メニュー
カテゴリー

中国生まれの老麺法とは?パン作りでのメリットや中種法との違いを紹介!

これまで、中種法やポーリッシュ法などを見て来ました。

これらの製法は、発酵種を事前に作り、新しく作った生地と混ぜ合わせることで作っていく製法でした。

このような方法は、歴史をみると、ヨーロッパ以外でも存在しております。今回フォーカスするのは「老麺法」についてです。

目次

老麺法とは?

では早速、老麺法とはどのような意味なのでしょうか。

古くは「古生地法」と呼ばれていた製法で、「老」は「時間の経ったもの」。「麺」は「生地」のような意味を表します。

漢字なので連想しやすいですね。

老麺法の作り方は、シンプルに言うと生地を継ぎ足し使うことです。

熟成させた生地を事前に用意しておいて、それを新しい生地と混ぜあわせていきますので、まるでそれは代々継ぎ足し受け継がれてきた秘伝のタレみたいな感じでしょうか。

出来上がったものを次のものに足して使うのです。

中国生まれの製法

老麺法は、歴史を遡るとその名からも察せる通り中国から始まったようです。

今でこそイーストを使用し作られるようになりしたが、かつて中華饅頭などでは、各お店に代々伝わる発酵生地(老麺)を新しい生地に加えて生地を発酵させていたそうです。

空気中に、漂う天然酵母が生地と出会い発酵を始めることで老麺法は始まります。

その生地を少し残しておき、次の生地に継ぎ足して使うことで、イーストを使用することなく、美味しいパンを作り続けることができます。

中国ではそれこそ饅頭(まんじゅう)の皮なんかに使われていたり、フランスパン、菓子パンといった様々なものに使われています。

あまりに古い時代から続いている製法なので、厳密にいつから使われ出したのかはわかりませんが、日本へ伝わったのは遣唐使たちが中国に渡り、様々な中国文化を持ち込み始めてしばらくして、この老麺法も伝わってきたといいます。

老麺法は元々は天然酵母で作られたもの

元々老麺法はイーストを使わず、天然酵母から自然発酵を促して作られたものです。

老麺は、はるか昔より受け継いで来ることにより、強い菌が弱い菌を淘汰し、よりよい菌を多く保有することにより、味も変わって美味しくなると言われています。

ですので、代々伝わっている老麺はとても貴重なもので、お店によってそれぞれの個性があるパンを作ることができるのです。

ただ現在では、家庭では毎日パンを作ることもないのでイーストを使うことが一般的となっています。

パートフェルメンテ法

ちなみに、フランスでもこの老麺法に似たような製法があり、こちらはパートフェルメンテ法と言われています。

少し脱線しますが、こちらの製法についても軽く見てみましょう。

パートフェルメンテ法は、フランスパンなどの生地を1次発酵させたら、それを冷蔵庫に入れて1日寝かせてあげ、翌日その発酵生地を混ぜ込んで仕上げる製法です。

老麺法と同じですね。

この製法ができるまで、フランスでは1次発酵の時間を減らして作業効率をアップさせようとしていたようで、代わりにイーストを多めに入れて短縮をしていたようです。

しかし、これまで見てきたように、パンはしっかりと発酵させなければ味は落ちてしまうため、その対策として考案されたといいます。

さて、それでは老麺法に戻りましょう。

老麺法の生地の特徴

老麺法は、すでに完成されている生地を使いますので、グルテンも完成された状態にあります。

ですので、その老麺を新しい生地に加えて混ぜ合わせることで、こねる時間も短くなります。

また、老麺生地は時間をかけて熟成された状態、すなわち生地をオーバーナイトさせていますから、その時間が長いほどに酸味が増し、味に深みがでてきます。

そんな老麺の生地を使ったパンは、ストレート法で作ったものとは違う味わいに仕上がるのです。

この老麺法の特徴は、中種法などの方法と同じように、時間が経つと生地がパサついて水分がどんどんと抜けていく老化のスピードを遅くすることができます。

ですから、この老麺法で作ったパン生地はしっとり感の長く続く生地になります。

・老麺生地はグルテンが完成されている
・老麺生地は熟成されて味に深みがでる
・老麺生地は老化が遅くなる

老麺法のメリット

それでは、この老麺法を使うことでのメリットをいくつか見てきましょう。

老化が遅くなる

この老麺法の特徴として生地の劣化が遅いことから、冷蔵庫で保存してあげても3日ほど持ちますので非常に使いやすいです。

それ以上経つと、老麺生地からアルコール臭がしてきますから、あまり長期に渡って保管することはやめましょう。

過発酵した生地を老麺として再利用できる

また度合いにもよりますが、生地が過発酵してしまった場合にその生地を老麺として利用することで、新たな美味しいパンを作ることもできるのです。

ストレート法と比べた老麺法のメリット

老麺法のメリット

  • しっかり発酵させられる
  • 捏ね時間の短縮
  • 作業分散による労力の削減
  • イーストの追加が不要

中種法でも触れていますが、こういった事前に種生地を仕込む製法と比べて、ストレート法は1回の流れで素早く簡単に作ることができるためメリットがありますが、以下のデメリットもあります。

ストレート法のデメリット

  • 環境の影響を受けやすい
  • 老化が早い
  • 味の深みが少ない

それは、発酵が足りず、生地を最大限美味しくしてあげられていないからだと言えます。

ですから、老麺法などの製法を用いることによって、しっかりと発酵させてあげられて、さらにはこねる時間の短縮や、時間を空けることでの作業分散によって労力を最小限にすることができます。

また、この製法は元々は天然酵母による発酵を利用していますから、生地を継ぎ足していくために種生地を混ぜることで発酵を促してくれますので、新たに作る生地にはイーストを入れなくても大丈夫です。

老麺法のデメリット

この老麺法のデメリットとまではいかないかもしれませんが、老麺を維持し続けるためには、パンを作り続けなければならないというところです。

ただ、今はイーストを使用することがほとんどですから、中種法と同じように事前に仕込むだけでOKです。

・老麺を維持するにはパンを作り続けないといけない

中種法と老麺法の違い

中種法と老麺法の明確な違いは、材料の違いと配合率です。

中種は基本的に、小麦粉、酵母、水といったシンプルなものだけを使って事前発酵させます。

たいして、老麺法は、全てを混ぜ合わせて焼き上げる一歩手前の生地を使っている点です。

・中種法は副材料を入れない
・老麺法は副材料も入れる

老麺の作り方

それでは、老麺法の手順を見ていきましょう。

この製法は、事前に作った生地を加えることになりますので、老麺自体の配合に規定はありません。

その種生地をストレート法と同じ工程の生地に加えてあげます。

1. 老麺を仕込む

基本的に老麺は生地を作っておいて、それを次回作るときに継ぎ足して使うことになりますので、種生地自体を作る時点での材料の配合などの決まりはありません。

しかし、種生地を新しい生地に練り込む際の割合は10%~40%となることが多いので気をつけてください。通常は20%加えてあげます。

生地はストレート法と同じように作れば問題ないです。

元々はイーストを使わない製法ですが、イーストを使ってかまいません。

老麺生地をこねてまとめ、発酵させます。

発酵がすみましたら、ここで冷蔵庫で一晩〜寝かせます。

1次発酵までさせるのです。

老麺の生地自体は3日ほど持つのでその間に使ってください。

しっかりと生地を寝かせることで、ゆっくりと発酵させ、中種法と同じように水分がしっかりと芯まで水和していきます。

2. 老麺を新しい生地と混ぜ合わせる

老麺は全体の10%〜40%なので、残りの分を新しく生地をつくります。

配合は、ストレート製法と同じで大丈夫です。

老麺自体の発酵力があるので、イーストは少なめで構いません。

その生地と老麺と混ぜ合わせ、均一に混ざり合うまでこねてあげます。

老麺としっかり混ざりあったら、1次発酵させていきます。

発酵が終わりましたら、型に入れて2次発酵させ、焼成していきます。

仕上がり

老麺法で作られたパンは、しっかりと発酵・熟成されているために、味に酸味が含まれますので芳醇な味になり、ストレート法で作るパンとは全く違うパンに仕上げることができます。

また、時間をかけて発酵した生地は水分がしっかりと吸収されているために水和して、しっとりとした生地に仕上がっているうえ、デンプンがよく分解されて糖に変わっており、より甘みの感じられる味になります。

保存方法

さすがは歴史のある老麺法。この製法をで作られた生地は保存の際にカビることなども殆どなく、失敗しにくい製法です。

保存するときは、冷蔵庫などで低温保存していきましょう。

低温保存している間も生地は発酵し続けています。

老麺の菌は結構強いのですが、納豆菌は更に強いため負けてしまいます。

冷蔵庫では納豆菌からは極力遠ざけて保存してください。

たとえばジップロックなどに入れて保存してあげるとさらに安心ですね。

目安としては3日間程度で使いきると良いでしょう。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

老麺は古代より伝わる、発想はシンプルでありながら効果は抜群という素晴らしいものでした。

製法として寝かした生地をつけ足してあげるだけなので、非常に簡単に作ることができます。

それと同時にとても美味しいパンに仕上げることができますので、ぜひ気軽に試してみてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

某ライフスタイルを提案する書店にて料理・旅行に関する本を主に担当し、毎月様々な担当ジャンルの特集やイベントなどを企画、開催をしていました。
趣味が高じてアウトドア業界に転職後、現在イギリスに渡英し語学や文化を勉強中です。
ジャンルを越えて横断的に興味のあることを追求してく日々を送っています。

目次