結果、一日の労働時間を減らすことができるのです。
生地玉冷凍法のメリット
生地玉冷凍法には次のようなメリットがあります。
作業効率が良い
パン作りを前日に丸めの段階で止めておき、翌日好きなときに再開できるため、作業効率が良くなります。
突発的な追加注文に対応できる
生地玉冷凍法で作った生地は、分割・丸めまでの工程がすでに終わっており、成形から開始できるため、突発的な追加注文に対応しやすくなります。
作る量を調整できる
その日にどれだけパンが売れるのかは、天気や周辺のイベントなどでも大きく変動します。
統計をとったり、経験からある程度予測することはできますが、それはあくまでも予測にすぎません。
生地玉を使用しない通常のやり方では、どれだけ作ればよいのかの判断が難しいものがあります。
焼成したパンを売り切ったら終わりというパン屋さんもありますが、まだまだ売れるのでしたら可能な限り売りたいですよね。
そのような時でも、生地玉冷凍法なら追加でパンを作ることができます。
生地は丸めの状態なので、同じ配合と大きさのパンであれば、さまざまなパンに対応できます。
また、今日はあまり売れないなという日なら追加で作る必要もなく、食品ロスも減らすことができるのです。
生地玉冷凍法のデメリット
生地玉冷凍法には次のようなデメリットがあります。
仕上がりが劣る
生地玉冷凍法は、冷凍状態で生地の発酵を止めておく方法です。
そのため、パン生地を冷凍することによって起こる障害(冷凍障害)が起こりやすくなります。
冷凍することによって生地内の水分が凍り、体積が増え(膨張して)酵母が死滅したり、グルテンが損傷したりします。
冷凍時間が長くなればなるほど、その被害は大きくなるのです。
結果、発酵力が劣ってパンのボリュームがでにくくなったり、内相が粗くなってしまいます。
また、生地玉冷凍法では発酵時間が短く、吸水が十分ではありません。
オーバーナイト法と違い、発酵が止まった状態であるため、保存中はこれ以上発酵や水和が進むことはないのです。
そのため、熟成した旨味や風味もなく、老化しやすいのが特徴です。
場所をとる
分割・丸めをおこなったあと、生地は冷凍庫で冷凍しておきます。
冷凍生地玉を保管するための場所が必要となります。
専用の冷凍庫が必要
生地玉冷凍法では、保存のさいの温度や湿度の管理が重要となります。
そのため、生地玉用に温度や湿度を設定した専用の冷凍庫が必要です。
生地玉冷凍法に向いている生地
生地玉冷凍法には、どのような生地が向いているのでしょうか?
リッチな生地
生地玉冷凍法では酵母の力が弱くなりやすいのが難点。
副材料の多いリッチな生地なら、材料に使う酵母の量が多いため、酵母が多少弱っても発酵する力が十分残っています。
小さい生地玉
生地玉冷凍法の場合、できるだけ速く冷凍しなければどんどん発酵が進んでしまいます。
そのため、生地は小さいものが向いているのです。
生地玉冷凍法に不向きな生地
一方、生地玉冷凍法には不向きな生地もあります。
リーンな生地
リーンな生地は酵母の量が少ないため、酵母の力が弱くなりやすい生地玉冷凍法には不向きです。
また、副材料が入らないため材料に使われる水分量も多く、冷凍障害が起こりやすくなります。
大きい生地玉
生地はできるだけ速く冷凍しなければいけないため、生地が冷えるのに時間のかかる食パンのような大きな生地は、あまり向いているとは言えません。
冷凍生地玉の作り方
ここからは、冷凍生地玉の作り方を紹介します。
STEP1 計量
生地の計量は通常通りおこないますが、仕込み水は捏ね上げ温度がいつもより2~6℃ほど低くなるように準備します。
STEP2 ミキシング
材料の計量をおこなったら、ミキシングをおこないます。
冷凍保存する過程で発酵が進んでしまうことを考慮して、通常のストレート法よりも捏ね上げ温度をやや低くしましょう。
一般的な生地の捏ね上げ温度は26~28℃ですが、生地玉冷凍法の場合は、20~24℃にする必要があります。
STEP3 一次発酵
一次発酵も捏ね上げ温度と同様、冷凍する過程で少し発酵が進んでしまうことを考慮して、いつもよりも短い時間で切り上げます。
一次発酵が長いと、ガスの発生力や保持力の低下が起こり、ボリュームが小さくなる原因にもなります。
普段の発酵時間よりも半分程度の時間で終了しましょう。
STEP4 分割・丸め
目的の大きさに生地を分割し、丸めをおこないます。
STEP5 冷凍保存
丸めた生地を冷凍保存します。
凍結温度は、-5℃の温度で凍結する方法と、-20℃で凍結する方法があります。
-5℃の保存は生地が柔らかい状態で発酵を止めることができ、解凍の必要がなく成形することが可能です。
すぐに成形に取り掛かりたい場合は、-5℃で凍結する方法を利用すると便利です。
-20℃で凍結する場合
冷凍するうえで重要なのが、急速冷凍するということです。
生地を冷凍すると、含まれる水分が氷の結晶(氷結晶)となり、温度が低下します。
しかし、氷結晶は“生地玉冷凍法のデメリット”の項でも説明したように、酵母やグルテンに損傷を与えます。
特に-1~-5℃は最大氷結晶生成帯と言い、もっとも氷結晶が生成されるため、速くこの温度帯を通過する方が良いのです。
生地をできるだけ速く冷凍するには、生地の温度が下がりやすいように金属製のバットに並べて冷凍するのがおすすめ。
冷凍庫内は非常に乾燥しやすくなっているため、しっかり密閉して生地の乾燥を防ぎます。
-5℃で凍結する場合
生地が凍結する温度は-3~-5℃と言われています。
生地の種類によって、その温度に違いはありますが、油脂の多い生地は-5℃が凍結温度です。
この凍結し始める温度帯を利用して、生地がカチコチに凍らない状態で保存します。
ただし、最初に生地を中心まで冷やすために、まずは-20℃で急冷する必要があります。
急冷することで、生地の発酵が進まないようにするためです。
急冷は15分程度で終え、その後-3~-5℃で保存しましょう。
冷却する時間がかかるほど氷結晶の成長も速くなります。
-3~-5℃の保存はまさに最大氷結晶温度帯にあたりますが、このように最初に急速冷凍することで、この温度帯での氷結晶をある程度抑えることができます。
凍結にはリターダーという専用の装置が便利です。
リターダーは、庫内の湿度を保ちつつ-3~-5℃で保存可能です。
生地の発酵を抑えながら、低温で保存することができます。
冷蔵コールドテーブルという業務用冷蔵庫も、10℃から-5℃までの設定が可能なためリターダーの代用として利用可能ですが、リターダーと違い乾燥しやすいのが難点。
生地をビニール袋などでしっかり覆い、乾燥しないように注意しなければいけません。
冷凍生地玉の解凍方法
次に、冷凍生地玉を使用する際の解凍方法について紹介していきます。
冷凍するときは急速冷凍するのに対し、解凍するときは緩慢解凍といってゆっくり解凍する方法を用います。
常温での解凍は、表面のみが先に解凍され、中心部分はまだ凍ったまま、解凍にムラが出ます。
表面の生地のみ発酵が進み、生地が傷んで仕上がりに大きく影響するためあまりおすすめではありません。
ちなみに、-5℃で凍結した生地は、解凍の必要がなくすぐに成形することができます。
リターダーで解凍
-20℃で凍結した生地の解凍に適しているのが、リターダーで解凍する方法です。
-5℃の凍結に使用されるリターダーは、冷凍生地の解凍にも使われます。
リターダーを使用する場合は、0~5℃で6~24時間かけて解凍をおこないます。
リターダーを使用すれば乾燥も防ぐことが可能です。
復温する
リターダーでゆっくり解凍した生地は、復温する(元の温度に戻す)ことで発酵しやすくなります。
-5℃で凍結した生地も、そのまま成形可能ですが復温することで発酵がスムーズになります。
室温で一時間ほど放置し、生地の中心温度が15℃になるように解凍しましょう。
季節や生地の大きさなどで変わるため、何度か試してみると良いでしょう。
表面のみが温度が上がって、中心温度が15℃になっていないと、成形してもその後の発酵がなかなか進まなくなります。
また、発酵ムラが原因となって内相のきめが粗いパンに仕上がるので注意しましょう。
お店で冷凍生地玉を作る場合
お店で冷凍生地玉を作る場合は、前述の“冷凍生地玉の作り方”の方法で作成可能です。
-5℃で凍結する場合はリターダーまたは冷蔵コールドテーブル、-20℃で冷凍する場合は通常の業務用冷凍庫を用意しましょう。
いずれの冷凍方法にしても、急速冷凍が必要です。
金属製のバットに生地玉を並べて冷凍しますが、なかでもアルミは熱伝導率が高く、急速に冷凍することができます。
複数のバットを重ねて蓋をすることができるシステムバットは、飲食店でよく使われており、生地玉の保管にも便利です。
家庭で冷凍生地玉を作る場合
家庭で冷凍生地玉を作る場合、リターダーなどの専用の機械を使用することは困難です。
生地玉の作成までは前述の“冷凍生地玉の作り方”のやり方で作り、冷凍は一工夫必要になります。
もし、生地がカチコチに凍らない状態にしたければ、冷蔵庫のソフト冷凍という機能を使いましょう。
-7℃付近の温度帯で、生地がカチコチに凍らずに保存することができます。
家庭で冷凍生地玉を作る場合も、お店と同様に金属製のバットに並べて急速冷凍します。
すでにお持ちの物でも構いませんが、大きさ違いでいくつか用意すると便利です。
こちらの商品は入れ子にしてコンパクトに収納することができ、蓋が透明なので中の様子を確認することもできます。
生地を冷凍する際は、最初に家庭用冷蔵庫の冷凍室に15分ほど入れ、生地を内部まで冷やしましょう。
その後、ソフト冷凍機能のある場所へ移します。
ソフト冷凍機能がない場合は、通常の冷凍庫で冷凍することも可能です。
家庭用の冷蔵庫は乾燥しやすいので、乾燥しないようにビニール袋でしっかり覆いましょう。
市販の冷凍生地玉
生地玉は、すでに商品として生地を丸めまでおこない冷凍した状態で販売されています。
自身で作らなくても、市販のものを購入することができるのです。
市販の冷凍生地玉
市販されている冷凍生地玉を紹介します。
Pascoではほかにもさまざまなパン生地で作った冷凍生地玉が販売されています。
冷凍生地玉はリーンな生地や大きく丸めをおこなった生地は不向きと説明しましたが、市販の冷凍生地玉はフランスパン生地や食パン生地なども製造しているのが特徴です。
どういう場合に市販の冷凍生地玉が使われる?
ベーカリーチェーン店
大手のベーカリーチェーン店では、工場で生地の仕込みから丸めまでをおこない、冷凍した状態で各店舗へ運ぶベイクオフという形態をとっています。
大量生産が可能で、各店舗で仕込みをおこなう必要がなく効率的に作業することができます。
個人経営のパン屋
個人経営のパン屋のように、少ない人数で多くの種類のパンを作りたいときにも市販の冷凍生地玉が使用されます。
菓子パンには市販の冷凍生地玉を使用し、食パンやバゲットは粉から計って作るなど、市販品を程よく取り入れることで、より重点を置きたい商品に力を注ぐことができます。
カフェやレストラン
市販の冷凍生地玉は、パン屋以外の業態でも使用されています。
食事に添えるパンであれば、それほど多くの量を作る必要はありません。
市販の冷凍生地玉を使用すれば、使いたい量だけ少量から使用することができ、特別な製パン技術がなくてもパンを作ることができます。
家庭での使用
冷凍生地玉は家庭用に購入することもできるので、自宅で焼きたてのパンが食べたいときにも便利です。
ミキサーがないけどパンを作ってみたい、初心者なので生地作りには自信がない、時間がないけど手軽に焼き立てのパンを食べたいなど、冷凍生地玉を使用することで、特別な道具が無くても自宅で焼きたてパンを作ることができます。
自分で作る場合との違い
-18℃以下で保存する
市販の冷凍生地玉は、冷凍でカチコチに凍った状態で販売されています。
そのため、-18℃以下で保存しなければいけません。
市販のものを使う場合のメリット
作業の効率化
市販の冷凍生地玉を使用すれば、生地作りの工程を省くことができ、より作業を簡素化することができます。
すべてのパン生地を冷凍に頼らずとも、菓子パンや総菜パンのみ冷凍生地を使用するなどすれば、冷凍生地に向かないうえ、生地の味がダイレクトに感じるリーンなパン生地に力を入れることもできます。
材料の仕入れや管理の必要がない
生地を仕込むために使用する材料の仕入れや、賞味期限などの管理が必要ありません。
粉は臭いや虫が付きやすいため、管理も慎重におこなわなければなりませんが、市販の冷凍生地玉は衛生管理の整った専門の工場で生産されているため、安心して使用することができます。
安定した品質が保てる
生地は気温や湿度の影響を受けやすく、その日の環境によって配合を変えたり、発酵温度を調整する必要があります。
安定した商品を作るには、ある程度作り慣れないと難しいです。
市販の冷凍生地玉は、温度や湿度が常に一定の環境で作られています。
いつでも安定した品質が保たれているのです。
職人の技術が不要
ミキシングや一次発酵の工程は、パンの製造の中でも生地作りを占める部分。
生地の状態がわかるようになるには、ある程度の慣れが必要です。
生地そのものがすでに出来上がっている市販の冷凍生地玉は、成形から進められるため職人の技術が必要なく、誰でも一定の品質のパンを作ることができます。
設備投資を抑えられる
生地を作るためには、生地を捏ねるためのミキサーなどが必要です。
冷凍生地玉はすでに捏ね上げる工程が済んでいるので、ミキサーを導入する必要はありません。
少量のパン作りに対応できる
使用する分だけ成形することができるので、カフェなどで少量だけパンを出したいなどに対応できます。
老化しにくい
あくまでも自分で冷凍した場合と比べてですが、市販の冷凍生地玉は老化しにくい傾向にあります。
大手の冷凍生地玉は-35℃などの低温で急速冷凍されています。
一般的な冷凍庫で冷凍するよりもより急速に冷凍されているため、生地の老化が遅くなるのです。
また、品質向上のために研究をおこない、生地の配合やミキシングなど最適な条件下で製造されています。
市販のものを使う場合のデメリット
添加物が含まれる
市販の冷凍生地玉には、添加物が含まれている場合が多いです。
特に生地の品質を向上するための生地改良剤は欠かせないものとなっています。
オリジナルの味を出しにくい
市販の冷凍生地は決まった生地を使用するため、オリジナルの味が出しにくくなります。
さまざまなパン屋で使用されるため、同じ冷凍生地玉を使用していれば、ほかのパン屋と同じ味になってしまう可能性もあるのです。
生地にかかる原価が高い
生地の丸めまでがすでに終了している冷凍生地玉は、粉から作る場合に比べて材料費が高くなります。
近頃材料費の高騰が深刻な問題となっていますが、便利であるほど価格も高くなってしまいます。
冷凍しても酵母は死なない?
酵母は-30℃以下になると温度が下がっていくにつれ少しずつ死滅していきます。
-70℃の温度帯では、酵母の数は生地1gあたりで1桁ほど減ってしまうことがわかっています。
通常、冷凍庫の温度は-18~-20℃ほど。そのため、酵母はほとんど死なないと考えられます。
しかし、酵母は冷凍することによって、細胞内のプロテアソームという酵素複合体がダメージを受けます。
酵母自体が死滅するというわけではありませんが、プロテアソームがダメージを受けることで、発酵力が落ちてしまうのです。
冷凍に強い酵母はある?
酵母は基本的には冷凍に弱い生き物です。
しかし、市販の酵母には、冷凍に強い酵母が販売されています。
プロテアソームの機能を強化し、冷凍に強い酵母を使ったのが以下の製品です。
サフのセミドライイーストにはレッドもあり、こちらも冷凍耐性の製品となっていますが、砂糖の分量がベーカーズパーセントで5%以下の場合に適した製品となっています。
一方、セミドライイーストゴールドは耐糖性タイプであるため、砂糖の多いリッチな生地にも適しています。
リッチな生地に向いている生地玉冷凍法では、セミドライイーストゴールドの方が良いでしょう。
冷凍生地玉を48時間以内に使う理由
冷凍生地は2~3日程度の冷凍では仕上がりにさほど影響はありません。
しかし、1週間後、2週間後と時間が経つにつれ、焼成後のボリュームがぐんと落ちてしまうのです。
酵母は-30℃以下から低温になるほど少しずつ死滅していくと説明しましたが、長期間冷凍状態にさらされることでも死滅してしまいます。
基本的に48時間以内に使用するのが良いでしょう。
冷凍生地玉には改良剤は入れるべき?
改良剤とは
パン作りに使われるパン用改良剤とは、その名の通りパン生地の品質を保つために使われる添加物のことです。
改良剤を使うことで解決できる問題
冷凍生地玉は、冷凍することで冷凍障害を起こします。
改良剤を使用することで、冷凍障害を防ぐことができるのです。
パン生地における冷凍障害には以下のようなものがありますが、改良剤の使用により改善することができます。
生地のボリュームダウン
冷凍生地玉は冷凍時間の経過に伴い酵母が少しずつ死滅してしまうため、焼成時に生地のボリュームが減ってしまうというデメリットがあります。
改良剤を使用することで、生地のボリュームダウンを抑えることができます。
内相のきめの粗さ
グルテンの損傷や酵母の死滅によって内相のきめが粗くなってしまいますが、改良剤を使用すれば冷凍せずに作る方法に近い内相に仕上がります。
おもな改良剤
改良剤は誰でも購入することができるため、必要があればすぐに取り入れることができます。
冷凍による生地の品質低下は、グルテンの多い小麦粉を使用してグルテンの強化をおこなったり、冷凍に強い酵母を使用することで、ある程度防ぐことはできます。
そのため、必ず入れるべきというわけではありませんが、ひとつの手段として検討してみるのも良いでしょう。
イビスアジュールは酵素系改良剤で、冷凍生地や冷蔵生地を安定させます。
BBJは特に冷蔵生地に効果の高い改良剤ですが、短期間の冷凍生地にも使うことができます。
冷凍生地玉法とオーバーナイト法の違い
オーバーナイト法は捏ね上げた生地を冷蔵庫などの低温で一晩(オーバーナイト)ゆっくり発酵させ、次の日に分割から再開する方法のことです。
ここでは、生地玉冷凍法とオーバーナイト法の違いを紹介していきましょう。
温度の違い
オーバーナイト法は冷蔵庫で発酵させます。
その最適温度は5~10℃です。
酵母は5℃以下では休眠状態となって活動を停止してしまい、10℃以上になると発酵が進みすぎてしまうため長時間の発酵には向きません。
生地玉冷凍法は高い温度でも-3~-5℃で保存するので、使用する温度が違います。
低温で生地をストップさせる目的の違い
前項の“温度の違い”で、使用する温度が違うと説明しましたが、生地玉冷凍法は、冷凍庫に入れて発酵を止めることが目的です。
ゆっくり発酵させることを目的とするオーバーナイト法とは、そもそも目的が違います。
使う酵母の量
酵母が十分含まれているリッチな生地を使用する生地玉冷凍法に対し、オーバーナイト法は長時間発酵させるため、過発酵にならないよう使用する酵母の量は少なくしておく必要があります。
生地玉冷凍法とオーバーナイト法の似ている部分は?
それでは、生地玉冷凍法とオーバーナイト法には、似ている部分はないのでしょうか?
目的や温度は違いますが、パン作りの途中までの工程をおこない一度低温で保存し、残りを別の日におこなうという意味では、少し似ている部分があります。
生地玉冷蔵法とオーバーナイト法の違いは?
生地玉冷凍法のほかに、生地玉冷蔵法という製法があります。
生地玉冷凍法がオーバーナイト法と使用する温度や目的が違うことはわかりましたが、生地玉冷蔵法ならどうでしょう?
生地玉冷蔵法は、一次発酵まで終えた生地を分割して丸め、その後冷蔵で一晩発酵させる方法です。
オーバーナイト法は捏ね上げた生地を冷蔵庫で一晩発酵させる方法のこと。
生地を冷蔵庫に入れるタイミングは、一次発酵のすぐ後、分割・丸めの後、成形の後などさまざまな状態のものを総称していうのです。
つまり、生地玉冷蔵法はオーバーナイト法の一つということになります。
生地玉冷蔵法では、特に冷蔵生地に効果の高いBBJを使用すると焼成時にパンの表面がぶつぶつになる“火ぶくれ”を防ぐことができます。
まとめ
パン作りを途中でストップし、成形の段階から好きなときに再開できる生地玉冷凍法は、忙しいパン屋さんでの作業効率を上げることができます。
より多くのパンを作ることができるだけでなく、過酷な労働環境の改善や食品ロスの改善にもつなげることができます。
市販の冷凍生地玉も、近年は企業の努力からとても仕上がりの良いものになっています。
パン作りがより充実したものになるために、上手く取り入れてみるのもおすすめですよ。