ポーリッシュ法とは?中種法との違いは?酵母の発酵が進みやすいなどの特徴やメリットを紹介!
前回、中種法という種生地を作ってストレート法とは異なる特徴を持たせることができる製法についてまとめさせていただきました。
今回はこの中種法と似て非なるまた新たな製法、ポーリッシュ法をご紹介します。
特徴を理解して、パンを美味しくするための引き出しを増やしていきましょう。
ポーリッシュ法とは?
ポーリッシュ法は別名「液種法」や「水種法」とよばれており、古くは19世紀ポーランドで生まれた方法で、そこからポーリッシュ法と呼ばれています。
ポーリッシュ法は時代とともに国を越えて広まりオーストリアへ、そこからフランスに伝えられ、20世紀前半辺りまでにおいて、フランスパンの主流製法となりました。
ちなみに、中種法は伝統的なフランスの方法だったようです。
ポーリッシュ法での製造の流れは、発酵種→熟成→本こね生地と混ぜていく、という流れとなり、工程としてはほとんど中種法と近しい製法となります。
それでは早速、工程を見ていきましょう。
ポーリッシュ法と中種法との違いは「水分量」
まず、あらかじめ種生地を用意するところから始まります。
ポーリッシュ法は、液種という小麦粉に対して水を同量使用した種を使います。
それを本こね生地を混ぜ合わせる際に加えます。
液種の割合は全体の20%から40%までと定義されています。中種法と比べると割合は少なめです。
液種は48時間以内に使い切る必要があります。
ポーリッシュ法の発酵の目安
発酵の目安としては2時間から48時間とされています。
発酵の時間を増やすにつれ、アルコール臭が増し酸味のあるパンとなっていきます。
まるで発酵食品のような風味を与えられます。
ですが、反面やりすぎるとそれらの要素が強くなりすぎてしまいますので、基本的にそれ以上にかけてあまりに長時間寝かせることはしません。
ポーリッシュ法は、夕方に仕込み一晩寝かせて朝に本こねに取り掛かかるくらいの時間が一般的です。
時間を調整したい場合は、ある程度の塩を加えることにより発酵力を抑えたりして調整することもできます。
種生地が完成した後はの流れは、中種法と同じく本こね生地と混ぜ合わせてこねていき、二次発酵、焼成と続いていきます。
中種法と比べたポーリッシュ法の特徴
ポーリッシュ法は水分が豊富なので、こねる時などベタつくために根気よくこねる必要がありますが、以下のようなメリットもあります。
- 発酵するスピードが早い
- パンのしっとり感、やわらかさが持続する(水和が十分される)
- パンが硬くなりにくい(老化しにくい)
また、おなじく水分が多いことでイーストが効率よく発酵するために、はじめに加えるイーストの量が少なくすみ、イーストくささがありません。
ポーリッシュ法は発酵が活発
ポーリッシュ法は、中種法よりもイーストの発酵が活発に進みます。
微生物の働きが良いため、発酵食品のようなまろやかな良い香りがでてきます。
ここは中種法と違うところです。
中種法は、比較してみると水分量が少ないことで微生物の働きが制限されており、発酵により生み出される風味はポーリッシュ法と比べてやや少ないです。
ポーリッシュ法は風味を活かせるパンとしてのリーンなパン、バゲットやフランスパンによく使われます。
反対に、中種法は食パンや菓子パンなどのリッチなパンなど様々なものに用いられる製法となります。
中種法との違いとしては、中種法は団子状であるのに対してポーリッシュ法は種がどろっとした液体であるということです。
小麦粉と同量の水を加え、少量のイーストを加えた生地を熟成させると、粘着の非常に強い種になります。
発酵して膨らんだのちに「種落ち」という種のカサが減るタイミングがあります。
この段階になりましたら本こね生地と混ぜ合わせます。
ポーリッシュ法はグルテンをあえて破壊する
ここで、グルテンというものをおさらいしましょう。
グルテンは小麦粉に含まれるタンパク質が混ぜ合わせることにより結合してグルテンが作られていきます。
このグルテンは、網目状に広がって、生地をしっかりとつなぎ合わせていきます。
これをグルテン骨格と言います。
この骨格がしっかりしていることで、弾力のある生地に仕上がるのです。
ポーリッシュ法は、その骨格を水分を多くしてあげることで意図的に壊してあげています。
グルテン骨格の壊れた生地はどろっとした状態となり、本こね生地と混ぜ合わせてミキシングすると、伸びの良い焼き上りで歯切れの良いパンに仕上がります。
また、この生地のゆるさと発酵により気泡が広がりやすいため、大きな気泡が特徴の内層であるフランスパンやバゲットなどによく使われます。
対して中種法は、グルテン骨格を残します。
本こね生地と混ぜ合わせる時点で、すでにしっかりとグルテンは形成されているためにこねる時間も少なくてすみます。
液種はイーストにとって最高の環境
イーストが発酵するのに欠かせない水分を隅々まで行き渡らせることができますから、ほかの製法と比べても発酵が非常にスムーズに進みます。
反面、イーストが発酵しやすいということは当然ほかの菌も繁殖しやすい環境になり得るために、熟成させる際の衛生面を気をつける必要があります。
また、種が液状であるために、大量に作る際には少し置き場の工夫が必要になります。
「こね」は根気よく
生地がしっかりこねられることで得られることは、できあがりの生地にボリュームが出せるということです。
ですのでリーンなパンのような、発酵しにくいシンプルな材料でもふっくらしたパンをつくることができるのです。
作業工程でも、中種法で紹介したものと同じく、熟成させることで作業を分散できるために、本こね生地を作る際の発酵時間が短くてすみます。
イーストの量は発酵させる時間によって調整します。
熟成時間を長くするに従い、しっかりと発酵していくので量は少なくしていきます。
中種法との違いとしましては、生地の水分が多いためにまとまるまでに時間がかかりますので根気よくこねる必要があります。
疲れたら休んでも構いません。
乾燥しないようにボールなどをかぶせて乾燥しないようにして5分程度休憩したりしても大丈夫です。
おまけに発酵も進んでくれます。
まとまりにくいからといって途中で粉は足さないでください。
粉を追加してしまいますと出来上がりがぱさついてしまいます。
続けていけばまとまっていきますので根気よく取り組んでいきましょう。
おわりにー衰退と復活
ポーリッシュ法、いかがでしたでしょうか。
種生地は、水分量を変えることで全く違う化学反応を利用し、全く違う特徴を持ったパンを作ることができます。
中種法はグルテンを強固にした種生地に対して、こちらのポーリッシュ法で作られた生地は、液化してグルテンがズタズタな状態ですから柔らかく伸びが良い生地となり中種法とはまた違った歯切れの良い食感を楽しむことができます。
そして、本こね後に行う発酵時間を短くしたとしても、しっかりと味と香りがあるパンに仕上がります。
以前の中種法の記事で、工場などでパン生地を機械でこねるときに、中種法は簡単に膨らみ、安定的にパンを製造できるためによく使われると紹介しました。
ポーリッシュ法は液種という液状での保存をしなければならない理由があり、効率良く保存するには中種法で作られた団子状の種がまさります。
そういった特徴から、大量生産が必要な工場のような機械化が進む時代の流れとともに、ポーリッシュ法は一度は廃れていきます。
しかし、近年になって、これまで見てきたようなポーリッシュ法により可能となる長所が再発見されることで、段々とこの製法を採用するパン屋さんが増えてきています。
大量生産に向かないとはいえ、大規模な設備と大量生産を行わない小規模なパン屋さんでは、液種の保管する場所さえあれば採用することができます。
水分が多いためにこねる手間はかかる製法ですが、その手間をかける価値のある美味しいパンを作ることができます。
ぜひご自身のパン作りにもこのポーリッシュ法を取り入れてみてください。