パン作りの各工程(ミキシング・発酵・焼成)でそれぞれ使う温度計を紹介!
ミキシングによる生地の仕上がりや、発酵状態を見ながら作業を進めているパン作りでは、温度管理は非常に重要なことです。
捏ね上げ温度や発酵温度、焼成温度など、パン作りでは常に温度を測定する必要があります。
パン作りで使う温度計は、工程ごとに適したものが違うため、それぞれに温度計を用意する必要があります。
作業を円滑に進めるためにも、目的に合った温度計を使うようにしましょう。
ここでは、これから温度計を探しているかたに、それぞれの工程ごとに適したおすすめの温度計を紹介していきたいと思います。
捏ね上げ温度を計る温度計の種類
工程の違いによって、複数の温度計を使用する必要があるパン作り。
それぞれに温度計を準備するのは大変ですが、正確な温度管理がパンの仕上がりに大きく影響します。
まずは捏ね上げ温度を計るときの温度計を紹介していきたいと思います。
デジタル温度計(スティック温度計)
デジタル温度計は、細長い金属製のスティックが対象物に触れることで温度を測定することができるものです。
スティック部分がサーミスタセンサーとなっており、測定したときの温度が液晶部分にデジタル表示されます。
デジタル表記のため、電池を入れて使用するのが特徴です。
液体にセンサー部分を入れたり、パン生地に直接指して温度を測定します。
測定範囲は-50℃~250℃が一般的で、パン生地の温度測定以外にも、チョコレートのテンパリングの工程での温度測定によく使用されています。
放射温度計(赤外線温度計)
放射温度計は、測定したい対象物の赤外線エネルギーを受光して、そのエネルギー量を温度に換算して表示するものです。
そのため、赤外線温度計とも呼ばれています。
すべての物体の表面からは赤外線エネルギーが放射されているため、生地に触れることなく温度を計ることができます。
放射温度計は物体表面の赤外線エネルギーの反射を利用するため、中心温度ではなく表面温度を測定しているのが特徴です。
放射温度計のなかには、中心温度センサー付きの2WAYタイプの温度計もあります。
2WAYタイプの温度計の場合は、表面温度は非接触で測定し、中心温度を測定したい場合は、先に紹介したデジタル温度計と同じような接触型センサーが本体に付属しているので、生地に直接指して測定します。
ガラス棒状温度計
ガラス棒状温度計はアナログ式の温度計です。
デジタル温度計のように電池切れの心配がないため、電池交換の必要がないのはもちろん、半永久的に使用することができるのが特徴です。
ガラス棒状温度計には水銀温度計とアルコール温度計があり、なかの液体が温度変化で膨張することで温度を表示しています。
アルコール温度計は白灯油という液体が入っており、赤や青に着色されています。
安価ではありますが、ガラス棒状温度計は割れやすいのが難点です。
特に水銀は有害なため、取り扱いには十分注意しなければいけません。
捏ね上げ温度を計るのにおすすめの温度計
捏ね上げ温度は、生地の状態を知る大事な指標ともなります。
捏ね上げ温度を計るのにおすすめの温度計は、デジタル温度計(スティック温度計)です。
捏ね上げ温度を計るのに使われる温度計としては、非接触で衛生的な赤外線放射温度計も使われていますが、生地の温度を計るうえで必要なのは中心温度です。
捏ね上げ温度を正確に計るには、生地の中心温度を測定できる温度計を使う必要があります。
デジタル温度計の精度は±1.5℃、赤外線放射温度計の精度は±2.0℃です。
精度においてもデジタル温度計の方がやや正確で、さらに表面の温度を測定する赤外線放射温度計では中心温度を測定することができません。
ガラス棒状温度計は中心温度を測定できるものの、目盛りを読み取る時には真横から目盛りを見る必要があります。
大きなミキサーなどで生地をミキシングする場合など、ミキサーは容器が深く温度計を指すと上から見下ろすようにして確認しなければいけません。
角度が変わると正確な温度を読み取ることができないため、あまりおすすめとは言えないでしょう。
発酵中の温度を計る温度計
次に、発酵中の温度を計る温度計の紹介です。
専用の発酵器(ホイロ)を使用している場合は、発酵器に温度計測機能が付属しているため、新たに温度計を用意する必要はありませんが、自家製の発酵空間を用意する場合は、温度計や湿度計を準備する必要があるでしょう。
室温計・湿度計
デジタル式の温度計で、サーミスタという半導体を利用して電気の抵抗値から温度を測定します。
卓上タイプの温度計が一般的です。
生地の仕込みの段階でも、その日の気温や湿度を知っておくのは重要です。一つは持っておくと便利ですよ。
発酵中の温度を計るのにおすすめの温度計
発酵中の温度を計るには、室温と湿度が同時に計れるデジタル温湿度計を用いるのがおすすめです。
基本的には、デジタル式の室温系は湿度も一緒に測定できるようになっているのがほとんどです。
発酵中は庫内の湿度が高くなるため、できれば防水タイプの室温計を用意すると安心です。
アナログ式のものでも、室温と湿度が両方表示されるものもありますが、デジタル式は一目見て温度と湿度を認識しやすいのが良いところ。
見間違いを防ぐためにもおすすめですよ。
オーブンの温度を計る温度計
オーブン庫内の実測温度が表示されるオーブンを使用していれば問題ないのですが、一般にはあまりありません。
しっかり予熱して適正の温度で焼いているつもりでも、実際には庫内の温度が合わせた温度通りとはならないこともあるため、オーブン内の温度を正確に合わせることが大事です。
オーブン庫内は、天板の入れ替えでも大きく温度が下がるので、しっかり庫内の温度も測定しましょう。
オーブンの温度を計る温度計には、次のようなものがあります。
オーブンサーモ(オーブンメーター)
オーブンサーモは、丸ごとオーブン庫内に入れて測定することができる温度計です。
本体は耐久性、耐熱性のあるステンレス鋼などの金属でできています。
アナログ式で、測定範囲は0℃~300℃の範囲が一般的です。
5℃単位や10℃単位で目盛りが刻まれており、天板に置いたり、庫内で上から吊り下げて使うことができます。
デジタルオーブン調理用温度計
デジタルオーブン調理用温度計は、本体とプローブが1mほどのケーブルで繋がっており、プローブ部分がオーブン庫内へ、本体部分はオーブンの外へ出して測定するものです。
1℃単位で測定できるため、アナログ式よりは正確に温度を測定することができます。
プローブの先端は鋭利になっており、大きな塊肉の中心温度を焼成しながら確認するのに適しています。
オーブン内で使用することができる温度計ですが、アナログ式のオーブンサーモとは、測定目的で大きく異なります。
オーブンの温度を計るのにおすすめの温度計
オーブンの温度を計るには、オーブンサーモがおすすめです。
前項で紹介したデジタル温度計のように食材に指して使用する温度計は、焼成時に形状が大きく変化するパンでは使用することができません。
また、卓上タイプの温度計の場合、デジタル温度計は高温の庫内に入れることができないため、基本的にはアナログ式の温度計を使用することになります。
まとめ
パンはさまざまな工程で温度を測定する必要があります。
複数の温度計を用意するのは大変で、できるだけ一つの温度計で済ませたいところですが、それぞれに適した温度計を準備しましょう。
パンがうまく作れなかったり、失敗したときの原因究明は簡単なことではありません。
温度が正確に計れなければ、原因究明も遅れてしまいます。必要最低限の条件を守ってパン作りをおこなうことが、とても大切なことなのです。