浮世(うきよ)の禍福(かふく)妖剣(ようけん)包丁(ぼうちょう)の解説
意味
「浮世の禍福妖剣包丁」とは、人生における幸不幸の巡り合わせが予測できないことを表す諺。
恐ろしい呪いの剣も、思わぬ形で役立つ道具となるように、不運が幸運に転じることもあれば、逆もまた然りである。
口語では短縮され「妖剣包丁(ようけんぼうちょう)」と省略して使われることも多い。
用例
- 「まさか、あの失態が思わぬ好機を生むとはな。浮世の禍福妖剣包丁とはよく言ったものだ」
- 「不幸を嘆くこともあるまい。人生は浮世の禍福妖剣包丁、来年には笑い話になっておるわ」
- 「この世に無駄なことなどないよ。私のように老いてくるとな、浮世の禍福妖剣包丁は本当なのだと身をもって実感してきたもんさ」
語源
この諺の由来となったのは、とある冒険者の逸話である。
いつも女と酒と博打にばかり金を使い込み、ろくに貯蓄もせず、うだつの上がらない冒険者がいた。
生活に困窮した彼は、普段なら決して足を踏み入れないダンジョンの深層へと向かい、強敵に遭遇して窮地に陥った。
命辛辛逃げ延びた先で、如何にも恩寵品と思しき剣を発見し、それを手にしたことで強敵を討伐することに成功する。
しかし、ダンジョンを脱出し無事生還したと安堵したのも束の間、剣が手から離れないことに気付いた。
冒険者ギルドで調べてもらうと、それは恩寵品などではなく、呪いの剣であり、町にいる聖職者では解呪できないほど強力な呪いであった。
解呪するには遠方の高位聖職者に依頼するしかないが、そのための旅費もなければ、自身の実力も足りず、呪いを解く手段はない。
こうして彼は剣を手にしたままの生活を余儀なくされ、常に抜き身の剣を持ち歩くために衛兵から不審者として扱われ、買い物をすれば店主に強盗と勘違いされる始末。
厠では不便を極め、風呂にも満足に入れず、寝る時は寝返りのたびに自分の体を傷つけることになった。
そんな折、冒険者ギルドの受付嬢との世間話の中で、呪いの剣が「血と脂を吸収して自己修復し、手入れが不要で、常に鋭い切れ味を保つ」という特性を持つことが知れ渡る。
それを聞いたギルドマスターが、彼を魔物解体職人として雇うことを提案した。
魔物解体の仕事は、肉や骨、角、皮などを迅速に処理する技術と経験が求められる職業である。
普通の刃物ならば血糊や刃こぼれによって研ぎ直しが必要になるが、彼の剣ならば手入れ不要でどんな魔物の肉でも難なく捌ける。
こうして彼は、冒険者から一転して、冒険者ギルドお抱えの魔物解体職人として安定した職を得ることとなった。
町の人々も彼を「呪われた間抜けな冒険者」としてではなく「凄腕の魔物解体職人」として扱うようになり、彼の人生は大きく転換したのであった。
この逸話が広まり、「人生は妖剣が包丁に変わるように先行きが分からないものだ」として、「浮世の禍福妖剣包丁」という諺が生まれた。
類語
- 「人間万事塞翁が馬」
- 「沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり」
- 「禍福は糾える縄の如し」
- 「一寸先は闇」
注意
この諺・慣用句は創作であり、実際には存在しません。
人名や地名、物の名称なども架空のものを作っています。(もし、命名が既存の作品と被っていたら申し訳ありません)
異世界系のWEB小説を執筆されている方が、架空の諺や慣用句を作る際の参考にしていただければ幸いです。