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ストレート法の種類(ノータイム法・ノーパンチ法)とは?

パン屋さんでも家庭でもよく使われるストレート法。パン作りのもっとも基本となる製法で、ほとんどの方がパン作りを始めた頃にまずおこなったのがストレート法ではないでしょうか?

ひと口にストレート法と言っても、ストレート法には発酵時間の短いノータイム法やパンチをおこなわないノーパンチ法などがあります。

ここでは、ストレート法の種類について紹介したいと思います。

目次

ストレート法(直捏法)とは

ストレート法とは、最初にすべての材料を混ぜて捏ね、発酵から焼成までをおこなう製法のことで、直捏(じかごね)法とも呼ばれています。

パン作りの基本的な製法で、小規模店舗のパン屋さんや家庭でよく使われています。

もともとは数日かけて発酵させていたパン作りですが、19世紀以降、工業用に開発された圧搾イーストの登場によって、その環境は大きく変化しました。

圧搾イーストとは、製パンに適した単一酵母のみを純粋培養した生イーストのこと。

発酵力が強いため、発酵にかかる時間が短くて済みます。

圧搾イーストの登場をきっかけに、発酵時間の短い製法であるストレート法が確立され、パン作りが効率化されました。

ストレート法の目的

ストレート法は、すべての材料を混ぜてミキシングを1回おこない発酵させる一番基本的な製法です。

パン生地に特徴を出したり、発酵時間を変えるなど特別な目的がなければ、通常ストレート法でパン作りをおこないます。

工程が単純で一日でパン作りを終えることができることから、おもに小規模店舗や家庭で用いられています。

ストレート法の工程

パン作りの基本となるストレート法は、次のような工程でおこないます。

STEP1 ミキシング

最初におこなうのがミキシング。

ストレート法が中種法などの他の製法ともっとも違うのが、このミキシングの工程です。

中種法では最初に粉や水、酵母などの材料の一部をミキシングし、一度発酵させたあとに残りの材料を加え、再度ミキシングをします。

つまり、ミキシングを2回に分けておこなうのです。

一方、ストレート法は最初にすべての材料を一度に混ぜ、捏ねるのが特徴です。

最適なミキシングの状態は、作るパンの種類によって変わります。

ふっくらとボリュームのある仕上がりにしたい食パンや菓子パンでは、やや長めにミキシングします。

反対にフランスパンなどのリーンなパンでは、短めにするなど臨機応変に対応しましょう。

ただし、グルテンの形成を阻害する要因となる油脂だけは、ミキシングでグルテンの形成が確認できた段階で加えます。

グルテンがしっかり形成されて、伸展性や弾力性のバランスがとれたらミキシング完了とします。

STEP2 一次発酵

ストレート法の一次発酵の時間は、60~90分。28~30℃でおこないます。

これは、酵母の活性が28~35℃で良好となるためです。

しかし、発酵時間は生地の量や使う材料、パンを作る環境によって変わります。

40分以上から様子をみて、生地が1.5~2倍に膨らみ、フィンガーテストをして生地に穴が残ったままなら適度な発酵であると判断しましょう。

また、ストレート法がほかの製法と違うところもこの発酵時間。

中種法の発酵時間は通常4時間おこなうため、ストレート法はほかの製法と比べ短時間で発酵を終えることができます。

STEP3 パンチ

パンチは生地内のガスを抜いて新しい空気を取り込んだり、生地に弾力を持たせる目的でおこないます。

一次発酵が2/3ほど進んだところで、生地のガスを抜き、折りたたんで整えたあと、再び発酵を続けましょう。

STEP4 分割・丸め 

発酵が終わった生地は、成形するときの個数に合わせて分割し、丸めます。

ここからの工程は、中種法でも同じ作業となります。

STEP5 ベンチタイム

分割して丸めた生地は、天板に並べて室温で10~20分ほど休ませます。

ベンチタイムをおこなうことで生地が緩み、成形がしやすくなります。

このとき、乾燥させないように濡れ布巾などで生地を覆いましょう。

STEP6 成形

ベンチタイムが終わったら、出来上がりのパンに合わせて成形します。

STEP7 最終発酵

最終発酵とは、焼成前におこなう最後の発酵のことです。

成形した生地を一次発酵よりも高めの32~36℃で、30~80分ほど発酵させます。

最終発酵では、作るパンの種類によって成形した生地の大きさに差があるため、発酵時間も幅があります。

作るパンによって調整しましょう。

STEP8 焼成

焼成温度は200℃前後。時間は12~15分です。

作るパンの種類や使うオーブンの癖によって調整します。

食パンのような大型のパンでは、焼成時間が25~30分かかります。

ストレート法のメリット

ストレート法には次のようなメリットがあります。

作業が単純

ストレート法はすべての材料を一度に混ぜミキシング・発酵させるため、工程がとても単純です。

パン作りの基本となる製法でもあるため、わかりやすく家庭でもっとも使われています。

短時間で済む

ストレート法は1回のミキシングで済み、発酵時間も短いため作り始めてから焼成までにかかる時間が短いのが特徴です。

一般的に、仕込みから焼成までにかかる時間は2時間半から3時間程度。

その日のうちに作業を終えることができます。

小麦の風味を感じやすい

ストレート法は、発酵時間が短いため小麦の鮮度が失われにくく、小麦の風味を感じやすくなります。

ストレート法のデメリット

初心者でもわかりやすいストレート法。パン作りの基本としてもっとも使われている製法ですが、次のようなデメリットもあります。

生地の調整が難しい

短い時間で仕上げるのがストレート法の特徴。

酵母の量も多めで発酵力が強く、短時間で生地が勢いよく膨らみます。

そのため、少しの時間で生地の状態が変化しやすく、後から生地の調整をおこなうのが困難なのが難点。

少しのミスで仕上がりが大きく左右されます。

老化しやすい

ストレート法は、ほかの製法と比べて発酵時間が短いため、水和や熟成が十分ではありません。

そのため水分が蒸発しやすく、パンの老化が早くなります。

機械耐性が悪い

パン作りでは、ミキサーを始め、工場などではさまざまな機械を使います。

機械を使うことによって生地にストレスがかかりますが、ストレート法は長時間ゆっくり発酵させた製法などと比べると、生地にかかるストレスに対する耐性(機械耐性)が低いのが特徴。

生地が傷みやすいのです。

ストレート法に向いているパン

ストレート法には次のようなパンが向いています。

フランスパン

発酵時間が短く、小麦の風味を感じやすいのがストレート法。

そのため、副材料が少なく、小麦の風味をダイレクトに味わうフランスパンなどのリーンなパンが向いています。

ノータイム法とは

ノータイム法とは、品質改良剤を使って発酵時間を短くする製法のことです。

基本的な工程は一般的なストレート法と同じで、材料をほぼ同時に混ぜ合わせ捏ね上げ発酵させます。

ノータイム法の目的

短時間で発酵させることをおもな目的としています。

品質改良剤を使っているため、家庭よりも大手製パン工場などで使われている製法です。

品質改良剤には様々な種類があり、発酵を促進させたり、生地の伸展性を良くしたりとその目的もさまざまです。

使用する品質改良剤はメーカーやパンの種類によって違いますが、いずれにしてもノータイム法では短時間発酵させることを最終目標として使用しています。

ノータイム法の工程

ノータイム法は次のような工程でおこないます。

STEP1 ミキシング

ノータイム法では、ミキシングは高速回転でややオーバー気味におこないます。

こうすることで、グルテンの伸びを最大限に引き出すことができるのです。

捏ね上げ温度は30℃と、ストレート法よりも高めにし、イーストを活発にさせます。

STEP2 一次発酵

ノータイム法は発酵時間の短さが最大の特徴。30分以下でおこないます。

発酵時間は使用する酵母の量や品質改良剤の種類など、発酵を促進する環境に合わせて時間を調整します。

STEP3 パンチ

パンチをおこなうことで、生地内のガスは新しく入れ替わって酵母の働きが活発になったり、弾力がでて窯伸びしやすい生地となります。

STEP4 分割・丸め

作るパンの種類に合わせて分割・丸めをおこないます。

ノータイム法では、短時間で発酵させているため生地が非常にデリケート。

分割や丸めは生地を傷めないよう慎重におこないましょう。

STEP5 ベンチタイム

分割して丸めた生地は、天板に並べて10~20分ほど休ませます。

ストレート法と同じく、濡れ布巾などをかけて生地が乾燥しないように注意しましょう。

STEP6 成形

ベンチタイムを終えたら生地を作りたいパンに合わせて成形します。

発酵時間が短いノータイム法でも、品質改良剤によって伸展性があり成形しやすくなっています。

STEP7 最終発酵

最終発酵は、一次発酵と違い通常のストレート法と同じように60~90分ほどおこないます。

STEP8 焼成

ストレート法と同じように、ノータイム法でも200℃前後で12~15分焼成します。

食パンのような大型のパンの場合は、25~30分ほど焼成しましょう。

品質改良剤によって、窯伸びしやすくなっています。

ノータイム法のメリット

ノータイム法には次のようなメリットがあります。

時間が短縮できる

ノータイム法の最大のメリットは、時間の短縮ができることです。

発酵時間が30分以下と非常に短いため、パン作りにかかる時間を大幅に短縮することができます。

窯伸びしやすい

ノータイム法では、生地に還元剤を加え伸展性を良くしています。

そのため、窯伸びしやすくなるのが特徴です。

ノータイム法のデメリット

ノータイム法のデメリットは以下の通りです。

旨味や風味が乏しい

発酵時間が短いため、発酵によって生まれる熟成した旨味や甘み・風味に乏しいのが難点です。

生地の管理が難しい

発酵時間が短いことから、生地が水分を十分に吸っていないため、品質が不安定になりやすいのが特徴です。

このような生地を扱うには、生地の管理を機械で徹底しておこなう十分な管理体制が必要になります。

そのため、家庭でノータイム法を使ってパン作りをおこなうのは難しく、工場での大量生産向きの製法と言えるでしょう。

ノータイム法に適しているパン

ノータイム法は次のようなパンに適しています。

食パン

還元剤などの品質改良剤を多く使っていることで、伸展性が良く窯伸びしやすくなっているため、食パンを作るさいに適した製法です。

ノーパンチ法とは

ノーパンチ法とは、発酵の途中でパンチをおこなわない製法のことです。

パンチは一次発酵の途中で生地をたたみ、発酵中に発生した炭酸ガスを一度抜くことで、ストレート法の工程に取り入れられています。

ノーパンチ法の目的

ノーパンチ法は、パンチの必要がない生地において、パンチの工程を省いてパン作りをおこなうことがおもな目的です。

パンチをおこなうことで発酵中に発生したガスを抜き、大きな気泡を潰して細かく均一の気泡にし、きめの細かい焼き上がりにすることができます。

また、パンチをおこなうと生地内の温度を均一にすることができます。グルテンを強化したり、新しい空気を取り込んでイーストの発酵が促進され膨らみやすくなります。

しかし、パンチは必ず必要な工程というわけではなく、作るパンの種類や目指す仕上がりによっては必要がありません。

ノーパンチ法の工程

ノーパンチ法は次のような工程でおこないます。

STEP1 ミキシング

ストレート法と同じく、材料をすべて混ぜて1回のミキシングでおこないます。

グルテンの形成が確認出来たらミキシングを完了します。

STEP2 一次発酵

発酵時間もストレート法と同じく40分から様子をみていき、作るパンの種類によって変え、生地が1.5~2倍に膨らむまでおこないましょう。

ここで、注意するのがパンチ。

ストレート法では、一次発酵の途中でパンチをおこなうことがありますが、ノーパンチ法の場合はパンチをおこなわない製法です。

そのため、パンチはせずに一次発酵を一気におこないましょう。

STEP3 分割・丸め

分割・丸めのやり方もストレート法と同じように作りたいパンの種類に合わせておこないます。

パンチをおこなっていないぶん、生地は緩くハリが少ないのが特徴です。

また、生地内の気泡は大きく不均一となっています。

丸めのさいに大きな気泡が残らないようきちんとガス抜きをおこないましょう。

STEP4 ベンチタイム

ストレート法と同じく、分割して丸めた生地は天板に並べ、10~20分ほど休ませます。

STEP6 成形

目的のパンに合わせて成形をおこないます。

パンチをおこなった場合と比べ、生地に伸展性があり成形しやすいのが特徴です。

STEP7 最終発酵

パンチをおこなった場合と比べ、生地の伸展性が高く弾力性には欠けるため、発酵によって生地が膨張しやすくなります。

STEP8 焼成

200℃前後で12~15分焼成します。

パンチをおこなった場合と比べ、弾力性が劣るため、窯伸びしにくいのが特徴です。

ノーパンチ法のメリット

ノーパンチ法には次のようなメリットがあります。

時間が短縮できる

パンチがないぶん、パンチをおこなった場合と比べて時間を短縮することができます。

生地へのダメージが少ない

工程が多くなるほど、生地への負担が大きくなります。

ノーパンチ法はパンチをおこなわない製法であるため、そのぶん生地へのダメージが少なくなります。

ソフトな食感になる

パンチをおこなうことで“すだち”が均一になったり、引きが強くなります。

そのため、パンチをおこなわないノーパンチ法では、ふわふわでソフトな食感に仕上がるのが特徴です。

ノーパンチ法のデメリット

ノーパンチ法には次のようなデメリットがあります。

風味が劣る

パンチをおこなうことで、生地内に充満していたガスが抜け、新しい空気を取り込むことができます。

空気の入れ替えのないノーパンチ法では、生地内に発酵によって発生したアルコールが充満しており、小麦そのものの風味がやや劣るのが特徴です。

ノーパンチ法が適しているパン

ノーパンチ法が適しているパンには、次のようなパンがあります。

リッチなパン

リッチなパンとは、卵や牛乳・砂糖・バターなどの副材料を多く使ったパンのこと。

菓子パンやクロワッサンなどです。

このような副材料が多く入る生地は、膨らみやすいためパンチをせずに作ることができます。

フィリングが多いパン

一般的にパンチをおこなうことの多い食パンでも、焼成後の引きを強くしたい場合や、フィリングの量が多い場合はパンチをおこないません。

発酵時間が短いパン

パンチをおこなう必要があるパンは、一般的に発酵時間が長いパンです。

発酵時間が長くなることで、アルコールが充満しているため新しい空気を取り込む必要があるため、膨らみやすくするためです。

しかし、一時間以内の発酵時間であればイーストも多く使われており十分膨らみやすいためパンチをおこないません。

まとめ

ひと口にストレート法と言っても、基本のストレート法を始め、ノータイム法やノーパンチ法などその種類はさまざま。

パン作りは決して簡単な作業とはいかないため、作業効率やパンの品質など何を優先しておこなうべきかを考えることが大切です。

パンチをおこなう必要がないパンがあったり、作業効率を上げるために発酵時間を短くしたいなど、目的に合わせて製法を選んでみましょう。

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この記事を書いた人

医療技術系短大卒業後、バイオ系研究室テクニシャンなどを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中です。
製パンスクールのプロコースを卒業した経歴を活かし、実践に役立つ製パン知識を、よりわかりやすく科学的にお伝えします。
食育アドバイザー、幼児食インストラクター資格保持。

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