東京逓信病院のアトピー教室に参加して”脱”脱ステロイドを始めた件
東京逓信病院のアトピー教室に参加してきました。 記憶が鮮明なうちに私の備忘録も兼ねて、アトピー教室で聞いた話を記載しておこうと思います。
私のバックボーン
まずは私がアトピー教室に参加した経緯を説明します。 読み飛ばしていただいても問題ありません。
私は乳児の頃からのアトピーでした。 幼稚園児の時分には自然に改善したのですが、小学校4年生の頃からアトピーが再発し、27歳現在までずっとアトピーです。 悪化する時期(季節の変わり目、冬季)にはジュクジュクと浸出液がでて、スーツにまで染み込んでしまうということも多々ありました。
妻の知人で、私と同じようにアトピーの方が、東京逓信病院に2週間程度入院してアトピー治療を行ったところ、劇的に改善したらしく、妻から東京逓信病院を勧められました。 私は東京逓信病院がどんな治療を行うのか、ネットで調べてみました。 ステロイドによる標準治療、という以外に特別な治療を行っているわけではなさそうでした。 私は「なんだ、結局ステロイドか」と思い、ステロイドは怖いものだから使いたくない、ということを妻に説明しようと思ったところで、言葉に詰まりました。 (あれ?具体的にどう危険か、よく知らないぞ?)
母親の方針で、一切ステロイドは使わない環境で育ち、「ステロイドは怖いもの」というのが当たり前だと思っていました。 「ステロイドは副作用が怖い」 「ステロイドは依存状態になる」 「ステロイドを使うと肌が黒くなる」 「ステロイドはリバウンドがある」
私の知っているステロイドのイメージはすべてネットの情報です。 しかし、ネットにはその反対の意見も多くあります。 私はステロイド否定が当たり前だと思っていたので、そういった情報は深く考えずにスルーしていました。
改めて考えてみると、私はステロイドを一度も使っていないのにアトピーはひどいままだし、ステロイドを使っていないのに皮膚は象のようにゴワゴワしていた時期もありました。 ステロイドを使っていないのに皮膚が黒ずんでいる箇所もあります。
(あれ?ステロイド使ってなくてもこんな状態なんだよな?使っても使わなくて同じじゃないか?) そう思った私は、東京逓信病院を受診することにしました。
東京逓信病院を受診して、ステロイドを塗るようになり、3日目から浸出液が殆どでなくなりました。 3日目以降は、粉が吹いて細かい白い落屑が出ることが少なくなりました。 夜寝るときに、痒くて寝られないということがなくなりました。 汗をかいても痒くなることがなくなりました。 ただ、免疫を下げるからか、ニキビは大量にできました。
まだまだ治療中で赤ら顔は健在ですが、ニキビのこと以外は実に快適に過ごせています。 しかし、まだなんとなくステロイド使ってて大丈夫なのかな?という気持ちはありました。 そのモヤモヤした気持ちを整理したいという気持ちから、東京逓信病院のアトピー教室に参加してみることにしました。
アトピー教室に参加
アトピー教室は16時30分からの1時間という予定でしたが、私が参加し時には1時間30分の時間が掛かりました。 それだけ長い時間話を聞いたので、私が印象に残った事柄を備忘録代わりに以下に記載します。
ニュースステーション「魔法の薬ステロイド剤の落とし穴」の映像が見れる!
世の中に「ステロイドは危ない薬なんだなぁ」と印象付けることになったとされる番組がニュースステーションです。 ステロイドについて私がネットで調べたときに、↓のサイトなどで存在は知っていました。
その貴重な映像(導入部分)をみることができました。映像としてみれると、ちょっとした感動がありました。 まぁ、導入部分なので、キャスターが話している箇所ばかりなんですけどね。
目の疾患(白内障、網膜剥離、等)が増加
ステロイドバッシングがおこってから、アトピー患者の目の疾患(白内障、網膜剥離、等)の数が、増加していたらしいです。 上がったり下がったいではなく右肩上がりという点に注目し、ステロイドバッシングの影響により脱ステロイドなどでアトピーが悪化した患者が多くなってしまい、引っ搔いたり圧迫してしまった結果、目の疾患になっている人が増えているのではないか、という推理をされたらしいです。 東京逓信病院の先生は、「このままでははいけない」ということでアトピー治療のガイドラインの作成に注力したそうです。
汗はかいてもいい!
昔は、「汗はアトピーが悪化するから汗はかかないほうがいい」と言われていましたが、現在では「汗をかかないことでアトピーが悪化する人もいる」ということで、発汗は否定していないらしいです。 ただし、汗をかいたら早めに洗い流す、という対応については、昔と変わらずやった方がいいものだそうです。
アトピー治療のゴールはプロアクティブ療法
プロアクティブ療法は、徐々に外用薬を塗る間隔をあけるという治療法です。 アトピーが酷い場合にはステロイドやプロトピックを毎日塗ります。重症な時は1日2回を毎日です。 毎日塗っていき、徐々に良くなってきたら、ステロイド・プロトピックを塗る間隔を1日おき、2日おき、3日おき、1週間に一度、という具合に、徐々にステロイドの塗る間隔をあけていきます。 症状によっては、徐々にステロイドのランクも下げていくことになるそうです。 ステロイドを塗る時はしっかり塗る!少量を薄く延ばして塗るのが一番意味がない!、とのことで、塗る量を減らすのではなく塗る間隔をあけることで調節していくのがよいのだそうです。 「適切な場所に、適切な強さのステロイド外用薬を、適切な期間使う」ということが肝要なのだとか。 保湿剤に関しては、アトピーが改善されたとしても、毎日塗ることで再発を予防することになるらしいです。 プロアクティブ療法は、再度アトピーが悪化しないように、1週間に一度、予防的にステロイドやプロトピックを使ってアトピーをコントロールしていく、ということがゴールとなるようです。 きっと、究極的には、保湿剤だけでコントロールできるようになるのがベストなんでしょうね。
ワセリンとヒルロイドの塗り方の違い
ワセリンとヒルロイドはどちらも保湿剤ですが、保湿へのアプローチが違います。 ワセリンは油ですので、皮膚表面に油を塗ることで、皮膚から出て行ってしまう水分を閉じ込めるというアプローチをします。 ヒルロイドは皮膚に浸透し、皮膚に水分を呼び寄せるというアプローチをとります。 そのため、それぞれを塗る時の方法としては、 ワセリンは「皮膚の上に乗せるように塗る」 ヒルロイドは「刷り込むように塗る」 という違いになるそうです。
軟膏よりもローションの方が刺激は強い
ワセリンのような軟膏は、塗るとベタベタして服についてしまったり、テカテカしてしまい、どうにも不快感があります そのため、塗った後にベタベタしないローション系の保湿剤を使うという人も多いことかと思います。 しかし、ローション系は本来混ざり合わない水と油が混ざるようにするために乳化剤が添加されており、また、水が多いために腐ってしまう可能性があるため、防腐剤も入っているそうです。 そういった経緯から、ベタベタする軟膏よりも、ベタベタしないローションの方が、皮膚に対して刺激になるそうです。
ステロイドの副作用の誤解
皮膚は黒く、ゴワゴワにはならない
肌が黒くなったり、ゴワゴワになるのは、アトピー性皮膚炎で長い期間掻き続けていたせいだそうです。 10年間ステロイドを塗っているのにアトピーが治らず皮膚が黒くゴワゴワになった、と言う患者さんがいたらしいのですが、その患者さんはステロイドへの恐怖心から少ない量を薄く塗っていたらしいです。 ステロイドを中途半端に塗っても意味がありません。塗る時はしっかり塗って、早めに改善させるものです。 ステロイドを一度も使ってこなかった私の肌も、黒ずんでいる箇所はありますし、アトピーがかなり悪化していた時には、皮膚が象の肌のようにゴワゴワになっていました。 ですので、長く搔き続けた結果、皮膚の黒くなる、皮膚がゴワゴワになる、ということについては、「そうだろうなぁ」と納得しました。
昔のステロイドは黒くなることがあった
ステロイドでは黒くならない、という話を聞いてすぐに、昔はそういうこともありえた、という話を聞いてズッコケそうになりました。 ステロイドが、というよりもステロイド外用薬に含まれるワセリンによる影響だそうです。 昔のワセリンは光に反応して、皮膚が黒くなるということがあったそうです。
丸顔(ムーンフェイス)になる
ステロイド外用薬で、ムーンフェイスになることは、基本的にはないそうです。 ただ、そういった症例も過去にあったんだとか。 1歳未満の子供にランクの一番強いステロイドを全身に一カ月塗る、という治療が行われたことがあったらしく、その子供がムーンフェイスになったそうです。 しかし、本来子供に強いステロイドを一か月間も使うという治療自体がありえないことらしく、アトピーの標準治療ではムーンフェイスの副作用は心配しなくてもよい、とのことです。
ステロイドの分類名は語弊がある
日本のステロイドの分類は、マイルド、ストロング、などの表記ですが、海外では5群、4群といった表記です。 この表記では、ストロングと聞くと、余程強い薬なのだと思ってしまいますが、実際は下記の表のように、ストロングは中間に位置しており、むしろステロイド外用薬としては弱い部類なんだそうです。
予備知識がない人がストロングなステロイドを処方されたら、実際は中程度のステロイドなのに、最上級に強い薬が処方されたと思いそうではありますね。
日本 | 海外 |
ストロンゲスト(strongest) | 1群 |
ベリーストロング(very strong) | 2群 |
ストロング(strong) | 3群 |
マイルド(mild) | 4群 |
ウィーク(weak) | 5群 |
FTU(フィンガーチップユニット)
FTUは、Finger-tip Unit(フィンガーチップユニット)の略です。 FTUは薬を正しく塗るための目安で、成人の人差し指の先から第一関節まで軟膏やクリームを乗せた量が、1FTUという単位です。 1FTUというのは、両手の手のひら分の面積を塗れる量です。 ステロイドは刷り込まずに乗せるように塗るので、1FTUで手のひらに伸ばしたら、それを患部ペタペタと乗せるようにします。 1FTUを守りながら全身に塗るとなると、手のひらに伸ばしてペタペタするだけでそこから伸ばすように塗らないので、結構な時間を要します。 しかし、ステロイドを塗る時の適量は、この量ということなんですよね。
東京逓信病院では、○○には2FTU分を塗ってください、という風に指導を受けます。 私が受診した時には、先生の診察の後に、看護師の方からマンツーマンで塗り方の指導をうけました。 FTUを基準にすることで、量が少なかったり、多すぎたり、といったことを防ぎ、適切な量のステロイドをぬることができるという狙いがあるそうです。 しかし、FTUはあくまでも目安である、ということを先生が仰っていました。 何故なら、指のサイズは人によって違うし、外用薬のチューブの口の大きさも薬によって違います。 チューブの口が小さい薬を、FTUにのっとって指に乗せてみると、チューブの口が大きい薬よりも少なるのは自明のことです。 ですので、FTUはあくまでも目安なんだとか。
プロトピックは正常な肌には影響しない
ステロイドの分子量は正常な肌にも吸収されますが、プロトピックの薬の設計は分子量がステロイドよりも大きく、正常な肌からは吸収されないようになっているそうです。 そのため、アトピーで皮膚のバリアが壊れている箇所にだけプロトピックが吸収される、という仕組みになっています。 ステロイドは副作用で皮膚が薄くなったり、酒さ様皮膚炎や紫斑がでたりするので、吸収率の高い顔面には2週間以上継続して使ってはいけないそうです。 2000年頃にプロトピックが登場するまで、顔面の治療は困難だったようで、ステロイドを使って2週間が経過したら使用を止めてしまうか、もしくは希釈して使っていたそうです。 プロトピックなら、正常な肌に影響がでないため、ステロイドをよりも使い勝手よいんですね。
余談ですが、プロトピックを塗ると顔が火照ったような、ヒリヒリするような感覚があります。 これは、カプサイシンと似たような作用があるからだそうです。 実際、私も塗り始めて数日は、火照りと、ヒリヒリとした痛みとまではいかないものを感じました。 今も継続して塗っていますが、火照りやヒリヒリは徐々に感じなくなってきました。 アトピーが改善されてきて、プロトピックが正常な肌には作用しないから、ヒリヒリしなくなってきたということなのかもしれませんね。
アトピービジネス
薬の治験では、参加者を半々のグループに分け、初めは両方に薬を与え、途中からは片方のグループにだけ薬を与えます。 もう片方のグループには薬と称して偽薬を与えます。 薬を与えられたグループに効果がでるのは当たり前ですが、不思議なもので偽薬を与えられていたグループにも、1、2割の人間に効果がでるそうです。 これを、プラセボ(プラシーボ)効果といいます。
アトピービジネスでも同じことがおきます。 世にいろいろと出回っている「これをすればアトピーが治る!」という治療法を試した人間の1、2割はアトピーが改善している計算になります。 先生は、プラセボで治るならそれはそれでいい、という風に仰っていました。 ですが、8、9割の効果がなかった人はまた別のアトピー治療を試すことになります。 それで運よく治ればよいですが、治らない人はまた別の治療法を探します。 こうやってアトピービジネスは回っているんですね。
最後に
アトピー教室で聞ける話は、ネットで探せばきっとでてくるであろう情報が多いと思います。 ただ、どの情報が正しくて、どの情報が間違っているかを、医師に直接質問できる場というのは、それだけで貴重なのではないでしょうか。 先生は気さくに冗談を交えつつ話してくれますし、気軽に質問をしてもいい空気がありました。 また、一緒に参加している他のアトピー患者さんが質問する内容が、自分ではでてこない質問だったりするので、内心「いいしつもんですねぇ~」と感心していました。
今まで、漢方やデトックス等、私も色々と試してきましたが、アトピー治療のスタンダードである、ステロイドは一度も使っていませんでした。 今は、脱ステロイドを脱してステロイドを使う、”脱”脱ステロイドに挑戦中です。 (一度も使ったことがないのでそもそも「脱ステロイド」だったのかは疑問ですが……)
ようやくアトピーの標準治療を試してみる、というのはかなり遠回りをしたように思います。 今後、どのような経過をたどるかはわかりませんが、プロアクティブ療法でアトピーをコントロールできるようになることを祈るばかりです。