第十四話 前世の夢 十四歳|看板娘はかく語りき

 またいつもの異国の夢。

 前の夢と同じ場所、ファミリーレストランだ。前と同じ席に女の子が座っている。

 この席が定位置なのだろう。右側と背後は壁で、隣接する席は左側だけ。人の少ない席を選んでいるらしい。

 女の子は今回も勉強道具を広げて集中している。

 ――退屈な夢になりそうだ。

 嫌な気分になる怖い夢にはうんざりだけど、かといって退屈な夢も御免被りたい。

 私は所在なさげに店内を見渡す。

 若い男が二人、ドリンクバーから戻ってきて、女の子の隣の席に座った。

 ――あれ? この二人、前にも見たことあるような?

『お疲れ~』

『お疲れさま。レポート、結構しんどかったな』

 二人は笑い合いながらアイスコーヒーで乾杯した。

 肩の力を抜いた二人が、くつろいだ様子で談笑している。

『ニーチェって、持て囃されるだけあるよなぁ。背後世界とか現代でも通用するもん』

『言いかえれば、社会通念上良いとされてることって話だもんな』

『そうそう。改めて考えてみると、周りの人でも居るなって思ってさ。例えば、就活してるゼミの先輩とか』

『あぁ。あまり上手くいってないらしいな』

『大手が全滅したみたいで、凹んでるんだと。これも「大企業に入ることが良い人生」っていう背後世界なんだろうな』

『背後世界ではあるだろうけど、先輩が落ち込む気持ちも分かるよなぁ』

『そうそう、気持ちは分かるんだよなぁ。でも背後世界は絶対的なものじゃないってことを知れば「そんなに落ち込まなくたって」とも思うんだよ』

『言わんとすることは分かるけどさ。親の期待とかもあるんだろうし、当事者になったら簡単には割り切れない気もする』

『そうなんだよなぁ。でも、親がそう言うからってのも背後世界なんだよなぁ』

『理屈は分かってても、感情がなぁ』

 二人はしばらく笑い合って、やがて別の話題に移っていく。

 私は女の子が勉強を切り上げて退店するまで、二人の会話に耳を傾けて時間を潰していた。

 ◇

 ぱちり、と目が開いた。

 ベッドには私一人だけで、両親はもう起きているらしい。

 最近、夜中に目が覚めなくなったおかげなのか、目覚めがスッキリしている気がする。

 私は上半身を起こす。私の足は、枕に乗っている。人生は不思議で一杯だ。

 ベッドから降りて思いっきり「ん~!」と伸びをする。

 窓から朝日が射し込み、床を温めている。

「おやまぁ、ご機嫌な陽気だこと」

 私は足の裏の温かさから、今日も客足が絶えない忙しい一日になりそうだ、と予感を肌で感じていた。