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スイスの伝統的なパンの種類や名前の意味や由来を紹介!

皆さんは、スイスという国にどのようなイメージがありますか?中立、赤十字、または美しい自然かもしれません。

日本人はスイスに対し、好印象な人が多いとも言われています。

しかし、スイスのパンについて知っているという人はどのくらいいるのでしょうか?

今回はあまり馴染みのない、スイスの伝統的なパンの種類や名前の意味、由来について紹介したいと思います。

目次

スイスの土地や農業の特徴

まずは、自然豊かなスイスの土地や農業の特徴について紹介します。

スイスの自給

スイスは中立国であるため、食料を自国で賄えるようにしているという話を聞くことがあります。実際にはどうなのでしょう?

近年の、実際のスイスの食料自給率はカロリーベースで50~60%です。これは高いのでしょうか?それとも低いのでしょうか?

スイスは中央ヨーロッパに位置し、周囲をドイツ、フランス、イタリア、オーストリア、リヒテンシュタインに囲まれており、他国からも積極的に食料を輸入しています。

フランスの食料自給率が120%以上あることや、ドイツやイタリアでも60%を超えていることから考えると、スイスの自給率は少ないと言えます。

スイスは自国の食料自給率に危機感を持ち、2017年には憲法に第104a条(食料安全保障)が盛り込まれました。

当時の経済相ヨハン・シュナイダー=アマン氏によると、“国民がいつでも適切な品質の食料を十分に、また適切な価格で入手できる状態を意味している”としています。

酪農が盛ん

アルプス山脈の雄大な自然が美しいスイスは、山が多く農作には向かず、酪農が盛んにおこなわれてました。

食料自給率が50%台のスイスにおいて、牛乳や肉などの動物性食品の自給率は、100%前後と高い水準を保っています。

スイスの小麦

スイスの小麦の国内自給率は、85%と高いです。

もともとは50%以下と低い割合でしたが、小麦農家を保護することで限られた平地でも小麦栽培に力を入れ自給率をあげる工夫がされているのです。

とは言え、寒冷地帯であるスイスでは、穀物と言ったらライ麦。

パンにもライ麦を使ったものが多く、いわゆる黒パンが主流です。

スイスの食文化

酪農が盛んなスイス。その食文化はどういったものでしょうか?

さまざまな国の影響

スイスは周囲をさまざまな国に囲まれています。

実はスイスはおもに4つの言語圏に分かれており、それぞれの地域で食文化が異なります。

スイスの公用語でもっとも割合が高いのがドイツ語(スイスドイツ語)です。

全体の約62%を占めています。次に多いのがフランス語で約23%、次いでイタリア語が約8%、一部の地域でロマンシュ語が使われており、その割合は0.5%ほどです。

このようにスイスはドイツ語を話す地域が多く、ドイツの名物であるソーセージなどもよく食べられています。

ドイツのようにパンにライ麦を使ったものが多いのも特徴です。

また、フランス語圏では白パンもよく食べられており、フランスの食文化が影響しています。

チーズフォンデュはスイスを代表する料理

酪農が盛んなスイスでは、チーズは代表的な食べ物です。

16世紀ごろ、ヨーロッパでは各地で食料不足にみまわれましたが、そのころからチーズの生産が盛んになります。

溶かしたチーズにパンや温野菜をつけて食べる「チーズフォンデュ」は、スイスを代表する料理です。

スイスの主食はパンですが、パンはチーズフォンデュでも欠かせません。

スイスのパンの特徴

ここからは、スイスのパンの特徴について紹介します。

最古の発酵パンはスイスの遺跡で発見?

紀元前8000年ごろから、メソポタミア文明発祥の地では小麦が栽培されており、紀元前6000年ごろには、小麦に水を混ぜて薄く焼いただけの無発酵パンが作られていたと言われています。

紀元前3200年以降になると古代エジプトにパンが伝わり、たまたま放置していた生地に酵母がついて膨らんだパンができたというのが、発酵パンの始まりとされていました。

しかし、実はスイスのモンミライユ遺跡で、現存する世界最古となる発酵パンが4つに割れた状態で発見されています。

地層から紀元前3700年のころと推定されています。

モンミライユ遺跡で発見された発酵パンは、古代エジプトの発酵パンの始まりよりも古いため、発酵パンの始まりが実際にはいつにあたるのか、正確なことはわかりませんでした。

どちらも紀元前3000年あたりの話なので、多少の誤差もあるかもしれません。

どちらが先にしても、スイスの遺跡で発酵パンが発見されたことは事実。

スイスではとても古い時代から発酵パンが作られていたということがわかります。

地名が付いたパンが多い

近隣諸国の影響もあって、スイスには200種類以上のパンがあると言われています。ドイツ語圏では黒パン、フランス語圏では白パンが好まれる傾向にあります。

テッシーナブロートなど、スイスには地名を名前にしたパンもたくさんあるんですよ。

日常のパンには黒パン

ライ麦の栽培に向いていることや、ドイツからの影響によってスイスでは昔から黒パンが作られてきました。

白パンが食べられるようになった今でも、ミネラルが多く健康的であるという考えから、日常食べるパンは黒パンが人気です。

白パンはというと、日曜日などの休日にちょっとご褒美的な感覚で食べられています。

スイスのパン

ここからは、スイスのパンを紹介していきたいと思います。

ツォップ(Zopf)

Zopfはドイツ語で「編み込み」を意味します。

その名の通り、生地を数本棒状に伸ばして編み込んで成形するのが特徴で、三つ編みから六つ編みまであります。

ふわふわと柔らかく、バターが効いて優しい甘さのあるパンです。

ツォップはスイスやドイツ、オーストリアなど広い地域で親しまれています。

ドイツなどで食べられているツォップと比べると、スイスのツォップは甘さが控えめなのが特徴です。

逸話や歴史

ツォップは、15世紀にスイスのパン職人が考案したとされています。

非常に歴史のあるパンで、もともとはクリスマスや新年の贈り物として作られていたりと、祝祭日に食べる宗教的な意味合いのあるパンです。

現在では日常でも食べるものの日曜日に食べるのが定番で、週末になるとパン屋さんにたくさんのツォップが並びます。

ツォップの編み込みは職人的な技術を必要とするもので、近代化が進んだ現在も機械で成形せずに手作業で編み込まれています。

食べ方

日曜日や祝日によく食べられています。

優しい甘さなので、食事パンとしてチーズやジャムを添えて紅茶と食べます。

テッシーナブロート(TessinerBrot)

引用元: Wikipedia

小さな楕円形に成形した生地を5個くらい繋げ大きな一つの塊にし、中心にハサミで深くクープを入れて焼き上げます。

見た目は菓子パンのようですが、生地に砂糖は使っておらず、リーンなパンです。

逸話や歴史

スイス南部に位置するティチーノ州の代表的なパンです。

ティチーノ州はイタリア国境にあり、イタリア語のみを話すため「スイスの中のイタリア」と呼ばれています。

テッシーナブロートも、イタリアから伝わったという説もあります。

食べ方

食事パンとして食べられています。

シンプルで軽いパンなので、小さく切ってチーズフォンデュとしても食べられています。

ビューリーブロート(Bürlibrot)

水分が68%ほどと多く、もちもちとした食感が特徴のパンです。

材料は粉と塩、酵母と水とシンプルですが、レーズンやクルミなどを入れてさまざまなアレンジがあります。

ライ麦粉も入っていますが、その量は少なめであっさりとした味わいです。

逸話や歴史

スイスの東部にあるザンクト・ガレン地方発祥の田舎パンです。

ザンクト・ガレン地方は、“聖人ガルスと熊”の伝説がある地域として知られています。

7世紀、この地に聖人ガルスが訪れます。森で力尽き暖をとっていたところに熊が現れ、なんとガルスのために薪を集めてきてくれたというのです。

ガルスは代わりに熊にパンを与え、この話は伝説となってザンクト・ガレンの地のいたるところに熊の絵が飾られています。

ガルスはザンクト・ガレン地方で布教活動をおこない、死後に修道院が建てられましたが、ビューリーブロートは修道院で古く硬くなったパンを、砕いて新しい生地に混ぜて焼いて作り始めたパンなのです。

硬いパンを、美味しく食べるための工夫から生まれたパンですが、今ではパン粉を混ぜて作られています。

食べ方

食事パンとしてスープやシチューと一緒に食べられています。

ソーセージとの相性も良いパンです。

マイチバイ(Meitschibei)

引用元: wikipedia

スイスのナッツ入りの甘い菓子パンです。

シナモン入りのナッツペーストをパン生地で棒状に包み、Uの字に曲げて卵液を塗って、190~200℃のオーブンで15分ほど焼きあげます。

バターや卵などの副材料が入ったリッチな生地で、サクサクとした食感とシナモンの香りが特徴です。

逸話や歴史

女の子(未婚の女性)の足をイメージしたパンで、Uの字を逆さまにした見た目から名づけられました。

マイチバイの起源ははっきりとはわかっていませんが、スイスのドイツ語圏であるベルン州で、20世紀初頭にお祝いや特別なイベントのときに食べられていたと言われています。

マイチバイはスイスを代表する菓子パンで、フランス語圏のスイスではクロワッサン・ヴィエノワという名前で知られています。

しかし、バーゼル地方の有名ベーカリーでは、マイチバイの注文を受ける際にその名前の由来から女性スタッフがセクハラを受けることが多かったのだとか。

そこで、マイチバイを“Glücksbringer”という「ラッキーチャーム」を意味する名前に改名したのです。

マイチバイはUの字をしていて馬蹄型でもあるので、幸運なアイテムとして改名も好意的に受け入れられています。

食べ方

フィリングはパン生地で包まれており、手を汚さずに食べることができるので、子どもから大人までおやつとして食べられています。

できるだけ早めに食べるのが美味しいと言われていますが、2~3日は日持ちがします。

まとめ

チーズフォンデュなどの食べものが代表的なスイスは、チーズを食事に使い、チーズに合わせたパンが豊富です。

パンはあまりふわふわとリッチなものではなく、老化が早くリーンなパンが多いのが特徴です。

チーズフォンデュに合わせやすいですね。

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この記事を書いた人

医療技術系短大卒業後、バイオ系研究室テクニシャンなどを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中です。
製パンスクールのプロコースを卒業した経歴を活かし、実践に役立つ製パン知識を、よりわかりやすく科学的にお伝えします。
食育アドバイザー、幼児食インストラクター資格保持。

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