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グルテンフリーのパンは小麦アレルギーでも食べられる?小麦粉の代用になる粉はどれ?

健康志向の流れで注目され、増えてきたグルテンフリーパン。

なかでも小麦アレルギーの人にとって、グルテンフリーパンは特に気になる食品となっています。

しかし、残念ながらグルテンフリーパンとはいっても、必ずしも小麦アレルギーの人でも食べられるとは限らないのです。

今回は、グルテンフリーパンに含まれる材料や作り方などから、グルテンフリーパンについて深く解説していきたいと思います。

目次

グルテンフリーとは

グルテンフリーとは、小麦粉などに含まれるタンパク質のグルテンを除去した食品・食事のことです。

グルテンとは

小麦粉には、「グリアジン」と「グルテニン」という2つのタンパク質が含まれ、約85%を占めています。

このグリアジンとグルテニンは、水を加えて捏ねることで、「グルテン」へと変化します。

グリアジンは弾力があるものの、伸びにくい性質を持ち、グルテニンには弾力はないが粘着性に優れ、伸びが良い性質を持っています。

この双方の性質が合わさって、グルテンの特徴である弾力と粘着性のある伸びのある性質が生まれます。

グルテンは小麦粉にしかない

グルテンは小麦にしか含まれず、穀物でも米やマメ、とうもろこしやキビ、アワなどには含まれません。

また、同じ麦類のなかでも、ライ麦にはグリアジンがあるものの、グルテニンはありません。

大麦には「グルテリン」と「ホルデリン」というタンパク質が含まれています。

そのため、ライ麦粉や大麦粉に水を加えて捏ねても、グルテンはほとんど形成されません。

グルテンフリーの意義

グルテンフリーパンは健康目的で注目されていることもありますが、これはグルテン過敏症などのグルテンが体質に合わない人が、グルテンフリーの食生活を送ることで体の調子が良くなったことが影響しています。

それだけにとどまらず、今ではグルテンフリーはセリアック病や小麦アレルギーの人にとっても、とても欠かせないものになっています。

セリアック病とは

グルテンフリーの生活が重要視されている人の代表として挙げられるのが、セリアック病を患っている場合です。

セリアック病とは自己免疫疾患の一つで、グルテンに過剰反応する疾患で、主な症状としては腹痛や下痢、倦怠感や貧血などがあります。

重症化するとまれに悪性リンパ腫などさまざまな合併症を引き起こす可能性もあります。

セリアック病は欧米に多い

日本人にはあまりいない疾患ですが、欧米では約100人に1人の割合でみられます。

セリアック病の歴史はとても古く、2000年以上も前からヨーロッパで発症していたことがわかっています。

セリアック病がさまざまな合併症を引き起こす可能性があることがわかったのは、わりと最近の話で、有用な診断ができるようになったのも1980年代になってからでした。

有名アスリートもセリアック病に?

テニスプレイヤーのノバク・ジョコビッチ選手がグルテンフリーの食事を実践していることで、セリアック病の認知度が高まりました。

実際には、ジョコビッチ選手はセリアック病ではなかったものの、グルテンを分解する酵素が不足している「グルテン不耐症」であったと言われています。

これをきっかけに、欧米ではグルテンフリーの食品が多く販売されるようになりました。

治療法はグルテンを摂取しないこと

セリアック病の患者さんは、父親と母親から一つずつ受け継ぐHLA(ヒト白血球抗原)の型が、DQ2とDQ8というタイプを持った人が非常に高いことがわかっています。

しかし、最近では幼少期のウイルス感染が原因の可能性も考えられており、まだまだわからない部分の多い疾患です。

現段階で有効な治療法としては、グルテン除去食が一般的です。

小麦アレルギーとは

小麦アレルギーは、グリアジンとグルテニンから形成されるグルテンだけでなく、他のタンパク質や多糖類アルブミンやグロブリンなども原因物質になっていることもあります。

ライ麦や大麦にも注意が必要

グルテンを除去する必要のある人にとって、小麦だけ注意すべきものというわけではありません。

前項でも紹介したライ麦は「グリアジン」、大麦には「グルテリン」と「ホスデリン」というタンパク質を持っています。

しかし、この大麦に含まれるタンパク質は、小麦と分子構造が似ています。

このように、タンパク質の分子構造が似ている場合、小麦にアレルギーがある人は、ライ麦や大麦に対してもアレルギー反応を起こすことがあります。

これを「交差抗原性」といい、ライ麦や大麦は、小麦に「交差抗原性がある」または「交差反応がある」食物ということになります。

交差抗原性は、何も見た目の似ている食物同士ばかりというわけではありません。

たとえば、花粉には多くの交差抗原性のある野菜や果物があります。

スギにはトマトが、シラカバにはリンゴやモモ、キウイ、マンゴーなどが交差抗原性のある食物です。

また、ゴム手袋などの原料としてよく使われるラテックスという天然の樹液には、バナナ、アボカド、クリなどが交差抗原性のある食物として知られています。

アレルギーは個人差があるため、花粉やラテックスにアレルギーのある人が、必ずしも交差抗原性のある食物を摂取したときに症状が出るわけではありませんが、注意が必要です。

グルテンにアレルギーがある人も同じように、ライ麦や大麦でもまれにアレルギー反応を起こすことがあるため、小麦だけでなくライ麦や大麦にも注意しなければいけません。

グルテンフリーのパンとは

グルテンフリーのパンとは、グルテンを含まないパンのことですが、小麦粉からグルテンを除去することは難しく、実際には小麦粉を使っていないパンをグルテンフリーパンとして販売していることがほとんどです。

しかし、小麦アレルギーの人はグルテン以外の物質が原因となる場合もあるため、必ずしもグルテンフリーパンなら食べられるというわけではありません。

自身のアレルギーの原因となるアレルゲンが何なのかを理解したうえで、選択する必要があります。

代表的なグルテンフリーパン

とはいえ、グルテンフリーパンはセリアック病や小麦アレルギーの人にとって、とても欠かせない食品であることには違いありません。

グルテンフリーパンにはどういったものがあるのか、紹介していきたいと思います。

米粉パン

グルテンフリーパンの代表として知られているのが米粉パンです。

小麦アレルギーではない人でも、一度は食べたことがあるという人も多いかもしれません。

それほど、現代ではメジャーになっているパンです。

米粉パンとは

米粉パンは、小麦粉の代わりに米粉を使って作ったパンのことです。

グルテンフリーが注目されていることもあり、パン屋さんのみならず大手製パンメーカーもさまざまな米粉パンを手がけています。

米粉100%パン以外はグルテンを含んでいる?

米粉パンといっても、完全に小麦粉を含まずに作ったパンというわけではないということです。

米粉は小麦粉と違いグルテンを含まない為、米粉だけでパンを作るのは非常に難しく、実際には少量の小麦粉を含んでいたり、グルテンや増粘多糖類が添加されていたりします。

しかし、米粉100%のパンは、米粉、水、イースト、砂糖、塩、油脂のみが原料となっているパンのことです。

そのため、米粉100%パンにはグルテンは含まれません

増粘多糖類の添加はグルテンフリーとしてOK?

食品には作業の効率化や品質の安定のために、増粘安定剤が添加している場合があります。

それは米粉パンにおいても例外ではありません。

そのなかで多糖類や食物繊維にあたるものが増粘多糖類です。

増粘多糖類とは、草木や海藻から抽出した多糖類で、食品に粘りやとろみをつけることを目的として使われる食品添加物です。

アイスクリームやジャム、レトルト食品、ドレッシングなどによく使われています。

増粘多糖類の種類としては、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、カラギナン、タマリンド、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸などがあり、2種類以上の多糖類を使っている場合は、「増粘多糖類」と一括表示することができます。

増粘多糖類そのものは天然由来のため、基本的には安全な食品添加物とされています。

しかし、気を付けなければいけないのが、増粘多糖類にアレルギー反応を起こす人がいるということです。

また、増粘多糖類にグルテンは含まれませんが、増粘安定剤としてグルテンが添加物で使われることがあります。

増粘多糖類の表記ではグルテンフリーと判断してもよい一方、増粘安定剤と表記されていれば、グルテンが添加物として含まれている可能性を考えなくてはいけません。

米粉パンの特殊な作業手順

米粉パンは、通常は小麦粉を混ぜて作るか、グルテンを添加して作られます。

この場合は小麦粉で作ったパンと変わらない製法で作ることができます。

しかし、米粉100%のパンは、グルテンの形成がないため、微粒子型フォームという洗顔フォームが泡立つ原理を応用した方法で作られます。

米粉のデンプンが炭酸ガスを取り囲むことで、炭酸ガスが抜けるのを防ぎ、洗顔フォームの泡のように生地を膨らませることができるのです。

この方法で作る米粉パンの材料は、ベーカーズパーセント約93%ととても水分量が多く、生地はどろどろした状態になります。

ミキシングでは粉のデンプンが水相へ均一に分散されるように、あまり空気が入らないように混ぜるなど工夫が必要です。

このようにグルテンの形成がなくどろどろした生地なので、そのまま型に流し込み発酵させます。

小麦粉で作るパンのように、一次発酵や成形などはありません。

米粉パンの仕上がりの特徴

米粉パンは、米が原料ということもありもちもちとした食感で、水分量も多いためしっとりしています。

小麦粉で作ったパンと比べると焼き色はあまりつかず、老化が早いのが特徴です。

市販の米粉パンのグルテンフリーの見分け方

市販の米粉パンがグルテンフリーであることを見分ける場合、小麦粉やグルテンの表記がないことはもちろん、増粘安定剤の表記がないことを確認する必要があります。

増粘安定剤には、グルテン以外にもさまざまなものが含まれますが、増粘多糖類と同様、2種類以上の増粘安定剤にあたる添加物が使用されていれば一括表記できるため、使われているものがグルテンなのかそうでないのかの判断はつきません

増粘安定剤と書かれていれば避けるのが無難でしょう。

大豆粉パン

米粉パンの次に注目されているのが大豆粉パンです。

大豆粉パンとは

大豆粉は、生の大豆を粉にしたものです。

大豆の粉と言えばきな粉を想像しますが、きな粉は炒った大豆を粉にしたものになります。

大豆粉は食物繊維やたんぱく質が豊富で栄養価が高く、糖質が低いのが特徴です。

そのため、大豆粉パンは主に糖質制限を意識して食されることが多いパンです。

大豆粉は主にパンケーキミックス粉として販売されており、ベーキングパウダーで膨らませるお菓子としての利用が多いです。

大豆粉のみでパンを作る場合には、ふすまを混ぜたり、グルテンを添加したりする必要があり、大豆粉100%パンとしての利用はまだまだ難しいところです。

ポンデケージョ

グルテンフリーパンと銘打って作られているものではありませんが、グルテンを含まないパンとして紹介しておきたいのが、「ポンデケージョ」です。

ポンデケージョとは

ポンデケージョは、タピオカ粉を使用して作るブラジルのチーズパンです。

タピオカ粉はキャッサバが原料のため、グルテンは含みません。

もちもちとしたおもちのような食感で、子供にも食べやすいパンです。

グルテンフリーのパンを求める人の選択肢の一つとしてぜひおすすめしたいパンの一つです。

作業手順

ポンデケージョは材料にイーストを使いません。

そのため、発酵する必要もなく、ただ材料を混ぜて焼くだけで作ることができます。

コーンブレッド

最後に紹介するのは、コーンブレッドです。

日本ではあまりなじみのないパンですが、アメリカを代表するパンです。

コーンブレッドとは

コーンブレッドは、とうもろこしの粉を使って作るパンです。

アメリカの家庭料理として普及したコーンブレッドは、材料や作り方にはっきりとした定義はありません。

基本的にはベーキングパウダーなどで膨張させるため、発酵させるパンというよりはケーキのような作り方に近いです。

そのため、各家庭やパン屋さんでもずいぶん印象が違います。

お店の個性が出しやすい商品として、力を入れているホテルやパン職人も少なくありません。

コーンブレッドは、一般的には薄力粉などの小麦粉を混ぜて作るパンです。

そのため、材料に小麦粉が含まれる場合、小麦アレルギーの人は食べることができません。

しかし、コーンブレッドは小麦粉の代わりに米粉を使って作ることもでき、小麦アレルギーでも食べることができます。

米粉100%パンは大手企業でも作られるようになりましたが、製造技術は特許を取得していることも多く、小さなベーカリーや家庭などではなかなか自分で作ることが難しいです。

しかし、ベーキングパウダーを使って作るコーンブレッドであれば気軽に作ることができるでしょう。

まとめ

小麦アレルギーの人にとって、アレルゲンとなる物質はさまざまです。

残念ながら、グルテンフリーパンだからといって安心して食べられるということではありません。

小麦に重度のアレルギー反応を示す人は、特に注意して食品を選んでいかなければいけません。

製パン業界においても、小麦アレルギー対応パンというのは多く販売されていますが、製パンに従事する者は、製造場所でのコンタミのリスクなどを十分理解して従事していく必要があります。

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この記事を書いた人

医療技術系短大卒業後、バイオ系研究室テクニシャンなどを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中です。
製パンスクールのプロコースを卒業した経歴を活かし、実践に役立つ製パン知識を、よりわかりやすく科学的にお伝えします。
食育アドバイザー、幼児食インストラクター資格保持。

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