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パン作りにおすすめの塩は?塩の種類でパンに違いはでるのか解説!

塩は生地を引き締めてくれたり、発酵をコントロールしたりと、製パンの材料として欠かせない存在です。

最近は塩の専門店などもあるように、塩の種類も多種多様。実は、使う塩の違いでパンの仕上がりにも大きく影響があるのです。

目次

塩の種類の違いでパンに違いはでる?

塩の種類の違いでパンに与える最大の影響は、味の違いです。

時間をかけて天日でゆっくり水分を蒸発させて作る天日塩は、食べたときに辛みが残りにくく甘みを感じることができます。

一方、ミネラルが含まれていない精製塩では、塩辛さを強く感じやすくなります。

使う塩の違いによるパンの仕上がりについて、日本ソルトコーディネーター協会が、一般社団法人ポリパンスマイル協会と共同で検証しています。

この検証では、精製塩である食塩を使用した場合と比べ、ミネラルを多く含む天日塩(使用した塩は天日塩を平釜で結晶化したもの)の方が、クラムのきめが細かく、引き締まっていることがわかりました。

さらに、食べたときに天日塩はおいしく感じるものの、食塩で作ったパンは塩気を強く感じ、パンのおいしさを損ねることがわかりました。

精製塩と天然塩(自然塩)

使う種類によって、パンの仕上がりや味に違いがある塩ですが、実際にはどのような種類があるのでしょうか?

まずは、精製塩と天然塩の違いについて紹介したいと思います。

精製塩

精製塩とは、原塩となる塩を溶解して、塩化ナトリウムの濃度が99.55%以上になるように精製したものです。

マグネシウムやカリウムなどのミネラルを含まず、さらさらしているのが特徴です。

一般的にイオン交換膜製法で作られています。

イオン交換膜製法とは、海水の成分を陽イオンと陰イオンに分け、陽イオンである塩化マグネシウムを集め濃縮する方法です。

苦みの素となる不純物が取り除かれ、塩化ナトリウムの濃度が高くなるため、ストレートに塩味を感じることができます。

一般家庭でも使いやすいため、スーパーなどで通常販売されている商品はほとんどが精製塩です。

食塩という名で販売されているものは、基本的に精製塩に該当します。

天然塩(自然塩)

天然塩は自然の力でできた塩を採取したものや、海水を天日や平釜などで蒸発させて作った塩のことを指します。

精製されていない塩なので、塩の本来の成分でもあるミネラルが豊富に含まれているのが特徴です。

天然塩や自然塩に明確な定義はなく、日本で販売されている天然塩でも、日本でとれた海水を使用したものから外国産の塩を原料ににがりを混ぜたものなどさまざまです。

どのようにして作られた塩か、原料などはさまざまで、精製塩に対して天然や自然と謳うことは不明瞭です。

そのため、商品に「天然塩」や「自然塩」の表示をすることは禁止されています。

精製塩ではない商品を選びたい場合は、どのような原料や製法で作られた塩なのかを自分で確認して購入する必要があります。

天然塩の種類と特徴

天然塩には、原料の違いから海水塩、岩塩、湖塩、フレーバーソルトに分けることができます。

海水塩は、さらに製法の違いに分けることができるので詳しく紹介していきましょう。

海水塩

塩全体の約30%を占めるのが海水塩です。

さらに海水塩は製法によって天日塩、せんごう塩、藻塩に分けることができます。

天日塩

天日塩は、海水を太陽の熱や風力を利用して水分を蒸発させ結晶化した塩です。

自然の力で蒸発させるため、非常に長い時間をかけて作られます。

塩田を作るためには広大な土地が必要なことと、乾燥に適した環境が必要です。

湿度の高い日本では天日塩を作るのは非常に難しく、販売されているほとんどの天日塩は外国産になります。

気温の高いごく一部の離島などでは、国産の天日塩を作っているところも存在しますが、希少性の高さゆえに高価です。

じっくり時間をかけて水分を飛ばした天日塩は、甘くマイルドに仕上がるのが特徴です。

せんごう塩(釜炊き塩)

せんごう塩とは、海水を釜で煮詰めて水分を蒸発させて塩を採取したものです。

釜炊き塩ともいいます。

日本では、塩田で天日干しすることが難しいことから、ほとんどがせんごう塩となっています。

藻塩

藻塩とは、海藻を利用して塩を抽出する方法です。

古くは海水を海藻に付着させて乾燥させ、塩が浮かび上がったあと再び海水に浸け、塩の濃度を段々濃くしていく方法で塩を採っていました。

海水を煮詰めるにはとても膨大な燃料を必要としたため、このような方法で塩を抽出していたのです。

海藻の成分が付着しているため、ミネラルが豊富に含まれているのが特徴です。

岩塩

塩の約60%を占めるのが岩塩です。

岩塩は太古の時代、地殻変動によって海底が隆起し、地上に海水が溜まり、行き場を失った海水がマグマの熱などで蒸発して結晶化したものです。

もともとは海水ですが、結晶化した塩は長い年月で地中に眠り、鉱物のような状態になっています。

アメリカやヨーロッパが産地で、地中からさまざまな有機物が蓄積されるため、色も採れる場所で変わるのが特徴です。

塩の約60%を占めている岩塩ですが、このように鉱物化した塩を採掘して得られるため、地質上日本では岩塩を採取することはできません

湖塩

塩の約10%を占めるのが湖塩です。

湖塩の採取できる場所は、もともとは海だった場所です。

地殻変動により地上に塩湖ができ、塩湖から採取して濃縮したものが湖塩となります。

自然蒸発させて採取する方法が一般的で、高濃度の塩分で知られる死海などが主な産地です。

日本ではもちろん採取できず、世界でも採取場所は限られています。

そのため、希少性が高いのが特徴です。

フレーバーソルト

塩にガーリックなどのスパイスやハーブなどを混ぜ、さまざまな風味や香りをつけたものがフレーバーソルトです。

おもに、料理のアクセントや味付けとして使われています。

フレーバーソルトに使われている塩は、海水塩や岩塩などさまざまですが、スパイスに負けない味や癖の強いものが多く使われているのが特徴です。

パン作りにおける塩を選ぶ基準

それでは、パン作りに使う塩の選び方を紹介していきます。

粒子が粗すぎない

パン作りにはこの塩を使わなければいけないというように、厳密に決まっているわけではありません。

ただし、できるだけ粒子が粗すぎないものを選んだ方が、練りこみやすいでしょう。

練りこみ用には細かい塩、トッピングには粒子の粗い塩という用に使い分けるのがおすすめです。

ここで言う粒子の粗い塩というのは岩塩などのことで、一般的に“あらじお”と呼ばれているものは、パン作りでも十分使うことができますよ。

ミネラル成分が含まれるもの

ミネラル成分とは、マグネシウムやカリウムのことです。

“にがり”と呼ばれているものは、おもに塩の成分に含まれる塩化マグネシウムのことを指しています。

マグネシウムにはたんぱく質を結合する作用があり、グルタミンと結合するため、それがよりパンの引き締め効果に繋がっていると言えます。

また、ミネラル成分であるマグネシウムやカリウムには苦みがあります。

その苦みが、塩化ナトリウムの辛みを緩和し、甘みを感じさせることができるのです。

パン作りにおすすめの塩は天然塩の海水塩

パン作りにおすすめの塩は、天然塩の海水塩です。

天然塩の海水塩であれば、製造方法はあまり関係ありません。

天日塩やせんごう塩、藻塩はもちろん、海水が元である湖塩でも構いません。

天然塩の海水塩はミネラルのバランスが良く、味がマイルドに仕上がります。

粒子も適度に細かく生地に混ぜやすいため、パン作りに使いやすい塩と言えるでしょう。

フランス産のゲランドの塩は、辛みが後に残らず甘みが感じられるのでパン職人に人気の塩です。

なぜ天然塩の海水塩以外は一般的に使われない?

天然塩の海水塩以外の塩があまりパン作りに使われていない理由には、以下のようなことがあります。

塩辛さを強く感じる

天然塩は苦みの素であるマグネシウムなどの存在で、塩化ナトリウムの辛さを抑える効果があります。

マグネシウムやカリウムなどのミネラルを取り除いた精製塩は、成分のほとんどが塩化ナトリウムであるため、辛さを強く感じてしまうのです。

しかし、一般的に家庭で多く使われているのは精製塩です。

そのため、家庭向けのレシピでは精製塩であることを想定したレシピが使われています。

通常であれば精製塩を使用してパンを作っても問題ありませんが、プロ向けのレシピや“天然塩を使用する”など、使用する塩を指定しているレシピでは、精製塩の分量を減らして調整する必要があります。

生地に混ぜ込みにくい

岩塩などの粒子が極端に粗い塩は、生地に混ぜ込みにくく製パンにおける塩の役割を発揮しにくいため、通常製パンには使われません。

調味料としての役割が大きい

岩塩やフレーバーソルトは味にパンチがあるので、用途としては調味料としての役割が大きいのです。

製パンの材料に使う塩の役割は、生地を引き締めたり発酵の調整をおこなったりすることです。

パンに塩味をつけるということは、他の旨味成分を引き出すためのもので塩本来の味を感じるためではありません。

必要以上に塩の味を主張すると、パンそのものの味に影響してしまいます。

精製塩は家庭用のレシピで使われる

前項の「なぜ天然塩の海水塩以外は一般的に使われない?」で説明したように、精製塩は家庭向けのレシピでは問題なく使うことができます。

さらさらした精製塩は計量もしやすく使い勝手の良い塩です。

家庭でパンを作り始めて間もない頃は、精製塩を使ってパンを作る方が良いでしょう。

実際に、パン教室や大量生産されるパンでは精製塩が多く使われています。

パン作りが本格的になってきたり、材料にこだわってみたいと感じたら、味に深みがあったり、甘みを感じることができる塩をみつけて、プロ向けのレシピで作ってみると良いでしょう。

岩塩は焼成前にふりかける

粒子の大きい岩塩は、プレッツェルや塩パンなど、トッピングとして焼成前にふりかける塩として使われています。

トッピングとしてかけてある塩は、舌に直接触れるため、塩味を強く感じます。

ミネラルが豊富な岩塩を使うことで、塩気を感じつつもマイルドで甘みのある味に感じることができるのです。

フレーバーソルトはトッピングに使われる

塩にガーリックやハーブなどを混ぜ込んだフレーバーソルトは、塩以外の材料が多く含まれています。

そのため、生地の材料としてではなく、味付けの意味でトッピングとして使われることが多い塩です。

調理パンの具材の味付けに使ったり、完成したパンをフレーバーソルトとオリーブオイルにつけて食べたりというのがおすすめの食べ方です。

まとめ

今回はパンにおすすめの塩について紹介しました。

塩というのは、パン職人がこだわる食材の一つでもあります。

塩の味は繊細で、敏感な人でなければあまりその違いを感じにくいとも言われています。

しかし、繊細であるがゆえにリーンなパンなどではその違いが顕著に表れやすいのです。

最近ではネット販売サイトや塩専門店の増加で、家庭でも世界中の塩が手に入りやすくなりました。

良質な塩を使って、ぜひ仕上がりの違いを比較してみてください。

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この記事を書いた人

医療技術系短大卒業後、バイオ系研究室テクニシャンなどを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中です。
製パンスクールのプロコースを卒業した経歴を活かし、実践に役立つ製パン知識を、よりわかりやすく科学的にお伝えします。
食育アドバイザー、幼児食インストラクター資格保持。

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