パン作りに適した小麦粉は?小麦の種類や等級によるタンパク質含有量の違いは?
小麦粉の原料となる小麦はイネ科の植物で、米、トウモロコシに並び世界三大穀物の一つとされています。
世界最古の穀物の一つとしても知られ、世界中で欠かせない食物です。
一口に小麦粉といっても、小麦粉にはたくさんの種類があります。
いろいろな食品に応用できる小麦粉は、製パンに適したものから、製パン以外の目的に使うものまで様々です。
小麦粉はグレードでも分けられるため、特に製パンでは、目的のパンに応じて使い分ける必要があります。
小麦の種類
小麦粒は大きく分けると外側を覆う外皮と、中の胚乳部分、胚芽に分けられます。
小麦は胚乳の硬さの違いにより、粒の硬い「硬質小麦」と粒の軟らかい「軟質小麦」、その中間に位置する「中間質小麦」に分類することができます。
胚乳の硬さは、専用硬度計で測定することができ、粒に加圧し圧砕されたときの目盛りを読み測定できます。
硬質小麦
硬質小麦は、粒の硬い小麦でタンパク質含有量は11~13%ほどです。
硬質小麦は、胚乳組織が密で半透明なのが特徴です。
世界で生産される小麦の約75%は、硬質小麦が占めており、強力粉や準強力粉になります。
中間質小麦
硬質小麦と軟質小麦の中間の性質を持つのが中間質小麦です。
タンパク質含有量は9~11%で、粒の硬さも硬質小麦と軟質小麦の間くらいになります。
日本国内ではこの中間質小麦が生産の大半を占め、中力粉へとなっています。
軟質小麦
軟質小麦は、粒の軟らかい小麦でタンパク質の含有量は6~9%と少ないのが特徴です。
軟質小麦は粒子が細かく粉砕されやすく、主に薄力粉や中力粉になります。
小麦粉の種類
ここからは、小麦粉の種類について紹介していきたいと思います。
小麦を製粉してできた小麦粉は、多くの種類に分けることができます。
小麦粉の分類
まず、小麦粉には主に2つの分類方法があります。
粉のグレードを表す「等級による分類」と、使う目的によって分ける「用途別の分類」です。
等級による分類
小麦粉を作るときには小麦から外皮と胚芽を取り除き、胚乳部分を粉砕して作られます。
この際、胚乳部分をどれだけ削って使うかによって「等級」が決められます。
等級によって灰分の含有率が変わり、灰分は胚乳の中心部分になればなるほど少なくなるのです。
この灰分とは無機成分のことで、いわゆるミネラルのことを指します。
より外皮に近い部分を含む下級粉ほど灰分の含有率は高く、くすんだ色となり、中心部分のみを使う上級粉ほど灰分含有率は低く、より乳白色をしています。
特等級
最も上質とされる小麦粉で、灰分含有率は0.35%前後、胚乳のより中心部分のみを粉砕しているため、白く色つやが優れているのが特徴です。
主に高級食パンなどに使われています。
一等級
灰分含有率は0.4%前後、シンプルで白く小麦本来の味が要となる食パンは、一等級以上の粉が使われます。
他にも麺や天ぷらにも使われています。
二等級
灰分含有率は0.5~0.6%。
二等級の粉はあまり白さが重要ではないパン粉や菓子パン、フランスパン、駄菓子などに使われます。
特にパン粉は二等級の小麦粉からできたものを使うと、一等級と比べて灰分が多いため、揚げ色がつきやすいのが特徴です。
三等級
灰分含有率は0.7~0.9%。
三等級の小麦粉は主に駄菓子のほか、グルテンや焼麩デンプンとして使われています。
末級
灰分含有率は1.0~1.5%。
保存性が悪く傷みやすいため、食用としては使われず、飼料や工業用接着剤として使われています。
外皮や胚芽が混ざるため、色もくすんでいるのが特徴です。
用途別の分類
小麦粉には胚乳部分のどれだけ中心部分を使うかによって、グレードが決められていることがわかりました。
さらにここからは、もう一つの分類法である「用途別の分類」で見ていきたいと思います。
強力粉
タンパク質含有量は11.5~13%。
グルテンが形成されやすいのが特徴です。
パン作りには強いグルテンが必要なため、タンパク質含有量の多い強力粉が使われます。
水を加えてミキシングすると、粘性と弾力のある生地になり、ほとんどのパンは強力粉で作ることができるでしょう。
焼き上がりのパンはふわふわした軟らかさと弾力のある仕上がりとなります。
他には餃子の皮にも使われています。
準強力粉
タンパク質含有量は10.5~12.5%。
主にフランスパンに使われ、フランスパン専用粉として販売されているものもあり、給水が良くべたつきにくいのが特徴です。
クラストが薄くパリッと、クラムはしっとりとした仕上がりになり、ハード系のパンに適した性質を持ちます。
強力粉と比べミネラルを多く含み風味豊かなのも特徴です。
中力粉
タンパク質含有量は7.5~10.5%で、強力粉と薄力粉の中間のような性質を持ちます。
胚乳の色は明るくクリーム色で、艶のある外観が好まれるうどん麺などに使われます。
薄力粉
タンパク質含有量は6.5~9.0%です。
タンパク質の量が少なく、グルテンがほとんどありません。
弾力がほとんどなく、サクッとした軽い食感やふわふわ軟らかい仕上がりにしたいものに適しており、ケーキやクッキー、天ぷらに使われます。
グルテンがほとんどないので製パンには適していません。
その他小麦の種類
小麦から製粉されて作られるものは、他にもさまざまな種類があります。
ここからは、その他の種類について紹介していきたいと思います。
全粒粉
全粒粉は、小麦を丸ごと粉にしたものです。
小麦粉とは違い、外皮や胚芽も含まれるため、食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富です。
タンパク質含有量は11~15%。
色は茶褐色をしています。
全粒粉は健康志向の人に人気となっていますが、口当たりが良くないため、製パンでは小麦粉と混ぜて使われることがほとんどです。
グラハム粉
全粒粉と同じく、小麦を丸ごと使用したものですが、全粒粉との違いは、まず外皮、胚乳、胚芽にそれぞれ分けて、胚乳部分は通常の小麦粉と同じように細かく製粉します。
そのうえで、外皮と胚芽は粗挽きにしてから混ぜ合わせています。
全粒紛よりさらに風味豊かですが、粗挽きのため製パンや菓子作りに使うには少々工夫が必要です。
こちらも全粒粉同様、強力粉や薄力粉などに少量混ぜて使うのが良いでしょう。
市販品ではクラッカーなどによく使われています。
ふすま
ふすまは小麦の胚乳部分は使わず、外皮と胚芽だけを製粉したものです。
粉は茶褐色で、全粒粉やグラハム粉よりもさらに食物繊維やミネラルが多く、胚乳を含まないため糖質が少ないのが特徴です。
近年、糖質制限食としても注目を浴びており、穀物本来の香りを感じることができるため人気となっています。
ライ麦粉
ライ麦粉は小麦ではなく、ライ麦を挽いた粉です。
ライ麦粉はほとんどグルテンを形成しませんが、古くからパン作りに使用されてきました。
ライ麦粉を使ったパンは、ドイツやオーストリアを代表するパンとして親しまれ、ずっしりとした酸味の強いパンに仕上がるのが特徴です。
小麦粉と混ぜて作ることもあり、その配合によって作られるパンの呼び名が変わるのも特徴です。
最近では日本でも、健康志向からライ麦の配合率の高いパンが好まれています。
デュラムセモリナ粉
デュラム小麦から作られており、強力粉や薄力粉などとは違う種類の小麦が原料です。
デュラムはラテン語で「硬い」を意味し、セモリナは胚乳の粗粒のことを表しています。
デュラムセモリナ粉は黄色みがあるのが特徴で、タンパク質含有量は13%と非常に高く、もちもちと弾力が強いため主にパスタやクスクスに使われています。
まとめ
今回は、小麦粉の種類について紹介しました。
小麦粉には製粉の状態によってさまざまな分類法があり、多くの種類に分けることができます。
それぞれ必ずしも決まった使い道ではなく、組み合わせ方や使い方によって、オリジナリティあるパンを生み出すことが可能なのです。
それぞれの粉の灰分やタンパク質含有量などを把握し、粉の力を十分に引き出すことで、製パンの可能性がさらに広がっていくことでしょう。