街にはおいしいパン屋さんは数あれど、家で作った焼きたてのパンはなんだか特別感がありますよね。
でも、パンは思い立ったらすぐに作ることができるという気軽な物ではありません。
パンは作る種類によってかかる時間が違うため、事前に把握していないとその日のスケジュールに影響することも。そこで、今回はパンの種類ごとの所要時間を紹介したいと思います。
パン作りの工程
まずはパン作りの基本的な工程から見ていきましょう。
ここでは、パン作りの基本の方法であるストレート法の工程を紹介します。
計量

パン作りに必要な材料の計量から始めます。
計量は作業をスムーズに進め、良質で安定したパンを作るためにとても大事な工程です。
材料は1gずれるとこの後の作業時間や仕上がりに大きく影響するため、最小計量が0.1gのスケールを用意するのがベスト。事前に各材料をしっかり計量し、準備しておきましょう。
また、材料の温度も非常に重要です。発酵に影響するため、室内の温度を確認し仕込み水の温度を計算して準備しましょう。材料が均一に混ざるよう、バターを室温に戻しておくなどの準備も必要です。
捏ね

材料を混ぜて捏ねる作業です。
パン作りの捏ねの作業は、材料を均一に混ぜることと、グルテンを形成することが目的です。捏ねが完了したら、表面が滑らかになるように生地を丸くまとめます。
一次発酵

一次発酵の目的は大きく分けると2つあります。
1つ目はパン生地を膨らませること。生地を膨らませて、ふんわりとした食感にします。
2つ目はパンのおいしさを引き出すこと。パン生地を熟成させ、小麦の風味や旨みを引き出します。
捏ね終えた生地は、28~30℃で40分ほど発酵させ、1.5~2倍に膨らんだら発酵状態を確認しましょう。
発酵状態の見極め方は、生地の真ん中に人差し指を第二関節まで差して確認します。これはフィンガーチェックという方法で、開けた穴がゆっくりすこしだけ戻る程度になったら発酵完了のサインです。
分割・丸め

作るパンに合わせて、スケッパーを使って生地を分割します。分割した生地は表面が張るように丸めます。
ベンチタイム

丸めた生地は、15分ほどベンチタイムをとります。
ベンチタイムとは生地を休ませる時間のこと。丸めた生地は、このままでは弾力が強くうまく成形することができません。
少し休ませている間にも生地は発酵し、弾力性が低下して伸展性が良くなるのです。丸めた生地を休ませることで、次の工程である成形がしやすくなります。
成形

パンを仕上げたい形に成形します。
成形の方法は、生地を丸めたり、伸ばして巻いたりなど様々ですが、成形の方法によって生地の詰まり具合が変わり食感も変わります。
見た目だけでなく食感にも影響する工程なので、工夫が必要です。
二次発酵

成形した生地を二次発酵させます。
二次発酵の目的は、再び炭酸ガスを充満させ焼成の時に生地が最大限膨らみやすい状態にすることです。
生地は一次発酵後のガス抜きや成形によって締まった状態になっています。このままでは焼成をしてもうまく膨らまないため、もう一度発酵させる必要があるのです。
小型のパンであればひと回り大きくなる程度に、食パンなどの型に入れたパンであれば、容器の8分目になるくらいまで発酵させましょう。
焼成

焼成はパン生地に熱を加え、クラストとクラムを作りパンという形が出来上がる重要な工程です。
焼成によってパンが膨らみ、クラストができることで焼き色や香ばしさが生まれます。
焼成ではオーブンを予熱しておき、パン生地を入れたら火を通します。
温度や時間は作るパンの種類によって変わりますが、一般的なプチパンなら180℃で15分焼きます。
所要時間が長いパン
パン作りでは基本となる工程がありますが、作るパンによって所要時間が異なります。
では、所要時間が長いパンというとどういったものがあるのでしょうか?
発酵パン

プチパンや食パン、フランスパンなど、私たちがパンと言って思い浮かべるのは、イーストを使って発酵させる“発酵パン”です。
発酵には30~60分かかり、さらに一次発酵と二次発酵と二度おこなうことが多いので、とても時間がかかるのです。
しかし、発酵の間はいわば待ち時間。付きっきりである必要はなく、放置してほかの作業をする時間に充てることができます。
大きなパン

大きなパンは、発酵するにも焼き上げるにも時間がかかるため、所要時間の長いパンと言えます。
たとえば、食パンやカンパーニュのように大きな塊で作って切り分けて食べるパンです。
このような大きなパンは、生地の中心部分の温度が上がるのに時間がかかり、プチパンなどと比べ発酵や焼成に時間がかかります。
所要時間が短いパン
次に、所要時間が短いパンを紹介します。
無発酵パン

発酵パンに対し、生地を発酵させない無発酵パンは、所要時間が短いパンです。
たとえば、チャパティやトルティーヤのように膨らませない平たいパン、タピオカ澱粉を糊化させて膨らませるポンデケージョ、スコーンやビスケットのように重曹やベーキングパウダーで膨らませるクイックブレッドなどがあります。
プチパン作りの所要時間

ここからは、パンの種類ごとの所要時間を紹介していきたいと思います。
パン作りの基本であるプチパンの所要時間の目安は、約3時間。
発酵パンなので比較的所要時間はかかりますが、丸く成形するだけで型を必要としないので、初めてパン作りをする方にまず作ってもらいたいパンです。
各工程の所要時間
発酵時間は温度や湿度、生地の状態などによって変わります。
一般的に一次発酵なら28~30℃で40分、室温なら60分が目安です。
発酵パンなので時間はかかりますが、発酵の待ち時間に次の工程の確認をしたり洗い物を済ませておくなど、別の作業をすることができます。
発酵は酵母を炭酸ガスとアルコールに分解し、生地を膨らませる重要な工程です。
発酵が不十分だと焼成時にパンがうまく膨らまなかったり、小麦の旨みが少ないパンになってしまうので、発酵時間は不必要に短くしないようにしましょう。
クイックブレッド作りの所要時間

クイックブレッド作りの所要時間は約20分です。
思い立ったらすぐに作れるのが魅力ですね。
各工程の所要時間
強力粉ではなく薄力粉を使用するため、最初に薄力粉をふるう必要はありますが、工程は何ともシンプル。焼成時間はクイックブレッドの大きさに合わせて調節しましょう。
パン作りとは違い、イーストは使用せず重曹やベーキングパウダーを使って膨らませるため、捏ねや発酵の工程はなくお菓子作りに近いイメージです。時間も大幅に短くできますよ。
ポンデケージョの所要時間

ブラジルのチーズパンであるポンデケージョは、外はカリッと中はもちもちとした食感が特徴で、タピオカ澱粉を使用して作ります。
20~30分で作ることができますよ。
各工程の所要時間
ポンデケージョの材料の混ぜ方は少し特殊です。
水、牛乳、オリーブオイルを鍋に入れ、沸騰直前まで温めたものをタピオカ粉とよく混ぜ、さらに卵、粉チーズ、塩を加えて滑らかになるまで捏ねます。
タピオカ粉のデンプンが温めた材料によって糊化され、焼いたときに糊化したデンプン膜のなかの水分が蒸発する過程で生地が膨らみ、卵や油脂によって広がった膜を固定してくれる役割があるのです。
材料を混ぜ、丸めて焼くだけで発酵要らず。短時間で作ることができますよ。
ベーグルの所要時間

ケトリングという特殊な工程のあるベーグルですが、所要時間は2時間ほど。
一般的なプチパンと比べると短いんです。
各工程の所要時間
(ベーグル1個につき両面各1分ほどで湯からあげる)
ベーグルは副材料が入らないため計量にかかる時間が短いこと、また発酵時間が短いことで一般的なパン作りと比べて所要時間が短いです。
あまり膨らませないことで、むぎゅっともちもちとした食感が楽しめます。
また、ベーグルはレシピによっては一次発酵をおこなわない場合があります。
一次発酵をおこなわないベーグルは目の詰まったクラムに仕上がり、一次発酵をおこなう場合はふっくらと仕上がります。好みに合わせて使い分けると良いでしょう。
カレーパンの所要時間

総菜パンで人気のカレーパンは、焼くのではなく揚げて仕上げます。
カレーパン作りの所要時間は約3時間です。
各工程の所要時間
(両面で6分ほどきつね色になるまで。パンは3個ずつくらい入れ数回に分けて揚げる)
揚げるのも焼くのもかかる時間に大きな差はないため、プチパンなどの一般的なパンと同じくらいの所要時間で作ることができます。
ただし、カレーパンは揚げているときに破裂したりする恐れがあります。
フィリングを包んだら生地をしっかり閉じること、二次発酵はしっかり取ることで破裂を防ぐことができますよ。
蒸しパンの所要時間

蒸しパンの所要時間は20~30分。
材料を混ぜたら形に流し、蒸すだけなのですぐに作ることができますよ。
各工程の所要時間
蒸しパンは強力粉ではなく薄力粉、イーストではなくベーキングパウダーを使います。
グルテン形成のために生地を捏ねる必要がなく、発酵もいらないので短時間で作ることができます。
まとめ
パン作りは基本的には時間がかかる場合が多く、事前の準備も必要です。
初心者には少しハードルが高いかもしれませんが、まずはクイックブレッドなどから始めてみるのもいいですね。
基本のプチパンを作ることができれば、少しずつアレンジしていろいろなパンが楽しめますよ。