バターとショートニングの違いは?どう使い分ける?代用や置き換えには向かないよ!

2020 6/26
バターとショートニングの違いは?どう使い分ける?代用や置き換えには向かないよ!

パン作りに欠かせない材料の一つでもある油脂。

油脂を入れることで、ふっくらと軟らかく、ボリュームのあるパンに仕上がります。

しかし使う油脂には、バターの場合もあればショートニングの場合もありますよね。

この使い分けは一体どうしたらよいのでしょう?

バターは生地の伸びが良くなり、パンに豊かな風味を出したいときに良く使い、ショートニングは軽い食感にしたいときに使われています。

また、両方の特性を生かして一つの生地の材料としてどちらも使うこともあるでしょう。

今回はそんなバターとショートニングの役割の違いや、使い分けについて詳しく解説していきたいと思います。

目次

製パンでの油脂の役割

まずは製パンでの油脂の役割について説明していきましょう。

パンは油脂を入れなくても作ることができます。

フランスパンなどのリーンなパンでは使いません。

しかし、油脂を入れると生地や焼成後のパンにさまざまな効果をもたらすことができます。

生地の伸張性が増す

油脂を入れると生地の伸張性が増します。

伸張性とは、生地が良く伸びて切れないという性質のことです。

伸張性が増すということはつまり、作業性が良くなるということなのです。

生地の伸張性を増すためには、液体油脂ではなく固形油脂を使う必要があります。(この理由については、可塑性固形油脂の項目で詳しく後述します)

より伸張性を増すためには、グルテンができてから油脂を加えてさらにミキシングします。

発酵時に膨張しやすくなる

油脂を入れた生地は、グルテン膜が被膜でコーティングされ発生した炭酸ガスが逃げにくくなり、発酵時に膨張しやすくなります。

窯伸びが良くなる

油脂を入れることで焼成時に窯伸びが良くなります。

生地のボリュームがある食パンではその違いが顕著に表れます。

老化を防ぐ

油脂には水分の蒸発を防ぐ効果があります。

水分の蒸発は老化を早めることになるので、油脂を入れることで水分の蒸発を防ぎ、老化を防ぐことができます。

リッチなパンほど老化が遅いのはこのためです。

油脂固有の風味付け

油脂の中でも特にバターはコクと風味が特徴で、パンに風味をつけることができます。

油脂のコーティング効果(被膜効果)

油脂には生地内にできたグルテンを覆うコーティング効果があります。

これはグルテンタンパク質に油脂の分子が結合し、グルテンがコーティングされた状態になって、グルテン同士のつながりを阻害してくれるためです。

グルテン同士のつながりが阻害されると、生地がゆるくなり伸張性が増します。

そのため、生地を捏ねるときには最初から油脂を加えるのではなく、ある程度捏ねてグルテンが形成され始めてから加える必要があります。

油脂の潤滑効果(リュブリゲート)

グルテンタンパク質が油脂によってコーティングされることで、グルテン同士がぶつかることがなく、摩擦が生じにくくなり滑りも良くなります。

グルテン同士がぶつかると膜が厚くて目が粗いパンになってしまいます。

グルテンの膜を薄くしておくことは、窯伸びが良くなり、パンがしっかりと膨らんでいくために欠かせません。

このように油脂には潤滑剤としての効果もあるのです。

油脂のショートニング性

次に、油脂のショートニング性について説明しましょう。

ショートニング性とは

ショートニングはshorten(脆くする、軽くする、短くする)という言葉が語源となっています。

つまり、製パンでの油脂のショートニング性とは生地の構造を弱めることを意味します。

強いグルテンを持たないパンは、軟らかくサクサクした食感となります。

ショートニング性を生かした食品

軟らかくサクサクした食感になる特性は、パイ生地などに応用されています。

パン以外でも軟らかい食感に仕上げたいケーキ、サクサクとした食感に仕上げたいクッキーやクラッカー、ビスケットなどの菓子でもこのショートニング性が生かされています。

油脂のクリーミング性

続いては、油脂のクリーミング性について説明していきましょう。

クリーミング性とは

クリーミング性とは、油脂を攪拌してクリーム状にしたときに、空気をとりこむ性質のことです。

空気をより多くとりこむ性質のことを、クリーミング性が高いと表現します。

クリーミング性を高めるには20℃前後が最適で、クリーミング性が高いほど焼いたときにとりこんでいた空気を核とし、発生した水蒸気や炭酸ガスが熱膨張して膨らみやすくなります。

バターを常温に戻して使うのはクリーミング性を高めるためで、この性質は糖分との相性が良く、砂糖と合わせたときに気泡を大量に含むことができます。

バターとは

ここまでは製パンにおける油脂の役割について紹介してきました。

それでは良く使われるバターとショートニングにはどのような違いがあるのか見ていきたいと思います。

まずはバターについて紹介しましょう。

バターは牛乳を原料としています。

遠心分離機でクリームと脱脂乳に分離し、クリーム部分を練って固めたものがバターです。

バターには乳脂肪分が80%以上含まれ、水分の量は17%以下です。

バターと一口に言っても発酵バターと無発酵バターがあり、それぞれに有塩バター、食塩不使用バターがあります。

一つずつ紹介していきます。

発酵バターとは

発酵バターとは、生クリームに乳酸菌を加え、発酵させて作ったものです。

乳酸菌による酸味があり、コクとうまみが強いのが特徴で、本場フランスではポピュラーなバターとなっています。

日本でも発酵バターはとても人気がありますが、希少品で非常に高価です。

製パンでも使われますが、フィナンシェやパウンドケーキなど、材料がシンプルでバターの風味を強く出したい焼き菓子によく使われています。

・発酵バターはフランスではポピュラー
・発酵バターはバターの風味を強く出せる

無発酵バターとは

日本で主流なのが無発酵バターです。

発酵バターの場合は発酵バターという名前で売られていますが、無発酵バターの場合は特に表示されていません。

特に表示がなく、一般的に販売されているものは無発酵バターと思って良いでしょう。

製パンでは無発酵バターが良く使われています。

・無発酵バターは日本で主流
・無発酵バターは製パンでよく使う

有塩バターとは

有塩バターは1.5%程度の食塩を加えたバターです。

塩が含まれているので、製パンではあんバターサンドなどのフィリングとして使われることはありますが、生地の材料として使うことはほとんどありません。

・有塩バターは生地には使わない

食塩不使用バターとは

食塩不使用バターとは、製造の過程で食塩を添加せずに作られたバターのことです。

有塩バターでパンを作ることもできますが、バターを多く使うレシピでは有塩バターの分量が増えるほど、食塩の量を調整することは難しくなります。

そのため、製パンでは通常食塩不使用のバターが使われています。

食塩不使用バターは、以前は無塩バターという名称で販売されていました。

しかし、食塩を添加せずに製造したバターでも、生乳由来の塩分が微量に含まれるため、食品表示基準により現在は無塩ではなく食塩不使用という表記へと変わりました。

とは言え、今でもレシピなどでは無塩バターという表記で書かれていることも多く、一般的に使われる名称としても無塩バターが主流です。

・食塩不使用バターは製パンでよく使う

食品表示の参考文献

消費者庁 食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン p20 (3)栄養強調表示の表現例

ショートニングとは

次は、ショートニングについて紹介しましょう。

ショートニングはラードの代用品としてアメリカで誕生した油脂で、おもに植物性の油から作られています。

ショートニングの製法はマーガリンに似ており、植物油に水素を添加し、乳化剤などを加えて冷却することで液体の油を固形の油にすることができます。

少し詳しく見ていきましょう。

ショートニングの製法

おもに動物由来の固形油脂は飽和脂肪酸で、植物由来の液体油脂は不飽和脂肪酸です。

そこで、二重結合の不飽和脂肪酸に水素を添加すると、水素付加物となって飽和状態となります。

飽和すると液体だった油は固形へと変化します。

これが液体油脂を固形油脂に変えるメカニズムです。

ショートニングの特徴

ショートニングの成分はほぼ100%油脂でできており、乳成分や水分は含みません。

また、固形のものが一般的ですが、ショートニングには固形のほかにクリーム状のものや粉末のものもあります。

ショートニングはバターと違い白色の無味無臭で、素材の風味を生かしたいときに使われます。

水分を含まないので安定性に優れ、常温で保存することが可能です。

・ショートニングは無味無臭
・ショートニングは安定性に優れる

バターもショートニングも可塑性固形油脂

次にバターやショートニングの特徴として共通する可塑性固形油脂について説明していきたいと思います。

可塑性固形油脂とは

可塑性とは、外部からの力の刺激によって自由に形を変えることができる性質のことです。

その性質をもった油脂を可塑性固形油脂と言います。

可塑性は液体油脂にはない

可塑性を十分に発揮した固形油脂は、生地の内部で被膜のような役割をしています。

この可塑性のおかげで生地の伸展性や伸張性が増し、パンがきれいに膨らみやすくなるのです。

可塑性の最適温度は15℃で、発酵中の生地で固形油脂の可塑性が保たれている状態は28℃くらいまでです。

つまり可塑性は固形油脂にはあるものの、液体油脂にはないのです。

したがって、溶かしバターなどを使うこともできません。

・固形油脂には可塑性がある
・液体油脂には可塑性がない
・可塑性があると生地が膨らみやすい

油脂のショートニング性は可塑性固形油脂に共通の特徴

油脂のショートニング性が発揮できるのは、固形油脂が可塑性を最大限に発揮し、生地内で薄い膜の状態を保っているからです。

そのため、バターやショートニングなどの可塑性固形油脂には、ショートニング性があるという共通した特徴があります。

ショートニング性が一番高い油脂はショートニング

ショートニング性は少なからずどの固形油脂にもありますが、一番ショートニング性が高い油脂は、名前の由来ともなっているショートニングです。

ショートニング性を十分に発揮させるには、油脂が薄い層状になって広がらないといけません。

ショートニングを使った場合、油脂は生地中でさらに細かい油滴となって薄く分散し、それが焼成することでグルテンに吸収され、脆い食感が生まれます。

100%脂肪球でできているショートニングは、バターと比べより純度が高く、この性質を強く発揮することができるのです。

・ショートニングは100%脂肪球
・ショートニングは生地中で薄く分散する
・ショートニングはショートニング性が高い

クリーミング性が一番高い油脂はショートニング

クリーミング性が一番高い油脂はショートニングです。

クリーミング性は温度変化に依存し、15℃付近でもっともその力を発揮します。

20℃前後で可塑性が高くなるバターよりは、温度の影響を受けず安定しているショートニングの方が、よりクリーミング性が高くなるのです。

・ショートニングは温度の影響を受けず安定している
・ショートニングはクリーニング性がバターより高い

ショートニングの性質の参考文献

東京家政大学 ショートニング添加バターによるバタークリームの物理的性質と食味について

PDFファイル 東京家政大学 ショートニング添加バターによるバタークリームの物理的性質と食味について p2

バターを使うべき場合

バターにもショートニングにも、ショートニング性やクリーミング性がありますが、ショートニングの方がよりその性質が高いことがわかりました。

それでもバターを材料に使ったパンはたくさんあります。

もっとも、ショートニングは19世紀にラードの代用品として誕生したものなので、もともとパンの材料として使われていた油脂はバターでした。

では、ショートニングが誕生した今もショートニングよりもバターを使うべき場合には、どのようなものがあるのかご紹介していきたいと思います。

パンに風味付けをしたいとき

バターには特有の風味があり、パンの風味づけに一役かっています。

また、コクを出すことができるのもバターの利点です。

クロワッサンやパイ生地の折りこみに

クロワッサンなどの折りこみ生地の場合、ショートニングでは生地がだれやすく、うまく折りこみ作業ができません。

そのため、折りこみにはバターが使われています。

ショートニングを使うべき場合

ショートニングを使うべき場合には以下のようなものがあります。

素材の風味を生かしたいとき

ショートニングは無味無臭であることから、小麦の風味を生かしたいときやフィリングなどの素材を生かしたいときに向いています。

軽い食感のパンにしたいとき

ショートニングはショートニング性やクリーミング性が一番強い油脂なので、軟らかくボリュームのあるパンや、サクサクした食感に仕上げたいときに特に有効です。

まとめ

製パンに使われるバターやショートニングには、それぞれ違った役割があり、目的によって使い分ける必要があります。

もちろん油脂を使わずにパンを作ることもできますが、油脂の特性を生かして製パンの幅を広げることができます。

役割の違いを理解することで、製パンの応用が利き、より多くの製品を生み出すことができるのです。

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