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赤ちゃんでも蜂蜜入りパンは食べられる?パンの焼成温度でボツリヌス菌は死滅するのか?

赤ちゃんの離乳食が始まると、パン粥を食べさせることもありパンの材料が気になるところ。

「1歳未満の乳幼児にはちみつを与えてはいけない」ということは知っていても、赤ちゃんに蜂蜜入りのパンを食べさせて良いのかも気になるところですよね。

残念ながら、パンの焼成温度ではパン生地に練り込まれた蜂蜜のボツリヌス菌は死滅しないのです。

そのため、赤ちゃんには蜂蜜入りのパンを食べさせることはできません

目次

はちみつとボツリヌス菌

1歳未満の乳幼児に与えてはいけないとされているはちみつ。

はちみつには、ボツリヌス菌が含まれていることがあるのです。

ボツリヌス菌とは

ボツリヌス菌は学名でClostridiumu botulinumといい、偏性嫌気性の菌です。

偏性嫌気性とは、増殖するのに酸素を必要としない性質のことです。

そのため、ボツリヌス菌は酸素のない環境でも増殖することができます。

ボツリヌス菌は増殖の過程で毒素を産生する、毒素型食中毒菌と呼ばれています。

ボツリヌス菌の食中毒の原因は、ボツリヌス菌の出すボツリヌス毒素によるものなのです。

主な感染経路

ボツリヌス菌は土壌に多く存在する菌です。

主な完成経路としては、真空パックされた加工品や缶詰、自家製長期保存食品や要冷蔵のレトルト食品を常温保存した場合などがあります。

主な症状

ボツリヌス菌の食中毒で起こる主な症状は、下痢や嘔吐、言語障害などの神経症状があります。

潜伏期間は8~36時間となっています。

赤ちゃんとボツリヌス菌

なぜ赤ちゃんは特にボツリヌス菌に注意しなければいけないのでしょうか?

ボツリヌス菌が原因で起こる食中毒のなかには、1歳未満の乳児に起こる乳児ボツリヌス症というものがあるからです。

通常、ボツリヌス菌の食中毒はボツリヌス菌の産生する毒素が原因で起こるものです。

毒素が大量に産生された食品を食べると、成人でも食中毒を起こす可能性があります。

しかし、乳児ボツリヌス症は毒素を産生していない食品でも、ボツリヌス菌が存在すればボツリヌス菌の芽胞の増殖によって食中毒を起こしてしまうのです。

乳児ボツリヌス症とは

ボツリヌス菌は、通常はちみつのなかでは増殖することはできません。

ボツリヌス菌が含まれるはちみつを食べても、含まれるボツリヌス菌の量は微量であるため、成人の腸内環境のなかでは腸内細菌の競争で負けてしまいます。

しかし、1歳未満の乳幼児がはちみつを食べると、まだ腸内細菌が十分でない乳児の腸管内ではボツリヌス菌の芽胞が発芽し、増殖して毒素を産生するのです。

芽胞はすべての菌が持っているものではありませんが、生育環境が悪化したときに細胞に形成される耐久性の構造物です。

ボツリヌス菌は芽胞を持つ代表菌とされています。

主な感染経路

乳児ボツリヌス症の主な感染経路は、はちみつやはちみつ入りのお菓子、飲料などです。

主な症状

乳児ボツリヌス症の主な症状は、筋力の低下、便秘、脱力、無表情などがあります。

重篤な場合は死に至ることもあるため、十分注意する必要があります。

ボツリヌス菌が死滅する温度

ボツリヌス菌の毒素は、80℃、30分または100℃、10分で不活化することができます。

しかし、ボツリヌス菌の芽胞は熱に強く、120℃、4分または100℃、6時間以上でなければ死滅しません。

成人の食中毒は毒素が原因となるものであるため、80℃、30分または100℃、10分の不活化で予防することができます。

しかし、乳児ボツリヌス症は芽胞が死滅しなければ防ぐことはできません。

一般家庭では、通常の加熱で完全に芽胞まで死滅させるのは非常に困難なのです。

パンを焼くときの温度と時間

パンは一般的には180℃10分程度で焼成します。

パンの種類によって焼成時間が変わりますが、菓子パンのようにクラムが色づきやすかったり、どんなに小さいサイズのパンであっても、最低でも180℃5分以上は焼成します。

パンの焼成でボツリヌス菌は死滅する?

ミキシングの段階で生地にはちみつを混ぜ込んだパンや、成形時にフィールハニーを混ぜたパンは、焼成によってボツリヌス菌を死滅させることはできるのでしょうか?

一見、パンの焼成温度だけを見れば十分死滅可能であるように感じますが、焼成直後のパンの中心温度は約95℃ほどしかないのです。

芽胞は120℃で4分、または100℃で6時間以上加熱しないと死滅しないため、パンの焼成では、はちみつに含まれるボツリヌス菌の芽胞を死滅させることはできないのです。

ここで気になるのが、焼成温度が250℃~280℃となるフランスパンやライ麦パンのようなハード系のパン。

ライ麦パンは離乳食後期のパン粥でも消化の面から推奨はされませんが、はちみつが入っていることも多いので気になる方もいるのではないでしょうか?

いずれのパンも、中心温度が120℃で4分以上経過しているとは言い切れず、芽胞が死滅していないという可能性は否定できません。

はちみつが入ったパンは、どんな種類のパンでも避けておいた方が良いでしょう。

パンの焼成でボツリヌス菌が死滅しない場合とは?

ボツリヌス菌の死滅とは、芽胞が死滅することを指します。

前述の“パンの焼成でボツリヌス菌は死滅する?”の項目で説明したように、ほとんどのパンの焼成において、ボツリヌス菌は死滅しないことがわかります。

フィールハニー(はちみつチップ)のボツリヌス菌

はちみつを使ったパンには、製パンの材料として使われるフィールハニーというものがあります。

フィールハニーとは

フィールハニーとは、別名はちみつチップと呼ばれるもので、ゼリー状に固めた耐熱性のはちみつのことです。

小さなサイコロ状であるため生地に混ぜやすく、焼いても溶けずに形が残ることから菓子パンなどの具材として使われています。

フィールハニーにはボツリヌス菌が含まれるの?

飯鮓(いずし)など真空パックされた加工品を作る場合は、ボツリヌス菌が増殖しないように製造の段階で芽胞が完全に死滅する条件で加熱されます。

フィールハニーは、ペクチンなどのゲル化剤を用いて固められていますが、製造における加熱温度や時間までは調べても残念ながら確認することができませんでした。

通常、はちみつは加熱されていない状態で販売されていることからも、フィールハニーは芽胞の死滅を目的とした温度帯での製造はおこなっていない可能性が高いと考えられます。

はちみつと同じく、ボツリヌス菌の混入は否定できないと思っておいた方が良いでしょう。

焼成でフィールハニーのボツリヌス菌は死滅する?

フィールハニーは小さな固形物であるため、たとえフィールハニーにボツリヌス菌が含まれていても、パンの焼成温度で一見死滅させることができそうに感じます。

しかし、残念ながらボツリヌス菌を死滅させることはできません。

フィールハニーの製品には、注意書きとして1歳未満の乳児には与えないように書かれています。

はちみつを焼成後にかけてあるものはNG

はちみつやフィールハニーをパンの生地に混ぜ込んで、焼成した場合について紹介してきましたが、もちろん焼成後の仕上げとしてはちみつがかけてあるパンも、はちみつを加熱していないためボツリヌス菌が存在している可能性があります。

赤ちゃんには食べさせないようにしましょう。

まとめ

はちみつ入りのパンは、赤ちゃんに食べさせることができません。

パンの焼成温度ではボツリヌス菌を完全に死滅させることはできないのです。

ボツリヌス菌は必ずはちみつに含まれているというわけではありませんが、過去にははちみつを食べて赤ちゃんが死亡した例があります。

パンにはちみつが含まれている場合も、食べさせないようにしましょう。

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この記事を書いた人

医療技術系短大卒業後、バイオ系研究室テクニシャンなどを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中です。
製パンスクールのプロコースを卒業した経歴を活かし、実践に役立つ製パン知識を、よりわかりやすく科学的にお伝えします。
食育アドバイザー、幼児食インストラクター資格保持。

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