クープのエッジを立たせる意味とは?クープの効果に影響は?エッジを立たせる経緯を解説!
フランスパンなどのハードなパンには、クープという切れ込みを入れることがあります。
クープがめくれ上がったようになっている部分はエッジと呼ばれ、エッジが立ったパンは見た目にも美味しそうでとてもかっこよく見えます。
エッジを立たせることが、クープのそのものの効果に特に影響があるわけではありません。
しかし、エッジが立っているということは、フランスパンが上手くできている指標にはなっているのです。
ここでは、クープのエッジを立たせる意味についてまとめていきたいと思います。
クープとは
クープとは、フランスパンなどのリーンなパンに、焼成前に入れる切れ目のことです。
クープ(coupe)はフランス語で「切り取られた」という意味があります。
成形したパンの表面に、クープ用のナイフやカミソリで薄く削ぐように切り込みを入れて作ります。
クープの役割
フランスパンには欠かせないクープですが、クープには次のような役割があります。
窯伸びを良くする
クープを入れると、クープを入れた部分から一気に水蒸気が逃げようとし、生地が膨らみます。
そのため、窯伸びしやすくなるのです。
火の通りを良くする
十分に火の通ったパンは口どけが良く、食味に大きく影響します。火が通っていないパンは消化も悪くなるのです。
フランスパンは中からもしっかり火を通すことで大きな気泡ができ、軽い食感に仕上がります。
クープを入れることで生地の表面だけが先に焼けてしまうのを避け、クラムにもしっかり火が通ったパンになります。
形を良くする
フランスパンのようなハード系のパンは、ソフト系のパンのように砂糖を使っておらず、ミキシングの時間も長くありません。
そのため膨らむ力が弱く、そのまま焼いてしまうといびつな形になってしまったり、生地が裂けてしまうことがあるのです。
クープを入れた場所は、そこから一気に水蒸気がでて生地が膨らむので形よく仕上がります。
クープのエッジが立つとは
エッジとはクープがめくれあがっている部分のことを指し、クープがめくれあがって垂直になっているほど、エッジが立っていると表現します。
クープのエッジを立たせる理由
クープのエッジを立たせる理由は何なのでしょうか?
パリッとした食感になる
クープのエッジが立ったパンは、クラストが薄くめくれあがっているためエッジの部分がパリッとした食感に仕上がります。
フランスパンはクラストを楽しむためのパンなので、パリッとした食感はとても重要です。
香ばしくなる
クープのエッジが立った部分は、薄くめくれあがってしっかり焼けるため香ばしくなります。
ハードパンらしい見た目になる
エッジの立ったパンは、クラストがしっかりとした武骨な見た目となり、よりハードパンらしく仕上がります。
ハードパンらしい見た目のフランスパンは、より本格的で出来の良いパンに見えるため、パン好きからは人気となりやすいのです。
クープのエッジの役割
クープのエッジの立ったパンは見た目もよく、より本格的なパンに仕上がります。
しかし、クープのエッジが持つ役割は見た目の良さだけでなく、パン作りの工程がきちんと踏まれているかの指標にもなるのです。
なんとなくフランスパンを作ってみても、確かにフランスパンにはなりますが、シンプルだからこそ味や食感に大きく影響します。
パン作りの工程一つ一つが、パンの出来に繋がるので、それぞれの工程をきちんとおこなうことが非常に重要なのです。
パン作りの工程が上手くいっていると、生地がしっかり膨らんでクープが開き、エッジが立ちやすくなります。
発酵が適正におこなわれているかの指標になる
発酵が不十分だと生地が膨らむ力が弱く、クープの開きが不十分でエッジが立ちません。
また、発酵過多の場合も、生地がダレて膨らむ力が弱くなります。
エッジが立つということは、発酵が適正におこなわれているという一つの指標になるのです。
成形がきちんとできている指標になる
エッジの立ったパンは、クープの入れ方だけで決まるものではありません。
成形は特に重要でしっかり生地を張らせて成形しないと、クープを入れてもエッジが立たないのです。
張りのない成形のパンは、焼いても膨らみにくく扁平なパンになりやすいです。
オーブンの焼成条件が整っているかの指標になる
フランスパンを作るさいはオーブン庫内に蒸気を発生させ、上からも下からも一気に火を入れるのが特徴です。
下火によってパン生地の温度を一気に上げ、蒸気によってクープが開くまでのあいだ表面が先に焼けてしまうのを防ぐことができます。
この下火でパン生地の温度を上げることでパンが勢いよく膨らむのを助け、結果的にクープにエッジが立ちやすくなるのです。
エッジが立つことによるクープへの影響
エッジがしっかり立つことで、クープが開いた部分の生地が丸く膨らむと解釈されていることがしばしばあります。
これは正確には、生地が丸く膨らんでいるからこそめくれた生地が持ち上げられ、エッジが立つのです。
そのため、エッジが立つこと自体がクープへ影響しているとは特に言えません。
しかし、エッジが立つようなクープの入れ方をすることで、クープ入れの結果がより良くなるということはあります。
エッジが立つには、生地の表面を薄く削ぐようにクープを入れると良いです。
クープ入れが上手くいくことできれいにクープが開き、より生地が膨らみやすくなります。
クープとエッジの歴史
クープ(coupe)はフランス語で「切り取られた」という意味があり、フランス発祥の工程です。
もともと丸いパンを作ることが多かったフランスですが、細長いバゲットの誕生で膨らみやすくするためにクープを入れるようになったと考えられます。
しかし、クープにエッジを立たせることについての歴史は調べても確認することができませんでした。
フランスのパンにはさまざまなパンにクープが入っており、その入れ方は実にさまざま。
クープの種類にはソシソン(saucisson)という横に細かく切れ込みを入れること、ポルカ(polka)という格子状に切れ込みを入れること、ナンテーズ(nantaise)というハサミで入れ込みをクロスさせながら入れることなどがあります。
クープには飾りつけを兼ねたものもありますが、いずれも膨らみを良くする役割をしています。
フランスのパンを見ているとわかるのですが、必ずしもエッジを立たせる入れ方をしているわけではありません。
クープを入れる=エッジを立たせるというわけではないのです。
これはパンの種類や材料の違いによるもの。
バゲットのような日本人のイメージするいわゆるフランスパンは、エッジの立ったパリッとした食感に仕上げてあるものが多いです。
成形などが上手くできたフランスパンは、必然的にエッジが立つということでもあるのです。
エッジを立たせるのは日本だけ?
クープにエッジを立たせることを意識するようになったきっかけは、調べたもののわかりませんでしたが、エッジを立たせるのは日本だけということはありません。
本場フランスでもエッジの立ったパンはたくさんあります。
フランスのバゲットはクラストが硬くクラムはふっくらしているのが特徴です。
エッジの立ったパンはクラストがパリッとした食感に仕上がります。
日本にフランスパンを伝え、フランスパンの神様と称されるフィリップ・ビゴ氏の弟子である藤森二郎氏は、美味しいフランスパンの見分け方の一つとして“エッジのきいたクープであること”を挙げています。
藤森氏はビゴ氏からのれん分けを認められ、本格的なフランスパンの製法を受け継いでいます。
また、フランスパンを通じたフランスの食文化を日本に伝えるための活動によって、フランス政府から農事功労章シュヴァリエを日本人のパン職人としては初めて受賞している人物です。
このように、本格的なフランスのパンもクープのエッジが立っていることは重要視されていることがわかります。
日本でクープのエッジが立つことが良いとされているのも、フランスパンを日本に伝えたビゴ氏の影響によるものかもしれません。
まとめ
クープの欠かせないパンでも、エッジは必ず立てなければいけないというわけではありません。
しかし、良いパンを作ると自然とエッジが立ちパリッとした食感に仕上がります。
クープを入れるときにエッジを立てること自体を意識するというよりは、きちんとした工程でパン作りをおこなうことが重要と言えるでしょう。