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オーバーナイト法とは?手順やメリット、中種法との違いを解説!

パンの製法としてよく使われるオーバーナイト法。

パンの製法にはさまざまなものがあり、違いが分かりにくいものも多いですよね。

一晩冷蔵庫で発酵させるオーバーナイト法は、低温長時間発酵や中種法などと何が違うの?と疑問に思っている方も多いかもしれません。

ここでは、オーバーナイト法の手順やメリット、中種法との違いについて解説していきたいと思います。

目次

オーバーナイト法とは

オーバーナイトは「一泊」や「夜通し」などの意味があり、その名の通りオーバーナイト法とは、捏ね上げた生地を一晩冷蔵庫で発酵させてから次の日に焼き上げる製法のことです。

オーバーナイト法のメリット

オーバーナイト法には、次のようなメリットがあります。

時間の調整がしやすい

オーバーナイト法は、生地を一晩低温発酵させること。

作業を二日に分けておこなうため、一日で一度に焼成までおこなう必要がなく、結果的に一日の作業時間を短くすることができるのです。

そのため、まとまった時間がなくてもパンを作ることができます。

パンの老化を遅らせることができる

長時間じっくり時間をかけて発酵させるオーバーナイト法は、小麦粉と水をしっかり水和させることができます。

十分に水和した生地は水分の蒸発が少なく、パンの老化を遅らせることができるのです。

小麦の香りを引き立てることができる

発酵の時間が長くなるほどイーストは増殖によって数が増えるため、長時間発酵させるオーバーナイト法では、あらかじめイーストの量を少なくしておく必要があります。

イーストの使用量が少ないことでイースト臭が少なく、小麦本来の香りを感じやすいパンに仕上げることができます。

パンの旨味を感じやすい

発酵時間が長いため小麦粉の消化酵素がしっかり働き、デンプンを糖に分解して甘みが引き立ちます。

また、熟成した旨味のあるパンに仕上げることができます。

オーバーナイト法のデメリット

オーバーナイト法には、次のようなデメリットがあります。

時間がかかる

オーバーナイト法では、その名の通り一晩かけて発酵をおこなうため、通常のストレート法に比べすべての工程が終了するまでに時間がかかります。

冷蔵庫での置き場が必要

オーバーナイト法は冷蔵庫内での長時間発酵が基本です。

そのため、冷蔵庫での置き場の確保が必要になります。

オーバーナイト法の生地

オーバーナイト法は、生地を一晩冷蔵庫で発酵させる製法のことを指しているため、使う生地に決まりがあるわけではありません。

普段使用しているストレート法の生地をオーバーナイトさせてもいいし、中種法に使う生地をオーバーナイトさせてもいいのです。

ストレート法の生地のなかには、リーンな生地もリッチな生地もあるでしょう。

ここで注意しなければいけないのが、どのような生地を使うにしてもイーストの量は少なめに入れるということ。

ストレート法を低温長時間発酵に置き換える場合は、1/2~1/3の量にします。

長時間発酵させるため、発酵しすぎにならないようイーストの量は最小限にします。

オーバーナイト法の発酵温度

オーバーナイト法では、冷蔵庫で発酵させるのが基本です。

その発酵温度は5~10℃でおこないます。

発酵温度は5~10℃

オーバーナイト法での発酵温度は、5~10℃が最適な温度です。

5℃以下では酵母は休眠状態となって活動を停止してしまい、10℃を超えると発酵が進みすぎてしまうためです。

酵母による発酵温度の違い

インスタントドライイーストを使った場合でも、自家製酵母を使った場合でも、オーバーナイトの発酵温度は5~10℃の範囲でおこないます。

自家製酵母にはさまざまな菌が含まれていますが、パンの発酵に特化した菌はインスタントドライイーストと同じです。

そのため、どちらの酵母を使うとしても発酵時間に大きな違いはありません。

5℃に近い低温で発酵させるほど発酵に時間がかかりますが、甘みや旨味をより引き出すことができ、伸展性も高くなります。

家庭でオーバーナイト法をおこなう場合

家庭でオーバーナイト法をおこなう場合に、もっとも適した場所は冷蔵庫の野菜室です。

チルド室は0~3℃と低く、冷蔵室も2~5℃とやや低めであるため、酵母の働きが休止してしまいます。

一方、野菜室は3~7℃とやや高めであるため、オーバーナイト法にもっとも適した温度であることがわかります。

オーバーナイト法の発酵時間

オーバーナイト法は、冷蔵庫で一晩発酵させます。

発酵時間の目安としては、8~24時間。

一般的には12時間~24時間で行うことが多いです。

発酵時間は12~24時間

発酵時間が短いと発酵不足となり、24時間を超えると、酵母の働きが弱くなったり、カビの発生や腐敗が起こる可能性が高くなってきます。

酵母による発酵時間の違い

自家製酵母はインスタントドライイーストに比べてやや発酵力が劣りますが、低温で長時間発酵させる場合は誤差の範囲とし、発酵時間はさほど変わらないと考えて良いでしょう。

オーバーナイト法の手順

オーバーナイト法は、二日間にかけておこないます。

一般的なインスタントドライイーストを使った生地という想定で説明していきましょう。

1日目

STEP1 生地を捏ねる

材料を混ぜ合わせ、通常通りミキシングします。

STEP2 一次発酵

一般的な一次発酵は、28~30℃で40分ほどが目安となりますが、オーバーナイト法はさまざまな生地で応用できる製法です。

生地によって発酵時間は異なるため、生地の大きさが1.5~2倍になった頃を一次発酵終了の目標とするのが良いでしょう。

STEP3 分割

生地の分割をおこない、乾燥しないような密閉容器に入れます。

STEP4 冷蔵長時間発酵

5~10℃の温度で12~24時間発酵させます。

発酵は長ければ長いほど熟成しますが、その分腐敗しやすくなるので長時間の置きすぎには注意しましょう。

2日目

STEP5 生地の温度を戻す

冷蔵庫で冷えた生地を、15℃程度の適温に戻します。

夏場であれば常温で、ほかの季節は発酵器などを30℃に設定して一時間ほど放置しましょう。

STEP6 ベンチタイム

生地をガス抜きし、丸めて15~20分ベンチタイムをとります。

STEP7 成形

ベンチタイムをとった生地を、目的の形に成形します。

STEP8 最終発酵

最終発酵は生地の種類や大きさによって時間が異なるため、作るパンの種類に合わせておこないます。

小型のパンであればひと回り大きくなる程度、食パンなどの型に成型した生地は、容器の8分目を目安にすると良いでしょう。

STEP9 焼成

最後に焼成して完成です。

オーバーナイト法と中種法との違い

中種法は、あらかじめ材料の一部の小麦粉や水・イーストのみを使って24℃で1~4時間の長時間発酵させること。

この生地を発酵種(中種)として、さらに残りの材料を混ぜてミキシングし、通常の工程でパンを作ります。

一方、オーバーナイト法は、生地を冷蔵庫で一晩発酵させることを指します。

オーバーナイト法と中種法とを組み合わせた製法で、オーバーナイト中種法というものがあります。

中種法にはさまざまな種類がありますが、一晩冷蔵庫で長時間発酵させる方法を組み合わせた場合には、オーバーナイト中種法と呼ばれています。

オーバーナイト法と低温長時間発酵法との違い

オーバーナイト法と低温長時間発酵の違いについて、同じものではないの?と疑問に思う方も多いかもしれません。

低温長時間発酵の定義は、実は曖昧で、通常のストレート法でおこなう発酵時間や温度よりも低温で長時間であれば、それは低温長時間発酵となってしまうのです。

その時間は1~24時間、温度は冷蔵庫のように5℃でおこなう場合もあれば、室温よりやや低めの17℃程度でおこなう場合があったりと、幅広いのが特徴です。

一方、オーバーナイト法は冷蔵庫で一晩発酵させる製法。

結果的に低温長時間発酵となるため、オーバーナイト法=低温長時間発酵としているレシピ本も少なくありません。

“低温長時間発酵⇒オーバーナイト法”とは言えませんが、“オーバーナイト法⇒低温長時間発酵”とは言えるという認識でいるのが良いでしょう。

オーバーナイト法に向いているパン

オーバーナイト法はさまざまなパンの製法に向いています。

リーンなパン

オーバーナイト法に向いているパンは、おもにバゲットなどのリーンなパンです。

リーンなパンは酵母の餌となる砂糖などの副材料が少ないため、低温で時間をかけて発酵させるオーバーナイト法が向いています。

時間をかけてゆっくり発酵させることで、シンプルな生地のパンに熟成した旨味を出すことができます。

リッチなパン

リーンなパンとは反対に、副材料が多く入るリッチなパンにも向いています。

卵や砂糖、油脂などの副材料が多い生地は、温度が上がりやすくべたつきやすいのが特徴です。

しかし、オーバーナイト法は冷蔵庫で発酵させるため、生地の温度が高くなるのを抑え扱いやすくなります。

折り込み生地のパン

デニッシュやクロワッサンなどの折り込み生地は、生地の間に多くの油脂を挟んで何層にもしなければいけません。

油脂を折り込むには生地をあらかじめ冷やしておき、油脂と生地の硬さを同じにしておく必要があります。

オーバーナイト法で生地を仕込めば、生地は冷蔵発酵で冷たく適切な状態で使用することができます。

オーバーナイト法に不向きなパン

基本的にはどんなパンにもおすすめのオーバーナイト法ですが、なかにはオーバーナイト法に不向きなパンもあります。

ライ麦パン

実際にはライ麦パンをオーバーナイト法で作ることは可能で、オーバーナイト法を使ったライ麦パンのレシピも数多く存在します。

しかし、ライ麦の割合が高いライ麦パンには、オーバーナイト法は向いていません。

ライ麦には乳酸菌や酢酸菌が豊富に含まれているため、長時間発酵させると菌が増殖し、酸臭や酸味が非常に強く出てしまうのです。

オーバーナイト法でライ麦パンを作りたい場合、ライ麦の割合は20%以下とするのが良いでしょう。

まとめ

さまざまな生地に応用できるオーバーナイト法。

二日に分けて作業をおこなうため時間はかかりますが、時間の調整がしやすく、熟成した旨味や甘みを出すことができ、老化を遅らせるメリットがあります。

家庭でも簡単に取り入れることができるので、ぜひ試してみてください。

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この記事を書いた人

医療技術系短大卒業後、バイオ系研究室テクニシャンなどを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中です。
製パンスクールのプロコースを卒業した経歴を活かし、実践に役立つ製パン知識を、よりわかりやすく科学的にお伝えします。
食育アドバイザー、幼児食インストラクター資格保持。

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