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レシピ通りなのに生地がベタベタ!捏ねてもまとまらない原因と対策法を解説!

レシピ通りに作ったはずなのに、なぜか生地がベタベタしてなかなかまとまらないといった経験はありませんか?

パン生地は、捏ね方や水分量、生地の温度や材料の影響によって状態が大きく変化します。

生地がベタベタしてしまうのも、これらが原因となり、グルテンの形成が阻害されることが要因となっているのです。

同じように作っても全く同じパンが完成しないのが、パン作りの難しいところでもあり面白いところですよね。

原因と対策を知っておけば、失敗するリスクを減らすことができますよ。

ここではまとまらない生地の原因と、対策法について解説していきたいと思います。

目次

捏ねて生地がまとまるのは何故か

そもそも、捏ねて生地がまとまるということはどのように起こっているのでしょうか?

それには、グルテンの形成が大きく関係しています。

小麦粉には小麦タンパクが含まれており、その約80%を占めるのがグリアジンとグルテニンです。

この二つのたんぱく質は、水を加えて捏ねることによってグルテンを形成します。

パン作りをおこなう際は、粉に水を加えたあとミキシングという工程がありますが、小麦粉が吸水し、ミキシングという物理的な力を加えることによってグルテンを形成します。

形成されたグルテンは複雑に絡み合い、網目構造となって“生地がまとまる”状態になるのです。

グルテンが形成されることで発酵によって発生する炭酸ガスをしっかり保持し、生地は膨らむことができます。

生地がまとまらない原因

グリアジンとグルテニンを含む小麦粉に水を加えて捏ねると、グルテンを形成し生地がまとまると紹介しました。

しかし、当たり前のようにこれらの作業をおこなっても、生地がまとまらないことがあります。

水を加えて生地を捏ねてもまとまらない原因には、どのようなものがあるのでしょうか?

捏ねの影響

捏ね方に問題があると、生地がまとまらないことがあります。

捏ねによって生地がまとまらない原因は、2つのことが影響しています。

アンダーミキシング

アンダーミキシングとは、捏ね不足のことを指します。

生地がまとまるためには、物理的な衝撃が必要です。

ここで言う物理的な衝撃とは、生地を練ったり、叩きつけたり、捏ねたり引っ張るということです。

このように、生地を伸ばして練るという作業を繰り返すことでグルテンの網目構造が形成され、生地がまとまります。

しかし、捏ね不足だとグルテンの網目構造が十分に形成されず、生地がまとまらない原因となってしまうのです。

オーバーミキシング

オーバーミキシングとは、捏ねすぎのことを指します。

また、ミキシングのしすぎでも生地はベタベタしてまとまらなくなります。

ミキシングによってグルテンの網目構造が形成され、生地がまとまってくるのですが、ミキシングを必要以上にやりすぎてしまうと、せっかくできたグルテンの構造が破壊され、生地がダレてベタベタしてしまうのです。

水分量の影響

材料に使う水には、小麦粉に対して適した水分量があります。

当然、その適量を超えてしまうと小麦粉は吸水することができず、溢れた水分が生地をベタベタさせるのです。

高加水パンの場合は、通常よりも多くの水を加えて作ります。叩き捏ねなどが難しいため、ほとんど捏ねることがありません。

その分、冷蔵庫で長時間発酵させる方法でグルテンを繋げています。

水分量の多いパンというのは、このように生地がまとまりにくくベタベタしてしまうのです。

温度の影響

生地がまとまらない理由には、温度も影響しています。

室温は高すぎても低すぎても生地がまとまりにくくなるため、22~25℃くらいがベストとされています。

さらに、ここで気にすべきは捏ね上げ温度です。

捏ね上げ温度は、通常24℃~30℃の間におさまるようにし、作るパンによって適切な温度が変わります。

捏ね上げ温度は生地の状態に大きく関係し、生地の温度は低くても高くてもグルテンが形成されにくくなるのです。

生地の温度が低い場合

生地の温度が低い場合、小麦粉の吸水性が悪くなるため伸展性がなくなり、グルテンの形成が阻害されてしまうのです。

そのため、生地の温度が低いと硬い生地に仕上がります。

また、生地の温度が低い場合はミキシング不足も考えられます。

前述した“捏ねの影響”の項目でも解説しましたが、ミキシング不足は生地がまとまらない原因の一つです。

ミキシング不足によって捏ね上げ温度が適正な温度まで上がらないことも十分に考えられます。

ミキシングの際には摩擦によって熱が発生しますが、ミキシングが不足していると十分に温度が上がらないためです。

室温や仕込み水に問題がないのに捏ね上げ温度が低くなるという場合は、ミキシング不足を疑い、追加でミキシングを行なうなどの対応が必要となります。

生地の温度が高い場合

温度が低い場合に小麦粉の吸水性が悪くなるのに対し、温度が高い場合は吸水性が良くなり、伸展性が増します。

一方で、弾力性は徐々に失われていき、伸展性と弾力性のバランスが崩れてグルテンは壊れてしまうのです。

材料の水の分量を間違わなければ問題がないように感じますが、小麦粉が吸水できる量は材料の水のみならず、空気中の水分も影響します。

必要以上の水分を取り込むことで、生地がべたつき、まとまりにくくなるのです。

また、生地の温度が高い場合は、室温や仕込み水だけでなくミキシングオーバーによる過剰な摩擦熱の可能性を考え対策していきましょう。

主材料・副材料の影響

主材料となる小麦粉や塩、副材料として使う砂糖・油脂・卵・牛乳なども生地のべたつきに影響を与えます。

小麦粉の種類による影響

小麦粉は、種類によって吸水率が変わります。

吸水率はたんぱく質の量が多いほど高くなり、たんぱく質の量が少ない小麦粉は吸水できる量も少なく、余った水分が生地をベタベタさせるのです。

小麦粉に含まれるたんぱく質の量は、強力粉で多くなり、準強力粉、薄力粉の順で少なくなります。

さらに、外国産小麦粉は国産小麦粉に比べるとたんぱく質の量が多いのが特徴です。

小麦タンパクの量はグリアジンとグルテニンの量にも比例するため、たんぱく質の量が多いほどグルテンが形成されやすくなりますが、たんぱく質の量は小麦粉の吸水率にも関係しているのです。

生地に対する塩の影響

塩には生地を引き締める役割があります。

塩を加えることで、グルテンの性質が変化し弾力性が増します。

そのため、塩を入れ忘れてしまうと味に影響するばかりではなく、生地がべたつきまとまりにくくなるのです。

生地に対する砂糖の影響

砂糖の分量は、小麦粉に対して5~10%程度が適量です。

基本的に、レシピ通りに作っていれば問題ありません。

しかし、砂糖の分量が多すぎるとグルテンの形成が阻害され、生地がベタベタしてまとまりにくくなってしまいます。

10%を超えると段々まとまりにくくなり、20%以上ともなると非常に作業性が悪くなります。

生地に対する油脂の影響

油脂には、グルテンたんぱく質を覆うコーティング効果があります。

グルテンたんぱく質を油脂が覆うことで、グルテン同士のつながりを阻害し、生地が緩くまとまりにくくなります。

そのため、グルテンが形成されにくくなるのです。

特にリッチなパンでは油脂の量も多く、生地がまとまりにくい特徴があります。

生地に対する卵の影響

菓子パンなどのリッチなパンでは、材料に卵を使うことがよくあります。

卵には卵黄に含まれるレシチンによる乳化剤の役割や、たんぱく質が熱変性して固まる熱凝固性があり、グルテンの骨格形成を補強してくれる効果があるのです。

生地に対する牛乳の影響

牛乳には乳脂肪分が含まれており、この乳脂肪分が被膜となって小麦粉の水和を阻害し、グルテンが形成されにくくなってしまいます。

生地がまとまらない時のチェックポイントと対処法

最後に、生地がまとまらない時のチェックポイントと、対処法について解説していきます。

捏ね不足になってないか?

伸ばし捏ねがうまくいっていない場合には、早い段階で叩き捏ねをおこない、生地に強い衝撃を与えてみるのも一つの手です。

捏ねる時間は15~20分程度を目安にし、それ以上捏ねても生地がまとまらない場合は、ほかに原因があると疑いましょう。

小麦粉の種類はレシピと同じか?

小麦粉は種類によって吸水率に違いがあります。

まずは使っている小麦粉がレシピと同じかどうか確認しましょう。

吸水率は、強力粉と準強力粉でも違いますし、強力粉のなかでも国産強力粉と外国産強力粉で差があります。

レシピで使用している強力粉の品種がわかれば、同じかそれに近いものを選ぶのがおすすめです。

ただし、吸収率はそれぞれの強力粉ごとに数値として記載してあるわけではありません。

吸水率の判断基準としては、たんぱく質含有量に着目することが大切です。

たんぱく質含有量が少ないほど吸水率は低くなり、たんぱく質含有量が多いほど吸水率は高くなるためです。

製菓・製パン材料の通販サイトのcottaでは、強力粉別のたんぱく質の量を比較することができます。

吸水率の違いによってどの程度水分を減らすかは、日々多くのパンの製造を経験することで、吸水率の違いを体感し加える水の量などを調整していくことができます。

外国産強力粉を使用したレシピで、水のベーカーズパーセントが70%ほどであった場合、国産強力粉に置き換えるときの水のベーカーズパーセントは、まずは65%程度にし、そこから少しずつ増やして調整していくと良いでしょう。

水分量はレシピ通りか?

水分量や粉量をはかり間違えている可能性を考えます。

間違えてレシピとは違う量を入れていたり、そもそもベーカーズパーセントの計算の段階で計算間違いをしている可能性がないか確認してみましょう。

分量の間違いがないと考えられるのに生地がまとまりにくい場合は、小さじ1杯程度の温水を加えてミキシングし、様子をみます。

足りなければさらに小さじ1杯というように増やして、ミキシングしていきましょう。

反対に、生地がベタベタして粉量が足りない場合は、大さじ1杯の小麦粉を足して調整します。

部屋の湿度は高くないか?

部屋の湿度が高くないか確認します。

湿度が高いと粉が湿気を吸ってしまい、生地がベタベタしてしまう原因となるためです。

しかし、湿度が何%以上で高いとするのか、それによって水分量をどのくらい調整すると良いのかは一概には言えません。

これは、作るパンの種類によって湿度から受ける影響度、使っている小麦粉の種類による吸水率が変わるためです。

パン屋さんでは、湿度70%を超えるときにはパンの種類によって水分量を1%~2%程度減らし、調整するなどの対応をおこなっているところもあります。

しかし、これは日々の経験から調整する水分量を決めているもので、小麦粉の種類や作るパンの種類などによって吸水率が変わるため、店によって減らす水の量は違います。

毎日同じ場所で同じ生地を仕込む場合は、毎日きちんと温度や湿度をはかり記録しておくことで、湿度の変化による生地の状態の違いを感じることができるのです。

家庭などで不定期にパンを作る場合には、基本的に梅雨の時期や雨が続く日に湿度の影響を考えます。

通常時はレシピ通りの水分量にし、梅雨の時期や雨が続く日にはいつもより水分量を減らしてみましょう。

減らす水分量は生地の量でも変わりますが、一般的な家庭で仕込む量の生地であれば、まずは10ml程度水を減らし、徐々に様子をみて残りの水を足していくと良いでしょう。

仕込み水の温度が低くないか?

仕込み水の温度が低くないか確認します。

冬場などは室温が低く、粉の温度も低くなっています。

それに合わせて仕込み水の温度は高めになりますが、水道水をそのまま使っていては冷たすぎる可能性があります。

冬の水道水の温度は、10℃以下になることもあるのです。

水の温度を上げる場合は、水道水に温度調整機能があれば、それで調整するのが手軽でおすすめです。

ない場合は、少し電子レンジなどで温めて調整すると良いでしょう。

室温が18℃であれば、仕込み水の温度は27℃が適温です。

これは以下の仕込み水の計算式で導くことができます。


水温(仕込み水の温度) = 3(捏ね上げ温度 - 摩擦係数) - (粉温 + 室温)


目標とする捏ね上げ温度を28℃、粉の温度が室温と同じ18℃、摩擦係数を7℃とした場合の計算方法は、計算式に当てはめると


水温(仕込み水の温度) = 3(28 - 7) - (18 + 18)

水温(仕込み水の温度) = 27℃


となります。

仕込み水の温度が高くないか?

仕込み水の温度が高くないか確認します。

夏場は室温が上がるため、仕込み水の温度を低くする必要があります。

水道水も夏場は28℃前後と高くなっているので、水道水をそのままま使っては温度が高すぎる可能性があります。

事前に氷を作っておき、水道水に氷を加えて仕込み水の温度を調整しましょう。

室温が28℃で粉の温度も同じ28℃であった場合は、仕込み水の温度は7℃が適温です。

前述の「仕込み水の温度が低くないか?」の項目で紹介した計算式で導き出すことができます。

塩を入れ忘れていないか?

塩は入れる量が少ないため、入れ忘れで多い材料の一つです。

ミキシングの段階で気づいたら、途中で加えても問題ありません。

生地全体に行き渡るようにきれいに混ぜ込みましょう。

砂糖の分量は多くないか?

砂糖の分量をはかり間違えていたり、ベーカーズパーセントの計算の段階で計算間違いをしていないか確認します。

砂糖は入れなくてもパンを作ることができますが、多く入れすぎてしまったらいつまでも生地はまとまらずにベタベタしてしまいます。

砂糖を多く入れすぎてまとまらない生地は、高加水パンのように手粉を多めに使って成形し、焼成までおこなうことは可能です。

ただし、砂糖を入れすぎた生地は酵母の力が弱まり膨らみが悪くなります。

砂糖で味も甘くなっているため、フレンチトーストなどに使うのが良いでしょう。

油脂の分量は多くないか?

油脂の分量をレシピより多く入れていないか確認します。

また、ベーカーズパーセントの計算の段階で、計算ミスをしていないかも確認が必要です。

分量を正しく入れているのに生地がまとまらない場合は、まずは油脂を入れたタイミングを見なおします。

油脂を入れると生地はまとまりにくくなるため、グルテンが形成されてから投入する必要があるのです。

ほかの材料と同じタイミングで入れている場合は、グルテンが形成されてから入れるようにしましょう。

正しい分量とタイミングで入れていてもまとまらなければ、叩き捏ねをするなどして生地に衝撃を与えます。

ミキシング時間は15~20分程度を目安とし、20分以上捏ねてもまとまらない場合は、ほかの原因があると考えた方が良いでしょう。

牛乳の分量は多くないか?

牛乳の分量を多く入れすぎていないか確認します。

レシピ通りに入れたのか、そもそもベーカーズパーセントの計算の段階で計算間違いをしていないか確認します。

分量に間違いがない場合は、油脂の対処法と同じく叩き捏ねをして生地に衝撃を与えましょう。

この場合も15~20分を目安とし、20分以上捏ねてもまとまらない場合は、ほかの原因と考えた方が良いでしょう。

まとめ

生地がまとまらない理由には、作業環境やミキシング、水分量や材料による影響などさまざまなことが考えられますが、ほとんどがグルテンの形成が阻害される原因となっていることがわかりました。

レシピ通りに作っても生地がまとまらないなど、パン作りは思い通りにいかないこともあります。

原因を追究することは時間がかかりますが、その原因には何があるのか、原因がわかったときの対策法を知っておくことで、さまざまなレシピに対応できるようになりますよ。

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この記事を書いた人

医療技術系短大卒業後、バイオ系研究室テクニシャンなどを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中です。
製パンスクールのプロコースを卒業した経歴を活かし、実践に役立つ製パン知識を、よりわかりやすく科学的にお伝えします。
食育アドバイザー、幼児食インストラクター資格保持。

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