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中国発祥のパンとは?蒸しパン以外にも焼いたパンはある?中国のパンの種類や特徴を解説!

国によってさまざまな種類のパンがありますが、今回紹介するのは中国のパン。

中国はあまりパンのイメージがないという方も多いのではないでしょうか?

中国のパンというと、饅頭(マントウ)や包子(パオズ)といった、いわゆる蒸しパンが主流です。

ところが、中国には蒸しパン以外にも焼いたパンもあるんですよ。

ここでは、中国のパンの種類や特徴について解説していきたいと思います。

目次

中国のパンとは

通常、パンは焼き上げたものが一般的ですが、中国のパンは蒸しパンが基本。

生地だけのシンプルな蒸しパンから、肉や小豆などの餡を包んだ蒸しパンがあります。

ただし、中国発祥のパンのなかには、蒸しパンだけではなく焼いたパンや揚げたパンもあります。

蒸しパンはパンなのか?

中国の蒸しパンとは、おもに具のないシンプルな饅頭(マントウ)や、饅頭の生地でなかに餡を包んだ包子(パオズ)のことを指します。

日本人は饅頭や包子のような蒸しパンを“中国のパン”と解釈していますが、はたして中国の人も同じようにパンだと思っているのでしょうか?

これについては、結論から言うとはっきりした答えはわかりませんでした。

次の「中国のパン文化」の項でも書いていますが、中国は他国からパンの製法が伝わってきたものの、あえて焼きパンの製法を取り入れず独自の蒸しパンの製法が確立しているので、ある意味パンの意識はあるのかもしれません。

しかし、中国の蒸しパンと他国の焼きパンとでは、あきらかに呼び方を分けているのです。

詳しくは後述しますが、蒸しパンのことは蒸餅(チョンピン)と言い、焼きパンのことは面包(ミェンパオ)と言います。

中国でのパンの呼び方

中国では小麦などの穀物の粉に水を加えて練った生地のことを「麺(ミエン)」と言い、麺で作った食品のことを「餅(ビン)」と言います。

餅には餃子や小籠包、焼売や饅頭など、とにかく小麦の生地からできた料理全般が含まれているのです。

餅はその製法によってさらに分類することができます。大きく分けると次のようになります。

餅(麺で作った食品)
蒸餅(セイロで蒸したもの)焼餅(直火であぶったり、鍋などで焼いたもの)油餅(油であげたもの)湯餅(茹でたり煮たもの)
饅頭、包子、花巻、焼売など胡餅など油条など餃子や麺類

ただし、現代の中国では単に餅と呼ぶ場合、ほとんどが小麦粉などの穀物を使った円盤状の食品のことを指し、ピザやトルティーヤなど他国の無発酵パンもこれに該当します。

一方、「パン」のことを中国語では「面包(ミェンパオ)」と言います。面は麺の略字体です。

つまり、小麦粉で包んだものという意味です。

ちなみにパン屋さんは「面包店」と言います。

ところが、饅頭や包子などのことを面包とは言いません。

面包と呼ばれるものはいわゆる焼きパンがメインなのです。

実際、中国のパン屋さん(面包店)には基本的に饅頭などの蒸しパンは置いていなく、私たちがイメージするような焼いたパンが主流です。(日本にある中国パン専門店には蒸しパンなどがあるようですが)

中国のパン屋には他国からきたパンも多いのですが、中国のパンも含め焼きパンには名前に○○面包とついているものがたくさんあります。

例えば、日本の“あんパン”のように名前のパンに該当する部分が面包です。

このようなことから、饅頭や包子などはパンとは別のカテゴリーと捉えることもできます。

私たちの考えるパンと中国の人の考えるパンは、少し違ったものなのかもしれません。

中国のパン文化

中国は、基本的にはパン文化のない国だと言われています。

中国の主食は小麦と米で、北部では饅頭などの小麦を中心とした主食があり、中国の南部では米を中心とした主食が食べられています。

焼きパンの製法は定着しなかった

もともと小麦は西アジアに起源があるとされ、中国にも紀元前2000年にはすでに伝わっていたのではと言われています。

紀元前600年頃になると、小麦を使って餃子が食べられるようになりました。

紀元前206~208年の前漢時代には、小麦の栽培がさらに盛んになり、中国の西方の国々から円形のパンが伝わってきたと言われています。

このとき、麹を使った発酵法や焼いて作るパンの製法なども伝わりますが、なぜが定着せず、蒸す製法である独自のパンが作られるようになったのです。

中国では古くから“蒸す”調理法が使われていたため、パンも蒸して調理されたと考えられます。

中国のパンは甘い

その後、晋の時代(266~420年)までには、肉を包んだ饅頭(いわゆる包子)を、明の時代(1367~1644年)になると小豆餡を入れた蒸し菓子が作られるようになります。

その後、主食として食べていた蒸しパン(饅頭)が間食でも食べられるようになり、甘い蒸しパンの普及によって中国では甘いパンが主流となります。

このようなパン食文化はおもに上海を中心に発展していったのですが、1940年頃からは戦争や革命が続き、停滞していったのです。

停滞していた時代があったことも、パン食文化が根付かなかった理由のひとつなのかもしれません。

1990年代以降になると日本や台湾、イギリス領の香港からの影響を受け、パンの文化がふたたび進化しています。

とは言え中国のパンは蒸しパンが基本。

もともとパン文化のなかった中国では他国のようなパンはほとんどありませんでした。

そのため、蒸しパン以外のパンを作っても生地そのものが甘いパンが多いのが特徴。

中国の人から見ても、20~30年ほど前までのパンはあまりおいしくなかったのです。

現在の中国のパン

ここ20年ほどのあいだに中国のパン事情はずいぶん変化し、現在の中国にはたくさんのパン屋さんができています。

日本と同じように、お店に陳列されたたくさんの種類のパンから自分でトレイにとって購入するスタイルです。

そこには他国のパンも並び、バゲットやクロワッサン、食パンなど日本でもお馴染みのパンもあります。

なんと、日本でブームとなった生食パンも中国でブームになっていたんですよ。

中国では日本のような5枚切りや6枚切りではなく、8枚切りのような薄いものばかりで、サンドイッチとしてなかにジャムなどの甘いペーストやマヨネーズで和えた具材などを挟んで食べています。

サンドイッチ用の薄切りのパンで、焼くとカリカリと硬くなってしまうため、もともと食パンをトーストする文化はないのだとか。

生食パンが人気になるのもうなずけますね。

蒸しパンは主食として欠かせない存在

パン屋さんでは西洋式のパンが主流となってきていますが、蒸しパンである饅頭や包子などは変わらず中国北部の主食として定着しています。

共働き世帯の多い中国では、袋づめされた饅頭などを購入することもありますが、まだまだ家庭で作るところも多いです。

日本や中国南部で食べるお米のように、主食として欠かせない存在なのです。

中国のパン

中国では蒸しパンなどをパンととらえているのかはわかりませんでしたが、ここでは蒸しパンを含め、日本で中国のパンと認識しているもの紹介していきます。

饅頭(マントウ)

饅頭は蒸しパンの一種で、小麦粉に水、砂糖、酵母、塩を入れて発酵させ蒸し上げたものです。

なまこ型に成形した生地を5cmずつにカットし、切り口はそのままの状態で蒸し上げます。

日本でよく食べられている肉まんの餡なしのようなもので、わずかに甘みがあり、肉まんの皮よりはずっしりとした食べ応えがあります。

逸話や歴史

寒冷の中国北部では小麦粉を使った主食が基本。饅頭はおかずと共に食べられている主食です。

饅頭は、川の氾濫を抑えるために川の神に捧げる生贄の代わりとして、諸葛孔明が考案しました。

生贄の代わりになるよう人間の頭に見立てていることから、饅頭という名がついたと言われています。

日本にも同じ字で饅頭(まんじゅう)というものがありますが、饅頭(まんじゅう)のルーツはこの饅頭(マントウ)です。

1349年、宋から林浄因(りんじょういん)という人物が日本の奈良に来て作ったのが始まりと言われています。

日本では仏教でお供え物として使えるように、肉ではなく小豆の餡を入れたものを考案したようです。

食べ方

具のないシンプルな蒸しパンのため、なかに具を挟んだり、スープに浸して食べます。

主食なのでさまざまなおかずと共に食べられています。

包子(パオズ)

饅頭の生地で、なかに餡などを詰めたものは包子と呼ばれています。

日本でいう中華まん(肉まん)として知られているものです。

中身は肉や野菜などのおかず系だけでなく、さつまいもやカスタードなど甘いものもあります。

逸話や歴史

晋の時代には肉を詰めた饅頭として誕生し、明の時代になると小豆などの餡を詰めた饅頭として普及していきました。

日本では肉まんのようにおかず系を包んだ中華まんが多いのですが、中国の包子は甘いものの方が多いのが特徴です。

食べ方

包子はなかに餡が入っているので、そのまま食べます。

中国では軽食の役割を持つ点心の一つとして、気軽に食べられています。

花巻(ホワチュアン)

包子と同じく饅頭の生地を使用し、花の形に成形して蒸しあげたパンです。

餡を包み込んで成形する包子に対し、花巻は何も包まずに成形します。

なかには生地自体にクルミなどの具材を混ぜ込んで成形したものもあります。

逸話や歴史

花巻という名前とその見た目から、花の形であることが名前の由来かと思っている方も多いかもしれません。

確かに中国語で「花」は植物の花の意味もありますが、ほかにも「模様」や「デザイン」などの意味があります。

なかでも少し奇抜なイメージを指すため、ここでは「面白い模様」と言った意味を表しています。

つまり、花巻はその見た目が“面白い形”であることからついた名前と考えられています。

食べ方

包子と同じく点心の一つであるため、昼食やおやつとして食べられています。

シンプルな生地なので、さまざまなおかずと一緒に食べたり、なかにチャーシューなどを挟んで食べます。

油条(ヨウティヤオ)

引用元: wikipedia

油条は中国や台湾でよく食べられている揚げパンです。

条は中国語で「棒状」を意味し、見た目は日本の油麩に似ています。

油条にはほかにも油炸桧(油炸檜)という呼び名があり、広東省や福建省では訛って油炸鬼(ヤウザーグァイ)と呼ばれています。

油条は、水に塩と重炭酸アンモニウムを溶かし、薄力粉やもち粉を混ぜたものが原料。

生地を伸ばして一晩寝かせ、さらに薄く伸ばして棒状に切り、二本重ねた状態で菜箸などをつかって中心を押さえつけて跡をつけ油で揚げたものです。

重炭酸アンモニウムの効果でサクサクとした食感に仕上がります。

ただし、油条をパンと位置付けるかは難しいところです。

日本を含めた他国からすると、油条はパンの一種として認識していますが、中国ではパンとは呼んでいないのです。

油条は基本的に朝食でお粥などを提供する食堂で作られており、パン屋では販売していないためです。

逸話や歴史

油条の別名として油炸桧(油炸檜)がありますが、それにはこのような逸話があります。

1122年、金(王朝)から攻められていた北宋は、岳飛という将軍に兵を引きつれ戦わせます。

金からの攻めに幾度となく軍功をあげた岳飛は、名将としてその名を馳せたのでした。

1131年、南宋の宰相となった秦檜(しんかい)は、金(王朝)から占領された土地を取り戻すために、講和を進めていました。

しかし、講和に反対していた岳飛を反秦檜派として、処刑してしまうのです。

宋を救った名将岳飛の死に人々は悲しみ、秦檜は宋王朝の裏切り者であるとして恨まれます。

油条は二本の棒を重ねて揚げて作りますが、これは一本を秦檜、もう一本を秦檜の妻に見立て、重ねて揚げたというものです。

秦檜を恨んでいた人々は、その恨みを晴らすために二人に見立てたものを揚げ、釜茹での刑にしたというのです。

油条の別名である油炸桧(油炸檜)は、秦檜からとった名前だと言われています。

食べ方

お粥やスープ、豆乳などと一緒におもに朝食で食べられています。

お砂糖をまぶして、おやつとして食べるのも人気の食べ方です。

肉松包(ロウソンバオ)

引用元: wikipedia

中国で大人気のパン。日本で紹介されるときは肉松パンと呼ばれています。

肉松とは肉でんぶのことで、肉松包は肉でんぶをまぶして焼いたパンなのです。

使われている肉には、豚肉や鶏肉、牛肉などさまざまですが、赤身の肉を砂糖や醤油などで調理し、細かくほぐした甘じょっぱい食品です。

日本でも桜でんぶという魚を原料として作った食品がありますが、桜でんぶの肉バージョンといったところでしょうか。

中国ではこの肉松をパンのトッピングだけでなくサンドイッチの具やお粥に入れたり、ドーナツにまぶしたりさまざまな食べ方をされています。非常に馴染みのある食べ物なのです。

肉松をトッピングとしてまぶした肉松包は、日本の焼きカレーパンのような見た目をしています。

逸話や歴史

実は、食べたことがある日本人には不人気の肉松包。

肉松の何とも言えない甘じょっぱさが、あまり馴染みのない味なのかもしれません。

しかし、中国人にとってはとても人気のパンで、パン屋にはよく並んでいます。

肉松包に使われている肉松は、チンギスハンも粉ミルクと一緒に携帯し、お湯で溶かしたミルクに混ぜて飲んでいたようです。

食べ方

肉松包はいわゆる総菜パン。

肉松がトッピングしてあるパンは、そのまま昼食やおやつとして食べられています。

そのほか、サンドイッチのようにパンに具材として肉松を挟んでサンドイッチのようにして食べます。

馬拉糕(マーラーカオ)

卵をたっぷり使った褐色の蒸しパンです。

蒸しパンの一つですが、三温糖や黒糖などの砂糖を使ってほんのり甘く仕上げており、カステラのような位置づけで、パンというよりはお菓子のような存在です。

ホールケーキのように大きく作ったり、アルミカップなどに入れてカップケーキのように作ったりします。

逸話や歴史

中国の広東地方で作られたのが始まりです。

マーラーは「マレーシア」、カオは「ケーキ」を意味し、馬拉糕がマレーシアから伝わって来たという説と、マレーシア人の肌の色に似ているから名づけられたという説があります。

食べ方

朝食や点心として、お茶と一緒に楽しまれています。

菠蘿包(ボーローバウ、ポーローパウ)

菠蘿包は、日本語に訳すとパイナップルパンです。

日本のメロンパンのように、表面にサクサクのクッキー生地が乗っています。

パイナップルパンという名前ですが、パンの材料にパイナップルは使われていません。

このようなところも、実際にはメロンが入っていないメロンパンと似ていますね。

逸話や歴史

香港の名物菓子パン。菠蘿は「パイナップル」の意味です。

焼けて表面のクッキー生地に亀裂が入った見た目が、パイナップルに似ていることから名づけられました。

もともとは俄羅斯包(オールオスーパウ)と呼ばれており、「ロシアパン」という意味がありました。

これは、日本のメロンパンも含め、パイナップルパンのルーツがロシアにあることに関係があります。

ロシアには、ロシア帝国の宮廷料理人がフランスの焼き菓子であるガレットを元に考案したパンがありました。

そのパンが、パナップルパンやメロンパンのルーツとなっているのです。

俄羅斯が作られ始めた時期には諸説ありますが、1917年のロシア革命で逃れてきたロシアの職人によって作られたのがきっかけだと考えられています。

当時はあまり甘くないパンでしたが、1930年以降、菓子パンが香港で庶民に広まると、俄羅斯に格子状の模様を入れた甘いパンとなり、菠蘿包と呼ぶようになったのです。

湿度の高い香港では、カビを防ぐために表面に砂糖をまぶさず堅焼きにしています。

そのため、メロンパンとは違ってクッキー部分には水分があまりない状態です。

食べ方

おもに朝食やおやつとして食べられています。

そのまま食べてもおいしいのですが、横に切れ込みを入れ、厚く切ったバターを挟んで食べるのが人気です。

ミルクティーと一緒に食べるのもおすすめです。

ほかにも、サンドイッチのようにチーズやハム、トマトを挟んだり、カスタードクリームなどの甘い餡などを挟んで食べることもあります。

まとめ

ほかの国とは一線を画した独特のパン文化のある中国。蒸し料理の多い中国ならではですね。

基本的には甘いパンが主流の中国ですが、蒸しパン以外にも焼いたパンや揚げたパンなどさまざまなパンがあることがわかりました。

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この記事を書いた人

医療技術系短大卒業後、バイオ系研究室テクニシャンなどを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中です。
製パンスクールのプロコースを卒業した経歴を活かし、実践に役立つ製パン知識を、よりわかりやすく科学的にお伝えします。
食育アドバイザー、幼児食インストラクター資格保持。

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