自家製酵母とは?作り方は?初心者は失敗しにくいレーズンがおすすめ!
深い旨味と芳醇な香りが特徴で、イーストにはない複雑な味を出すことができる自家製酵母。
酵母がうまく作れなかったり発酵に時間がかかったりと、初心者にはハードルが高く、なかなか手が出せないという人も少なくありません。
今回は、初心者でも失敗しにくいおすすめの素材と、作り方を紹介していきたいと思います。
自家製酵母とは
酵母は、穀物や土壌など自然界のあらゆるところに生息する微生物の一種で、酸素のない「嫌気的環境」では、糖を分解してアルコールと炭酸ガスを生成しエネルギーを得ています。
これはアルコール発酵と呼ばれ、この性質を利用して酒やパン作りなどに応用されています。
このうち、パンの発酵に使われるのはサッカロミセス・シルヴィシエという菌です。
イーストはパンの発酵に適したこの菌だけを集め、工場で純粋培養したものです。
一方、自家製酵母とは果物や穀物などから自分で酵母を培養したもので、サッカロミセス・シルヴィシエ以外にも、酢酸菌や乳酸菌などさまざまな種類の菌が含まれているのが特徴です。
複数の菌を培養して雑味を出すことで、イーストを使ったパンにはない深い旨味と香り、複雑な味を楽しむことができます。
自家製酵母によく使われる素材
酵母はあらゆる素材から得ることができるため、自家製酵母作りに使われる素材にもさまざまなものが活用されています。
ここでは、一般的によく使われる素材について紹介していきましょう。
レーズン
最もよく使われる代表的な素材がレーズンです。
レーズンは葡萄をそのまま天日干しにしたものや、熱風で乾燥させて作ったものがあり、水分を抜いているので保存性が高く、常備しておけばいつでも酵母作りに取りかかれることが利点です。
また、癖がなくどんなパンにも合うので、食パンや菓子パンなどあらゆる製パンに適しています。
りんご
生の果物を使った自家製酵母はバリエーションも多く、なかでもりんごは特に人気の素材です。
国産の無農薬のりんごが手に入ったら、くし切りにし皮ごと使うとより発酵しやすくなります。
いちご
いちごは季節のものですが、旬の果物は糖度も高く、自家製酵母を作るのに適しています。
ヘタを取りそのまま入れても良いのですが、カットして使うことでより発酵しやすくなります。
人参
人参は皮付きのまま擦りおろして使います。
果物と比べると発酵に時間がかかるため、酵母を培養するさいには砂糖を加えるなど工夫が必要です。
ヨーグルト
少し酸味があり、好き嫌いの分かれる素材ではありますが、乳酸菌が豊富でカビが生えにくいのが特徴です。
酸味を活かし、ライ麦パンなどのドイツパンに使うと相性が良いです。
酒粕
酒粕は日本酒の製造工程で出る副産物で、多くの栄養と酵母を含んでいます。
できるだけ出来立ての新鮮なものを使うことが重要で、新酒の時期にでる酒粕で作るのがおすすめです。
酒粕酵母で作ったパンはとても芳醇な香りとほのかな甘さが特徴で、シンプルなテーブルパンにするとより香りを楽しめます。
自家製酵母に向かない素材
さまざまな素材で作ることができる一方、自家製酵母には向かない素材もあります。
パイナップル
パイナップルには「タンパク質分解酵素」が豊富に含まれています。
これは文字通りタンパク質を分解する役割をもつ酵素ですが、パン生地はタンパク質の一種であるグルテンの力によって膨らみ、生地に弾力を出しています。
タンパク質分解酵素が含まれる素材を使うと、酵素がグルテンを破壊してしまうため、ドロドロの生地になってしまうのです。
自家製酵母のメリット
自家製酵母を使用したパンには、イーストや市販の天然酵母で作ったパンにはない香りと、深いコクが生まれます。
時間をかけてゆっくりと発酵させることで、熟成して旨味が増し、パンの老化を遅らせることができます。
また、素材によって風味や味わいも変わるので、製パンに合わせた自分好みの酵母を育てることができるのも醍醐味です。
自家製酵母のデメリット
自家製酵母には深い旨味や香りがあるものの、発酵に時間がかかるというのが難点です。
気温や酵母のもつ力によっても大きく左右され、作業が安定しにくいだけでなく、正しく管理しなければカビが生えてしまったり、腐敗してしまったりすることもあります。
初心者向けの素材はレーズン
初めて自家製酵母を作る場合や慣れないうちは、レーズンを使うと良いでしょう。
レーズンを使った自家製酵母は、初めてでも成功しやすく初心者におすすめの素材なのです。
ここでは、レーズンが初心者向けである理由をいくつか説明していきたいと思います。
発酵力が高い
レーズン酵母は発酵力が高いため、初心者でも失敗しにくい素材です。
発酵力が低い素材を使うと培養に時間がかかり、腐食してしまう恐れがあります。
初めて作る場合は発酵力が高い素材を選ぶことが重要です。
癖がない
レーズン酵母を使って作ったパンは、癖がなくどんなパンにも合わせやすいのが特徴です。
自家製酵母に使われる素材によっては、酸味が強かったりアルコール臭がきつかったりと人によっては好き嫌いが分かれるところ。
その点、レーズン酵母は強い癖がなく、初めて作る場合も安心して使えます。
手に入りやすい
レーズンはドライフルーツなので、季節に関係なく手に入れることができ、誰でも気軽に自家製酵母作りに挑戦することが可能です。
また、長期保存が可能なため在庫として用意しておけば、いつでも思い立った時に自家製酵母を作ることができます。
最初のうちは失敗することが多くても、材料があればすぐに作り直すことができます。
オイルコーティングされているレーズンは、オイルが酵母の呼吸を妨げてしまうので、オイルコーティングされていないレーズンを選びましょう。
自家製酵母の作り方
それでは、初心者にも作りやすい自家製酵母の作り方を紹介していきたいと思います。
自家製酵母作りでは、砂糖を加えて発酵力を上げる方法などもありますが、ここでは基本の作り方を紹介します。
手順
カビなどの繁殖を避けるため、煮沸消毒した瓶を用意します。
素材となる材料を瓶の1/3程度に入れ、水を蓋から約1㎝下のあたりまで注ぎます。
蓋をして25℃~27℃の場所に放置し、一日一回は上下を逆さにして軽く混ぜ、蓋を開けてガス抜きをします。
これを毎日繰り返し、3~5日経つころに泡が立ち始めます。
泡がたったのを確認できたら、さらに一日置き完成です。
完成したら冷蔵庫で保存します。
一ヶ月程度保存が可能です。
注意点
自家製酵母の作り方は意外とシンプル。
しかし、いくつか注意しなければいけないことがあります。特に注意が必要な点について紹介したいと思います。
カビや腐敗には注意
カビや腐敗には十分注意しなければいけません。
煮沸消毒した瓶を用意することはもちろんのこと、スプーンなどはできるだけ使わずに、容器を振って混ぜることで菌の混入を防ぎます。
また、ガス抜きをするとき以外はしっかり蓋を閉めることも重要です
酵母は嫌気的環境下での培養が必要で、これによって酸素がないと生きられない他の菌が死滅します。
水を蓋の1㎝下まで注ぐことも嫌気的環境を作りやすいことに繋がり、他の菌を死滅させカビや腐食の防止になるのです。
水は浄水を使う
水は浄水器に通した水道水を使います。
水道水には塩素が含まれており、酵母の発酵を阻害してしまいます。
浄水器がなければ湯冷ましかミネラルウォーターを使うと良いでしょう。
泡と香りで発酵状態を見極める
素材や温度環境によって、完成までにかかる時間はまちまち。
泡が立っているのにそのまま放置し続けていれば、腐敗へと繋がります。
ヨーグルトで自家製酵母を作る場合などは、泡立ちが分かりにくいこともあり、見極めが難しいものです。
発酵がうまくいくとアルコールの香りがしてきたり、ヨーグルト酵母の場合はチーズのような香りがするのが特徴です。
泡だけではなく香りの変化にも注目し、しっかりと見極めベストな状態を逃さないようにしましょう。
まとめ
果物や穀物、土壌、水中など自然界のあらゆる場所に存在する酵母。
自家製酵母は使う素材によって付着する菌が異なり、含まれる複数の菌によって複雑な味わいが生まれます。
発酵に時間がかかり、カビや腐食に注意しなければならず、なかなか時間と手間のかかるものですが、イーストで作るパンにはない旨味や香りがあり、パンの老化を遅らせる効果もあるのが最大の魅力です。
旬の素材をうまく取り入れて、オリジナルの自家製酵母を作ることで、製パンの幅も広げていくことができます。