日本発祥のパンとは?日本のパンの種類や特徴を歴史的な観点で紹介!
あんパンやクリームパンにジャムパン。
フランスパンなどの硬くてパリッとしたパンとは違って、日本ならではのパンは、ふわふわして柔らかいものが多いのが特徴です。
ほかの国とは違う特徴を持つ日本のパンは、どのようにして誕生したのでしょうか?
ここでは、日本発祥のパンについて、歴史的な観点から紹介していきます。
日本のパン食文化
日本人の主食と言えば、お米です。
そんな日本で、パンはいつごろから食べられるようになり、浸透していったのでしょうか?
まずは日本のパン食文化について紹介していきたいと思います。
1543年 日本に初めて発酵パンが伝わる
日本に発酵パンが伝わってきたのは、1543年。
ポルトガルから鉄砲と共に伝わりました。
パンは南蛮貿易で栄えた長崎で特に普及し、宣教師によって広まっていきます。
しかし、小麦粉は米と比べると高い穀物。
この頃はまだまだ日本にパンは根付いておらず、パン食文化が定着するまでには、もう少し時間がかかるのです。
第二次世界大戦後 給食でパンを導入
日本で全国的にパンが食べられるようになったのは、第二次世界大戦後です。
きっかけは、学校給食でパンが取り入れられるようになってからです。
給食のパンは、戦後の食糧難において安価で大量生産できる便利な主食。
また、栄養価の高い食べ物として、児童の健康や体格向上に重要な役割を担っていました。
その後、日本ではあんパンやクリームパンなどの独自のパンが誕生し、家庭でもパンが食べられるようになっていきます。
現在 パンの支出金額が米を上回る
日本の主食は今でも米ですが、1人当たりの年間の米の消費量が118kgほどであった昭和37年度と比べて、令和2年は50.8kgと約半分に減少しています。
さらに、1世帯あたりの年間支出金額においては、平成26年以降パンが米を上回っているという結果となっています。
米の1人当たりの消費量はどのくらいですか。:農林水産省 (maff.go.jp)
現在の日本では、パン食文化がしっかりと根付いていると言えますね。
日本のパンの特徴
日本のパンは、他の国々と比べてどのような特徴があるのでしょうか?
甘くて柔らかい
日本のパンは、ふわふわして柔らかいのが特徴です。
日本人は舌が短く、唾液が少ないと言われています。
そのため、硬いバゲットなどはパサパサして食べにくく、ふわふわでしっとり柔らかいパンが好まれる傾向にあります。
そのため、海外の人が日本のパンを食べたとき、まずはその柔らかさに驚くそう。
日本で売られているパンのなかでは硬い位置づけとなるバゲットも、本場フランスからみると柔らかくて違和感があるようです。
総菜パンや菓子パンが主力
日本のパンは基本的に総菜パンや菓子パンが中心となっています。
パンを主食とするヨーロッパなどの国々は、シンプルな味のパンが主流で、バゲットなどパンの材料に砂糖を入れません。
それに対し、日本人はパンを主食とするわけではなく、単体で食事やおやつとして完結する食べ方が主流です。
そのため、日本のパンは食パンや菓子パンなど、砂糖を多めに入れた甘い味付けのものが多いのが特徴です。
シンプルなパンを食べ慣れている海外の方からみると、日本の総菜パンや菓子パンは、“パン”とは別のカテゴリーの感覚。
食べたことのない味付けや具材に意外にも反応は良いようです。
日本の柔らかいパンは一般的には受けが悪いものの、バリエーションの多さには魅力を感じている人が多いんですね。
日本のパン
独自の発展を遂げパン食文化が根付いた日本。
ここからは日本のパンを紹介していきましょう。
食パン
日常のパンとして、日本人の朝食に欠かせない食パン。
スーパーやコンビニなど、パン屋さんのみならず、さまざまな場所で買うことができます。
食パンはイギリスやアメリカ発祥のパンですが、食パンというのは日本特有の呼び名。
日本では米が主食であるなか、「主食として食べるパン」ということで名づけられました。
食パンは、一般的には蓋をして焼き上げる角型食パンのことを指し、クラストは薄くて柔らかく、クラムのきめが細かくくちどけが良いのが特徴です。
1864年、ロバートクラークによってヨコハマベーカリー(現在のウチキパン)が誕生しました。
ヨコハマベーカリーは日本に住むイギリス人のために開いたもので、日本における食パン発祥の店とされています。
食パンは日本人にとって定番のパンだけあり、その食べ方も多種多様。
スライスしてそのまま食べたり、トーストしてバターやジャムなどを塗って食べられています。
また、薄くスライスしてサンドイッチにするのも人気の食べ方です。
少し時間が経って乾燥し始めた食パンは、牛乳や卵、砂糖で作った卵液に浸して焼いたフレンチトーストにするのがおすすめです。
フルーツサンド
食パンにクリームとフルーツを挟んだサンドイッチ。
専門店も多く、とても人気のパンです。
フルーツサンドの発祥には諸説あり、東京発祥説と京都発祥説があります。
東京発祥説では、フルーツサンドを始めて作ったのは千疋屋。
京都発祥説では祇園のお店が発祥だと言われています。
いずれの説も、大正時代に高級品であった果物をもっと気軽に食べてもらえるようにと、果物屋がフルーツパーラーを併設し、パンにフルーツを挟んで提供するようになったというものです。
この流れをくみ、果物屋の多かった昭和には、フルーツパーラーを併設しフルーツサンドを提供する店が多くありました。
デザートとして食べられることが多いフルーツサンド。
紅茶などと一緒に食べるのがおすすめです。
生クリームや生のフルーツを使用しているので、冷蔵庫に入れておき必ず当日中に食べるようにしましょう。
コッペパン
なまこ型で艶無しの茶色い焼き色が特徴のコッペパン。
ほんのり甘くソフトな食感です。
見た目が似ていることから、フランスのクッペというパンが語源となっています。
日本では学校給食の定番のパンです。
アメリカでパンの製法を学んできた田辺玄平が、食パン専門店の「丸十ぱん店」を創業し、のちにコッペパンを作ったのが始まりです。
コッペパンが誕生したのは、大正8年。兵糧の嘱託となったことがきっかけで開発しました。
1950年代になると、日本ではアメリカ産の輸入小麦が引き渡され、パンや脱脂粉乳、副菜の完全給食が始まります。
もともと兵糧として誕生したコッペパンでしたが、学校給食に取り入れられたのをきっかけに、日本中に普及していきます。
この頃、お米は不足し十分な量を確保することが難しかったことから、コッペパンは栄養価の高い給食のパンとして重宝されたのです。
給食で配膳される場合はそのまま食べることも多いコッペパンですが、中心に切れ込みを入れ、さまざまな具材を挟んで食べるのもコッペパンの醍醐味。
ソーセージを挟んでホットドッグにしたり、焼きそばやコロッケを挟んだ昔ながらのパンも根強い人気です。
焼きそばパン
コッペパンに切れ目を入れ、焼きそばを挟んだボリューム満点の総菜パン。
炭水化物に炭水化物を合わせるという何とも大胆な発想のパンですが、高校の購買などでも定番の人気パンです。
焼きそばパンは、2010年まで東京の南千住にあった「野澤屋」というお店が発祥と言われています。
昭和27年、お店でコッペパンと焼きそばを販売していたところ、お客さんから「面倒なので焼きそばをパンに挟んでほしい」との要望を受け、焼きそばパンとして売り出し大人気になったということです。
焼きそばパンは、それだけで食事としての役割を担っているほど満足度の高いパン。
お茶や牛乳などと一緒に食べるのがおすすめです。
揚げパン
コッペパンを揚げて砂糖をまぶしたのが揚げパン。
コッペパンと同じく、学校給食の定番となっています。
砂糖のほかに、きな粉やココア、シナモンなどをまぶした揚げパンもあります。
昭和27年頃に誕生した揚げパン。
大田区立嶺町小学校の給食担当職員、篠原常吉が考案したそうです。
インフルエンザが流行って大量にパンが余ったとき、休んだ児童のために保存がきき硬くなったパンでも乾燥せずおいしく食べてもらえるようにと考えたものでした。
戦後の日本では、給食は子どもにとって貴重な栄養源。
休んだ児童に学校のパンを届けるのは当たり前の光景だったのです。
揚げパンは砂糖をまぶしているため、温めなおすと砂糖が溶けてしまいます。
そのため、そのまま食べるのが良いでしょう。
しかし、時間が経った揚げパンは、しんなりして食味が劣ってしまいます。
揚げたてはサクッとふわふわで格別のおいしさなので、揚げたてを食べられる機会があればぜひ揚げたてを食べるのがおすすめです。
カレーパン
少し硬めに作ったカレーフィリングをパン生地で包み、楕円形や丸型に成形した後、表面にパン粉をまぶして揚げたパンです。
総菜パンとして人気が高いパンで、最近では揚げずに焼いたカレーパンも人気です。
昭和2年に、東京にある名花堂(現カトレア)が「洋食パン」という名で販売したのが始まりです。
同じくパン粉をつけて揚げて作るとんかつから発想を経て、考案したとされています。
時間が経つと表面に油が浮いてべたついてくるので、揚げ立てを食べるのが一番のおすすめ。
冷めてしまった場合は電子レンジで600W20秒ほど温め、さらにトーストするとサクサクした状態が復活します。
あんパン
甘みのあるソフトな生地と、しっとりとしたあんこの相性が抜群のあんパン。
パン生地であんこを包んで丸く成形し、濡らしたひとさし指に黒ゴマやケシの実をつけ、おへそのようにパンの中心に指でくぼみをつけ、焼き上げます。
あんパンの誕生は、木村屋総本店がはじまり。
日本人の口にあうパンとして、おやつにも食べやすい酒種あんパンが最初に誕生したあんパンです。
さらに、木村屋総本店の桜あんパンは、明治天皇に献上されたことでも知られています。
真ん中にくぼみがあり、黒ゴマやケシの実などがついているあんパン。
こしあんにはケシの実を、粒あんには黒ゴマをつけるというのが一般的です。
実はこのトッピング、木村屋総本店と新宿中村屋との間で取り決めがされていたとか。
その後、ほかのパン屋でも同じようにこしあんにはケシの実を、粒あんには黒ゴマをつけるのが主流となっていきます。
あんパンはそのまま食べるのが一般的ですが、少しだけ温めて食べるのもおいしい食べ方です。
おやつやお茶請けとして食べられることも多いため、お茶やコーヒー、牛乳などさまざまな飲み物との相性も良いパンです。
甘食
円盤形のマドレーヌのような見た目のパン。
今ではあまり見かけることのないパンですが、古くからあるパンの一つです。
材料の小麦粉には強力粉ではなく薄力粉を使用し、酵母は使わず重曹を使用しているのが特徴です。
甘食は、パンなのかお菓子なのかわかりにくいところですが、一般的にはパンの一種として位置づけられ、パン屋さんや駄菓子屋さんで販売されています。
明治時代の東京が発祥の食べもので、西日本での知名度は低い傾向にあります。
1894年に「清新堂」というパン屋さんが作った「イカリ印のまき甘食」という食べ物が、甘食の始まりとされています。
パンは一般的に作るのに時間がかかるものですが、短時間で作ることができないかと誕生したのが甘食です。
“甘い食事パン”であることから、「甘食」と名づけられたと言われています。
甘食はお菓子のように甘いのが特徴。
コーヒーや紅茶、牛乳などと一緒におやつとして食べるのがおすすめです。
チョココロネ
ヤドカリのような渦巻き状のパンのなかに、チョコレートクリームが詰まった菓子パンです。
コロネやコルネと呼ばれています。
円錐形のコロネ型を芯にパン生地を巻き付けて焼き上げ、芯を抜いた後空洞となった部分にチョコレートクリームを詰めて作ります。
チョココロネの発祥についてははっきりわかっていませんが、誕生したのは明治時代だと言われています。
昭和初期には「チョコレートスネール」、その後「渦巻きパン」、「スネーク」、「コルネット」などと呼ばれていました。
コロネの名前の由来は、角(つの)や角笛を意味するホルン(コロネ)からきているという説や、
昭和初期に呼ばれていたコルネットが変化して、現在の「コルネ」や「コロネ」となったという説があります。
コルネットは金管楽器の一種で、チョココロネは見た目がコルネットに似ていることが名前の由来となっています。
チョココロネは円錐型のコロネ型を芯に生地を巻き付けて作るため、焼き上がりは先端の細い方から段々巻きが太くなっていきます。
巻きの太い方は穴の入り口となり、チョコレートクリームがたっぷり入ってこぼれ落ちそうなので、こちらからかぶりつくという方も多いでしょう。
しかし、先の細い方にはチョコレートクリームがほとんど入っていないことも多く、最後はパンだけを食べることになることも。
そこでおすすめの食べ方が、細い方を少しだけちぎって、反対の太い方へ穴をふさぐように入れるという方法。
その後、細いから食べ進めます。
そうすることで、クリームがはみ出ることなく最初から最後まで、パンとクリームを一緒に味わうことができますよ。
ジャムパン
ジャムを菓子パン生地で包んで、木の葉形に成形し焼き上げたパンです。
最初からジャムをパン生地で包んで焼き上げるものと、成形したパン生地を焼き上げたあとにジャムを注入するものとがあります。
一般的にはいちごジャムを使ったジャムパンが主流です。
明治33年に、木村屋総本店の3代目儀四郎が開発したのが始まりです。
日露戦争中に、木村屋は関連会社からビスケットにジャムを挟んだものを陸軍に納めていました。
その時、儀四郎はこのビスケットにジャムを挟んだものからインスピレーションを得て、ジャムパンを誕生させたのです。
当時はあんずのジャムが主流でしたが、大正時代にいちごが栽培されるようになり、昭和に入るといちごジャムが普及したことで、今ではいちごのジャムを使ったものが定番となっています。
ジャムパンは木の葉の形をしているのが一般的ですが、これは当時あんパンも作っていた木村屋が、あんパンと区別するために作ったと言われています。
甘い菓子パンであるジャムパンは、おやつとして食べられています。
ジャムは紅茶との相性が良いので、紅茶と一緒に食べるのがおすすめです。
クリームパン
ソフトなパン生地と、しっとりとしたカスタードクリームの一体感がおいしいクリームパン。
楕円形に伸ばしたパン生地に、カスタードクリームを絞り、半分に折りたたんで数か所切れ込みを入れて焼き上げます。
切れ込みを入れた部分がやや広がり、グローブのような見た目をしているのが特徴です。
1904年、シュークリームの味に感動した新宿中村屋の創業者夫妻によって誕生したのがクリームパン。
カスタードクリームを詰めたパンが作れないかと、パンにクリームを入れたのが始まりです。
クリームパンと言えば切れ込みをいれたグローブのような見た目が特徴的ですが、もともとは柏餅のような半月型をしており、今のような切れ込みは入っていなかったようです。
今ではグローブのような形のみならず、丸形などさまざまな種類のクリームパンがあります。
カスタードクリームを使っているクリームパンは、栄養価が高いため、1回の食事で満足に栄養を摂ることが簡単ではなかった時代に、非常に重宝されました。
基本的にはそのまま食べることが多いクリームパンですが、お店によっては冷蔵庫で冷やして食べたり、冷凍して半解凍にした食べ方をおすすめとして紹介しているところもあります。
特にパン生地の薄いクリームパンは、カスタードクリームとの一体感がありしっとりとしているため、冷やしてもパサつきにくいのが特徴です。
メロンパン
丸く成形した菓子パン生地の上に、丸く薄く伸ばしたクッキー生地をのせて格子状に模様をつけて焼き上げたパンです。
メロンパンの発祥は1910年。
帝国ホテルの創業者の一人である大蔵喜八郎が、満州にあるホテルニューハルビンから引き抜きをして連れてきたパン職人によって誕生したとされています。
焼き菓子のガレットから発想を得て考案されました。
メロンパンの名前の由来は諸説あり、一つは焼き上がりの見た目がひび割れているため、メロンの皮のように見えることから名づけられたという説。
もう一つは、味付けにメロンエッセンスを加えたことから名づけられたという説などがあります。
表面のサクッとした食感がおいしいメロンパンですが、時間が経つとしっとりしてしまうことも。
少しだけトーストをすると、クッキー生地のサクッとした食感が復活します。
口の中の水分を奪うことから、夏場はパンが売れにくいと言われていますが、メロンパンに切れ込みを入れて、生クリームやアイスクリームを挟んで食べると暑い夏にも食べやすくおすすめですよ。
まとめ
今では世界中のパンが食べられるようになった日本ですが、日本発祥のパンは老若男女問わず食べやすいものが多く、根強い人気です。
日本にパン食文化が根付いているのも、アレンジが上手な日本人だからこそかもしれませんね。