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パン作りでの乳製品の効果と役割は?牛乳やスキムミルクなどの違いを解説!

パンの副材料として乳製品を使うことがあります。

乳製品は老化を遅らせたり、クラムのきめを細かくしたり、クラストの焼き色を良くし、旨味や風味をつける役割があります。

乳製品といっても、牛乳やスキムミルクなど種類はさまざま。それぞれどのような違いがあるのかを解説していきたいと思います。

目次

乳製品の種類

製パンの材料としておもに使われている乳製品には下記のものがあります。

  • 牛乳
  • 練乳
  • 全粉乳
  • スキムミルク(脱脂粉乳)
  • ホエイパウダー
  • クリーム
  • チーズ

乳製品はそれぞれ、厚生労働省の食品衛生法に基づき「乳及び乳製品の成分規制等に関する省令」で処理方法や成分が定められています。

乳及び乳製品の成分規制等に関する省令

牛乳

牛乳は牛の乳を搾って作られますが、加熱殺菌をしていないそのままのものを「生乳」といいます。

一般に市販されているものは加熱殺菌をおこなっており、食品衛生法に基づき品質確認を受けて包装されたものが「牛乳」として店頭に並んでいます。

牛乳の成分は、水分が87.4%と乳固形分が12.6%です。

乳固形分は乳脂肪分と無脂乳固形分に分類でき、無脂乳固形分はたんぱく質や乳糖、無機質やビタミンの成分で構成されています。

水分(87.4%) 乳固形分(12.6%)
乳脂肪分(3.8%) 無脂乳固形分(8.8%)
たんぱく質(3.3%) 乳糖(4.8%) 無機質(0.7%) ビタミン類(微量)

牛乳のたんぱく質は、カゼインがたんぱく質の内訳の80%を占め、残りはラクトアルブミンとラクトグロブリンです。

無機質はミネラルのことで、牛乳には特にカリウムやカルシウム、リンが多く含まれているのが特徴です。

練乳

練乳は生乳や牛乳を加熱して濃縮したものです。

別名、コンデンスミルクといい、そのまま濃縮したものか脂肪分を取り除いて濃縮するかで全脂練乳脱脂練乳に分けられます。

さらに、練乳はショ糖を加えるかどうかでも、無糖練乳加糖練乳に分けることができます。

全粉乳

全粉乳は、生乳や牛乳を濃縮して乾燥させ、水分を抜いて粉末状にしたものです。

乳固形分は95.0%、水分は5.0%以下になるよう定められています。

スキムミルク(脱脂粉乳)

スキムミルクは脱脂粉乳のことで、生乳や牛乳の乳脂肪分を除去し濃縮して乾燥させ、水分を抜いて粉末状にしたものです。

脱脂粉乳は乳固形分が95.0%以上、水分が5.0%以下になるように定められています。

ホエイパウダー

ホエイパウダーは、生乳や牛乳などから乳脂肪とたんぱく質のカゼインを取り除き、濃縮させて乾燥し、水分を抜いて粉末状にしたものです。

ホエイとは、ヨーグルトの上澄みにできる液体のことで、乳清ともいいます。

ホエイパウダーは乳固形分が95.0%以上、水分が5.0%以下になるように定められています。

クリーム

クリームは、生乳や牛乳などから乳脂肪分以外の成分を取り除いたものです。

一般的には生クリームという名称で扱われています。

クリームは用途の目的によって2種類に分けられ、コーヒー用として脂肪分が18~30%含まれたクリームを「ライトクリーム」、ホイップ用として脂肪分が30~48%含まれたクリームを「ヘビークリーム」としています。

チーズ

乳及び乳製品の成分規制等に関する省令では、チーズとはナチュラルチーズおよびプロセスチーズのことをいいます。

ナチュラルチーズは牛乳に乳酸菌とレンネットを加え、固めて熟成させたものです。

レンネットとは、動物や植物、微生物などから抽出したレンニンという酵素を主成分とする酵素剤のことで、レンネットの作用で牛乳に含まれるカゼインが分解されてカルシウムと結合し、凝固沈殿することができます。

さらに、乳酸菌の作用によってpHが下がり、カゼインの凝固を促進させるとともに、雑菌の繁殖を抑えます。

プロセスチーズは、ナチュラルチーズを加熱殺菌させて作ったものです。

ナチュラルチーズにはソフトとハードがあり、乳固形分の割合は定められていませんが、プロセスチーズは乳固形分が40.0%以上と定められています。

パン作りでの役割

パン作りでの乳製品の役割にはさまざまなものがありますが、使う乳製品の種類によって役割や効果に違いがある場合があります。

老化を遅らせる

乳製品に含まれるカゼインは加熱すると凝固するため、水分の蒸発を防ぎ、生地により多くの水分を保持することができます。

そのため、乾燥しにくくなり、パンの老化を遅らせることができます。

牛乳や練乳、全粉乳、クリーム、チーズはグルテン形成を阻害する(サクサク食感になる)

グルテンは、小麦粉に水を加えてこねることでグリアジンとグルテニンが絡み合い形成されます。

しかし、乳脂肪分が含まれている乳製品を使うと、乳脂肪分が水と小麦粉の接触を妨げ、水和しにくくなり、グルテンの形成を邪魔してしまうのです。

このような性質をショートニング性といい、サクサクした食感に仕上がります。

バターなどの油脂を入れる生地では、グルテンがある程度形成されてから油脂を加えますが、それは乳脂肪分がグルテンの形成を阻害するためです。

一方、乳脂肪分を取り除いて作るスキムミルクやホエイパウダーは、乳脂肪分によってグルテン形成が阻害されることはありません。

発酵を遅らせる

乳製品が発酵を遅らせるのには、いくつかの理由があります。

牛乳に含まれるたんぱく質のカゼインは、発酵を妨げる作用があります。

カゼインを取り除いたホエイパウダーは、カゼインによる発酵阻害の影響を受けません。

さらに、カゼインは加熱処理することで変性するため、スキムミルクや練乳のようにしっかり加熱処理されて加工した乳製品であれば、影響を受けることなく使用することができます。

牛乳ももちろん加熱していますが、殺菌処理が目的なため、加熱温度や時間も商品によりさまざまです。商品によって影響の有無が変わってくるでしょう。

加熱処理した乳製品は、カゼインによる発酵阻害の影響を受けないと説明しましたが、スキムミルクやホエイパウダーのような粉乳を使用する場合は、別の理由で発酵を遅らせます。

粉乳は発酵中に吸水し生地を引き締める作用があります。

そのため、発酵に時間がかかってしまうのです。

牛乳や練乳、全粉乳、クリーム、チーズはボリュームを抑える(窯伸びを抑える)

乳脂肪分が含まれる乳製品は、グルテンの形成を阻害するため窯伸びしにくくなります。

一方、乳脂肪分が含まれていないスキムミルクやホエイパウダーはというと、グルテンの形成に影響がないため、しっかりグルテンが形成されます。

そのため、窯伸びにも影響はありません。

牛乳や練乳、全粉乳、クリーム、チーズはクラムのきめを細かくする

乳脂肪が含まれている乳製品は、グルテンの形成が阻害され、窯伸びしないため、クラムのきめが細かくなります。

乳脂肪を含まないスキムミルクやホエイパウダーは、しっかり窯伸びし膨らむため、乳脂肪分の多い乳製品と比べると、きめの細かさはありません。

焼き色(クラストカラー)をよくする

乳製品に含まれる乳糖が、焼き色を良くします。

乳糖は酵母の餌とはならず、発酵後も生地に残りやすいのです。

そのため、残った乳糖が焼成時にカラメル化やメイラード反応を起こし、焼き色がつきやすくなります。

なかでもホエイパウダーは乳糖が多く含まれているので、より焼き色がつきやすいのが特徴です。

栄養面の補強

乳製品は、たんぱく質、脂質、糖質、ビタミン、カルシウムと豊富な栄養素を含む食品です。

ビタミンは加熱に弱い栄養素として知られていますが、熱によって壊れやすいのはビタミンCのことです。

牛乳に含まれるビタミンは、ビタミンAやビタミンB群がほとんどなので、加熱によって失われる栄養素は極めて少ないと考えられます。

たんぱく質や脂質、糖質やカルシウムも栄養面では加熱による影響はほとんどありません。

乳製品のなかでもより栄養価が高いのは、水以外の成分を取り除くことのない牛乳、練乳、全粉乳です。

乳脂肪分を取り除いた乳製品は、脂質はもちろん、脂溶性のビタミンであるビタミンAやビタミンDも乳脂肪分に溶出して失われてしまうため、栄養面ではやや劣ります。

旨味や風味をつける

乳製品を加えることで、ミルクの旨味や風味をつけることができます。

乳脂肪分は濃厚な味わいを出し、乳糖からは甘み、たんぱく質からはコクを出すことができます。

牛乳ありと牛乳なしのパンの違いは?

牛乳が入っているパンは、入っていないパンと比べてきめが細かくクラストが柔らかいパンに仕上がります。

フランスパンなどのリーンなパンでは、クラムのきめが粗く、クラストが硬い食感、さらに小麦の風味を活かすために牛乳を入れません。

水の代わりに牛乳を使うとどうなる?

水の代わりに牛乳を使うことも可能ですが、牛乳に含まれる乳糖の影響で焼き色がつきやすくなります。

本来の焼成時間より早くクラストに焼き色がつくため、焼き色だけを見て判断してしまうと、中は生焼けということになりかねません。

牛乳に置き換える場合は、焼成温度をやや低めに設定すると良いでしょう。

また、牛乳の12.6%は固形分のため、水を使うときと比べ水分量が少なくなります。

そのため、生地が締まりやすくなります。

牛乳に置き換える場合は、本来の水分量の12.6%(約1割)増しにして使うと良いでしょう。

牛乳の代わりに水を使うとどうなる?

乳アレルギーの人もいるため、水を使って作りたいという場合もあるかと思います。

牛乳は固形成分が含まれているので、牛乳の代わりに水を使うと水分量が増し、生地が柔らかくなります。

水に置き換える場合は、そのぶん水の量を減らして使用すると良いでしょう。

水で作った場合は、焼き上がりのパンに牛乳のもつ旨味や風味を感じることはできません。

牛乳を入れ忘れたらどうなる?

牛乳を入れる生地に牛乳を入れ忘れると、ほとんど水分がないため、ミキシングの段階で気づくかとは思います。

ほかの副材料と違い、気づきやすいというのは失敗しにくく良い点です。

間違えて水で作ってしまった場合は、本来より水分量が多いため生地がまとまりにくくなります。

牛乳を入れた場合の発酵時間や焼成率を想定してレシピが作られているため、発酵が速く進んだり、窯伸びしすぎてしまう恐れがあります。

まとめ

乳製品は、使う種類によって役割や効果に差があるということがわかりました。

保存性が変わったり、使い勝手も違うので、作りたいパンの特性や使用頻度に合わせて選んでいくと良いでしょう。

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この記事を書いた人

医療技術系短大卒業後、バイオ系研究室テクニシャンなどを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中です。
製パンスクールのプロコースを卒業した経歴を活かし、実践に役立つ製パン知識を、よりわかりやすく科学的にお伝えします。
食育アドバイザー、幼児食インストラクター資格保持。

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