第十六話 こうありたい自分|看板娘はかく語りき

「それで、俺は何を話せばいいんだ?」

 アテロスさんは少し投げやりな感じで言った。

 私は努めて明るく振る舞って尋ねた。

「どんなお仕事をしてるの?」

「建物を作る仕事だよ」

 アテロスさんはぶっきらぼうに答えた。

「建物! シェタさんの弟子ってことは、最近話題になってる神殿の建て直し?」

「いやいや、そんな大層な仕事じゃないよ。民家を建てる現場に駆り出されるのが精々さ」

「すごいね! お家を建てられるなんて!」

 私が素直に感心してみせると、アテロスさんは少し面食らったように瞬いた。

「凄くはないさ。俺は見習い仕事しかしてないからね。同期の奴らに比べたら全然……」

「同期?」

「あぁ、同じ時期に親方に弟子入りした奴らのことさ。この同期がまた、俺を置いてどんどん先に行っちまうんだな、これが」

 アテロスさんは自嘲気味に笑った。

「先に行く?」

 アテロスさんは天井を見上げて、少し間を開けてから続ける。

「覚えが早い、要領が良い、人誑し、色んな奴が居る。そういう奴らは任せてもらえる仕事がどんどん増えていくのさ。……同期の中で、俺だけが取り残されてるんだ」

 アテロスさんはちらりと私の顔を見た。そして、頭を掻いて気まずそうに笑った。

「すまないな。愚痴なんて聞かせて。退屈だろう?」

 私は首を横に振った。

「そんなことないよ。もっと聞かせて?」

 アテロスさんの表情が少しだけ緩んだ。

「……子供相手の方が気楽に話せるかもな」

 アテロスさんは独り言のように小さく呟いてから、続けた。

「俺は技術不足なんだ。手先の器用さも、材木の癖を見抜く目も。職人に必要な技能が全然足りてない」

「技術かぁ。職人さんって大変なんだね」

「ああ。腕のいい職人ってのはな、繊細で精密な仕事が出来る奴のことさ」

 アテロスさんがそう語る声には、先程までの気だるさはなかった。眼差しは真剣そのものだ。

「そんな職人の最高峰ってやつに。俺もなりたかったんだけどな……」

 アテロスさんはそれ以上言葉を継がず、押し黙った。

 自罰的な雰囲気を感じる。

 高みを目指しているはずなのに、周りと比べて自分が駄目な人間だと断じてしまっている。

 私は右手の人差し指を眉間にあてた。

 トントン、と軽く叩く。