ワッフルはなぜ格子状?形の理由や由来・語源を歴史的な観点で解説!
格子状の特徴的な形をしたワッフル。独特な見た目ですが、この形は火の通りを良くするためなのだとか。
そんなワッフルも、国によって見た目や味はさまざま。実はとても歴史のある食べ物なのです。
ここでは、ワッフルの形の由来や語源について紹介していきたいと思います。
ワッフルの語源・由来
ワッフル(waffle)の語源は、オランダ語の「wafel(ワフェル)」から来ています。
ワフェルは「蜂の巣」を意味しており、ワッフルの表面が格子状で、蜂の巣のようになっていることから名づけられたと言われています。
各国のワッフルの呼び方
ワッフルという言葉は英語ですが、国によってその呼び名が変わり、フランスやベルギーではゴーフル(gaufre)、オランダではウエハー(wafel)と呼ばれています。
ゴーフルは「模様を型押しする(エンボス加工)」という意味の”gaufrer”から名づけられたとされています。
ウエハーは、ワッフルと同じく「蜂の巣」を表すオランダ語の“wafel”から名づけられました。
どちらも格子状の見た目が呼び名の由来となっています。
ワッフルの発祥
ワッフルの発祥は非常に古く、古代ギリシャとされています。
古代ギリシャでは、生地を薄く焼いたObelios(オベリオス)というものが食べられており、このオベリオスがワッフルの起源だと言われています。
ただし、当時のワッフル(オベリオス)は格子状ではなく、模様のないただの平べったい生地。
普段私たちがイメージするワッフルとは少し違う見た目ですが、二枚の金属板を使って焼いていたことがワッフルの起源と言われる所以です。
ワッフルの歴史
ワッフルの歴史は古代ギリシャから始まり、その後長い年月をかけてさまざまな国へと広がっていきます。
古代ギリシャ ワッフルの起源とされるオベリオス
「ワッフルの発祥」の項でも紹介したように、ワッフルの起源は古代ギリシャのObelios(オベリオス)だと言われています。
オベリオスは二枚の金属板を使って焼きますが、現在日本でよく見るワッフルとは見た目が異なり、平べったいおせんべいのような形をしていました。
オベリオスは古代ギリシャではパンの総称とされていましたが、その後発展していく発酵パンの存在によって、パンとは別物として進化していきます。
古代ローマ ヨーロッパ各国へと伝わる
ギリシャがローマ帝国の支配下にあった時代、ギリシャの文化はローマにさまざまな影響を与えました。
オベリオスもギリシャのパン職人や宣教師によってヨーロッパ各国へと伝わっていったのです。
古代ローマでは庶民がパン屋を開いてパンを作ることを禁じていたため、製パン技術は王侯貴族が独占していました。
王侯貴族はギリシャからパン職人を連れてきて、オベリオスを強制的に焼かせていました。
そのため、オベリオスは王侯貴族だけに許されていた食べ物で、庶民が口にすることはなかったのです。
その後キリスト教が公認されたのをきっかけに、教会も製パン技術を獲得できるようになりました。
教会での儀式のなかでも、オベリオスが使われていたと考えられています。
このように、一部の人たちだけが食べられるオベリオスは、パン職人や宣教師によってヨーロッパ各国へと広まっていきました。
14世紀 ワッフルアイロン(ワッフルメーカー)が誕生
14世紀になると、ワッフル専用の鋳型であるワッフルアイロンが誕生します。
ワッフルアイロンの誕生によって、ただ二枚の金属板で挟んで薄く焼きつけていたものが、金属板を畳むようにした焼き方へと変わり、これまでよりも厚みのある生地を焼くことができようになったのです。
1620年頃 アメリカ大陸にワッフルが伝わる
オランダ系の移民によってアメリカ大陸にワッフルが伝わります。
アメリカでは、おもに朝食やおやつとして食べられるようになりました。
17世紀 ワッフルが庶民に広がる
一部の人たちしか食べることができなかったワッフルですが、それまで高級だった砂糖が庶民にも手が出せるようになり、庶民の間にもワッフルが広がります。
この頃から、さまざまなバリエーションでワッフルが食べられるようになりました。
19世紀半ば 現在の形のワッフルに
19世紀半ばになると、現在の形のワッフルアイロンで調理されるようになります。
なぜワッフルは格子状なのかの理由
ワッフルで特徴的なのが、表面にある格子状の模様。
なぜこのような形になったのでしょうか?
火の通りを良くするため
ワッフルが格子状の模様をしている理由は、火の通りを良くするためと言われています。
ワッフルの材料は小麦粉・バター・砂糖・卵・イーストなどです。
オベリオスから進化していったワッフルの生地は、粘りが強く、火が通りにくいのが特徴。
生焼けになりやすかったのです。
そのため、火が通りやすいように格子状になったと言われています。
日本におけるワッフルの歴史
日本ではバターがたっぷり入ってずっしりとしたベルギーワッフルが主流ですが、最初からベルギーワッフルが浸透していたわけではありません。
日本におけるワッフルの歴史を見ていきましょう。
1890年頃 日本人考案のサンドタイプ誕生
最初に日本に登場したのは、サンドタイプのワッフル。
「米津風月堂」の次男である米津恒次郎が開発し、広まりました。
1884年、洋菓子の修行のためにアメリカやヨーロッパを周った恒次郎は、1890年に帰国し、ウエハースの型を日本に持ち込んで、お菓子を広めようとしました。
しかし、思うようには売れませんでした。
そこで、ふわふわのカステラ生地に餡子をのせて二つ折りにした柏餅のような形のお菓子を、サンドタイプの「ワッフル」として販売するようになったのです。
サンドタイプのワッフルには餡子入りのほかにジャム入りなどがあり、1904年には新宿中村屋がカスタード入りのワッフルを販売したことで、日本中に広まっていきます。
1986年 ベルギーワッフル専門店がオープン
ベルギーワッフルを日本で最初に紹介したのは、ベルギーワッフル専門店の「マネケン」だと言われています。
洋菓子店や喫茶店の事業をおこなっていた株式会社ローゼンの創業者の荒木勲氏が、ベルギーの街角で出会ったのがワッフル。
日本に無い新しい味を求めてヨーロッパを旅していた荒木氏が、ずっしりとした生地に濃厚なバターの香りに感動し、現地の味を再現しようとワッフルの原材料や鋳型を持ち帰りました。
その後、1986年に大阪梅田に念願のベルギーワッフル専門店「マネケン」をオープンさせます。
1996年 ベルギーワッフルが大ブームに
1996年、マネケンの東京初出店によってベルギーワッフルは一躍大ブームとなります。
これまでワッフルと言えばサンドタイプだったのが、この大ブームによって日本人のイメージするワッフルはベルギーワッフルとなっていったのです。
国ごとに違うワッフル
ワッフルは国ごとに形が異なり、その食べ方にもそれぞれ違いがあります。
ベルギーワッフル
日本でもっとも聞き馴染みのあるワッフルと言えば、ベルギーワッフルではないでしょうか?
日本ではワッフルという名前で浸透していますが、ベルギーではワッフルのことをゴーフルと呼ぶことのほうが多いのだとか。
ベルギーはフランスの支配下にあったり、オランダと統合していたりと二つの国の影響を受けてきた国。
それぞれの国の影響を受け、ベルギーワッフルもいくつかの種類に分けられます。
ブリュッセルワッフル
ブリュッセルワッフルは、ベルギーの首都ブリュッセル発祥のワッフル。
大きな長方形をしていて、とてもサクサクとして軽い食感が特徴のワッフルです。
甘さは控えめなので、アイスやホイップクリーム、チョコレートソースやフルーツなど、贅沢にトッピングして、フォークとナイフで食べられています。
リエージュワッフル
18世紀にベルギーの東部に位置するワロン地方のリエージュで、王子がシェフに作らせて誕生したと言われているのがリエージュワッフル。
一般的に日本人がイメージするワッフルは、リエージュワッフルのことです。
リエージュワッフルは、丸い形をしたリッチな生地が特徴。
酵母を使用したブリオッシュ生地に、パールシュガーという小さな塊の砂糖を入れて焼いており、外はカリッと、中はしっとりしています。
パールシュガーは熱に溶けにくい性質があり、ワッフルを焼いたときに一部が溶けてカラメル状に固まり、ほかの部分は溶け残ってシャリシャリとした食感になります。
しっかりとした甘さがありリッチな味わいで、そのまま手に持って手軽に食べることができるため、ちょっとしたおやつにもおすすめです。
フルーツワッフル
フルーツワッフルは酵母を使った生地でフルーツフィリングを挟んだもの。
ワッフルは長方形が主流で、格子状の目は1つ1つが大きいのが特徴です。
格子状の目が大きいのは、中身のフルーツが潰れないようにするためだとか。
チェリーやアプリコット、パイナップルなどのフィリングにペストリークリーム(カスタードクリーム)を添えて食べられることもあります。
フランスワッフル
フランスワッフルは、ベルギーと同じくフランスではゴーフル(gaufre)と呼ばれています。
「模様を型押しする」という意味を持つゴーフル。
その名の通り、フランスワッフルは凸凹模様を型押しして作るのが特徴です。生地は緩めで薄く焼き上げます。
日本でもゴーフルという名のお菓子が売られていますが、日本のゴーフルは昭和初期に風月堂が日本独自にアレンジして開発したもの。とても薄くパリパリとした生地のお菓子です。
フランスのゴーフルはパン生地を使っており、しっとりした触感で日本のゴーフルとは全く別物なのです。
そのままでもおいしいゴーフルですが、ジャムやプラリネクリームなどを挟んで食べられることもあります。
北欧風ワッフル
北欧風ワッフルは、Våfflor(ヴォッフロル)と呼ばれるスウェーデンのワッフルです。
生地は薄めで外はサクッと中はふわふわしており、ハートの形をしているのが特徴の可愛らしいワッフルです。
スウェーデンでは毎年3月25日をワッフルデーとし、現地語では「Våffeldagen(ヴォッフェルダーゲン)」と呼ばれています。
この日はキリスト誕生の9か月前として、聖マリア受胎告知の日と定められ、お祝いされています。
聖マリアの別名Var Fru(ヴォールフル)が変化して、受胎告知の日はVåfrudagenと言います。
ここからワッフルの日も改名してVåffeldagen(ヴォッフェルダーゲン)と呼ばれるようになりました。
そのため、北欧風ワッフルはキリスト教の伝統菓子でもあるのです。
粉砂糖を振りかけたり、ジャムやフルーツ、ホイップクリームなどをトッピングしたりして食べます。
日本ではIKEAの冷凍食品で楽しむことができますよ。
アメリカンワッフル
ヨーロッパから伝わり独自の進化を遂げたアメリカンワッフルは、生地に酵母を使わずベーキングパウダーで膨らませて作ります。
そのため生地はふわふわとして表面はサクッとした食感が特徴です。
アメリカでは週末になると少し手をかけた朝食を作って、家族でゆっくり楽しむことが多いです。
そこで、アメリカンワッフルはパンケーキのように朝食で食べられることが多く、ヨーロッパのワッフルより甘さも抑えて作ります。
アイスクリームやソースなどをかけて食べたり、ハムやチーズなどの塩気のある食材と合わせて食べることもあります。
オランダワッフル
オランダワッフルと言えば、stroopwafel(ストロープワッフル)。
オランダの有名なお菓子です。オランダではワッフルのことをウエハーとも呼びます。
ストロープワッフル
平べったく硬いビスケットのような2枚の生地で、キャラメルクリームを挟んだのがストロープワッフル。
南ホラント州のゴーダで誕生したお菓子で、パン職人が余ったパンの材料で作ったのが始まりです。
非常に安価に作ることができ、しだいにオランダ各地で作られるようになり、今ではオランダ料理のなかでとても有名なお菓子となっています。
そのまま食べるとキャラメルのパリッとした食感を楽しめますが、温かいコーヒーや紅茶の上にストロープワッフルを置いて、キャラメルクリームが溶けたところを食べるのも人気の食べ方です。
香港風ワッフル
香港風ワッフルは、これまで紹介した格子状が特徴のワッフルとは、見た目が大きく違うのが特徴です。
鶏蛋仔(エッグワッフル)
香港風ワッフルは鶏蛋仔(エッグワッフル)といい、「小さな鶏の卵」という意味から名づけられました。
ベビーカステラを連結したような独特の見た目で、その名の通り卵が集まっているように見えるのが特徴です。
発祥は1950年頃で、香港やマカオの屋台を中心に売られるようになりました。
その起源は諸説あり、一つは高価な卵を使えなかった代わりとして、卵なしの生地を卵の形をした型で焼いていたというもの。
もう一つは、殻にヒビが入ってしまい売り物にならなくなった卵を、何かに利用できないかと思い作るようになったという説があります。
エッグワッフルはタピオカ粉を使っているものも多く、外はカリッと、中はふわふわもちもちとしています。最近では日本でもブームになってよく見かけるようになりました。
日本風ワッフル
日本ではワッフルと言えばベルギーワッフルをイメージする方が多いかもしれませんが、日本で誕生した日本風ワッフルもあります。
サンドタイプ
「日本におけるワッフルの歴史」の項でも紹介しましたが、いわゆる日本風ワッフルと呼ばれるのは、サンドタイプのワッフルのことです。
サンドタイプのワッフルは、楕円形のどら焼きのように焼きあげ、なかに餡子やカスタードクリームなどを挟んで柏餅のように半分に折り曲げて作ります。
生地の正面には模様や文字などが入っているのが特徴です。
今でこそ日本ではベルギーワッフルが有名ですが、年配の方のなかではワッフルと言えばサンドタイプをイメージする方も多いようです。
原宿ドッグ
冷凍食品でも人気の原宿ドッグも、ワッフルの一つに位置づけされます。
ふっくらとした生地で、中にチーズクリームやカスタードクリームを入れて焼き上げたスティックタイプのお菓子です。
ベルギーワッフルのように表面が格子状の模様をしているのが特徴です。
原宿ドッグはニチレイフーズの業務用商品。
最先端で手軽な食べ物という商品イメージとして、若者の街として最先端な場所である原宿と、片手で持って食べられるホットドッグから名前をとって名づけられたようです。
原宿ドッグはニチレイフーズの商標登録で、家庭用にはチーズワッフルという名前で販売しています。
ほかのメーカーなどでも、チーズドッグなど名前を変えて同じような商品が販売されています。
ベルギーワッフルとアメリカンワッフルの違い
オランダの移民から伝わったアメリカンワッフルは、独自の進化を経てアメリカンワッフルとして定着しています。
それでは、ワッフルの代表とも言えるベルギーワッフルと、アメリカンワッフルの違いは何でしょう?
酵母の有無
ベルギーワッフルとアメリカンワッフルの大きな違いは、酵母の有無です。
ベルギーワッフルは酵母を使って発酵させているのに対し、アメリカンワッフルは酵母を使わずベーキングパウダーを使って膨らませています。
そのため発酵させることもありません。
食感の違い
ベーキングパウダーを使って作るアメリカンワッフルは、ベルギーワッフルと比べてやや厚みがあり、軽い食感が特徴です。
パンケーキなどにトッピングで生クリームやメイプルシロップなどをたっぷりのせて食べるアメリカでは、生地自体にはあまり砂糖やバターを使いません。
ワッフルもパンケーキと同じような食べ方をするため、生地にあまり砂糖やバターを使っておらず軽い食感に仕上がります。
まとめ
粘り気の強い生地を使用したワッフルは、火の通りが悪いため格子状に焼かれるようになったとされています。
今ではさまざまな国で食べられているワッフル。国によって呼び方が違ったり、材料や形に少しずつ違いがあるのがわかりました。
日本でも他国のワッフルを食べられるお店が増えてきたので、ぜひいろいろなワッフルを試してみてください。