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イーストフードとは?パン作りでの役割は?安全か危険かどっちなの?

製パン業界では欠かすことのできない存在のイーストフード。

初めてその言葉を知ったときには、イーストの種類かと思った人も多いでしょう。

イーストフードという言葉も、今では一般的にも知られるようになってきました。

今回はイーストフードとはどういったものなのか、また製パンでのイーストフードの役割と、危険性の有無についても解説していきたいと思います。

目次

イーストフードとは

イーストフードは、別名「生地改良剤」とも呼ばれています。

消費者庁ホームページに提示されているイーストフードの定義は以下のようになっています。

パン、菓子等の製造工程で、イーストの栄養源等の目的で使用される添加物及びその製剤

消費者庁PDF – 食品衛生法に基づく添加物の表示等について(平成 22 年 10 月 20 日消食表第 377 号) – P17

イーストは「酵母」のことを指し、フードは「食べ物」を意味するので、まさに酵母の餌となるものと言えるでしょう。

イーストフード(添加物)の種類

国が認証しているイーストフードには18種類の物質が該当します。

国が認可しているイーストフード一覧

  • 塩化アンモニウム
  • 塩化マグネシウム
  • 酸化カルシウム
  • グルコン酸カリウム
  • グルコン酸ナトリウム
  • 炭酸アンモニウム
  • 炭酸カリウム
  • 炭酸カルシウム
  • 硫酸アンモニウム
  • 硫酸カルシウム
  • 硫酸マグネシウム
  • リン酸三カルシウム
  • リン酸水素二アンモニウム
  • リン酸二水素アンモニウム
  • リン酸一水素マグネシウム
  • リン酸一水素カルシウム
  • リン酸二水素カルシウム
  • 焼成カルシウム

イーストフードは一括表記できる

原料にイーストフードに該当する2種類以上の物質を使用している場合、個々の物質名ではなくイーストフードという一括名で表記することが認められています。

イーストフードと表記されている製品では、多くの場合4~5種類ほどを組み合わせて使われています。

いくつ入っていても、イーストフードという一括表記ができるため、実際には何の添加物がどれくらい使われているのか、わからないのが現状です。

役割

酵母の餌となるイーストフードですが、ここからは、イーストフードにはどのような役割があるのか見ていきたいと思います。

水の硬度を変える

パン作りには、塩化ナトリウムや炭酸カルシウムなどの無機塩類を含んだ硬水の方が、発酵や生地物性が良くなることがわかっています。

軟水でパンを作ると、生地がべたつき、吸水量も悪くなり、発酵が早すぎてしまいます。

結果、窯伸びが悪くなってしまうのです。

しかし硬水の方が適しているとはいえ、硬度の高すぎる水を使っても今度はしまりすぎた生地となり、発酵にとても時間がかかってしまいます。

できあがったパンはもろいパンとなってしまうのです。

日本は川の水や水道水を含め軟水が多いのですが、これは地域によって違いがあります。

水の硬度を調整することでパン作りが安定し、さらに硬度を微調整することでふわふわのパンやしまった生地のパンなど、パンの種類に合わせた仕上がりとなり、製パンに幅をもたせることもできるのです。

イーストの栄養となる

イーストフードは酵母の餌、つまりイーストの栄養源ともなります。

パン生地は糖をアルコール発酵し、発生した炭酸ガスにより膨らみます。

発酵に欠かせない糖の量が少なく、生地材料だけでは発酵が十分におこなえない場合でも、窒素、リン、カリウムを加えることで効率よく炭酸ガスの発生を促し、発酵を助けることができます。

グルテンの安定と強化

新しい小麦には、生地を柔らかくするような還元作用のある物質が多く含まれています。

しかし、このまま使用するとグルテンの形成が不十分で、だれた生地となり膨らみも悪くなります。

小麦は製粉後、しばらく置いておくことで少しずつ酸化し、安定した状態になっていくのです。

しかし、保管には場所の確保や管理にコストがかかるため、すぐにでも使用したいところです。

適切に管理できないと虫やカビなどの恐れもあります。

そこで、イーストフードを使うことで、酸化が未熟な粉を製造に適したやや酸化した状態へと持っていき、グルテンの安定と強化を図ることが可能となるのです。

生地pHの調整

酸やアルカリの強すぎる生地は、発酵を阻害してしまいます。

そこで安定した生地の発酵をおこなうために、炭酸カルシウムやリン酸カルシウムなどのカルシウム塩類を加え、生地pHの調整をおこなうことができます。

使用目的

イーストフードを使うことで、パン作りにさまざまな効果をもたらすことがわかりました。

しかし、イーストフードを使わなくてもパンを作ることはできます。

では、どうしてイーストフードを使用するのでしょうか?

安定した生地ができる

前述のイーストフードの役割でも紹介したとおり、イーストフードを使用することで安定した生地を作成することができます。

パンの製造には高い技術が必要ですが、扱いやすい生地であることにより、だれが作っても安定した仕上がりになります。

製造時間の短縮

グルテンの強化によりミキシングの時間が短くなり、発酵を促すことで作業時間を短縮することができます。

これにより効率よく多くの製品を作ることが可能となるのです。

コスト削減

イーストフードを使うと発酵を促進し、その分、粉や酵母の量を減らすことができます。

結果材料費の節約になります。

また、作業時間の短縮にもなるので、人件費の削減にもつながるのです。

安全性

製パン業界にとって、イーストフードは作業効率を上げるとても便利なものといえます。

しかし消費者にとっては安全性が気になるところ。

イーストフードの安全性には、さまざまな見方があるのが現状です。

安全ではないという考えかた

一般的には安全ではないという見方がされています。

特に危険だと言われているものについて見ていきましょう。

塩化アンモニウム

塩化アンモニウムの大量摂取は、嘔吐や昏睡となる危険性があります。

しかし食品に使う場合は使用限度が決まっているため、大量摂取の恐れはないとし、日本では使用が認められています。

リン酸塩類

  • リン酸三カルシウム
  • リン酸水素二アンモニウム
  • リン酸二水素アンモニウム
  • リン酸一水素マグネシウム
  • リン酸一水素カルシウム
  • リン酸二水素カルシウム

などの物質がこれにあたります。

リンは骨や歯の形成に必要不可欠な物質です。

しかし、リンの大量摂取はカルシウムの吸収を阻害し、骨粗しょう症や血管石灰化の原因になるとされています。

添加物の組み合わせ

現時点での個々の安全性は認められていても、複数の添加物を組み合わせて使われることが多く、組み合わせたことによっておこる影響や、長年摂取し続けることによる影響、胎児や子孫への影響などわかっていないことも多いのが現状です。

安全であるという考え方

イーストフードの危険性が懸念されるようになり、消費者の中にもイーストフードが使われている製品を避ける傾向が出てきました。

最近ではイーストフード不使用や、乳化剤無添加といったことを掲げている製品も少なくありません。

しかし、これに異を唱え始めたのが大手製パン企業の山崎製パンです。

「イーストフード、乳化剤不使用」等の強調表記のある商品はイーストフードと同一の成分あるいは同一の機能をもった代替物質を使用しています。

山崎製パン – 「イーストフード、乳化剤不使用」等の強調表示に関する当社の見解

イーストフードや乳化剤は安全性が公認され広く使用されている食品添加物です。

山崎製パン – 「イーストフード、乳化剤不使用」等の強調表示に関する当社の見解

山崎製パンはイーストフード、乳化剤不使用の強調表記は、安全性が認められているはずの食品添加物を、安全ではないものとしてお客様に印象付け、誤解を与える不適切な表示であるとしています。

イーストフードを使用することは、大量生産するうえでは欠かせないものであり、品質の高いパンを作るにはどうしても必要なものなのです。

まとめ

イーストフードは効率化や品質向上のために、量産設備で製造する製パン業界にとっては、必要不可欠なものとして使われています。

日本では食品添加物の安全性が認められているものの、海外では使用が禁止されている国も少なくありません。

食品添加物との付き合い方は難しいものだからこそ、製パン業界に従事する人は正しい知識を得たうえで使用していく必要があるでしょう。

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この記事を書いた人

医療技術系短大卒業後、バイオ系研究室テクニシャンなどを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中です。
製パンスクールのプロコースを卒業した経歴を活かし、実践に役立つ製パン知識を、よりわかりやすく科学的にお伝えします。
食育アドバイザー、幼児食インストラクター資格保持。

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