第7魔王子ジルバギアスの魔王傾国記
2021年から掲載が始まったので、WEB小説としては最近の作品。
書籍化とコミカライズがされており、書籍は五巻、コミカライズは三巻まで出版されている。
作品概要
勇者が魔族の王子に転生し、魔族を内側から崩壊させてやろうと画策する物語。
孤立無援、悪逆非道、全ては人類のために――魔王に敗れた勇者は、よりによってその魔王の息子に生まれ変わってしまった。正体がバレないよう、理想的な魔族の王子・ジルバギアスとして振る舞いながら、魔王国を滅ぼすために暗躍する主人公だったが――魔族社会に溶け込むためには、当然のように人族を殺さなければならなかった。勇者として守るべき人々を、その手にかける禁忌。それでも強くなるため、人類を救うため、あらゆる非道に手を染める覚悟で突き進む。葛藤と背徳にまみれた、魔族のニセモノ王子の、国崩しの物語。
カクヨム – 第7魔王子ジルバギアスの魔王傾国記
感想
現代人が異世界に転生するのではなく、異世界の住人である主人公が、同じ世界の魔族に転生する異世界転生物。
異世界転生物というか、ファンタジー転生物(そんな言葉はないが)。
異世界転生物でありがちなのが、主人公が目的もなく転生してしまって場当たり的に物語が進む、ということが挙げられる。
このパターンだと物語序盤の求心力が得にくいのが難点なのだが、その点、本作の主人公には明確な目的があるものの志半ばで死亡し、転生後もその目的を継続することができているのが良い。
また、魔族が実はいいやつということがないのも良い。
本作の魔族は昔から蛮族で、現在の魔王軍として纏まっているのは他種族を侵略するお題目があるから。
そのお題目がなければ仲間内で殺しあってしまう気質である、という設定。
魔族が一枚岩ではないおかげで、主人公が内部から暗躍して魔族を傾国へと導ける隙となっている。
主人公が熱い男というのもよい。
魔族として元同族である人間を殺さなければならない場面がどうしても出てくる。
人間のために魔族を国ごと滅ぼしたい。しかし、そのためにはまず目の前の人間は殺さないといけない。
主人公が熱い性格のために、その葛藤がより際立っている。実によい。