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サワー種法とは?イーストと天然酵母の違いは?種の起こし方は?作り方を紹介!

サワーといわれると、酸っぱい、酸味のあるものをイメージしますよね。

今回はサワー種法という製法について見ていきましょう。

目次

サワー種法とは

サワーとは、いわゆる酸味のことを指します。

英語のサワードウ(Sour dough)からサワー種という言葉がとられています。

例えば、ヨーグルトやサワークリーム、酸味を起こさせる製品のほとんどは、菌によって発酵されていくのですが、それらには酸味が含まれています。

酵母菌、麹菌、乳酸菌などが共生し活動することにとってパンは発酵がうながされて膨らみ、特徴を持っていきます。

菌は、穀物や果実に存在し、それを活用することで発酵食品を作ることが可能となります。

このサワー種法という手法を使うことで、そのような特徴を持った生地に仕上げることが可能となります。

ライ麦と水だけでパン種を作る歴史ある製法

ヨーロッパで最もパンの種類が多い国で生まれた製法

この製法はどこで生まれたのでしょうか。

これについてのヒントは、小麦を生産することが向いていない環境だったということです。

それはヨーロッパ北部です。

ヨーロッパは、私達のイメージする中でもパンやパスタ、ピザなどに代表される通り小麦を主食としていますよね。

小麦を栽培するために必要な条件がいくつかあります。

5、6月の出穂の時期にカラッと乾燥し、雨が降らず、冬に多くの雨が振ってくれる気候が小麦に向いています。

そういった気候はヨーロッパにあり、小麦の栽培に向いていたのです。

ライ麦は寒さに強い

しかし、小麦は寒すぎてしまうと冬を越すことが難しく、ヨーロッパの北部での栽培は他の地域と比べて困難であったため、その代わりになるのが寒さに強いライ麦だったのです。

ライ麦は寒さ強く、痩せた土地や標高が高く寒冷な山間部でも栽培することができます。

主には北欧やロシア、ドイツ、スイスの山岳地方などで栽培されていました。

ドイツはライ麦を活かした製法を作った

その中で、ライ麦を活かした製法を作り上げた国がドイツです。

ドイツはヨーロッパの中で最もパンの種類が多い国です。

その数はなんと1500種類を越えるほどあるといいます。

フランスなどに比べるとドイツは気候的に寒く厳しいために、小麦の品種改良が進む近代に入るまで、小麦よりもライ麦を作るのに適していたのです。

また、今のような手軽に材料を調達できる時代とは違い、当時は酵母のエサになる糖分を手に入れることも困難であったので、空気中や穀物に付着している乳酸菌の力を得る事により、生地を発酵させてパンを作ることができたのです。

ライ麦の特徴

寒冷で痩せた土地でも生産が可能で、小麦、大麦に次いで生産量が多いです。

そして、ライ麦には多くの栄養価もあるため、日々の健康に気を付けている方にはもってこいの食物です。

ライ麦の栄養価

ビタミンB群・必須アミノ酸・食物繊維が豊富で栄養価が高く、小麦に比べて糖質やカロリーが低いのが特徴です。

GI値という糖質の吸収度合いを示す数値があるのですが、このGI値が低く、血糖値の上昇が緩やかで脂肪に変わりにくいです。

ライ麦は病気の予防にも効果的

乳酸菌や食物繊維による整腸作用での便秘の改善、ガンの抑制、高血圧・動脈硬化・糖尿病の予防などの効果があります。

ライ麦の製パンにおいての特徴

小麦でパンを作るにはグルテンを作り上げる必要があります。

グルテンはグルテニンとグリアジンというタンパク質をこね上げて結合させることで作ることが出きますが、ライ麦にはこの内のグルテニンが含まれていません

ですから、小麦を使って普通にパンを作るときのように生地が綺麗に膨らんでくれるということはありません。

そこで、後述します方法で乳酸菌などの菌をうまく活用してパンを作る必要があります。

ペントザンという多糖類の物質が多く含まれており、このペントザンは水分を非常に多く吸収します。

そのおかげで出来あがったライ麦パンはパサパサしにくく、しっとり感が持続するパンに仕上がります。

反面、水分を多く持っていくので、小麦と混ぜてパン作りをするときなどにはペントザンが水分を多く持っていってしまい、グルテン形成しにくくなることもあります。

サワー種法の特徴

サワー種法はライ麦と水のみで作られたものが始まりです。

このシンプルな素材でどうやってパンを作るのでしょうか?

通常パンは、イーストを使用して生地を発酵させることで膨らみ、焼き上げることで作りますよね。

ライ麦と水のみで作られるために、イーストは元来使用されていません。

そこで登場するのが、天然酵母です。

・ドライイーストが手に入りにくい場合においても、ライ麦と水のみで作ることができる。
・乳酸菌が活発になる事によって雑菌が繁殖しにくくなるため環境が安定していく。

などの特徴を活かして作られています。

天然酵母とは?

サワー種法は乳酸菌や酢酸菌などの酵母菌を使用します。

それらの菌はどこから来るのでしょうか?

酵母とは菌の集まり、塊のことです。これを英語でイースト(yeast)と呼びます。

このような菌は身の回りに生息しています。

果物・穀物・葉や花に存在し空気中にも浮遊しています。

例えば、リンゴやレーズン、麦や米などといったものから得ることができます。

この菌を自然の特性を利用して培養したものを天然酵母と呼びます。

※ちなみに、通常パン作りの制作過程で使われるイーストという意味は、後述します圧搾イースト(単一酵母)のことを指します。
 ですので、ここでの英語でいう菌の塊のイーストとは少し意味が違うので注意してください。

イーストと天然酵母の違いは?

イーストと天然酵母は一体何が違うのでしょうか?

この両者はどちらも自然の原料から採取したものです。

違いは単一酵母か複合酵母かの違いです。

単一酵母 (圧搾イースト)

単一酵母とは、パン作りなどの用途に特化できる菌を選りすぐり、それ以外の発酵生産物を排除した上で培養したものになります。

これをパン作りにおいてはイーストと言います。

このように菌を特化させたおかげで、安定して発酵させることができるため効率よくパンを膨らませることができるんです。

思い通りのパンを焼きやすいのがイーストですね。

これは裏を返せば、風味が単調になりやすいということでもあります。

複合酵母 (天然酵母)

一方で複合酵母とは、乳酸菌や酢酸菌など混在する微生物たちをそのまま培養することです。

こちらが天然酵母になります。

天然酵母の特徴は、菌がその時により変わって来るために、パンの個性も天然酵母によって変わって来ますから、味も風味も様々になります。

酵母次第でいろんな味に変化していく面白さがあります。

通常イーストを使うよりも、発酵させる時間が多く必要です。

また、管理する際もイーストよりも気を使ってあげることが必要で、カビたり菌が死んでしまうことも起こりやすいので気をつけましょう。

種起こし〜初種(アンシュテルグート)

では、実際にこのサワー種法を作るための工程をみていきましょう。

まずは、ライ麦粉と水で種を作るところから始まります。

これを種起こしと言います。

この作業で作り上げた種は「初種(アンシュテルグート)」と言います。

単純ですがとても時間がかかります。

通常ですと5日間かかる作業になりますので、根気よく続けていきましょう。

この初種がパン作りにおける発酵種となります。

初種を作る基本的流れ

初種の工程はシンプルです。

材料を混ぜる、発酵させる、新たに混ぜ直す、という感じです。

Day1

ライ麦粉に同量の水を加えて混ぜます。

その後、24時間放置し発酵させるのですが、温度管理をしっかりしなければなりません。

常に26度を保ちながら発酵させていく必要があるため、キレイな容器に入れて暖かい室温に置き24時間ほど発酵させましょう。

出来上がったものは臭いがきつく、失敗したかと思うかもしれませんが、続けていけば大丈夫です。

Day2

1日目に出来上がったものの底の方の部分を一部採取し別の容器に入れ、1日目と同じ分量のライ麦粉と水を加えてよく混ぜ合わせます。

残った初日の種は使えないので処分しなければなりません。

採取する量は大体ライ麦粉100gの場合10gほどでOKです。

これをまた同じく暖かい室温で約26度の環境でまた24時間置きます。

出来上がったものは1日目よりも臭いは酷くありませんがまだあると思います。

この辺りで、うまくいけば腐敗菌の数が減り、腐敗しにくくなる微生物のバリアができ始めます。

このバリアについては後述します内容をみていただければわかるかと思います。

Day3

2日目に出来上がったものの一部を別の容器に入れます。

2日目と同じ分量のライ麦粉と水を加えてよく混ぜ合わせます。

暖かい室温に置いてまた24時間発酵させます。

3日目あたりから、種は大きく膨らむようになってきます。

臭いも変わってきて、強い酸味の香りはありますがフールティな香りも少ししてきます。

Day4

膨らみが落ち着きカサが下がります。

この日も同様に一部を別の容器に移し替え、同量のライ麦粉と水を加えて暖かい室温の場所に置き、24時間発酵させましょう。

Day5

これでようやく初種の完成です。

ここまでくると安定した微生物の環境になっています。

この種を使ってパンを作っていきましょう。

種起こしに時間をかけるわけ

なぜ5日もかけて発酵させなければならないのでしょうか。

種の中では、酵母菌、乳酸菌、腐敗菌がせめぎあっています。

これらが時間をかけることでそれぞれ増殖と減少を繰り返し、種として理想的な、乳酸菌や酵母菌の多く存在する環境へ近づけるように調整させていかなければならないからです。

乳酸菌の役割は、酵母菌を生かすこと

乳酸菌がいなくなってしまうと、酵母菌は生きることできず腐敗してしまいます。

乳酸菌は乳酸を出すことによって、腐敗菌の繁殖を抑えます。
酵母菌は乳酸に対して耐性があるため生きられます。

また、乳酸菌だけが増えてしまっても腐敗はしませんが、酵母菌による糖を分解してアルコール発酵しパン生地を発酵させるプロセスがうまく行われずにしっかりと膨らまないのです。

これらの菌は、お互いの特徴の相互作用によってそれぞれが足りないものを補完し合う関係性のある組み合わせです。

日本酒や醤油などの日本で作られる製品にもこれらの菌が活躍しています。

どちらかが欠けてしまうと、上手に発酵させることは難しくなるのです。

種の底の部分を採取するわけ

種には酵母菌と乳酸菌が必要です。

それらの菌を効率よくとるために容器の底の部分を採取しましょう。

酵母菌・乳酸菌は、酸素の少ないところで増加しやすい特徴があります。

ですので、その部分を採取してあげるといいのです。

この採取することを「スクリーニング」と言います。

時間をかけてこの乳酸菌と酵母菌の多いところを選択していくことで、腐敗菌は減っていき、パン作りに必要な微生物によるバリアを完成させることができます。

温度によるサワー種への影響

温度によって乳酸菌と酵母菌に与える影響が変わってきます。

高い温度にすると乳酸菌が増加し、温度が低いと酵母菌が増加します。

大体の目安として、30度以上になると乳酸菌が多くなり、25度あたりから下がってくると酵母菌(酢酸菌)が活発になります。

・乳酸菌が多いほどマイルドな味になります
・酵母菌が多いほど酸味が効いた味になります

酵母菌が増えると、酵母菌が出すアルコールを餌にする酢酸菌も一緒に増えるため、酵母菌が増えることでより多く酸味が増します。

好みに合わせて温度を調整した上で発酵させましょう。

初種の保管方法、継ぎ足し方法

サワー種法は初種を使って作りますが、その製法は様々あります。

次回の記事でその方法をそれぞれ紹介していこうと思います。最後に初種の保存方法です。

この初種も、老面生地と同じように継ぎ足し使い続けることが可能です。

使い切る場合は冷蔵庫に保存すれば3〜5日間程度保管し使用できます。

初種の維持方法

種継ぎの方法も、初種を作る工程とほとんど一緒です。

残った初種に同じ量の水を加えて半日ほど暖かい室温の場所に置き発酵させ、その後冷蔵庫保管するだけです。

また、初種の継ぎ足しは水分を減らした状態にすると非常にもちがいいです。

そぼろを作るとも言います。

残った初種にライ麦粉を足していくと水分がどんどん分散して吸収されていきますからボロボロとしたそぼろ状の種になっていきます。

分量は人によって様々ですが種:ライ麦粉を1:1にすると少ししっとりとした状態で冷蔵庫で保存しても1ヶ月ほど保存可能です。

よりライ麦粉増やしていく場合は〜1:2くらいまでにすると良いでしょう。

ではいよいよ、サワー種法を使った工程をみていきましょう。

種仕上げ

初種が完成したら、次は種仕上げという工程になります。

この工程を経て初めて種は完成し、本こね生地と合わせていくのです。

この種仕上げは様々な方法があります。


  • 一段階法(アンフリッシュザワー)
    初種にライ麦粉と水を加えて26度で約6時間発酵させます。
  • 二段階法(グルントザワー)
    先ほどの一段階法(アンフリッシュザワー)に再びライ麦粉と水を加えて発酵させます。
    同じ工程を二回行うということです。
  • 三段階法(フォルザワー)
    こちらも同じく、二段階法(グルントザワー)にライ麦粉と水を加えて発酵させます。

このように発酵回数を重ねていくことで酵母の量が変わり、酸味の度合いが変わっていきます。

また、段階を重ねることにより熟成時間を増やせるために、発酵力が増します。

本生地作りに当たって、発酵力が足りない場合イーストを補助的に加えて発酵力を足すことをしたりしますが、三段階法まで熟成させるとその必要がないほどにまでなります。

この段階法以外にもサワー種法には様々は製法があります。

デトモルト式や、ヴァンハイム式、モンハイマー加塩法などが存在しており、例えばデトモルト一段階法はライ麦100%と水100%を発酵させて次の日に1日目の10%を採り、ライ麦100%、水100%と混ぜ合わせ、一晩発酵を繰り返し6日間行うと完成です。

これらの方法はまた改めてご紹介しますが、この工程を完了させ、いよいよ本生地を作ります。

TA(生地収量)

サワー種を作る際に出てくるTA(テーアー)というものがあります。

これはライ麦と水の割合の意味で使われます。

Teigausbeute(タイクアオスボイテ)を略した意味で、数値が高いほど水の割合が増えるので、生地は柔らかくなっていきます。

例えば、TA200ならば、ライ麦粉100:水100、TA190ならば、ライ麦粉100:90といった割合で使うことを意味しますので覚えて覚えておきましょう。

今回の初種で紹介した分量はライ麦粉と水が同量なので、TA200となります。

この水分量を変えることと、温度調整次第で乳酸菌と酵母菌が活発に動くが変わってきます。

・水分量が増え(TAが高い)、温度が高いほど乳酸菌が多くなり味はマイルドになります。
・水分量が減り(TAが低い)、温度が低いと酵母菌が増え酸味が強くなります。

おおよそ目安として、温度が27度から高くなるほどに乳酸の割合が増えマイルドに、27度以下で酢酸が増えて酸味が強くなってきます。

本生地作り

サワー種はグルテンをほとんど含んでいないため、本こね生地と合わせたときに膨らみにくいです。

ですから、通常はそこにイーストを加えて膨らみを補助してあげます。

また、サワー種は砂糖や塩などの副材料の影響を多分に受けてしまうため、加える際には副材料を一度水に溶かしてから加えていきます。

そうすることで撹拌させることができます。

一次発酵

混ぜ合わせたら、一次発酵をさせます。

発酵力が足りないなと感じた場合は、もし必要であれば補助的にイーストを加えてあげても問題はありません。

加えすぎると酸味が強くなり過ぎてしまうので注意してください。

成形

発酵を終えたら型に入れ成形です。

一般的な作り方では、大きな丸い形のまま、クープを入れます。

二次発酵

次は焼き上げる前の二次発酵です。

サワー種はライ麦に含まれるペントサンの影響を受けて長時間発酵させると膨らみにくくなってしまいます。

ですのでここでは短時間で発酵をさせていきます。

焼成

ようやく焼成です。

焼成時のポイントは、他のパンよりも高温で焼き上げていきます。

おわりに

以上、ライ麦を使用したサワー種法についてみてきました。

ドイツ生まれのパンらしく、合理的なのでしっかりとした配合や温度管理など、正確に求められる方法です。

覚えることが多くなかなか複雑ではありますが、その分突き詰めるのは面白い方法かと思いますのでぜひお試しください。

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この記事を書いた人

某ライフスタイルを提案する書店にて料理・旅行に関する本を主に担当し、毎月様々な担当ジャンルの特集やイベントなどを企画、開催をしていました。
趣味が高じてアウトドア業界に転職後、現在イギリスに渡英し語学や文化を勉強中です。
ジャンルを越えて横断的に興味のあることを追求してく日々を送っています。

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