対怪異アンドロイド開発研究室
2022年から掲載が始まったので、WEB小説としては最近の作品。
書籍化されており、一巻まで刊行されている。
作品概要
「おばけは怖くありません。機械ですので。」という言葉からわかるように、アンドロイドが怪異の現地調査をする物語。
自律汎用アンドロイドのアリサは怪異検出AIを備えている。
画像認識・音声認識・自然言語処理などを複合し、対象が怪異である確率を検出する。
彼女は背面にもカメラを持ち、百万倍の光増幅率を持つ微光暗視能力、超音波による反響定位、嗅覚デバイスなどの観測機器を持ち、死角がない。
そして、なにより「恐怖」がない。白川有栖教授を中心に開発された彼女は怪異調査にはうってつけに思えた。
アンドロイドであれば、怪異を丸裸にできるのではないか。
統計的に「ない」と断言できるほど実在性を確認できない怪異の真実に迫れるのではないか。
極地作業をロボットに任せるように、人間は安全圏にいながらに調査を進められるのではないか。
山奥に潜む謎の廃村、終電後に現れる電車、顔を見ただけで夫婦仲を引き裂く女、過去の風景を再現し続ける廃ビル、毎夜チャイムを鳴らす訪問者……。
それらの調査を続けるうちに、否が応でも理解することになる。怪異は、どこにでもいる。
カクヨム – 対怪異アンドロイド開発研究室
感想
『対怪異アンドロイド開発研究室』というタイトルからして、きっと怪異を退治したり封印したり、何かしら問題解決を目的にしたアンドロイドを開発しているのかと思い浮かべてしまうことだろう。
しかし本作は怪異退治を目的とせず、調査に重きを置いているのが良い。
怪異にアンドロイドを向かわせれば(比較的)安全に調査できる、という発想が素晴らしい。アイディアの勝利。
食べたら胃の中で暴れて人間を殺すような怪異も、アンドロイドが食べたらいくら怪異が頑張っても殺すことができない。
なんだそれは。面白いじゃないか。
また、人間がこのアンドロイドを見ても初見では人間と錯覚してしまう程の仕上がりなのは勿論、怪異もこのアンドロイドを人間だと認識して怪異が発動してしまう、というのが面白い。
アンドロイドの首が体と分離してる時には物として認識するのに、アンドロイドの首が体とくっついたら人と認識してしまう。
そしてそれは人も怪異も同様だろう、という怪異の認知の話をするのが新鮮だ。
また、キャラクターはライトノベルっぽさがあるので、ホラー小説というよりはライトノベルと思って読むとギャップが少なく楽しめると思う。