食パンは成形の違いで仕上がりは変わる?【俵・丸め・U字・ワンローフ】
食パンの成形には、俵、丸め、U字、ワンローフなど、さまざまな種類があります。
成形の方法を変えることで、クラムのきめの細かさや、ホワイトライン(食パン上部の角にできる白いライン)のできやすさに影響があるなど、食パンの仕上がりに違いがでるのです。
ここでは、それぞれの成形の違いによる食パンの仕上がりについて、解説していきたいと思います。
食パンの成形の種類
まずは、食パンの成形の種類から紹介していきましょう。
食パンの成形に良く使われている方法には、次のようなものがあります。
俵成形
俵成形は、めん棒で伸ばした生地の左右を折り、幅を食パン型の短辺に合わせたあと、手前からくるくると俵型になるように成形する方法です。
型のサイズにもよりますが、一般的に2~3個の生地を型に入れて焼成するのが特徴です。
成形した見ためが俵型であることから、「俵成形」と呼ばれています。
俵成形で作った食パンは、焼成後に四隅にはっきりとした谷ができるのが特徴です。
丸め成形
丸め成形は、手で丸めて成形する方法です。
めん棒を使う必要がないので、大量に食パンを作る場合に良く使われる方法です。
俵成形と同じように、2~3個の生地を型に入れて焼成します。
「丸め」をおこなって成形するため、「丸め成形」と呼ばれます。
俵型と同じく、焼成後に四隅にはっきりとした谷ができるのが特徴です。
U字成形
U字成形とは、めん棒で伸ばした生地を巻いて棒状にし、型に入れるときにU字の形に曲げて入れる方法です。
U字に成形した生地を食パン型に2~3個入れて焼成します。
U字の形に曲げて型に入れることから、「U字成形」と呼ばれています。
U字成形では、型の隅々に生地が行き渡り、四隅に空洞ができにくいのが特徴です。
ワンローフ成形
ワンローフ成形とは、400g前後のひとまとまりの生地をナマコ型に成形し、型に入れて焼く方法です。
ワンローフの成形の方法自体はアメリカなどでもよく見られますが、アメリカでは成形方法としてではなく、「一つのパン」という意味でワンローフという言葉が使われています。
日本では、そのひとまとまりのパン生地を、型に入れて作る成形方法として、「ワンローフ成形」と呼んでいます。
成形によって膨らみ方に違いはある?
それでは、成形の違いによる仕上がりの変化について説明していきましょう。
まず膨らみ方の違いですが、成形によって、二次発酵での膨らみ方と焼成時の膨らみ方(窯伸び)に違いが表れます。
成形のときにめん棒を使って生地を伸ばすと、生地はガス抜きされ、気泡が細かく均一に分散されます。
一方、手で潰してガス抜きをした生地は、潰れた気泡と大きく残った気泡が、まばらな状態で生地に多く存在するのです。
二次発酵では、ガス抜きされた生地ほど膨らみにくくなります。
つまり、めん棒を使わずに成形した方が、大きく気泡が残っているため膨らみやすくなるのです。
また、よく巻いて成形する方法では、生地にハリが出て窯伸びしやすくなるのが特徴です。
それぞれの成形方法で見ていきましょう。
俵成形
俵成形の場合は、めん棒で生地を伸ばして、くるくると巻いて成形します。
そのため、二次発酵の膨らみは控えめであるものの、生地が締まっているので、焼成時には勢いがでてグッと窯伸びしやすくなります。
丸め成形
丸め成形は俵成形と比べ、気泡が大きいため二次発酵時には膨らみやすいのが特徴です。
ただし、生地のハリはあまり強くないため、俵成形ほど窯伸びはしません。
俵成形と丸め成形を比較したときに、二次発酵時の膨らみと窯伸びの仕方がそれぞれ違うことがわかりますが、最終的に仕上がるパンの高さには、ほとんど差がないのが特徴です。
U字成形
U字成形は、めん棒で伸ばして棒状に巻いた生地を、U字に成形し型に寝かせて並べます。
そのため、二次発酵ではあまり膨らまず、窯伸びしやすいのが特徴です。
また、U字に寝かせて型に並べているため、縦に伸びる力だけでなく、横へ広がる力があり、四隅までしっかり膨らみやすくなります。
ワンローフ成形
ワンローフ成形の場合は、めん棒を使って生地を伸ばすものの、かける回数は少なく、あまり生地を広く伸ばしません。
そのため、俵成形やU字成形よりはガスが残り気泡が大きいため、二次発酵では膨らみやすくなります。
ナマコ型にするときには、手でしめながら巻いていくため、丸め成形と比べるとハリのある生地で窯伸びしやすくなります。
緩やかなドーム状に、中央がふんわりと盛り上がるのが特徴です。
成形によってクラストに違いはある?
成形方法の違いによって、焼き色やクラストの食感などにはほとんど違いはありません。
ただし、窯伸びしやすい俵成形やU字成形は、ホワイトラインが綺麗に出やすいのが特徴です。
成形によってクラムに違いはある?
成形の方法を変えると、クラムのきめの細かさに違いがでます。
成形でクラムに違いがでるポイントは、気泡の細かさと気泡の方向性です。
手でガス抜きしただけの生地よりも、めん棒で伸ばしてガス抜きして成形をおこなう方が、気泡は細かくなります。
さらに成形のさいの巻き方によって、気泡の方向性が変わります。
巻くことで気泡が縦長になり、型の上下に向かって回転している生地は、縦長に引きの強いクラムになります。
それぞれの成形ごとに違いを見ていきましょう。
俵成形
俵成形の食パンは、めん棒をかけているので気泡が小さくなり、生地全体に分散します。
そのため、クラムが均一できめが細かくなり、生地が締まって弾力があるのが特徴です。
また、俵成形はロール状に巻いているため、気泡ひとつひとつが縦長に伸びます。
縦長の気泡は窯伸びしやすく、より引きの強いクラムに仕上がります。
丸め成形
丸め成形の食パンは、成形時に軽く手で潰してガス抜きし、丸めます。
そのため、ところどころに大きな気泡が残り、クラムのきめが粗くなります。
巻いたりしないため、生地に弾力はあまりなく、クラムの引きは強くありません。
大きな気泡があるため、歯切れが良いのが特徴です。
U字成形
細長く棒状に巻いて成形するため、丸め成形よりはもちろん、俵成形と比べても非常にきめが細かく、ひきが強いのが特徴です。
ワンローフ成形
ワンローフ成形は、ひとまとまりの生地を大きく巻いて成形します。
そのため、きめはやや粗く、歯切れがよいのが特徴です。
角型食パンに使われる成形は?
角型食パンは、成形した生地を食パンの型に入れ、蓋をして焼成します。
角型食パンは、どの成形方法でも作ることができますが、良く使われているのは俵成形やU字成形です。
角型食パンでは、きめの細かさや引きの強さを求められるため、俵成形やU字成形が重宝されています。
なかでも、U字成形は角型食パンだけに使われる成形方法です。
生地が満遍なく型の四隅に行き渡り、二次発酵で生地の頂上が平行に上がりやすいので、山型食パンには使われません。
・俵成形
・U字成形
角型食パンに向かない成形は?
丸め成形やワンローフ成形は、きめが粗いため、きめの細かさや引きの強さを重視する角型食パンにはあまり向かない方法です。
・丸め成形
・ワンローフ成形
山型食パンに使われる成形は?
山型食パンは、成形した生地を食パンの型に入れ、蓋をせずにドーム状に焼いたパンです。
U字成形を除くどの成形方法でも作ることができますが、ふんわり軽い食感と、歯切れの良さを重視する山型食パンでは、丸め成形やワンローフ成形が特に使われます。
・丸め成形
・ワンローフ成形
山型食パンに向かない成形は?
U字成形は山型にならないため、山型食パンには使われません。
また、俵成形は山型食パンにも使うことはあるのですが、クラムのきめが細かくなる成形方法です。
そのため、あまり歯切れを良くしたい山型食パン向きの成形方法とは言えないでしょう。
・ U字成形
俵成形の手順
それでは、俵成形の手順について解説していきましょう。
俵成形はめん棒を使って薄く伸ばし、気泡を細かく分散させます。
成形の手順
ベンチタイム後の生地は、とじ目(へそ部分)を上にして軽く手で潰してガス抜きし、めん棒で伸ばしていきます。
伸ばすときはめん棒を生地の中央にあて、中央から上にかけ、さらにまた中央にめん棒を戻して、中央から下にかけていきます。
STEP1 を何度か繰り返し、生地が楕円形になるように伸ばしていきましょう。
楕円形に伸ばした生地を横にし、上下1/3ずつ折っていきます。
まずは上1/3を折り、繋ぎ目部分を手のひらで押さえます。
さらに下1/3も折り、繋ぎ目部分を手のひらで押さえて生地をくっつけましょう。
ふたたび生地を縦にしたら、端からくるくると巻いていき、合わせ目を手でとじます。
型に入れるときは、合わせ目を下にして入れてください。
丸め成形の手順
丸め成形は、めん棒を使わずにガス抜きし、手で丸めていきます。
成形の手順
生地のとじ目を上にして、手で潰してガス抜きをします。
ここからは、生地を四つ折りにします。
まず、手前から生地を持ち上げて半分に折りましょう。
折ると半月のような形になります。
右から左に向かって、ガスを抜くように右手で押していきます。
このとき、重なった部分がずれないように、左手で生地のとじ目を挟んで支えておくと良いでしょう。
左手を添えたまま、今度は右から生地を持ち上げ、さらに半分に折ります。
折るといちょうのような形になります。
四つ折りにした角をつまんで、なかに巻き込むように丸めていきます。
丸めたら、つなぎ目をしっかりとじましょう。
U字成形の手順
U字成形は、めん棒を使って生地を伸ばし、成形していきます。U字の形は特徴的なので、成形に少しコツがいります。コツをしっかりつかむと、きれいに成形できますよ。
成形の手順
生地は、とじ目を上にして軽く手で潰してガス抜きし、めん棒で長方形になるように伸ばします。
伸ばした生地は、横向きにし、奥の1/3を折り、手前1/3も折ります。
さらに奥から生地を2/3くらい折り、生地をしめます。
さいごにつなぎ目が重なるように、生地を奥から半分に折ります。
つなぎ目は手で押さえ、しっかりくっつけましょう。
棒状になった生地は、中央に手をあて、上下に転がします。
こうすることで、棒の中央が少し細くなり、U字に曲げたときに中央に厚みがでて盛り上がってしまうのを防ぐことができます。
とじ目を下にした状態で、生地をU字に曲げます。
型に入れるときは、一つの生地をU字に入れたら、その隣には逆のU字の向きになるように入れ、もう一つ生地を入れるときは、またU字の向きにというように、隣り合う生地が反対の向きになるように入れていきます。
交互に向きを変えることで、生地がバランスよくなります。
ワンローフ成形の手順
さいごに、ワンローフ成形の手順について紹介します。ワンローフ成形はめん棒を使って成形しますが、あまり強くかけないのが特徴です。
成形の手順
生地のとじ目を上にして軽く手で潰し、ガス抜きをしたらめん棒をかけます。
中央から上下それぞれに向かってめん棒をかけ、楕円形になるように伸ばしましょう。
ワンローフ成形は1~2回でめん棒をかけ終わるようにし、生地が薄くならないようにします。
もし縦長になりすぎたら、生地を少し手で横に広げて楕円形にすると良いでしょう。
奥の生地を両手4本指で優しく持ち上げるようにし、くるっと寄せるようにして端を少し折ります。
寄せたらそのまま両手4本の指で少し押し込み、生地をきゅっとしめましょう。
ふたたび奥の生地をくるっと転がすように寄せ、今度は両手の親指を使って生地をしめます。
この作業を繰り返し、生地を巻いていきます。
途中で手前の生地の横幅が狭くなってきたら、少し横に広げてください。
さいごに生地が重なる部分をしっかりくっつけます。
まとめ
今回は、食パンの成形方法による仕上がりの違いについて紹介しました。
成形によってクラムの食感に違いがあるため、角型食パンと山型食パン、それぞれに向いた成形方法があります。
成形方法の違いで、かかるスピードや手間も変わってくるため、お店の場合は、パンの数や従業員の数など、お店の規模に合わせて成形方法を検討することも必要になります。
家庭でパンを作る場合は、まずは自分のやりやすい方法でやってみると良いでしょう。