モルトシロップとモルトパウダーの違いとは?代用する際の換算も解説!
製パンに使用されるモルトシロップやモルトパウダー。
モルトと言えば、ビールやウイスキーなどで耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?
フランスパンなどのリーンなパンでは、クラストに色艶を出すためにモルトシロップやモルトパウダーが使われています。
ここではモルトシロップとモルトパウダーの違いや、それぞれ置き換えるときの換算方法について紹介していきたいと思います。
モルトシロップとは
モルトは、大麦を発芽させた「麦芽」のことです。
モルトシロップは、この麦芽を粉砕し、そこに水を加えて煮出して麦芽糖を抽出した液体です。
別名、モルトエキスと呼ばれています。
モルトシロップは茶褐色で、非常に粘りがあるのが特徴です。
パン屋さんで使われているのはモルトシロップが多く、単にモルトと呼ばれています。
パン業界でモルトと言われるときは、後述するモルトパウダーでなく、モルトシロップのことを指しています。
モルトパウダーとは
モルトパウダーは、麦芽を乾燥させて粉末状にしたものです。
メーカーによっては小麦粉や大豆粉が含まれていることがあります。
使用する量は製品により異なりますが、小麦粉1kgに対して0.2~1%程度です。
モルトの製パンにおける役割
モルトは製パンには欠かせない材料ですが、パンの色艶や風味を良くし、生地の伸展性を高め、発酵を助けるために使われます。
発酵を助ける
モルトは、おもにフランスパンなどのリーンなパンに使われています。
リーンなパンとは、砂糖や油脂、卵などの副材料が入っていないシンプルな材料で作るパンのことです。
パンの発酵では、酵母のえさとして糖が欠かせませんが、リーンなパンには基本的に砂糖を入れません。
そこで、砂糖の入らないリーンなパンには、モルトを加えることによって生地の発酵を促します。
モルトの成分である麦芽のなかには、アミラーゼという酵素が含まれており、デンプンを分解し発酵を促すことができるのです。
生地の伸展性を良くする
モルトの原料である麦芽には、アミラーゼのほかにも、たんぱく質分解酵素のプロテアーゼが含まれています。
プロテアーゼの作用で生地の伸展性が高くなり、作業性が増します。
パンの色艶を良くする
パンの表面の茶褐色は、メイラード反応によって起こるものです。
砂糖を材料に使った場合、酵母の餌として消費された糖のなかで、最後まで残るのが麦芽糖です。
つまり、酵母に消化されることなく残った麦芽糖によってメイラード反応が起こり、パンの色艶が良くなるのです。
モルトの主成分は麦芽糖なので、モルトを加えることで砂糖の入っていないフランスパンでも、クラストに色艶を出すことができるのです。
パンの風味を良くする
パンの風味の良さは、クラストが香ばしく焼けることで引き出されます。
麦芽糖によってメイラード反応が起こることで、クラストは茶褐色に色づくと同時に香ばしく香り立つのです。
モルトシロップとモルトパウダーの違いは?
それでは、モルトシロップとモルトパウダーの違いについて見てみましょう。
使い方や使い勝手の違い
モルトシロップの使い勝手
モルトシロップは液状で、非常に粘性が高い製品です。
そのため少量だと計量がしづらく、とても使いづらいのが難点です。
モルトシロップは、基本的に小麦粉に対して0.5%程度使用します。
粘性が高く混ざりにくいため、使うときは水に溶かして使うなどの工夫が必要です。
このとき使う水は、作るパンの材料の水からモルトシロップと同量の水を取り分けて使用します。
別途水を用意して希釈する必要はありません。
少量だと計量しづらいため、あまり家庭向きではなく、大量に使用する業務用として使われることが多いです。
モルトパウダーの使い勝手
一方、モルトパウダーは粉末であるため、少量でも計量しやすく、さらさらで扱いやすいのが特徴です。
小麦粉に対して0.2~1%程度、小麦粉1kgの場合は、2~10gの量を使うのが基本です。
モルトパウダーは、材料の小麦粉に直接混ぜて使用します。
製パンにおける用途や役割の違い
モルトには麦芽糖や酵素が含まれており、それらの作用によってクラストに色艶や風味を出すことができます。
製パンにおける用途や役割は、モルトシロップとモルトパウダーとでほとんど変わらないと言われていますが、モルトシロップの方が、モルトパウダーに比べて酵素活性が高い傾向にあります。
一方、モルトパウダーは乾燥している分、酵素活性が弱くなっています。
モルトパウダーは麦芽をそのまま粉砕しているため、酵素活性の力価をコントロールさせることなく製品化しているものがあります。
酵素活性はメーカーによっても違うため、力価をコントロールされていない可能性のあるモルトパウダーは、日々安定したパンを作りにくい傾向にあるのです。
ただし、家庭で使う分には少量であるため、ほとんど変わらないものとして使用しても問題ないでしょう。
保存方法の違い
モルトシロップもモルトパウダーも、開封前は直射日光の当たらない冷暗所で保存します。
開封後も冷暗所で保存可能ですが、モルトシロップは冷蔵庫に保存しておくとより扱いやすくなります。
モルトシロップとモルトパウダーの使い分け
モルトシロップとモルトパウダーは基本的に同じ用途で使用することができます。
そのため、家庭では計量しやすいモルトパウダーを使用するのがおすすめです。
パン屋では、モルトシロップが使われていることが多いです。
なぜパン屋ではモルトシロップを使うのか
モルトシロップもモルトパウダーも、同じ用途で使用でき、モルトパウダーの方が扱いやすいのであれば、なぜパン屋ではモルトシロップを使うのでしょうか?
酵素活性が低下していない
モルトシロップの方が酵素活性は低下しておらず、モルトの効果をより発揮しやすいと言われています。
また、酵素活性の力価もコントロールされているため、日々安定したパンを作ることができます。
家庭では気にするレベルのものではありませんが、大量に生地を仕込むパン屋ではモルトシロップを使用する方が良いでしょう。
賞味期限が長い
モルトシロップは200gほどの少量サイズであれば未開封で1年、1kg以上など量が多いと約1年半の賞味期限です。
モルトパウダーは半年ほどと使用期限が短いため、より使用期限の長いモルトシロップが好まれます。
モルトシロップとモルトパウダーは置き換えられる?
モルトシロップとモルトパウダーは、それぞれ置き換えることができます。
ただし、酵素活性に違いがあり、活性量によって置き換え方法も異なるのです。
初めて使う製品は発酵状態などを見極めて使用量を決める必要があるため、使い慣れるまでに少し時間がかかります。
モルトシロップとモルトパウダーの換算方法
モルトシロップは麦芽から麦芽糖を抽出したものであるのに対し、モルトパウダーは麦芽を丸ごと粉砕したもの。
さらにモルトパウダーの製品には小麦粉や大豆粉が添加されていることもあるため、モルトシロップと比べて多くの量が必要になります。
基本的にはモルトシロップは0.5%、モルトパウダーは0.2~1%の割合で使用しますが、レシピがある場合は、その分量にならいます。
そのため、どんなレシピでも換算できるように、モルトシロップとモルトパウダーの比率から換算し、使用する分量を導き出すようにすると良いでしょう。
モルトシロップをモルトパウダーに置き換える計算
モルトシロップは、小麦粉に対し0.5%の量。
モルトパウダーの場合は、0.2~1%と幅があります。
モルトシロップをモルトパウダーに置き換える場合には、0.4~2倍にすることになるのですが、モルトパウダーは大豆などが含まれている場合と含まれていない場合とで、使用量が変わります。
ここでは両方のパターンで置き換えてみましょう。
大豆などが含まれている場合
モルトパウダーに小麦粉や大豆などが含まれている場合は、モルトシロップを使用するときの量の2倍の量で試してみましょう。
レシピのモルトシロップの量が5gの場合
10gのモルトパウダーに置き換えることができます。
大豆などが含まれていない場合
モルトパウダーに大豆などが含まれていない場合は、まずは少ない量から使用して様子をみてください。
モルトは製品によって酵素活性が違うため、どれくらい使用するのが適しているというのが一概に言えないのです。
モルトは入れなくてもフランスパンを作ることができますが、入れすぎてしまうと生地に締まりがなくなり、緩い生地になってしまいます。
まずは一番少ない量、つまりモルトシロップの0.4倍の量に置き換えます。
レシピのモルトシロップが5gの場合
2gのモルトパウダーに置き換えることができます。
モルトパウダーをモルトシロップに置き換える計算
次に、モルトパウダーをモルトシロップに置き換える方法です。
モルトパウダーをモルトシロップに置き換える場合は、レシピで使用しているモルトパウダーに小麦粉や大豆などの添加物を考慮してレシピが作られているのかがわかりません。
そのため、まずは大豆などが含まれていないものとして計算し、何度か作って少しずつ量を増やし調整していきましょう。
レシピのモルトパウダーが2gの場合、モルトシロップに置き換えるには、2で割った量を使用します。
1gのモルトシロップに置き換えることができます。
まとめ
モルトシロップもモルトパウダーも、どちらも同じ用途で使用することができますが、家庭で使用するには、計量しやすいモルトパウダーがおすすめです。
使用する量はできるだけ少ない量から試すようにし、徐々に適量を見つけていってください。