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食パン一斤は何グラム?統一規格は?型のサイズに適した生地量は型比容積で計算!

食パン用の焼き型は、一斤と書かれていても、メーカーによって大きさが違うことに気づいたことはありませんか?

一斤とは重さを表す単位で、食パンの大きさそのものには関係ありません。

しかし、一斤の型の大きさが違えば、出来上がるパンのグラム数ももちろん変わります。

一斤という重さには、ある程度の範囲で決まりがあり、一斤の範囲は340g以上510g未満といえます。

サイズの違う型を使った食パンづくりは、型比容積を使って生地量を計算しましょう。

ここでは、食パン一斤のグラム数や、型のサイズに合わせて生地量を計算する方法について、解説していきたいと思います。

目次

食パン一斤の定義

食パンに使われる一斤は、最初から重さに決まりがあったわけではありません。

実は、時代とともに重さが変化してきたのです。

まずは、斤という言葉が使われるようになった経緯から紹介していきましょう。

中国から伝わった「斤」という単位

食パン一斤に使われる「斤(きん)」という単位ですが、これは中国から伝来してきた重さを表す単位です。

日本で古くから使われていた長さや面積を定める単位系に、尺貫法というものがあります。

701年の大宝律令によって法制化され、中国から伝来してきた斤も、唐の度量衡にならって尺貫法で表す単位として扱われるようになったのです。

質量の単位で、一斤は160匁。1匁は3.75gです。

つまり、一斤は600gということになります。

最初は食パン一袋のことを一斤と呼んでいた?

明治時代以降、日本にイギリスやアメリカのパンが入ってくるようになると、食パン一袋を一斤と呼ぶようになります。

海外で作られていた食パンは、一袋1ポンドが主流です。

尺貫法で1ポンド(453.6g)に近い値であるのは、120匁(450g)です。

この重さは別名「英斤(えいきん)」と呼ばれていて、食パンの呼び名として使われている斤は、この英斤が由来だとされています。

しかし、あくまでも重さは目安として考え、一袋の食パンを一斤と呼んでいただけにすぎません。

食パンの一斤という重さに、明確な基準があったわけではないのです。

尺貫法の廃止で斤は食パンだけに使われる

1959年、メートル法が採用されたことで、尺貫法は廃止されます。

尺貫法は取引や契約の場で使うことは禁止され、「斤」という単位は法定単位ではなくなりました。

住宅建築では今も尺貫法の使用が認められていますが、他ではあまり使われていません。

食パンに使うときの「斤」は、尺貫法に定められる斤という単位ではなく、英斤から独自に派生した単位です。

尺貫法の廃止以降、斤は食パンの重さを表す単位としてのみ、使われることになったのです。

製パン業界で定められた一斤の重さ

前述したように、もともとパン屋さんで使われていた一斤という単位は、食パン一袋に対して使われていました。

明確な重さの基準がないことから、重量はどんどん少なくなっていき、店によって一斤の重さに大きくばらつきが出始めます。

そこで、現在は公正競争規約により、一斤の重さは340g以上と定められているのです。

ちなみに510g以上は1.5斤とされているので、一斤の範囲は340g以上510g未満であるということになります。

一斤の重さはお店によって異なる

340g以上であれば一斤となるので、実際にはお店によって一斤の重さは異なります。

たとえ同じような大きさの食パンであっても、加水率が違えば重さは変わります。

粉に対して水分を多く含むパンは、その分、生地全体の重さも増えるのです。

また、フィリングが入っているパンは、パン生地だけに比べて当然重量が増えます。

さらに、パンの重量は、焼減率によっても微妙に変化します。

焼減率とは、パン生地の水分が、焼成後にどの程度蒸発したかを割合として表したものです。

分割したときの重量と、焼成後のパンの重量から導くことができます。

焼成率は、焼き上がったパンの熱の通りを確認するために使われるのですが、食パンでは8~10%が基準です。

水分の蒸発は、砂糖や油脂の有無によって差があるため、基準内であっても差がでます。

正確に340gに合わせるというのは、どうしても難しいのです。

食パンの型に統一規格はない

食パンの型は、同じ一斤でも形がさまざまです。

正方形のものから長方形のもの、さらに勾配があるものもあれば、ないものもあります。

一斤はあくまでも重さの単位であり、形には決まりがありません。

もともと一斤という重さも、パン一袋のことを指し、決まっていませんでした。

そのため、型もバラバラ。ようやく重さだけは340g以上と定められるようになった、という段階なのです。

食パン型の適正な生地量の求め方は?

一斤の食パン型に統一規格がないため、販売されている型の大きさはそれぞれ違います。

購入したときに、型に適正な生地量が記載してある商品は良いのですが、必ずしも記載してあるわけではありません。

特に記載のない場合は、型の容積を計算し、食パンの型比容積から型に適正な生地量を求める必要があります。

型比容積とは

型比容積とは、目的の型に入れるのに適正な生地量に対し、型の容積がどれだけの割合であるかを数値化したものです。

たとえば、型比容積が3であった場合、その型に必要な生地量は、型の容積の1/3ということになります。

型比容積は、基本的に作るパンの種類によって適した値が決まっています。

つまり、作りたいパンの型比容積を知っていれば、型の容積を計算することで、最適な生地量を求めることができるのです。

パンの種類による型比容積の値については、後述する「食パンに最適な型比容積はどのくらい?」の項でさらに説明していきたいと思います。

生地量の求め方

生地量は、手持ちの型の容積を計算し、その値を型比容積で割ると導き出すことができます。

計算式は以下の通りです。


生地量 = 型の容積 ÷ 型比容積


型比容積が高い場合と低い場合の仕上がりの違い

型比容積が高いほど生地の量は少なく、型比容積が低いほど生地の量が多くなります。

それぞれ仕上がりの違いについて見ていきましょう。

型比容積が高い場合の仕上がり

型比容積が高い場合は、型に対する生地の量が少ないので、角型食パンでは型の四隅まで生地が行き渡らない可能性があります。

そのため、角型食パンの角ができず丸くなってしまうことも。焼いたあとにしぼんで、クラストがしわしわになる原因にもなります。

また、山型食パンでは、型の縁(ふち)からやや出るくらいまで発酵させて、窯入れするのが一般的です。

しかし生地の量が少ない場合、型の縁まで発酵するのを待っていては、過発酵になってしまいます。

過発酵の生地はグルテンの力が弱まり、パン生地が全体の重さを支えきれなくなり、焼き上がったパンに腰折れ(ケービング)ができてしまう原因となります。

・角型食パンは、角ができなかったり、しぼんでしまうかも
・山型食パンは、過発酵になって腰折れするかも

型比容積が低い場合の仕上がり

型比容積が低い場合は、型に対する生地の量が多いということです。

角型食パンでは、食パンの四隅がカクカクの垂直になってしまいます。

角型食パンは、四隅にホワイトラインという焼き色の薄い部分があります。

ホワイトラインは生地量だけが影響するものではありませんが、適正な生地量でパンを作った証であり、角型食パンの焼き上がりの良さを示す一つの指標でもあるのです。

・角食パンは、四隅にホワイトラインができないかも

食パンに最適な型比容積はどのくらい?

食パンの型比容積は、角型食パンと山型食パンによって違います。

角型食パンの型比容積は3.8~4.0、山型食パンの型比容積は3.5~3.7の範囲に収めるのが適正です。

角型食パンには型の容積の1/3.8~1/4の生地量が最適で、山型食パンは1/3.5~1/3.7の生地量が最適であるということがわかります。

実際に生地の適量を計算する

それでは、実際に例をあげて生地の適量を計算してみましょう。

今回は、角型食パン一斤で紹介したいと思います。

型比容積を確認する

まずは作りたいパンの型比容積を確認します。

角型食パンの型比容積は、3.8~4.0です。

ここでは、3.8で計算していきたいと思います。

型の容積を計算する

型はこちらの食パン一斤型を使う場合として計算します。

型の容積は記載されている内寸から計算して求めることができます。

この商品の一斤型の内寸は195(185)×95(90)×H95です。

つまり、長辺の上底が195、下底が185、短辺の上底が95、下底が90、高さが95であることを表しています。

実際に計算してみると


(195 + 185) ÷ 2 × {(95 + 90) ÷ 2} × 95

= 190 × 92.5 × 95

=1,669,625㎟


つまり、この型の容積は、約1,670㎠(=約1,670㏄)ということになります。

型に適正な生地量を計算する

型に適正な生地量は「生地量=型の容積÷型比容積」で計算することができるので、


必要な生地量 = 1,670 ÷ 3.8

       = 439.47g


今回使う型に適正な生地量は、約439.5gであることがわかりました。

ベーカーズパーセントで粉量から副材料のグラム数もわかる

ベーカーズパーセントとは、粉のグラム数を100%としたとき、副材料は粉に対して何%であるかを表したものです。

下の表の、食パンの配合で計算していきましょう。

材料ベーカーズパーセント(%)
強力粉100
砂糖5
2
スキムミルク2
イースト2
油脂5
70

使う生地量がわかれば、生地量 ÷ 合計ベーカーズパーセントで粉の量を求めることができます。


粉の分量 = 439.5g ÷ 186%

     = 439.5 ÷ 1.86

     = 236.29g


粉の分量は、約236gとなります。

粉以外の材料のベーカーズパーセントは、粉に対して何%であるかを表しているので、粉の分量がわかれば他の材料も計算して求めることができます


砂糖(5%):236 × 0.05 = 11.8g

塩(2%):236 × 0.02 = 4.72g

スキムミルク(2%):236 × 0.02 = 4.72g

イースト(2%):236 × 0.02 = 4.72g

油脂(5%):236 × 0.05 = 11.8g

水(70%):236 × 0.7 = 165.2g


これで適正な生地量の計算から粉の量を求め、さらにそこから他の材料の量まで求めることができました。

まとめ

食パン型には正式な決まりはなく、一斤という重さが定められたのもまだまだ最近のことです。

いまでも一斤の重さには幅があり、食パン型の大きさもさまざまであることがわかります。

型に適正な生地量を求めることができれば、どのような大きさの型でも食パンを焼くことができます。最初は少し難しく感じるかもしれませんが、きちんと計算することで失敗のない食パンに仕上がりますよ。

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この記事を書いた人

医療技術系短大卒業後、バイオ系研究室テクニシャンなどを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中です。
製パンスクールのプロコースを卒業した経歴を活かし、実践に役立つ製パン知識を、よりわかりやすく科学的にお伝えします。
食育アドバイザー、幼児食インストラクター資格保持。

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