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ライ麦100%パンはなぜ日持ちする?保存性が高い理由を解説!

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材料に小麦粉を使わず、ライ麦粉だけで作る「ライ麦100%パン」は、日本ではあまり馴染みのないパンですが、ドイツやオーストリアをはじめとするヨーロッパの国々では、当たり前のように食べられています。

もともとは、小麦粉があまり採れない地域の小麦粉の代用品としてライ麦粉を使ったパンが作られるようになったのですが、昔から日持ちのするパンとしても重宝されています。

ライ麦100%のパンは、なぜ小麦粉を使ったパンと比べて日持ちするのでしょうか?

ここでは、ライ麦100%パンの保存性が高い理由を解説していきたいと思います。

目次

ライ麦パンの消費期限はいつまで?

まずはライ麦パンの消費期限から紹介していきます。

ロッゲンブロートと呼ばれるライ麦100%のパン、ミッシュブロートと呼ばれるライ麦粉と小麦粉を同量使用したパン、さらに普段私たちが食べ慣れている小麦粉100%のパンの消費期限について見ていきましょう。

パンの消費期限は、同じ種類のパンでも、個人店での製造と衛生管理を徹底して特殊な包装技術のある大手メーカーでは異なります。

ここでは、保存料を使っておらず特殊な包装をしていない、より手作りに近い製法のパンと想定して比較したいと思います。

ライ麦粉100%パン(ロッゲンブロート)の消費期限

ロッゲンブロートなどに代表されるライ麦100%パンの消費期限は、製造からおよそ一週間です。

包装済みの商品であれば、それ以上の長さの消費期限が設定されている場合も多数ありますが、パン屋さんで買うライ麦粉100%パンであれば一週間ほどと思って良いでしょう。

ちなみに、日本の大手メーカーではライ麦100%のパン自体を扱っているところが少ないのですが、ドイツの老舗パンメーカーであるロイポルト社の「PEMA(ペーマ)」ブランドでは、ライ麦粉を100%使ったプンパーニッケルやフォルコンブロートを取り扱っています。

開封しなければ常温で1年保存可能です。

日本では、楽天市場やAmazonなどの通販サイトや成城石井で購入することができますよ。

ライ麦粉と小麦粉が同量のパン(ミッシュブロート)の消費期限

ライ麦粉と小麦粉を同量使ったミッシュブロートの消費期限は、製造から4~5日です。

日本のパン屋さんで「ライ麦パン」として売られているパンは、ライ麦100%のパンは少なく、ほとんどが小麦粉を混ぜて作ったパンです。

ミッシュブロートはライ麦粉と小麦粉を同じ量で作るパンですが、日本のライ麦パンは小麦粉の分量の方が多く使われています。

ライ麦粉が多いパンを作るには高い技術が必要であることと、独特な味と食感が日本人の好みに合わないなどの理由から小麦粉の分量が多くなっています。

小麦粉の分量の方が多いパンは、ミッシュブロートよりもさらに1日ほど消費期限が短いと考えておいた方が良いでしょう。

小麦粉100%パンの消費期限

さいごに、普段私たちがよく口にする小麦粉100%パンについてです。

小麦粉100%パンの消費期限は、製造から2~3日です。

食パンやフランスパンなど、作るパンによって多少の差はありますが、ライ麦100%パンと比べると日持ちが短いことがわかります。

ライ麦パンの保存性が高い理由

ライ麦100%のパンは、小麦粉だけで作るパンと比べて2倍以上日持ちすることがわかりました。

では、なぜライ麦パンは日持ちしやすいのでしょうか?

ライ麦パンが通常のパンと大きく違うところは、小麦粉ではなくライ麦粉を使っているということに加え、発酵にサワー種が使われているということです。

サワー種は、ライ麦粉と水を適切な温度と水分量で熟成させたもので、サワー種の名前の通り、酸味の強い発酵種です。

天然酵母の一種でもあり、サワー種には空気中やライ麦粉由来の酵母、乳酸菌などが含まれています。

グルテンの量が少ないライ麦粉では、単に酵母を加えてもガスを保持する力がなく膨らまないため、サワー種が使われてきました。

生地を酸性にすることで、デンプンを糖に分解するアミラーゼの働きを抑制し、デンプンが凝固するのを助けるのです。

これにより、小麦粉100%パンほど膨らまないものの、ガスを保持することができるようになります。

サワー種はもともとデンプンの凝固を助ける目的で使われ始めましたが、ライ麦パンに独特の酸味や風味を与えたり、保存性を高めたりすることができます。

ライ麦パンの保存性が高い理由には、材料にライ麦粉を使っているということと、このサワー種が関係しているのです。

詳しく解説していきましょう。

乳酸菌や酢酸菌が腐敗菌の増殖を抑える

前述にあるように、サワー種には空気中の酵母や乳酸菌、酢酸菌が含まれています。

特に多いのは乳酸菌です。

乳酸菌や酢酸菌は、発酵の過程で乳酸や酢酸を産生し、パンに独特の酸味や風味を与えます。

さらに乳酸菌や酢酸菌は、腐敗菌の増殖を抑える効果もあるのです。

有機酸による菌の死滅

有機酸とは酸性を示す有機化合物のことで、乳酸や酢酸、クエン酸やリンゴ酸などがあります。

乳酸菌や酢酸菌が乳酸や酢酸を産生することで、発酵種のなかの腐敗菌が死滅し繁殖を抑えることができます。

後述する「pHが低いことで腐敗菌の増殖を抑える」にも繋がるのですが、乳酸菌は弱酸性です。

弱酸性である有機酸は非解離型という状態で存在し、腐敗菌の菌体に入り込み、なかで解離しDNAに損傷を与えます。

ここで気になるのが酵母の発育。

酵母菌は有機酸に耐性があり、乳酸や酢酸が増えた環境でも生育することができるのです。

乳酸菌や酢酸菌のスクリーニング

サワー種を作るさいには、酵母菌や乳酸菌の割合の多い容器の底の方をとって植え継ぎをしていきます。

このようにして、有益な菌と腐敗菌をスクリーニング(選別)していくのです。

サワー種を作る温度は26℃前後で、乳酸菌を生育するのに最適な条件ですが、乳酸菌が増え優勢の状態になると、腐敗菌とされる他の一般細菌は減少していきます。

焼成時には乳酸菌は死滅してしまいますが、クリーニングによって限りなく減少した腐敗菌は、ライ麦パンの作るさらなる条件下で増殖が抑えられます。

それは後述する「水分活性が低いことで腐敗菌の増殖を抑える」の項目で解説しましょう。

pHが低いことで腐敗菌の増殖を抑える

pHは水素イオン指数のことで、酸性であるほど値は低く、アルカリ性であるほど高くなります。

pHは7.0が中性ですが、サワー種のpHは3.3~4.0、完成したライ麦パンのpHは4.0~5.2ほどです。

サワー種は作り終えるまでに5日を要します。

初日こそ乳酸菌以外の菌が増えるものの、2日目以降はスクリーニングによって腐敗菌が排除され、乳酸菌や酵母菌が増殖します。

乳酸菌の数が増えることで、さらに乳酸や酢酸が産生され、pHが酸性側に傾きます。

サワー種中のpHの変化については日本生物工学会の実験で明らかになっています。

公益社団法人 日本生物工学会 / 伝統的パン種のおいしさと微生物の関りについて

ほとんどの腐敗菌の最適pHは7.0~7.5と中性から弱アルカリ性です。

pHが下がり酸性になることで、腐敗菌は発育することができず、増殖が抑制されます。

酵母の最適pHは4.0~6.0なので、酵母にとっては発育しやすい環境と言えるでしょう。

水分活性が低いことで腐敗菌の増殖を抑える

水分活性とは、自由水がどれだけあるのかを表す指標のことです。

0~1.00の範囲で表し、自由水の割合が多いほど水分活性は高くなります。

食品のなかに含まれる水は、自由水と結合水に分けることができます。

自由水とは、微生物が自由に利用することができる水のことです。

分子が自由に動き回ることができるため、菌の増殖が可能です。

一方、結合水はタンパク質や炭水化物と結合した状態で存在している水のことです。

分子は動きまわることができず、微生物が自由に利用することはできません。

腐敗菌の増殖には、この自由水が必要不可欠です。

自由水の割合を減らすこと、すなわち水分活性を低くすることで腐敗菌の増殖を抑えることができます。

ほとんどの菌は、水分活性値が1.00~0.95の範囲で増殖します。

酵母は水分活性値が0.87でも発育可能なので、できるだけ腐敗菌が発育できないように水分活性を低くすることが重要です。

ライ麦パンは水分活性が低い

ライ麦には、アラビノキシラン(ペントサン)という特殊な炭水化物が多く含まれています。

このアラビノキシランの作用でライ麦粉は吸水性が非常に高く、小麦粉と比べて4倍もの水を吸収します。

吸水する量が多いほど結合水が増え、水分活性は低くなり腐敗菌の増殖が抑えられるのです。

まとめ

ライ麦100%パンの保存性が高いのは、あらゆる条件下で腐敗菌の増殖が抑えられているためということがわかりました。

材料や作り方を工夫することによって、保存性の高いパンが得られているのです。

パンを手で触ってカットしたり、空気中に浮遊している菌が付着することでふたたび腐敗菌が増え始めます。

今回紹介した消費期限はあくまでも目安です。

保存環境や取り扱い方によっても左右されるので、適切な取り扱いをするように心がけましょう。

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