ストレート法とは?パン作りの作業中と仕上がりのメリット・デメリットを紹介!
現代で主流なパン製法は「ストレート法」と「中種法」の2つです。2大製法といってもよいでしょう。
この2つの製法のそれぞれの長所と短所を理解しておけば、
パンの種類を増やそうかな?
パンのしっとり感を増したいんだけどなぁ
などと思ったときに、どちらの製法を採用すべきか判断することができます。
今回はストレート法のメリット・デメリットを紹介します。
ストレート法(直接法・直捏法)とは
ストレート法とは、全ての材料を投入して一度のミキシングでパン生地を作る製法です。
「直接法」や「直捏法」ともよばれます。
ストレート法が登場したのは、工業用に開発された圧搾イーストが登場した19世紀以降です。
圧搾イーストとはいわゆる生イーストのことで、製パンに適した酵母を純培養(1種類の細菌のみを培養)したものです。
生イーストは天然酵母を自家製で培養するのとは段違いのスピードで発酵するため、この時期にパン作りが効率化されていきました
それまで数日かけて発酵させて焼き上げていたパンが、2〜6時間で焼き上がるまでに時間短縮されたのです。
圧搾イーストの登場により、パンの発酵時間は大幅に短縮することが可能になりました。
発酵種法では事前に発酵用の生地を作成する必要がありますが、圧搾イーストは発酵力が強いためその手順を飛ばすことが可能になったのです。
ストレート法のメリット
ストレート法には以下のようなメリットがあります。
- 発酵時間が短く場所を取らない
- 素材の風味を出しやすい
- 歯ごたえのあるパンになる
発酵時間が短く場所を取らない
一度のミキシングで生地を作成するため、発酵種製法よりも手順が少なく済むのは、家庭でパンを焼くときや小規模なパン屋にとっては幸いです。
特に、多くの種類のパンを焼く小規模パン屋には大きな意味があります。
たとえば、食パン専門店や塩パン専門店のように1種類のパンしか扱わないパン屋であれば発酵種法をメインで使っているかもしれません。
しかし、そうでないパン屋が全てのパンを発酵種法で作るのは、時間と場所の都合上、現実的ではありません。
発酵種法では、発酵のために時間を要しますし、生地を発酵させるための場所も必要です。
それに、発酵した生地は膨らむため、かさばって場所をとります。
「焼き上げるまでの時間」「発酵のための場所」どちらも経営目線で見るとコストがかかるものです。
これを削減できるのは大きなメリットといえるでしょう。
素材の風味が出しやすい
イーストの発酵によって生まれるエタノールは風味や香味の元となります。
つまり、発酵時間を長くすると発酵によって生まれる風味を強めることができるわけです。
ストレート法は発酵時間が比較的短いため、発酵の風味よりも、素材の風味を生かすことができます。
フランスパンのように、小麦の風味を楽しむパンなどに向いています。
歯ごたえのあるパンになる
気泡は食感に影響を与えます。
気泡膜が薄いほど軽くソフトな食感になり、気泡膜が厚いほど噛みごたえが強い食感になるのです。
ストレート法は、他の製法と比べて発酵時間が短いことで発酵で生じる炭酸ガスの生成が比較的少なくなります。
つまり、生地の気泡の数が少なくなります。
ストレート法は、気泡の数が少なく、気泡の膜が厚くなるため、噛みごたえのある食感となるのです。
ストレート法のデメリット
ストレート法には以下のようなデメリットがあります。
- パンの老化(硬化)が早い
- 機械化に不向きで手作業が多い
- 作業工程の影響を受けやすい
パンの老化が早い
ストレート法は発酵時間が短いこともあり、生地の水和(グルテンと水の結びつき)が不十分になります。
そのため、中種法のように十分に発酵させる製法と比べて、水分が抜けるのが早くなってしまいます。
水分が抜けるのが早いということは、それだけパンが硬くなってしまう(パンの老化)のが早いということです。
機械耐性が低い
発酵時間が短いということは、パン生地内の気泡の数が少ないということです。
気泡の数が少ない生地は柔軟性と伸展性が劣るため、機械耐性が低くなります。
機械耐性とは、機械化された作業によって生地が受けるストレスの耐性のことです。
機械耐性が低いと、分割や成形などを機械化したときに生地が損傷しやすくなります。
すると、生地は弾力を失い、うまく膨らまなかったりします。
大手企業のパン工場による大量生産には不向きといえます。
そのため、工場ではストレート法よりも機械耐性が強い中種法を使う場合が多いのです。
ストレート法は手作業で面倒をみることができる家庭や小規模店舗に向いている製法といえます。
作業工程の影響を受けやすい
工程が比較的少なくシンプルであるストレート法ですが、だから簡単というわけではありません。
むしろ、シンプルであるが故に、求められる技量はよりシビアであるといえます。
一度のミキシングで生地を作成するため、リカバリーが難しく、各材料の分量の精度はより厳密に行う必要があります。
とりわけ、発酵時間のズレは不良品に直結します。
温度、湿度、時間を厳密に管理することが必要になります。
出来上がりのボリュームや味の濃度を予測して、適宜調整することが要求されます。
まとめ
ストレート法は場所のコストが少なく済む点や、機械化に向いていなかったり、生地の面倒を細かくみる必要があったりと、小規模なパン屋に向いている製法です。
店舗の規模が小さいがパンの種類が多い場合にはストレート法は必須といえます。
ストレート法の長所短所を理解すれば、
中種法のパンを増やすためにパンの種類を削ろう!
商品数を増やすためにはストレート法で作ろう
といった判断の指標となることでしょう。